日曜日, 10月 19, 2025
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理解を増進する必要施策は【LGBT法、つくば市議アンケート】上

性的マイノリティーに関する理解を広める「LGBT理解増進法」が昨年6月施行され、市町村は、地域の実情を踏まえ、性の多様性に関する国民の理解を増進する施策を実施するよう努めるとされた。NEWSつくばでは、つくば市議のLGBTに対する考えを知るべく、昨年、市議26人を対象にアンケート調査を実施した。回答があったのは16人。結果と当事者の声を3回に分けてお伝えする。

「胡散臭い」投稿きっかけ

同市議会の五頭泰誠議長が昨年2月、自身のツイッターに「やはり、LGBTを声高に主張する人。胡散(うさん)臭い」と投稿したことが、記者が調査を実施する契機になった。五頭議長は数日後に自身の投稿を削除。同年4月には、県内のLGBT当事者団体「にじっぺ茨城」(永瀬大紀代表)と懇談し、翌月、投稿に関する釈明文をフェイスブックで公開した。だが、釈明文の中で、トランスジェンダーと「女性」「子ども」の権利が対立するかのように書くなど、特にトランス女性に対する発言に記者は違和感をもった。

その直後、記者は、何人かのLGBT当事者に五頭議長の発言に対する思いを聞き、依然としてLGBTに対する差別が根強い社会だからこそ、公人の差別発言でさえ黙認されてしまうのではないかと問題意識を持った。

研修、事例集、相談窓口

まず「LGBT理解増進法に関連して、つくば市では、どのような施策が必要だと思いますか?」と質問し、50字程度で書いてもらった。

各議員の回答は「市職員への研修の実施」「性的少数者に配慮した対応事例集の作成」「相談窓口の設置」などを挙げる議員が多かった。

市男女共同参画室によると、つくば市では、申請書類の性別記入欄をなくす、または男・女どちらかを選択するのでなく記述式にする取り組みや、LGBT当事者を講師とする理解啓発のための市民向けセミナーを行っているという。市にはLGBTに特化した相談窓口はないが、各行政窓口で性の多様性に配慮した対応をするためのハンドブック作成を検討中だとしている。

市人事課によると、市の全職員を対象に、LGBTの基礎知識や当事者への対応事例を、専門の大学教授から学ぶ研修を22年度から数年かけて実施予定だとしている。22年度からは、市職員が取得できる看護休暇や結婚休暇の対象範囲を、配偶者だけでなく同性パートナーにも広げた。

各議員の回答は以下の通り(敬称略、議席番号順)。

小村政文 当事者の声を反映させた形で、市民全体に対し、多様性の理解を深め、「平等が当たり前」な社会に近づくような施策。具体的なやり方は、当事者と慎重に話し合って決めたい。

川久保皆実 LGBT理解増進法第 5条及び第10条第1項に基づき、学校教育や市民への講座・広報等において性的少数者への理解増進のための取組を実施。性的少数者に寄り添う相談体制の整備。

川村直子 市職員、教職員がLGBTQへの理解を深める研修を受講すること(実際に現在進行中)。非正規職員や、市の業務委託先等である、保健、高齢、障害分野等に関わる施設の方への研修も必要。

中村重雄 性的少数者に配慮した対応事例集を作成する事。

あさのえくこ キレッキレのチラシを作り、全戸配布(「生活保護は権利」のチラシを全戸配布して認知度をあげている自治体を参考に回答)。相談先明記パンフレットを、つくスマアプリで配布。

山中真弓 世田谷区のようなパートナーシップ制度を導入する。東京都もやっている。

小森谷さやか つくば市では、全ての職員・教職員への研修が始まり、「まずは知ること」の第一歩は踏めていると思う。今後は申請書類等の男女別記載の工夫や、学校等公共施設での誰でもトイレ・更衣室設置等でしょうか。当事者の声を聞きながら一緒に考えていきたい。

高野文男 つくば市議会では昨年7月、市民経済委員会が世田谷区の「男女共同参画と多文化共生を推進する取組」を学んだ。市が、LGBTの支援団体と連携し、多様性の理解を深める活動を学びながら、啓発することから始めるべきだ。市が中心市街地等に相談窓口を設置し、運営やイベント企画を当該団体に委託することも必要だろう。

黒田健祐 まずは職員、市民への啓発を促進する事が大切。

皆川幸枝 設問に例示された、埼玉県などの「性の多様性に配慮した地域の企業を評価、公表する」取り組みは、多くの人がLGBTQへの理解を進めていく上で有効だと考える。

五頭泰誠 回答無し

木村清隆 LGBTを知りサポートするためのガイドラインを創り、誰もが自分らしく生きることを認め合う社会をめざし研究して、「性の多様性の尊重に関する条例」法整備に取り組む。

浜中勝美 理解増進の意識調査やアンケートの実施。

橋本佳子 パートナーの方々も利用できる行政サービスを見直し、利用できる施策の一覧を公表する。行政窓口等において、性的少数者に配慮した対応事例集を作成する。相談窓口を開設する。パートナーシップ制度の導入。

小野泰宏 自治体職員向けガイドラインの制定と公開。相談窓口の設置と住民に正しい理解を促すための取り組み。

金子和雄 法律が施行され、多様性に関する国民の理解と増進が求められる。特に一人ひとりの人権を守る取り組みの推進です。つくば市の男女共同参画推進基本計画でも多く触れられているが、協働して活動を進めたい。

ほかの法整備「必要」は13人

次に「LGBT理解増進法のほかに、LGBTなどの性的少数者に関する法整備は必要だと思いますか」と質問した。「必要、どちらかといえば必要、どちらかといえば必要でない、必要でない」のいずれかを選んでもらい、その理由と、必要だと思う場合は、その具体的な法整備の内容を、それぞれ50字程度で書いてもらった。

回答のあった16人のうち、13人が「必要」または「どちらかといえば必要」と回答した。具体的な法整備としては、差別を禁止する法律や条例の制定、同性婚を認める民法改正などが挙げられた。一方、3人が「どちらかといえば必要でない」と回答した。理由としては「まずは既存の法律を活用していくべき」などがあった。「必要でない」と回答した議員はいなかった。

小村政文 必要 (理由)同性婚が可能な国にしたいから! (具体策)戸籍法74条における異性婚を前提とした「夫婦」という単語から「両者」などの表記に改める整備。

川久保皆実 必要 (理由)LGBT 理解増進法は、あくまで理解増進のための取組を努力義務とするもので、性的少数者に対する差別解消のための直接的な法的根拠とはならないため。 (具体策)性的少数者のみならず、人種差別、性差別、障がい者差別などを包括的 に禁止する法律の整備。

川村直子 必要 (理由)LGBT理解増進法はマジョリティの視点に立つ内容。少数者であるLGBTQの人権を守り、差別を明確に禁止し、少しでも不利益を解消する法律が必要なため。 (具体策)アウティングの禁止等、個別具体的な取り決めをする「差別禁止法」。希望するすべての人が結婚出来るように、同性婚を認める「民法」などの法改正。性別適合の要件を定める「性同一性障害者特例法」は非人道的な内容であるため、法改正が必要。

中村重雄 どちらかといえば必要 (理由)前提としてLGBTについて広く認知されているのでは? (具体策)差別禁止条例・パートナーシップ条例

あさのえくこ 必要 (理由)これは「理念法」であるので、「正法」を定め、差別解消実施計画等について縛りのある取り決めができるようにすべき。(具体策)権利擁護という点でさまざまあると思うが勉強不足のため今後勉強します。

山中真弓 必要 (理由)法的に認められていなければ、家族と同様の権限が与えられないため。(具体策)同性婚・登録パートナーシップなど同性カップルの権利を保障する制度を整えている国と同様な、法整備を行う。差別的な扱いをした人、会社等への罰則制度も作る。

小森谷さやか 必要 (理由)差別禁止法に向けて継続的に働きかけていくことが必要。問題となった「~不当な差別はあってはならない」という表現を一刻も早く削除してもらいたいです。(具体策)「LGBT差別禁止法」をつくること

高野文男   必要 (理由)LGBTの方、そうでない方、双方が不安を感じずに生活や仕事が出来るようにする為 (具体策)LGBTの方、そうでない方、双方が不安を感じずに生活や仕事が出来る社会にする為の法整備

黒田健祐 どちらかといえば必要でない (理由)様々な議論を経て出来た現行法の運用をまずは進めるべきと考える。 

皆川幸枝 必要 (理由)LGBTQカップルでも婚姻と同等の権利が認められるような法整備をしていくべき。(具体策)今後、調査・研究して参ります。

五頭泰誠   どちらかといえば必要でない (理由)私のSNSにて、表記しています。ご一読ください。 

木村清隆 必要 (理由)LGBTに関して様々な立場で、自由でありつつも、理解し合う、守り合う仕組み(法整備)が必要。(具体策)詳細な法整備に至る前に、LGBTを理解しあえる社会を創る事が大切。LGBTを思い込みや一部の報道・噂などで得た情報・知識で、法整備に対して良し悪しを判断するのは問題が起きる。

浜中勝美 どちらかといえば必要でない (理由)まずは、この法や既存の取り組みを活用して様々な運用をしていくことが必要。

橋本佳子 必要 (理由)同法は差別禁止ではなく、あくまでも国民に知らせ基礎的な知識を広げるという目的だから。(具体策)同性婚を認める民法改正。LGBT平等法を制定し、社会のあらゆる場面で性的少数者の権利保障と理解促進を図る。

小野泰宏 必要 (理由)誰もが暮らしやすく差別を受けない社会を作るため、特につくば市は多くの海外出身者の方が住んでいるため。(具体策)性的少数者の方々への差別を禁止する条例、パートナーシップやファミリーシップ制度等の施策導入を柱とする計画の策定。

金子和雄 必要 (理由)多くの国民が同じ待遇を受けられない限り、その人に合った利益が地域から活動報告で知ることができる。不便を感じるし、生活にも苦労する。(具体策)提案者と協働で学びながら努めたい。

10人が回答なし

なお宮本達也、長塚俊宏、神谷大蔵、小久保貴史、木村修寿、塚本洋二、飯岡宏之、鈴木富士雄、塩田尚、久保谷孝夫議員の10人からは回答が無かった。(川端舞)

続く

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