土曜日, 11月 15, 2025
ホームつくば大正建築の米蔵に価値を見出す【つくば 古民家利活用】下

大正建築の米蔵に価値を見出す【つくば 古民家利活用】下

つくば市栗原の古民家、郷悠司さん(30)の下邑家住宅でワイン試飲会が終わる頃、母屋と正対する米蔵にトラックが乗りつけられた。建築業者が手際よく杉材の床板168枚の搬入を始める。

老朽化した米蔵の床板を張り替えるワークショップだ。NPOつくば建築研究会(坊垣和明代表)が、古民家の長屋門に宿泊機能を付加しようという「もん泊プロジェクト」(20年9月9日付)の派生イベントとして企画した。

搬入された床材

江戸時代から農家を営んできた下邑家は、栗原の別住所から現在地に移り住み、地主となり、小作人も増えていった。質屋も始めるようになり、米蔵は、収穫されたコメの保管場所として大正時代に建てられた。

郷悠司さんの両親、則夫さんと晴美さんによると、米蔵は1921(大正10)年の建築で、2階建て、148平方メートル。「昔は白壁だったそうだが、戦時中、爆撃の目標とならないよう炭で黒く上塗りされたのが今の姿」。郷家では正確なところはわからないとしながらも、戦後の一時期、GHQが食糧倉庫として接収したという逸話があり、実際に英文を刻んだ木製のプレートが残されている。

ひさしを支える梁(はり)が一本の木で継ぎ目のないところが建築として自慢になるそうだが「床板は古くなり重量物を置くことが危険になった。内壁も、特に東日本大震災の地震で痛みが進んだ」。

「古い屋敷を維持するのは、なにかと手間がかかる。私の代では意識しなかったことだが、これを次代に継承させることを考えると、躊躇(ちゅうちょ)する」

則夫さん、晴美さんは、このような悩みをつくば建築研究会に話してきた。このことから同研究会は、長屋門の宿泊機能づくりと同様に、古民家や古建築の維持保存についても「もん泊プロジェクト」に取り入れた。

利活用のためにまず健全保存

米蔵の床はこれまで、土台の補強や修理を施し、新しい床板を打つところまで進んでいる。ワークショップは、米蔵を広く紹介しながら、実際に床板の張付けを体験してもらうという内容だ。

現場では、サポートで参加している建築業者のスタッフが床材を寸法に合わせて裁断し、参加者を指導しながら打ち付けていく。日常では体験する機会のない作業だ。建築業者は上郷地区で伝統的建築物を主体とした仕事を請け負う建明(望月聡志社長)。古民家のリノベーション、改修、古材を活用した新築に関してはエキスパートで、研究会の活動に関心を寄せている。

この日を含めて3度の体験会を計画。年内に板張りを済ませ、来年2月18日に開催する市民シンポジウムでお披露目する考えだ。

(左から)建明の望月社長と、つくば建築研究会の坊垣理事長

研究会の永井正毅副理事長は「本年から市内の古い街並みを訪ね歩く『みちあるき』を行事化しているが、会員外の一般の方々の参加が増えてきた。今回の米蔵修繕にも会員外から2人の参加者があった。古民家や古建築に興味を持っていただけるという感触を感じられるようになっている。これは言い換えれば、地域と人々をつなげるという、研究会がやりたかったことや、やっていかねばならない課題だと思っている」と語る。

道草が縁を生む

ひとつ問題がある。郷さん宅が所在する栗原地区は都市計画上、市街化調整区域にあたり、米蔵修繕後の利活用には制約がかかる。例えばこの空間でカフェなどの運営は難しいため具体的な運営内容は決まっていない。郷家が矢面に立ち、研究会は様々な形でこれを支えることになる。

「市街化調整区域の都市計画変更は市に働き掛けるほかないが、市に納得いただけるように、まずは形をつくることに精進したい」と悠司さん。母屋でのイベント同様、悠司さんは実績を積み上げることを重視している。さらに栗原地区の将来をけん引できるような利活用方法を考えている。

下邑家の米蔵

ところで、ワイン試飲会の参加者は郷悠司さんを「7代目」と呼んだが、彼はまだ下邑家の世襲はしていない。現在の6代目は彼の伯父にあたる人物が家督を継いでいる。「SNS上でつながった全国の皆さんの応援も活動の原動力になっている。皆さんからいただいた力をきちんと形にできるように頑張りたい。いろいろなことが整った暁には、つくば市や国内の古建築保存に向けて活動していきたい」と悠司さん。

つくば建築研究会の坊垣和明理事長は「もん泊そのものにはまだ多くのハードルがあり、短期間で実現するのは難しい。しかし時間の経過とともに建築は痛んでいく。江戸期や明治、大正の建物が現存するつくば市は、貴重な古建築の集積地。これまでの調査研究では、市内に所在する長屋門だけでも200を超える。全国的にも珍しい都市と農村の融合地。もん泊プロジェクトは目下、”道草”をしているが、道草こそ、こうした出会いや保存のきっかけを発見できると考えている」と述べる。(鴨志田隆之)

終わり

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