火曜日, 7月 29, 2025
ホームつくば大学生が作る小さなお風呂 筑波山の古民家宿泊施設に今秋完成

大学生が作る小さなお風呂 筑波山の古民家宿泊施設に今秋完成

筑波山の南麓から関東平野を一望するロケーションに、法政大学デザイン工学部建築学科の学生が乗り込んで、小さいながらも解放感いっぱいのお風呂を作っている。築130年の古民家をリフォームした宿泊施設「旧小林邸ひととき」の前庭だ。約10平方メートルの広さだが、宿泊客やコワーキングスペース利用の滞在者のみならず、地元住民や観光客の利用も想定、ことし秋の完成を予定している。

旧小林家は江戸時代から続く米問屋で、明治時代に筑波山のケーブルカーや筑波鉄道を作ることに尽力した資産家という。空き家となっていた古民家をGoUp(野堀真哉社長)が買い取り、リノベーションして2020年にオープンした。2階建ての母屋で宿泊ができ、ハナレにはコワーキングスペースを置いている。

赤松研究室の学生たち=旧小林邸ひとときの母屋前(法政大学赤松研究室提供)

お風呂建設に携わるのは法政大学デザイン工学部建築学科、赤松研究室(赤松佳珠子教授)の学生で、ゼミの一環として作業を進めている。延べ人員は37人だが、1日に3、4人が代わるがわる筑波山に来て、工事に当たっている。大学の決まりで泊まることが出来ないので少し効率が悪いという。

現場は斜面地のため狭あいで、建物配置には苦労する(同)

お風呂には「ゆりゆら」と名前をつけた。現在、建屋の作成中で、枠組みが出来た段階。脱衣所と浴室の面積は約10平方メートルと小さめだが、浴室には3人が入れる。外気浴の出来る約11平方メートルの中庭を介して2棟に別れた構成とし、小さいながらも開放的なおふろ空間を作り出す。竹、筑波石、瓦屋根、竹あかりなど、つくばの地元ならではの素材を用い、地域産業に根付いた計画をした。

設計にあたり、研究室では2021年から1年かけて、7つのグループに分かれてプロポーザルを行い、設計・プレゼンをした。赤松教授や地元の専門家の意見を参考にし、議論した上で最優秀を決めた。最優秀になったプレゼン案は全員で細かいプランに落とし込み、具体的に進めていくことになった。22年度にはクラウドファウンディングを呼び掛け、50万円の目標に対し約75万円が集まり、建設の一部に充てられる。

建築の仕事は初体験「道具は重いし…」

赤松研究室では10年前から「つくばプロジェクト」と称し、筑波山の中腹、通称「西山道」と呼ばれる登山道周辺の地域おこしに取り組んできた。つくば道から分岐して直線的に中腹の筑波山神社直下まで上る急斜面の一帯だが、ここからの展望を好んだ資産家たちが建てた古民家が所在する。

旧小林邸を少し上ったところには古民家「大越邸」があり、1960年代以降、使われず廃れてしまっていた。子の杉原洋子さん、孫の由樹子さんの代から手を加えることで、新しく生まれ変わらせようという試みが始まった。由樹子さんは赤松研究室1期生で、改修工事を申し出て、学生が定期的に筑波を訪れるようになった。クラブハウスとして、春秋の筑波山神社御座替祭には休憩所として利用されるようになった。

法政大学大学院1年の太田一誠さん

つくば(旧豊里町)生まれの野堀さん(38)は2015年に、同神社参道入り口近くで「Cafe日升庵」の営業を始めた。さらに、日帰りしない観光地とされる筑波山にあって、ホテルに泊まり1日筑波山を楽しんで欲しいという意図から「旧小林邸ひととき」に取り組んだ。開業以降、赤松研究室の大越邸での活動を見ていた野堀さんから声を掛け、今回建設に賛同を得た。

実際に工事にあたっている、大学院1年の太田一誠さん(23)は「本来は設計が専門なのだが、建築の仕事は初体験だったので作業は大変だった。道具は重いし、扱い方も難しい、改めて職人の凄さを痛感した。現場の仕事を体験したことによって、将来必ず役に立つと思う。筑波山麓秋祭りでワークショップを開催するのでそれまでは完成したい」と述べる。(榎田智司)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest


最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

0 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




Advertisement
spot_img

最近のコメント

最新記事

夏を彩る大型タペストリー 今年もつくば駅前商業施設に展示

つくば駅前の夏を彩る、恒例の大型タペストリー作品展が商業施設トナリエつくばスクエア トナリエMOG1階のプラザ・パフォーマンス・ギャラリーで始まった。展示されるのは、日本国際学園大学の学生がデザインした作品。同大学とつくば都市交通センターが連携して実施している「TUTCタペストリーアートコンペティション」で優秀作品に選ばれたに2作品が、それぞれ約3週間ずつ展示される。 同展は2015年から始まり今年で11年目を迎える。今年は8月につくばエクスプレス(TX)が開業20周年を迎えることから、例年のテーマである「夏を彩る大型タペストリー」に「つくばらしさ」をテーマに加えて作品を募集した。応募のあった7作品から、生井妃萌乃さん(20)の「水鏡」と、鈴木翔斗さん(21)の「ガマと筑波山」が選ばれた。 同大情報デザイン学科3年の生井さんは、湖に映る夏の青空と、筑波山を描いた。筑波山の二つの峰を右上に天地逆さまに描き、大空を舞う鳥と漂う白い雲の姿を、水面の揺らぎとともに鮮やかに表現した。生井さんは「夏の涼しさを幻想的にイメージした作品。選ばれてうれしいし、これほど大きな作品を作ったことはなかったので自信になった」と受賞の喜びを語ると、「大学では、カフェなどお店のチラシやポスターを制作している。将来はデザインを通して自分が作りたいものを届けていきたい」と今後の目標を話した。 同じく情報デザイン学科3年の鈴木翔斗さんが描いたのは、筑波山ロープウェイつつじケ丘駅前にあるガマ大明神だ。2021年に閉館した、三井谷観光が運営していた食堂や物産展、子ども向け遊具を併設した観光施設「ガマランド」の敷地内に今もある高さ約5メートルの大型のガマを描き、下から見上げる大胆な構図が評価された。 鈴木さんは「ガマの迫力が伝わるデザインにしたかった。今回の作品のために改めて筑波山に行ってみると、目の前に広がる自然など筑波山の新たな魅力に気づく機会になった。筑波山にはガマの油売りなど他にはない魅力的なスポットがある。受賞には驚いたが、とてもうれしい。将来はデザインを生かした仕事に就きたい」と語った。 選考委員長を務めたつくば都市交通センター理事長の関俊介さんは「今年はTX開業20周年にちなんでつくばをテーマに設定した。センター地区の交通インフラを支える立場で、つくばを盛り上げ、にぎわいの演出に貢献できればと考えている。応募作品には、夏のイメージにつくばをどう表現するか工夫した作品が多かった。受賞した2作品を通じて、道行く人にもつくばの夏を感じていただきたい」と語った。 日本国際学園大学教授で審査員の高嶋啓さんは「応募作品には、つくばに広がる田んぼや、TXの車両、祭りつくばのねぷたなどがあった。大きくメッセージが入るなど、遊び心を取り入れたユーモアあふれる作品もあった。受賞した作品を通じて、つくばの新たな一面を知ってもらう機会になるとともに、清涼感を感じてもらえたら」と語った。(柴田大輔) ◆「TUTCタペストリーアートコンペティション」優秀賞受賞作品による大型タペストリー展は、つくば市吾妻1-6-1 トナリエつくばスクエア トナリエMOG1階プラザ・パフォーマンス・ギャラリーで9月8日(月)まで開催。生井妃萌乃さんによる「水鏡」は7月28日(月)から8月19日(火)まで、鈴木翔斗さんによる「ガマと筑波山」は8月19日(火)から9月8日(月)まで。入場無料。

子どもを育む居場所、遊び場に期待《令和楽学ラボ》36

【コラム・川上美智子】イオンモールつくば(つくば市稲岡)に全天候型遊び場、「ミライパーク」が整備されたという。気候変動による猛暑が続く夏場は、熱中症アラートが連日のように発せられ、子どもたちが外で遊ぶことはほぼ不可能になった。ちょうど、夏休みに入ったところであるが、子どもたちの声は聞こえず、公園にも道路にも人の姿は見えない。このような全天候型の遊び場が身近にあることは、幼小の子どもの育ちに不可欠なのかもしれない。 日立市では6年前、雨天でも親子で遊べる屋内型子どもの遊び場「Hiタッチらんど・ハレニコ」を駅前(現ヒタチエ・4階)にオープンした。北関東最大と言われる㈱ボーネルンド監修による人気の遊具が整備されており、県内のみならず東京方面からの来場者もあり、本年2月には入場者50万人セレモニーが開催された。筆者が学長を務める特定非営利活動法人(NPO)「子ども大学常陸」が、設立時よりこれに関わり、日立市の指定管理者として運営を行っている。 あそび・まなび場は、安全を確保するため、12歳までの子どもと保護者が一緒に入場するスタイルになっており(13歳以上の未成年も家族と一緒であれば入場可能)、定員250人、90分入れ替え制となっている。ベビーゾーン、ロールプレイゾーン、アクティブゾーン、芝ゾーンには、たくさんのボーネルンドの遊具が整備されている。 また、通路を挟んで無料の子育てサポートエリアと管理エリアがあり、親子遊び、各種講座、一時預かりサービス、相談事業など、保護者が利用できるスペースが設けられていて、子どもたちのうれしそうな声が絶えない。 知的好奇心を刺激し学ぶ楽しさを知る そもそも子ども大学は、子どもたちに大学レベルの教育を施すために2002年、ドイツの大学で発足し、日本でも2008年にスタートした。子ども大学常陸も、学校とは異なる第2の学び場、体験の場、冒険の場としての役割を果たしたいと、2014年に日立に誕生した。子どもの知的好奇心を刺激し学ぶ楽しさを知ってもらうために、茨城キリスト教大学や茨城大学の教授陣を中心に、ゼミと称して、それぞれの専門性を活かした授業を分かりやすく、実技などの活動を交え、アクティブラーニング形式で進めている。 このほか、設立以来、誰よりも力を注いできた山名芙美理事長の手腕により、日立市や地域の団体、企業と連携して数えきれないほどの事業を実施し、日立市の子育ち・子育て拠点の役割を果たすまでに成長した。 昨年度の事業を見て行くと、ふるさとの歴史を知る「ひたち自然史パンテオン」、「あそびコンシェルジュの設置」、「サッカー大会」、「親子で楽しいリズム」、「パンポン教室」、「日立科学遊び隊の体験イベント」、「おはなし会」、「ライフケア日立連携事業」、「茨城キリスト教大学ゼミ生による無料託児」、「ママの自分時間プロジェクト」、「キラキラワークショップ」、「お誕生日会」、「ハレニコマルシェ」、「ママサロン」、「ハイハイレース」などの自主事業、職場体験、シビックセンター・サクリエ、森の学校、丸善イベント、日立産業祭、パンダフェス、保育園情報交換会、県北ママコミュ等の協力事業などがある。 子どもの安全管理、28人の従業員の労務管理、研修など保育園運営に負けず大変な面があるが、子どものゼロ歳からの学び支援と子育て中の保護者支援として重要な施設であることだけは確かである。つくば市に発足した新施設が、子どもたちの多様な活動の拠点になるよう期待している。(茨城キリスト教大学名誉教授、関彰商事アドバイザー)

土浦の8中学校77人 強豪関彰商事野球部から実技指導受ける

社会人軟式野球の強豪で国体、天皇杯茨城大会2連覇を果たした関彰商事野球部による野球教室と合同練習会が27日、J:COMスタジアム土浦で催され、土浦市の地域クラブ「ブルーオ―シャン」に所属する8つの中学校の中学生77人が二つのグループに分かれ指導を受けた。 熱中症対策として午前8時に開会式を行い、キャッチボール、バッティング、ポジション別練習などを実施した。弾道計測器など最新機器を使ったデータ計測も行われ、一人一人の打球速度、打球角度、打球飛距離を計測した。投手は投球スピードの測定を行った。 フリー打撃では、最初に関彰商事の選手がバッティングを行いスタンドに打球を叩き込むと、子供たちから大きな歓声と拍手が響いた。 球場内にある室内スペースでは、けがの予防、動きを良くする股関節のストレッチ指導も行われた。 関彰商事の藤井楽監督は「野球を楽しんでやってほしい。みんなの成長を期待している。高校、大学、プロで活躍を祈っている。頑張って欲しい」と今後の成長に期待を寄せた。飯田涼太主将(都和中学校出身)は「いろんな子供たちと触れ合えて楽しかった。技術の指導は顧問の先生に任せて軽くアドバイスして基本的なことを教えた。中学生から野球を始めた子供もいるのでまだまだ成長段階、伸びしろはある」などと話した。 参加した新治学園義務教育学校8年(中2)の岩瀬健心さんは「楽しかった。ためになることを多く学んだので9月から始まる新人戦に生かしていきたい」と話し、土浦ニ中1年の東洸祐さんは「日頃練習出来ないこと、学習出来ないことを選手が分かりやすく教えて下さって、一人一人に合ったトレーニングを教えてくれたので、これから野球をやっていく中で、学んだことを練習や試合に生かしたい。次は自分たちが学んだことを後輩たちに教えてつなげられるようにしたい。新人戦では市内で優勝して県南、県大会に出場してみんなで協力して優勝したい」と抱負を語った。(高橋浩一)

与党・既存政党が敗けた参院選で思うこと《文京町便り》42

【コラム・原田博夫】7月20日が投開票だった第27回参議院議員通常選挙は、自民・公明の与党が予防的に低めに設定した勝敗ライン50にも届かず、与党の敗北が明白になった。とりわけ鮮烈なのは、参政党の大躍進である。 2020年3月に政治団体として届け出、同年4月に結党されたばかりの参政党は、第26回参議院議員通常選挙(2022年7月)で比例区1議席(神谷宗幣)を獲得でき、比例区5人(いずれも落選)の得票で約3.3%(176万票)を獲得して政党要件2%を上回り、政党交付金の支給対象となった。 第50回衆議院議員総選挙(2024年10月)で小選挙区に85人・比例代表に10人の候補者を擁立し、小選挙区では全員落選するも、南関東・近畿(比例復活)・九州の3ブロックで1議席ずつ獲得した。さらに認知度を高めた上での第27回参議院議員通常選挙である。選挙区7名・比例7名の計14名の当選で、非改選1名を加えると、15名の参議院議員に至った。立派な国政政党である。 今回の選挙結果からは、与党(自民、公明)の低迷・退潮、新興政党(参政党、国民民主、維新、れいわ、保守、みらいなど)の躍進に加えて、立憲・共産・社民など、いわゆる伝統的左派(リベラル系)政党の不振も明らかだ。 この背景には、⑴現下の物価高騰との対比での手取りの伸び悩み・生活の窮迫感、⑵ワンイシューの新興政党に、全方位型の与党の支持基盤が浸食されたこと、⑶インターネットやSNSなどへの依存度の高い若い世代(10代~40代)には新興政党への親近感が高かったこと、⑷21世紀に入ってから重視されるようになった(外国人との融和、LGBTや選択的夫婦別姓の導入・推進など)ポリティカル・コレクトネスへの人びとの心理的な躊躇(ちゅうちょ)などがあった―とする分析がある。 小選挙区と大選挙区の混在は問題 私はこの際、選挙制度に関する2点を付言しておきたい。第1は、衆議院と参議院で採用されている選挙制度にねじれのあることである。 衆議院議員は定数465人で、うち289人が小選挙区選出議員、176人が比例代表選出議員である。小選挙区の区割りは国勢調査人口に基づき最長10年ごとに見直される。比例代表は(都道府県域よりも広域の)全国11ブロックから選出される。候補者は小選挙区と比例代表の重複立候補が可能で、小選挙区で落選しても比例代表で復活当選が可能になる。 対して、参議院の定数は248人、うち100人が比例代表選出議員、148人が選挙区選出議員で、3年毎に半数の改選がある。比例代表選出は全国を一つの選挙区にしているが、選挙区選出は都道府県ごとの45選挙区(合区が2つある)で選出される。人口の多い都道府県では複数の議員が選ばれる大選挙区制、人口の少ない県では一人の議員を選ぶ小選挙区制が採用されている。 本来、民意に忠実であるべき衆議院では小選挙区が、良識の府であるべき参議院では大選挙区制が採用されるべきであるにもかかわらず、現職議員に過度に配慮して両制度が混在し、しかも組み合わせは逆の方向にねじれている。この大いなる矛盾を、そのままに放置している21世紀の日本人の政治的無神経さを疑う。 第2に、細かな点だが、投票の際の立憲民主党と国民民主党の政党略称は、分党以来いずれも「民主党」である。事後的に案分してもらうそうだが、これは国民に対して不謹慎ではないか。次回の国政選挙からは改めてもらいたい。(専修大学名誉教授)