宇宙航空研究開発機構(JAXA、山川宏理事長)筑波宇宙センター(つくば市千現)の開設50周年記念式典が17日、つくば国際会議場(同市竹園)で開かれた。OB職員や感謝状を贈られた企業団体関係者に交じって、地元の中高生ら約80人が参加、同センターで訓練を積んだ元宇宙飛行士、毛利衛さんの講演に耳を傾けるなどした。
同センターは1972年6月1日に、当時の宇宙開発事業団(NASDA)が新治郡桜村に開設した。JAXA移行後、同センターはロケット開発から人工衛星の環境試験、宇宙ステーション運用などの研究セクションを有し、現在もっとも多くの人が働き、多くの部署が活動する中心的な事業所となった。50周年を迎え、昨年特別公開など記念行事(22年11月12日付)を行ってきたが、記念式典はコロナ禍による行動制限の緩和を待って1年ずらしての開催となった。
同センターは宇宙飛行士養成の基礎訓練が行われることで知られ、そのパイオニアが毛利衛さん。1985年に選ばれた最初の日本人宇宙飛行士3人の1人となり、同年からNASDAに所属し、日米で訓練を受けた。
最初のスペースシャトル搭乗は88年に予定されていたが、86年のチャレンジャー号爆発事故で搭乗ミッションは92年にまでずれ込んだ。このミッションで行ったのが世界初の宇宙授業。無重力空間に浮かぶ球形の水滴に、塩漬けのサクラの花を添えて桜湯をつくる実験を行った。日米で評判になり、後の国際宇宙ステーションに滞在する日本人宇宙飛行士にも受け継がれる宇宙授業になった。
こうしたエピソードを紹介し、筑波宇宙センター時代の同僚らに謝辞を述べた後、講演は未来へのバトンタッチに向かう。先ごろ宇宙飛行士の候補に選ばれた諏訪理さん、米田あゆさんら次世代は月へ向かおうとしており、そのバックアップにはJAXAをはじめとする多くの科学者や技術者の存在が不可欠とした。
この日会場には、市内の中高生や日本宇宙少年団の児童らが参加。講演の後、熱心な質問が相次ぐなか、毛利さんは「君たちが目指すのは火星だ」とさらなる未来への挑戦を促した。