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「リニア中央新幹線」論の不思議 《文京町便り》16

【コラム・原田博夫】リニア中央新幹線の工事をめぐる静岡県とJR東海の協議が、膠着(こうちゃく)しています。そもそもリニア中央新幹線とは、品川駅から名古屋駅までの286キロを所要時間40分で結ぶ21世紀の「夢の超特急」です。2027年開通に向けて、国は2014年10月、品川~名古屋間の工事の実施計画をJR東海に認可しています

ここに至るまでには、1962年、東京―大阪間(約500キロ)を1時間で結ぶ目標に対して、レールとの摩擦がない超電導による浮上方式の提案がありました(つまり、リニア新幹線の技術的提案です)。

1974年、運輸大臣は国鉄に、甲府・名古屋付近の山岳トンネル部の地形・地質調査を指示し、1990年11月には、山梨リニア実験線の建設に着手しています(要するに、新幹線ルートの工事に関わる課題の抽出・解決策の実効性チェックです)。

併せて、1979年の9都府県による「中央新幹線建設促進期成同盟会」、1988年の「リニア中央エクスプレス建設促進期成同盟会」、2009年の「リニア新幹線建設促進期成同盟会」(地元経済界や当該自治体からの要請=我田引鉄)などを踏まえた、JR東海への工事認可です。

つまり、長期の調査を経て着工したにもかかわらず、肝心の工事が一部区間(現在は田代ダム<静岡市>の取水抑制問題)でストップしています。

現時点での静岡県の主張は、「南アルプストンネル工事に伴う湧水を、JR東海は全量、大井川に戻すべし」のようです。この発言は、川勝平太知事(初当選は2009年7月で現在は4期目)が、3期当選後の2017年10月の記者会見冒頭で、ありました。それからは、複数の関係自治体、東京電力も巻き込んで、議論は二転三転しています。

元東大全共闘・山本義隆氏の指摘

この加熱した議論とは異なった視点からの書籍を、私に教えてくれた友人がいました。それは、山本義隆『リニア中央新幹線をめぐって~原発事故とコロナ・パンデミックから見直す~』(みすず書房、2021年4月)です。東大全共闘代表・山本義隆は、われわれ全共闘世代にとっては(ノンポリにしても)インパクトがあり、彼のその後の生々流転も気になっていました。

早速手にすると、目から鱗(うろこ)でした。リニア線は、そもそも、二重に電力を過剰消費する、というのです。まず浮体式、加えて推進力、そのいずれにも膨大な電力が必要なのです。この電源としては浜岡原発2基分が相当する、とのこと。ところが浜岡原発自体は、1号機・2号機は廃止措置中(2009年度以降)で、残りの3号機(2010年11月以降)・4号機(2012年1月以降)・5号機(2012年3月以降)はいずれも点検停止中です。

この浜岡原発相当のベースロード電源を2個分も必要とするリニア中央新幹線とは、人口減少社会の21世紀日本で、一体どのような交通システムなのか。大いに首をひねります。

ところが冒頭の、リニア中央新幹線の工事に関するここ数年来の議論には、こうした論点が全く登場しません。これは意図的なのかどうか不思議です。きわめて近視眼的・局所的に問題設定している気配すらあります。これでは、リニア中央新幹線は国家百年の計などとは、言明できないでしょう。(専修大学名誉教授)

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