日曜日, 4月 28, 2024
ホームつくば環境研、つくばこどもの森保育園など 自然共生サイトに認定

環境研、つくばこどもの森保育園など 自然共生サイトに認定

環境省の新たな取り組み「自然共生サイト」に、つくば市内から申請していた国立環境研究所(同市小野川、5月3日付)とつくばこどもの森保育園(同市沼崎、22年3月30日付)、戸田建設筑波技術研究所(同市要)の3カ所が認定を受け、25日認定証が授与された。

環境研とこどもの森保育園の両者は今後、環境研究機関と幼児教育・保育の専門家というそれぞれの強みを生かし、生物多様性とその恵みを次世代に伝える取り組みを連携して進めていくという。

自然共生サイトは、2030年までに地球上の陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全するという国際目標「30by30(サーティ・バイ・サーティ)」に貢献するため、民間の取り組みなどによって生物多様性の保全が図られている区域を認定する制度。広大な原生自然だけでなく、公園や事業所緑地などの身近な自然も認定対象としている。

ノウハウ共有も評価

今では希少になってしまった秋の花、ツリガネニンジン=国立環境研究所内

環境研では、構内の敷地面積約23ヘクタールのうち、5.1ヘクタールを「つくば生きもの緑地in国立環境研究所」と名付け、植生保全優先区域とした。創設50周年を迎える同所は、構内緑地としてアカマツやコナラなどの雑木林を残しており、研究学園都市ができる前からの里地里山の自然が維持され、希少な動植物の生息も確認されている。

今回の認定では、同所が中心となって取り組んでいる「つくば生きもの緑地ネットワーク」の取り組みも高く評価された。つくばの研究機関や事業所などの構内にある緑地を、保全・管理のノウハウなども共有しながら適切に守り、地域の生物多様性の保全に貢献しようというものだ。「重要なのはきれいに管理しすぎないこと。刈ってしまうと花が咲かなくなる植物もある。区域の特徴によって草刈りの頻度を変えたりすることで、多様な生き物が住みやすくなる」と、同所生物多様性領域主幹研究員の石濱史子さん。

教育システムが評価

つくばこどもの森保育園では、0.2ヘクタールの園庭ビオトープが認定を受けた。同園は2012年の開園当初から、隣接する「豊里ゆかりの森」との有機的なつながりを基に、日常的に自然環境の中で生き物と触れ合って遊び学べる「ビオトープがある保育園」を特色としてきた。農家や造園家、樹木医らの協力を受け、職員もビオトープ管理士などの資格を取得して維持管理に励み、21年の全国学校・園庭ビオトープコンクールでは環境大臣賞を受賞した。

園庭ビオトープのプレゼンをする古谷野園長=環境研内

「今回の認定では、原体験活動を通じて自然や人への思いやりの気持ちを育くむ教育システムが特に評価された。今後も人と自然が上手に共生できる考え方や仕組みを醸成できるよう、地域の関係者有志と連携し、子どもたちの未来につながる持続的な活動をしていきたい」と、園長の古谷野好栄さん。

同園の自然共生サイトへの申請にあたっては、環境研側から声掛けがあった。「環境保全には活動する人を育てることが必要。環境教育が大事だと考えており、園の取り組みを見て素晴らしいと感じた。われわれは子どもに教える専門家ではないので、例えば危険な生き物への接し方など、どうすれば子どもたちにうまく伝わるか、園から学ばせていただきたい」と石濱さん。「環境研はわれわれと違って規模も大きいし、専門家が大勢いることが心強い。いろいろと勉強させていただきながら連携を進めていきたい」と古谷野さん。

民間などが管理する緑地が自然共生サイトの認定を受けるメリットとしては、取り組みが「見える化」することが最大の効果だと、石濱さんは話す。「活動支援企業とのマッチングもしやすくなり、持続性向上も期待できる。他の研究機関などにも登録を呼び掛けており、われわれの経験を共有して促進したい。つくばは身近な公園などにもいい自然が多い。保全の方法を伝えて管理に役立てていただきたい」と、今後いっそう活動を広げていきたい考えだ。

戸田建設筑波技術研究所(同市要)は、在来植物で構成されるビオトープを核とする0.4ヘクタールの緑地が認定を受けた。(池田充雄)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

0 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img
spot_img

最近のコメント

最新記事

山麓の田んぼに「逆さ筑波」出現

田植えを前に田んぼに水が張られ、筑波山麓では「逆さ筑波」が現れ始めた。田んぼの水面が鏡となって筑波山が逆さに映る。 筑波山東側の石岡市に住む出版業、野末琢二さん(65)は、逆さ筑波を地域の魅力の一つとして捉え、2015年からフェイスブックで「逆さ筑波」の写真を募集し発信している。 毎年30点ほどの作品が集まる。二つ峰の逆さ筑波のほか、女体山が男体山に隠れて一つ峰になった逆さ筑波などが水面に映る。 野末さんは「田植え前に水が入る時期から、田植えが終わって早苗が成長して水鏡に山が映らなくなるまで、ちょうど4月下旬から6月上旬まで、わずかな時の逆さ筑波との出合いを大事にしたい」という。 野末さんが逆さ筑波を発信するようになったのは、11年の東日本大震災と12年の北条の竜巻災害がきっかけだ。「災害が2年続いて起き、精神的に落ち着かない日々だった。翌13年、桜の季節が終わり、田んぼに水が張られた頃、筑波山がぽっかりと水面に映っていた。逆さに映った筑波山がとっても新鮮で愛らしかった」と話す。逆さ筑波は毎年出現していたはずなのに、急に魅力的に感じられ、皆が撮った写真を募集してみようと思い立った。 山麓の同市神郡に住む肥田芳宣さん(58)は、地元をジョキングする合い間に逆さ筑波を撮影し、野末さんの呼び掛けに応じて毎年、写真を投稿している。 肥田さんによると撮影のポイントは「風が吹き始める午前6時前が狙い目。場所としては、西はつくば市寺具や筑西市赤浜、南はつくば市小田、北は桜川市樺穂まで」と言い、1枚の田んぼでは、水が張られてから田植えまで約1週間と、田植えから苗が成長するまで約3週間の1カ月間が撮影のチャンスだという。 筑波山麓ではほとんどが5月上旬までに田植えを終える。野末さんは間もなく、今年の逆さ筑波の写真の募集を開始する予定だ。 逆さ筑波は、風がない晴れた日に見ることができる。筑西市の母子島(はこじま)遊水池の逆さ筑波などが知られる。(榎田智司)

解消が進まない所有者不明土地問題《文京町便り》27

【コラム・原田博夫】日本の土地利用に関してはこのところ、耕作放棄地、空き家問題、ゴミ屋敷問題、シャッター商店街に加えて、所有者不明土地問題も、人々の口の端に乗るようになっている。要するに、本来、公共的性格をもっているはずの土地利用が、街づくりや災害復旧の現場をはじめ、さまざまな局面で滞っていることの表れのようだ。 こうした問題に対応するため、国は近年、関連諸制度の見直しに取り組んでいる。2018年6月の「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」(所有者不明土地法)の制定を皮切りに、2020年3月には土地基本法が30年ぶりに見直され、土地の適正な「利用」と並んで、「管理」の重要性が土地政策の基本に位置付けられた。 同法では、法の対象とする「所有者不明土地」を、「相当な努力がはらわれたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない一筆の土地」(2条)と定義する。 2023年4月には改正民法が施行され、所有者不明土地や管理不全土地に特化した新たな管理制度や、相続制度・共有制度等に関する新規律の運用が始まった。同月には、所有者不明土地の予防策として、相続により取得した土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする「相続土地国庫帰属制度」もスタートした。 この「相続土地国庫帰属制度」は、申請要件として、管理コストの国への不当な転嫁や所有者が通常の管理を怠るなどのモラルハザードを防ぐ観点から、建物がある土地や境界が明らかでない土地等は不可であり、また、10年分の土地管理費相当額の負担金を納めることが必要とされる。 2023年4月27日に施行され、同年2月22日の事前相談開始から24年3月31日までの13カ月で2万件超の相談が寄せられ、申請件数は1905件、うち248件は国庫帰属が確定している。2024年4月からは相続登記の申請義務化も始まったので、この傾向は加速する可能性がある。これは事態改善への一歩前進である。 負担が重い土地所有者の探索 一方、人口減少下の国土管理の新たな手法として、国、都道府県、市町村、地域の各レベルで、土地管理の在り方を検討する「国土の管理構想」の仕組みが2021年6月に策定された。要するに、土地所有者の責務の明確化と「地域」の役割の重視、である。ポイントは、「所有者以外の者」すなわち「近隣住民・地域コミュニティ等」を、土地政策の担い手の一つとして明確に位置付けたことである。 具体的には、所有者不明土地対策の実施に要する費用の一部を国の直轄調査を通じて支援する「地域福祉増進事業」制度があり、全国展開を図るために先進的な取組の募集・採択が行われている(採択数は、2019年度6件、20年度7件、21年度7件など)。しかし、この制度を使って所有者不明土地の活用に至った事例は、新潟県栗島浦村(自治体)による1件に留まっている(2023年12月現在)。 スムーズな導入が進まない背景には、推進調査の実施主体の設定の難しさに加えて、土地所有者を探索する負担の重さがあるようだ。現状は、問題解決というより所在の端緒(たんちょ)に、着いたばかりである。(専修大学名誉教授)

まずこいのぼりで宙に 筑波宇宙センター 衛星「はくりゅう」打ち上げ目前

大型連休初日の27日、つくば市千現の宇宙航空研究開発機構(JAXA)筑波宇宙センターで、5月下旬に打ち上げが予定される地球観測衛星「EarthCARE(アースケア)」を知ってもらおうというイベントが開かれた。地域の親子連れ約60人が参加し、コイと竜と吹き流しの3体のこいのぼりが子供たちの手で掲揚された。 衛星事業の意味や意義を特に子供たちに知ってもらおうと開いた。イベントは「EarthCAREこいのぼりを宇宙にあげよう」と題し、衛星事業の紹介の後、親子で塗り絵によるミニこいのぼりを作成し、屋外に出て長さ3メートルの3体のこいのぼりを揚げた。この日のこいのぼりは「はくりゅうのぼり」と名付けられた特注品。衛星が打ち上げに成功すれば、衛星の愛称が「はくりゅう」となることから、登竜門を上る白い竜の形状で作られた。 EarthCAREは雲エアロゾル放射ミッション/雲プロファイリングレーダーの略称で、日本と欧州が協力して開発を進める地球観測衛星。搭載する4つのセンサー(雲プロファイリングレーダー、大気ライダー、多波長イメジャー、広帯域放射収支計)によって、雲、エアロゾル(大気中に存在するほこりやちりなどの微粒子)の全地球的な観測を行い、気候変動予測の精度向上に貴重なデータを提供する。地球から400キロ離れた低軌道を周回する衛星のため、大きな寒暖差や酸素原子の衝突などに対応して多層断熱材が白色になった。総重量は2350キロあり、4つのセンサーのうち雲プロファイリングレーダー(CPR)をJAXAが開発している。直径2.5メートルの大型ミリ波アンテナを備えたレーダーだ。ドイツのエアバス社で衛星に組み立てられ、米国バンデンバーグに移送された。スペースX社のファルコン9により、5月下旬に打ち上げられる予定という。先進レーダー搭載の気象衛星としてはH3ロケットにより6月30日に打ち上げられる「だいち4号」に比べ知られていないが、衛星の開発は1990年代に始まったという歴史がある。CPRプロジェクトの岡田和之サブマネージャー(43)は、入所以来20年間このプロジェクトに携わってきた。「震災やコロナ禍に振り回されたこともあってプロジェクトには曲折があった。ロケットも欧州宇宙機関(ESA)のヴェガでの打ち上げがロシアのソユーズに変更になりウクライナ情勢からファルコン9に切り替わった。今は無事打ち上がってくれることを願っている」という。 コイが白い竜になるまで20年かかった事業は、子供たちに継承されての長い取り組みになる。この日参加したつくば市の小学2年生、寺山未来さんは最後まで粘って塗り絵に取り組んだ。「コイのうろこ1つずつ色を変えて塗っていくのが大変だったけどとっても楽しかった。次は宇宙に行きたい」と目を輝かせた。(相澤冬樹)

スミレ… 春の野草【宍塚の里山】112

【コラム・鶴田学】春の野草で、まず思い浮かべるのは、スミレ類でしょうか。宍塚の里山で最初に姿を見せるのは、アオイスミレ(写真左)。葉がフタバアオイに似ていることから、名がつけられています。ちなみに、徳川家で有名な「三つ葉葵(あおい)」は、フタバアオイから紋様(もんよう)化されているそうです。 次に、本格的に花をつけるのはタチツボスミレ、ニオイタチツボスミレ、コスミレ、ノジスミレなど。これに続き、ヒメスミレ、ツボスミレがやや遅れて、花を見せてくれます。本家のスミレは、このところ、あまり姿を見せません。かえって、道端などで見かけることが多いようです。 早春には、スプリング・エフェメラル(春の妖精)と呼ばれる華奢(きゃしゃ)な小さな花たちをみることができます。林の木々が葉を広げないうちに、春の太陽の光を浴びる戦略をとっている植物たちですね。早秋の短い期間に花をつけ、種をつけると共に、すぐに枯れて、1年の大半を地中過ごし、地下茎などに栄養を蓄えるのだそうです。 カタクリなどが有名ですが、宍塚の里山では、ヤマエンゴサク、ジロボウエンゴサク(写真右)、イチリンソウなどを見ることができます。見ごろは数週間なので、運がよければということになります。このなかで、ジロボウエンゴサクは儚(はかな)げで、特にお気に入りです。 ちなみに、タロボウ(太郎坊)はスミレで、ジロボウ(次郎坊)で、それぞれ、距(きょ=花の基部から伸びる袋状の部分)が長いので、子どもたちが引っかけて遊んだそうです。 自然環境は持ち帰れません 紹介したい春の野草は色々ありますが、4月下旬から5月初めになると、林の中で目立つのは、キンラン(写真中央)やギンランです。実は、この植物たちは、手入れされた里山環境でしか生き延びることができないとされ、里山の減少とともに、絶滅危惧種に指定されています。 春の時期に十分太陽の光が地面に届くように手入れされた環境が必要だけでなく、コナラなどブナ科の樹木とその根で共生している菌根菌(きんこんきん)と一緒生きているためです。 宍塚の里山では、里山の保全活動を進めてきており、毎年のようにキンラン、ギンランなどを見ることができるようになりました。自然環境を持ち帰ることはできません。是非、一緒に見守り、大切にしてもらいたいと思います。(宍塚の自然と歴史の会 会員)