つくば市は30日、つくば駅前の同市吾妻、中央公園内のさくら民家園に移築されている江戸時代後期ごろの古民家が、建築基準法上の違反建築物状態にあることが分かったとして、11月1日から当面の間、利用を停止すると発表した。
同民家園の古民家は、つくば科学万博が開催された1985年に現在地に移築され、現在つくば市が所有、管理し、一般に公開されている。
市生涯学習推進課によると、移築から30年以上が経過し、特にかやぶき屋根部分の老朽化が進んでいることから、改修に向けた手続きを進める中で、建築確認申請等の確認をしたところ、移築当時に必要だった建築確認申請と検査済証が見当たらないことが分かった。当時、建築確認申請の手続きをしないまま移築した可能性があることも考えられるなど、手続きの不備が判明したことから、違反状態を改善するため、当面の間、建物の利用を停止する。
一方、外観の見学や庭での休憩などはこれまで通りできる。
今後について同課は、専門家の意見や市民ニーズを把握した上で、今後の取り扱い方針を決定していくとしている。
同民家園の古民家は、江戸時代後期の寛政年間(1789-1801)に建てられたとされる地方の農家の母屋で、1984年に桜村(現在つくば市)上大角豆の横田章さんから同村が寄贈を受けた。翌85年、研究学園都市の開発と伝統の調和のシンボルとして、同村が住宅・都市整備公団(現在のUR都市機構)に委託し、建築初期の形に近づけて復元し移築した。文化財などの指定は無い。
屋内は座敷、奥座敷、茶室、土間などがあり、かまどが設置されている。同課によると年間約6000人の見学者があるほか、お茶会、お話し会、展示会などのイベント会場としても年間で数百人が利用している。