国立科学博物館 筑波実験植物園(つくば市天久保)は20日、世界最大級の花を咲かせる絶滅危惧種ショクダイオオコンニャクの結実と種子発芽に国内で初めて成功したと発表した。
京都府立植物園から譲り受けた個体と、東京大学小石川植物園から譲り受けた個体が今年5月、筑波実験植物で連続して開花。2個体のうち、先に咲いた個体から花粉を採取し、次に咲いた個体に人工授粉したところ、実がなり、11月上旬、実が赤く柔らかくなった。実から種を採取。同10日に種をまき、12月12日に発芽した。栽培下でショクダイオオコンニャクが実をつけ、種子が得られるのは日本で初めて。実は全部で736個でき、実の中には長さ2~3センチの種が0~3個できたという。
ショクダイオオコンニャクは、インドネシア・スマトラ島の限られた場所に生えるサトイモ科の絶滅危惧種で、花は高さ3メートル、直径 1メートルになるものもあり、世界で最も大きな花の一つとされる。開花時は独特の強烈な悪臭を放つ。花は同じ個体に雄花と雌花が咲くが、同一個体では受精しない。今回、2つの個体を連続して開花させ、先に開花した個体の花粉を保管することによって、人工授粉が可能となった。
同園植物研究部多様性解析・保全グループ研究員の堤千絵さん(46)は「種子の発芽までの命をつなぐ作業に100人の研究者が日々努力をしてきたので、報われてとてもうれしい。また筑波実験植物園と、小石川植物園、京都府立植物園が連携することで高い栽培技術が生まれ成果につながった。これまでは(葉をとって発芽させる)葉挿しによりクローンの株を増やしてきたが、受粉により、遺伝組成の異なる種子が出来たため、種を保全することにつながる」と意義を話す。
温室担当の小林弘美さん(51)は「絶滅危惧種でもあるショクダイオオコンニャクの育成は温度管理などかなり気をつかう仕事だった。種の保存、命をつなげる仕事をこれからも続けていきたい。何より植物の不思議を伝えていきたい」と語った。(榎田智司)