木曜日, 11月 5, 2026
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つくばに花咲く 匠の技に触れるイベント開催

14日、つくばセンター広場

科学の街・つくばで活動する、優れた技を持つ職人や芸術家らにスポットを当てるイベント「つくば音楽祭・つくばな匠」が14日、TXつくば駅前のつくばセンター広場(同市吾妻)で開催される。会場に設けられたステージでのライブ演奏とともに、職人たちがブースを構え、ワークショップや作品を通じて匠の技に直接触れることができる機会となる。

市内で家屋のリフォームや家具制作業を営む主催団体「MSO」の山崎誠治さん(68)は「昨年開催した『つくば音楽祭』に続くイベントで、その技術や歌声を肌で感じてもらいたい」とし、「今年はさらに『職人』にスポットを当てたかった。つくばで活躍する高い技術を持つ人たちと市民の出会いに場になれば」と企画への思いを語る。

県内唯一の刀匠

つくばで技術を磨く宮下さん=つくば市蓮沼、筑波鍛刀場

カン!カン!カン!

「筑波鍛刀場」(つくば市蓮沼)で、赤く焼けた鉄の塊に手槌(てづち)を振り下ろすのは、刀剣作家の宮下正吉さん(38)。甲高い金属音が室内に響くたびにオレンジ色の火花が跳ね上がる。宮下さんが行うのは、水で濡らした金敷の上で高温の鉄を叩く「水打ち」という作業。熱した鉄の表面に溜まる酸化鉄や不純物を水蒸気で飛ばし、表面を綺麗にするためのものだ。「火の仕事は手早くやる必要がある。限られた時間でいかに集中するかが大切」だと、額ににじむ汗を拭う。

宮下さんは、日本美術刀剣保存協会主催の「新作名刀展」で、2013年に新人賞と努力賞を受賞するなど高い評価を得てきた。刀鍛冶になるためには刀匠資格を有する刀鍛冶の下で5年以上修業し、文化庁主催の「美術刀剣刀匠技術保存研修会」を修了する必要がある。現在日本国内にいる刀匠は約250人。高齢化などによりその数は減り続けている中で、宮下さんは県内唯一の刀匠だ。

小学2年で奈良県からつくば市に家族と転居すると、茗溪学園中・高を経て群馬大学に進学し、超伝導に関する研究をした。日本刀との出合いは大学在学中。ある展覧会で人間国宝の故・大隈俊平の作品を見て「鉄そのものがもつ美しさ」に魅了された。卒業後は、正倉院に納められた刀子や稲荷山古墳から出土した鉄剣など古刀の復元を手がける刀匠・宮入法廣氏に弟子入りし、刀剣作家としてのキャリアをスタートさせた。「ふるさと」であるつくば市で工房を構えたのは2014年。以来、筑波山を望む田園地帯で美術刀剣を手がけている。

つくばでは、理系のキャリアを生かして物質・材料研究機構(NIMS)の鉄素材に関する研究に協力したり、中・高で所属していた吹奏楽部の仲間らと定期演奏会を開くなど、地域に根ざした活動をしている。

作品作りに欠かせないものとして師から伝えられたのは、「感じることの大切さ」だ。「それは『五感を鍛える』こと。幼少期から眺めてきた筑波山の麓で、自然に囲まれ仕事ができるのは何よりの環境」だと語る。イベントでは、金槌と鏨(たがね)を使い自分の名前をステンレスの板に刻む「銘切り」のワークショップを開催し、ネームプレートを作成する。「作業に触れてもらうことで、僕が抱いた感動を皆さんにも知ってもらいたい」と話す。

「参加型」作品で木の魅力を伝える

取手市の井野団地を利用した、取手市と東京芸大、URによる「井野アーティストヴィレッジ」にアトリエを構えるつちやさん=取手市井野、井野アーティストヴィレッジ

「木そのものが持つ音色だけでなく、加工の仕方で音の響きが変わるんです」

木による音の魅力をこう話すのは、つくば市在住の木工作家・つちやあゆみさん(41)。木材による大小さまざまな歯車やレール、木球を複雑に組み合わせ、それらがぶつかったり、転がったりしながら響かせる音や、木そのものの感触を大切にした作品を作っている。

今回のイベントに出展するのは、つちやさんの代表作である、人の背丈ほどの大型木琴「輪唱の◯(輪)」。階段状の本体の各段に木琴の鍵盤を1枚ずつはめ、上から木球を転がすことで鍵盤が鳴り、一つの曲を奏でる作品だ。2体で1組となる本作品は左右対称にできていて、設置の仕方でS字や円状に木琴の姿を変えられる。その曲線の内側に立つことで、木と木の柔らかい音が身体の周りを駆け巡るのを体感できるのも特徴だ。「日常の中に優しい時間をつくりたい」。そんな思いを込めた作品だと、つちやさんは話す。

同作品は2012年、凸版印刷社による無印良品のプロモーション企画で採用され、世界三大広告賞の一つとされる「One Show(ワンショウ)」のインタラクティブ部門「One Show Interactive(ワンショウ インタラクティブ)」でメリット賞を受賞した。

つちやさんが作品作りを始めたのは、会社勤務を経て2008年に進学した多摩美術大学でのこと。建築系の学部に入り、「ある空間に人が集まり行動することで、そこにどんな場が創造されるのか」を研究した。卒業制作では「実際に触れるものを作りたい」と木材を取り入れ、肌触りや音など木が持つ魅力に引き込まれた。

「輪唱の○(輪)」を訪れる人は、見るだけでなく、自由に鍵盤を入れ替えて、自分で好きに「作曲」や「演奏」ができる。作品がこうした「参加型」であることも、「空間」「場作り」を学んだつちやさんのこだわりだ。「作品があることで、そこに集まる人の間で思っても見ない行動やコミュニケーションが生まれることがある。お客さんが参加することで作品が完成する」。そのために、より自由に触れてもらえるよう丈夫さと安全性も重視する。

「音の作品」を作る背景にあるのが、幼少期に出会ったある作品だった。それは、自動で音を奏でる、モーターで動く鉄琴だった。つちやさんはその音に引き込まれながら、「好きに鍵盤をはめ替えて、自分の好きな曲を作れたらいいのに」と思ったという。

「見ているだけより自分も何かしたい。作品を使っている人が主役であって欲しい。自分が主役なのって楽しいじゃないですか」と微笑むと、「大人も子どもも楽しめる作品です。自由に触れて、遊んでもらえたら」と当日の来場を呼びかける。

つちやさんが展示する「輪唱の◯(輪)」。自由に鍵盤をはめ替えることで、大人も子どもも自由に曲を作ることができる(つちやあゆみさん提供)

その他、「つくばな匠」には、つくば市や国内外で活動する三味線奏者で和楽器職人の深田有馬さんや、市内在住の画家・上渕翔さん、染色家の飯塚優子さんによる「ぷにの家」、牛久市の人形映像監督・飯塚貴士さんら9組がブースを構える。

「つくば音楽祭」では、マリンバやジャズバンドをはじめ、ウクライナ、インドネシア、フィリピンなど国際色豊かな演奏とともに、三味線、人形浄瑠璃など14組がステージに上がる。(柴田大輔)

◆「つくば音楽祭・つくばな匠2023」は、10月14日(土)午前11時~午後5時、つくば市吾妻1-10-1 つくばセンター広場で開催。入場は無料。

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