【コラム・冠木新市】「同級生3人でつくばへ遊びに行きたいので案内してくれますか?」と、今は40歳となった女子大生の教え子から突然電話が来た。つくばがテレビで話題になっているらしい。ちょうど『世界のつくばで子守唄』の準備で忙しい時だったけれど、母親になった彼女たちが、つくばでどんな反応を見せるか興味があり、引き受けた。
3人は「サザコ一ヒ一をつくばで飲みたい」「フ一フ一スパゲッティを食べたい」「おいしいパンを買いたい」と、特に食べ物への関心が強かった。つくばを1日で回るのは無理なため、①つくばセンター地区とその周辺、②研究学園と筑波山、③つくば古道と金色姫伝説めぐり―の3コ一スを作成し、選ばせた。すると、うれしいことに③を選んできた。
6月11日(日) 9時、つくばセンターのサザに集合し、モ一ニングコ一ヒ一を飲んだあと、ホテル日航つくばの「つくたび」開発者2人を加えて計7名、車2台で「金色姫伝説モニターツアー」に出発した。
つくば古道に向かう車中、緑の木々を見て3人が「癒やされるう〜」と同時に声を上げた。シン・旧住民の私には見慣れた景色だが、外から来た彼女たちにとっては新鮮な光景に映ったようだ。緑の木々も観光資源になるのだと改めて感じさせられた。
まんじゅう販売したら売れる
始めに訪れたのは、「つくば古道」入口の北条にある国登録有形文化財・宮清大蔵だ。店主の宮本清さんが、元醤油醸造所の仕組みを説明、蔵で記録映画を上映してくれた。終了後、子宝に恵まれる妊婦の形をした「はら宿りの木」を皆でなでる。3人の子持ちの1人は触らなかったが…。
次に平沢官衙遺跡に移動し、散策した後、すぐ近くにあるつくばワイナリーで担当者からブドウ畑の説明を受け、ワインの試飲。早速、3人はワインを購入した。
それから神郡・蚕影山(こかげさん)神社に向かい、ここで、私が金色姫伝説の由来を語った。200段はある階段を登リ下ったあと、1人が「ここでまんじゅう販売したら売れますよね」と言った。階段を登ったあとには甘い物が欲しくなる、確かにそうだなと思った。
続いて知り合いの屋敷を訪ね、離れにある茶室で額に入った山岡鉄舟の書を見せていただき、神郡の話をうかがった。かなり高齢化が進み、あちこち跡継ぎ問題があるとのこと。皆、神妙な面持ちで聞いていた。
そして中心拠点、神秘的な雰囲気が漂う場所、石蔵Shitenを見学した。ここで、11月3日(金)、4日(土)、5日(日)に、『金色姫伝説旅行記』のイベントをやると説明したら、元アイドルグループの1人は「私も出演したい! 」言ってきた。そのとき、私はある作品を思い出した。
ソフィア・ロ一レン主演『アラベスク』
アラビア風の唐草模様を意味するタイトル、スタンリー・ド一ネン監督、グレゴリー・ペック、ソフィア・ロ一レン主演の『アラベスク』(1966)。この作品は、人間関係と話が複雑でわかりにくいのだが、それでいて面白く見られる仕上がりなのだ。
大学教授ポロックが、謎の男から、古代アラビアの象形文字の解読を強引に依頼される。手のひらに収まる紙片に描かれた象形文字。この紙片をめぐり争奪戦が繰り広げられる。だから観客は、象形文字の謎解きが重要なのだと思い込む。ところが、実はそうではないドンデン返しがラスト近くで判明するのである。
今度のイベントも、「金色姫伝説」と「うつろ舟事件」の謎解きが目的と思わせておいて、ドンデン返しを仕掛けたいと思った。
夕方、彼女たちは目的を達し大満足で帰っていった。どうやら、つくばと「金色姫伝説」はダシで、実はただ小旅行と買い物と食事を楽しみたかっただけなのかもしれない。サイコドン ハ トコヤン サノセ。(脚本家)