金曜日, 12月 26, 2025
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愛宕山の「天狗伝説」 《写真だいすき》19

【コラム・オダギ秀】天狗(てんぐ)への憧れがあったので、撮影に励んだことがあった。岩間の町(現笠間市)近くに愛宕山(あたごやま)という小さな山があり、天狗が棲(す)んでいたと言い伝えられている。

自分たちが住む世界とは異なる世界への憧れは、多かれ少なかれ、誰しもが持っている感情かも知れない。まして、それが摩訶不思議な異界ともなれば、一層の興味が津々となる。「仙境異聞(せんきょういぶん)」という古文書があった。それは、まさにその知的好奇心と、野次馬的心情と、本能的畏敬とを表現した、江戸時代爛熟(らんじゅく)期の文書である。

十五歳の寅吉という少年が、文政三年秋、突然江戸の町の知識階級の前に現れて、天狗とともに過ごしたと語った。彼が、その日々を語り始めると、神秘性を重視していた国学者平田篤胤(ひらた・あつたね)は、その少年寅吉に会い、彼が天狗とともに見聞きしたという世界や天狗から学んだことを聞き書きし、「仙境異聞」としてまとめた。

だが、この際、「仙境異聞」が、何を伝えようとしたかは重要ではない。ボクは、平田篤胤が、少年寅吉の語ることに心動かされ、異界の存在を信じたことに憧れた。ボクも、異界を見たいと思ったのだ。

幽界にいるような恐怖が増した

天狗の世界は、笠間の東、岩間の愛宕山にあった。愛宕山には、十三の天狗が棲み、修行していたと伝えられている。愛宕山頂には、「仙境異聞」に書かれているように、今も十三天狗の小さな石の祠(ほこら)があり、天狗の行場と言われる岩場がある。

ボクは、天狗の残滓(ざんし)を求めてカメラを担ぎ、深夜、愛宕山に登った。夜の闇の方が、天狗が棲む山に相応(ふさわ)しい撮影ができると、単純に思ったからだ。愛宕山は、標高300メートルほどの小高い山に過ぎないが、それでも古木生い茂る森林の中に立つと、暗黒に包まれる寂寥(せきりょう)感は、予想以上のものがあった。微(かす)かな葉擦(はず)れにも、木の実が落ちる音にも、幽界にいるような恐怖が増した。

だが、やがて空が明らみ鳥たちが目覚めると、自分が闇夜を恐れたことさえも愛(いと)おしくなり、この天狗や動植物の棲む世界こそが現実の世界であり、四季の移ろいを忘れ、おののきを知らず、微睡(まどろ)みよりもテクノロジーをモノの価値の尺度とする自分の住んでいる世界は、なんと実感のない、非現実的な異界であろうかと思えてきた。

時の流れがうねるような季節感

以来、ボクは、幾度となく愛宕山に登った。冷たい雨の日もあった。途方に暮れるような霧の朝もあった。だが、様々な表情を見せる仙境は、やがて、ボクにとっては、妙に懐かしい、心和む世界となった。現世を乾ききった世界などと単純な括(くく)りをするつもりはない。だが、愛宕の山中に立つと、潮の満ち干にも似た空気感や、時の流れがうねるような季節感に、これこそが実体のある世界であると感じないわけにはいかなかった。

なぜ、闇を恐れないのですか
なぜ、雨に笑わないのですか
なぜ、霧に惑わないのですか
なぜ、明ける空を見上げないのですか
なぜ、見上げる自分が悲しくはないのですか
なぜ、眼に見えぬものを信じられるのですか
なぜ、触れられないものを信じられるのですか
なぜ、鳥が啼(な)くのに歌わないのですか
なぜ、寒さを肌で感じないのですか
なぜ、緑の臭いに咽(む)せないのですか
なぜ、言葉で語るのですか
なぜ、いまそこに、命が輝いていることを知らないのですか
(写真家、日本写真家協会会員、土浦写真家協会会長)

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つくば駅前に大型ディスプレイ登場 イルミネーションと共ににぎわいを

オフィスビル「T.S BUIL」 つくば駅前のオフィスビル「T.S BUIL」(同市吾妻)のペデストリアンデッキに面した2階部分の壁面に21日、縦2.5メートル×横4.4メートル、200インチの大型ディスプレイがお目見えし、クリスマス関連の映像が放映されている。 22日夜からは同ビル恒例のクリスマスイルミネーションも加わり、道行く人たちの目を楽しませている。駅前をもっとにぎやかにしたいと、同ビルを所有する不動産業の都市開発(塚田純夫社長)が新たに大型ディスプレイを設置した。 ディスプレイの設置工事は14日から始まり、1週間の工事期間を経て21日から放映が始まった。毎日正午から夜9時まで映像が流れる。クリスマスの現在は、クリスマスにちなんだクイズやイルミネーション点灯のお知らせなどが流れ、26日以降は年越しに関する映像に変わる。 今後は市の情報や警察関連情報、防災情報なども放映していく予定だ。「屋外広告物」という扱いのため、大きな音を出し大勢の人が集まるコンサートやパブリックビューイングを行うためには今後、市と相談しながらになるという。 イルミネーションは来年1月12日まで点灯する。3年前に始まり、昨年同様、同ビルのペデストリアンデッキに面する2階エントランスのガラス張り壁面全体がLEDで装飾され、ショーケースの中にはサンタクロースや雪だるま、トナカイ、クリスマスツリーなどが飾り付けられている。 ディスプレイに見入っていた市内に住む60代女性は「大型のディスプレイにびっくりした。世の中に季節感がなくなってきた時代なので、こんな感じでクリスマスなど季節を知らせてくれるのはありがたい。ディスプレイの前のペデストリアンデッキは広くなっているのでコンサートでもやってくれたら」と話す。近くの職場に通う50代の男性会社員は「ずっと殺風景だったので、とても良いと思う。どんどんにぎやかにすることをやってほしい」と話していた。 都市開発の霞学部長は「つくば駅前にあるつくばセンター広場のにぎわいづくりに協力出来たらということでやっている。防災も重要なので、行政の防災の取り組みに協力し、防災に関することも放映していきたい」と語る。また「今年、1階にスタジオを移転したラヂオつくばの中継も可能なので、ディスプレイで何が放映できるか考えていきたい」と述べる。 現在放映している映像の制作は20代の同社若手社員が担当した。管理部の藤沢花恋さんは「グラフィックデザインのソフトを使って動画を作ったが、初めてだったので大変だった。デザインなどは不慣れだが担当させてもらい、いい経験になった。今後の展開も考えたい」と話した。設置業者とのやりとりや申請業務など担当した営業部の高橋開人さんは「人が集まる場所が出来ればとてもうれしい」と述べた。(榎田智司)