水曜日, 8月 10, 2022
ホーム つくば 【つくば/都市と文化】4 長屋門に泊まってみない?

【つくば/都市と文化】4 長屋門に泊まってみない?

【鴨志田隆之】「つくばRegion8(リージョンエイト)地域活性化プランコンペ」で2年連続敗退している、と刺激的な書き出しをするが、審査側は興味を示しながら「次年度以降のビジネスモデルを構築すべき。実力のあるスタッフだから必ずできるだろう」という旨の講評で不採択とした。「もん泊」(長屋門を活用した民泊と地域振興イベント)という取り組みは、特定非営利活動法人つくば建築研究会(小玉祐一郎代表)が進める「長屋門の利活用」だ。

長屋門は、江戸期に生まれた農家、商家の建築様式で、門構えの両サイドに居住ないし納屋空間をしつらえた大型の門を示す。関東地方の農村や旧街道沿いでよく見かける建築だが、つくば市内には実に217軒もの長屋門が所在する。長屋門は藩政時代、許可制であったため、市内の多くは明治期以降に建てられたものと調査されている。

「水回りも含め、佇(たたず)まいをそのままに、宿泊機能を付加する改修を施し、古民家に滞在体験する。交流と農村の歴史と文化を、長屋門を通して知っていただきたい」と研究会はアピールしている。

「もん泊」は、2018年の住宅宿泊事業法施行で解禁された「民泊」のもじりだが、なぜわざわざ「門」に泊まるのか? そこが、家主と同居に近い形態の民泊との最大の違いだ。母屋(家主)と適度の距離を置き、プライバシーを保ちつつコミュニケーションも図るという良いとこ取りなのである。

モデルケースはすでに確保されている。栄地区在住の塚本康彦さん(68)が所有する、江戸末期に建てられた長屋門が、塚本さんの協力で改修着手を待つ。長期的な展望では、長屋門の所有者の賛同を得て、「もん泊」対象長屋門を増やしていく考えだ。

塚本さんは「数年前父親から相続したものの、私の住居は離れで十分。母屋も利活用を模索していますが、研究会のテーマが地域交流と活性化に資することで好感が持てる」と述べる。母屋は寄せ棟造瓦ぶきの平屋住宅。18年の民泊新法施行前から、グリーンツーリズムの受け皿としての農家リノベーションを考えていた。

研究会は9月27日、市内外の「門主」を塚本邸に招き、プロジェクトの説明会と交流会を予定している。11月1日には、より広く参加者を求めシンポジウムも準備されている。コロナ禍の情勢によってはオンラインミーティングに切り替えられる可能性もあるが、長屋門という建築様式や歴史、そこに生まれた地域文化を見聞するまたとない機会だ。

ここまで準備が整っていながら、まだ資金的な裏打ちが弱いことが悩みの種だ。「長屋門はそのまま見学施設として、庭先でキャンプでも良いのでは?」という寸評もある。いずれにしても第2、第3の「もん泊」へつなげていくために、ビジネスモデルの構築が待たれる。

つくば建築研究会ともん泊についてはhttp://tsukuba-arch.org/を参照。(続く、全5回シリーズ、不定期掲載)

誹謗中傷するコメントはNEWSつくば編集局が削除します。
0 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る

陽性確認者数(公表日ベース)の推移

つくば市

土浦市

スポンサー

注目の記事

最近のコメント

最新記事

「老後」がなくなる「人生100年時代」 《ハチドリ暮らし》16

【コラム・山口京子】数年前までは、「人生100年時代」というフレーズを大げさに感じていました。ですが、両親を見ていて、100歳まで生きるかもしれないと思うこの頃です。病気をして心配したり、回復して食欲も出てきてほっとしたり。そうなればそうなったで、これからのことが気にかかります。本人たちは、「おまえにまかせた」状態です。今回は、お金の管理、施設や病院とのやり取り、行政から届く書類の手続きなどのあれこれ。 父は家で介護してほしかったのでしょうが、話し合った末、施設に入ってもらいました。母の方は、生活の自律度を見ると、もう数年は家で暮らせると思います。 両親の収入は公的年金のみです。これまでの蓄えと合わせて、おおまかなキャッシュフローを作りました。現在の状況が続くと仮定したものと、母も施設に入ると仮定したものとでは、大きく収支が違ってきます。状況の変化をふまえて見直しながら、妹たちと話し合っていくつもりです。 親のこれからを考えつつ、自分たちのことも気になります。これからの人生100年時代は、老後が長くなるのではなく、老後という概念がなくなり、定年という言葉も死語になっていくのでしょう。そもそも、一つの会社に生涯勤め続けることが現実的ではない状況が広がっています。子どもたちを見ていると、そうした状況をシビアに察知しているようです。 私たちの世代は定年があり、退職金を出す企業も多くありました。定年後のプランは退職金とそれまでの蓄え、公的年金あるいは私的年金を利用してどうにかなりました。でも、そういうプランは崩れつつあります。 『お金』はなぜ格差と分断を生むのか?

つくば市から3人目のロータリー茨城代表、大野さん【キーパーソン】

茨城県にはロータリークラブ(RC)が55ある。つくば学園RCの大野治夫さんが、これらクラブを代表するガバナーに就任した。任期は7月から来年6月までの1年間。つくば市東光台で不動産管理業を営む大野さんはRC歴18年。業務区と住宅区から成る開発地域・東光台(合併前の豊里町と谷田部町の一部)の土地持ちでもある。ガバナーとしてやりたいこと、つくばの最新土地事情について聞いた。 つくば学園RC会員、目標100人超え RCは地域の名士が参加する奉仕組織だが、週1回の例会を通じ、会員たちが親睦を図り、いろいろな情報を交換する場でもある。つくば学園RCの会員は現在89人。土浦市では最多の土浦南RC(85人)を上回り、つくば・土浦地区では一番の会員数になった。大野さんによると、来年6月までに100人超えを目指す。 つくば学園RCがガバナーを送り出すのは、約20年前の吉岡昭文さん(筑波山神社前の旅館「江戸屋」現会長)、約10年前の野堀喜作さん(東光台の不動産管理会社「ツクバ企画」現会長)に次いで、3人目になる。 10月末、つくば市内で茨城大会開催

シンプル イズ ベスト? 《続・平熱日記》115

【コラム・斉藤裕之】わけあってこの猛暑の中、アトリエの大掃除をすることになった。学生時代からの習作や、いつか出番があるだろうと思って集めたガラクタなどを思い切って処分することにした。市の焼却場に軽トラで何度か往復して、捨てるに忍びないものは知り合いの骨董(こっとう)店にトラックで持っていってもらった。 ちょうどこの7月でこの家に住み始めて20年になる。20年間、家族の足の裏でこすられた1階の杉の床は、夏目と呼ばれる年輪の柔らかいところが削られて冬目の硬いところだけが残って、凸凹になっていて妙に足触りが心地よい。夏涼しく冬暖かいとても住みよい家だと思うのだが、それには少しコツがあって、戸の開け閉めやエアコンの入れ方、ストーブのことなど、大げさに言えば家の中の環境への理解と手間が必要なのである。 2人の娘も家を出てこの家には帰って来るまい。だから将来は人に貸すなり売るなりしなければと思うのだが、少し変わった家なので、この際「斉藤邸取説」でも、を書き残しておこうか。 さて20年分のホコリを払って、広々としたアトリエの床に布団を敷いて寝てみることにした。見上げると、20年前に故郷山口で弟が刻んだ梁(はり)や柱がたくましく見える。昔ながらの複雑な継手も、20年の間にやっとしっかりと組み合わさって落ち着いたように見える。特に2階の柱を支えくれている地松(じまつ)の梁は、自然な曲線が力強くカッコいい。 それから、2階の床になっている踏み天井。こちらは200枚だか300枚だか忘れてしまったが、ホームセンターで買ってきたツーバイ材全てに、「やといざね」といういわば連結するための溝を電動工具で彫ったことを今でも思い出す。酷使した右手は、朝起きると硬直して箸も握れなかったっけ。 「いい景色だなあ。木の色がきれいだなあ。このぐらいの広さの住まいがちょうどいいのかもなあ」。20年目にして改めて見入ってしまった。

言葉の壁を越え患者と医師の信頼関係築く つくばの医療通訳士 松永悠さん【ひと】

つくば市で暮らす外国人は、2022年度の統計で137カ国9457人。医療機関を受診する外国人患者も増えているが、病名や器官の名称などの専門用語が飛び交う診察で、患者が内容を理解するのは難しい。タブレット端末による通訳サービスを導入する病院もあるが、個別の質問や細かいニュアンスの伝達に対応するのは依然として困難だという。市内の病院を中心に、中国語の医療通訳士として働いている松永悠さん(48)は、30代後半から医療通訳の世界に飛び込み、やりがいを見出している。 一人の女性患者との出会い 松永さんは1974年生まれ、中国北京市の出身。松永さんが医療通訳のボランティアを始めた38歳の時、最初に担当したのは、同じ30代の末期がんの女性患者だった。中国の地方出身者で、お見合いで国際結婚して日本の農家に嫁いだが、がんを原因に離婚を切り出され、日本語も分からず頼る人がいない状況だった。 女性の境遇に衝撃を受け、「同じ女性、自分の力で助けられるのなら」と感情移入してしまったそう。女性も辛い闘病の中、「お姉さん、お姉さん」と松永さんを慕った。この女性との出会いから苦しんでいる在日中国人がいることを知り、興味で始めた医療通訳の仕事に使命感を持つようになった。 医療通訳士は国家資格ではない。医療通訳として働くには、民間が主催する養成講座を受講し、選考試験に合格後、ボランティアや医療通訳の派遣会社に登録して依頼を待つ。養成講座では通訳の技術のほか、守秘義務などの倫理規定、医療専門用語などを学ぶ。医師の説明に通訳者が勝手に補足することはしてはならず、治療法について患者が本当に理解しているかの確認をその都度行っていく。患者は文化や宗教、思想、持っている在留資格などの社会的背景が個々で異なり、その理解と医療機関への仲介の役割も医療通訳士に求められる。重い病気を抱える人への告知の場に立ち会うこともあり、精神的な重圧も大きいという。