日曜日, 12月 14, 2025
ホームつくばTX県内延伸先は土浦方面 第三者委が知事に提言

TX県内延伸先は土浦方面 第三者委が知事に提言

接続は土浦駅が優位

つくばエクスプレス(TX)県内延伸先の絞り込みについて検討してきた県TX県内延伸第三者委員会(委員長・岡本直久筑波大社会工学域教授)は31日、第4回委員会を開き、効果と費用のバランスなどから延伸先を土浦方面とする提言をまとめ、同日、岡本委員長が大井川和彦知事に提言書を手渡した。

併せてTXつくば駅からJR常磐線に接続する駅について、土浦駅か神立駅かを検討し、需要予測や採算性などから、土浦駅に接続する方が優位性が認められるとした。

コスト最小も事業費1400億円

第三者委は昨年12月から計4回の会合を開き、新たな人の流れの創出、県全体の発展可能性、実現可能性など5つの判断基準を元に、土浦、茨城空港、水戸、筑波山の4つの方面から1方面への絞り込みを検討してきた。

まず筑波山方面は、つくばと水戸の交流拡大やJR常磐線の事故や災害時などの代理機能に寄与するとは言えず効果は限定的だとして退けた。水戸方面は影響が極めて大きいが、常磐線経由であってもつくばと水戸の交流拡大に一定の効果が得られるとし、土浦方面で接続されれば茨城空港方面や水戸方面への延伸に期待される効果が一定程度得られるとした。茨城空港方面は各自治体からの要望も多く将来性は考慮すべきだが、期待される将来の姿と現況とのギャップが大きく実現可能性があるとは言い切れないとした。

その上で土浦方面について、常磐線への接続が直線距離で8.4キロと最短でコストも最小となり、特急も停車するなどから、土浦方面以外での接続は現実的ではないとした。

第三者委はさらに接続駅についても土浦駅か神立駅かを検討し、土浦駅は神立駅に比べて駅前の市街地が発達し難工事が想定され、概算事業費は土浦駅よりも神立駅の方が低い一方、採算性や費用対効果は土浦駅の方が高いとし、土浦駅に接続する方が実現可能性は高いとした。

県は同日、土浦方面の概算事業費や需要予測を明らかにし、事業費は約1400億円、つくば駅-土浦駅間の1日当たりの乗車人数は約8600人で、建設コストを除き年間3億円の赤字が出ると予測されるとした。鉄道事業の採算性を評価する指標の一つで、1以上が望ましいとされる費用便益比は0.6にとどまり、1を上回るためには11万人規模の沿線開発が必要だとする見通しが示された。

1400億円の算出根拠としたルートについては、つくば駅から土浦駅方面に向けて、台地部は地下、その後地上に出て桜川をまたぎ南側から土浦駅に入るルートで算出したという。

31日開かれた第4回TX県内延伸第三者委員会であいさつする委員長の岡本筑波大教授(中央奥)

東京延伸などとパッケージで働き掛けを

第三者委員会の提言はさらに、実現に向けた課題についても踏み込んだ。土浦方面に延伸しても費用便益比は1.0を下回り、事業採算性も赤字が見込まれるとして、従来通りの沿線開発にとどまらず、さらなる需要増加と費用削減の方策を検討する必要があるとした。国の交通政策審議会の答申にも位置付けられているTX東京延伸や都心部・臨海地下鉄構想などの動向に留意し、一体的なパッケージとして国などに働き掛けていく必要があるとした。

提言を受け取った大井川和彦知事は「延伸実現による県内経済の発展、社会的な利便性の向上などさまざまなメリットはつくばの発展をみても実証されている。提言をしっかり受け止めて、課題についても、提言を踏まえた形で一歩一歩克服していきたい。方面を最終決定した上で国に対してもアプローチしていきたい」と話した。

第三者委の岡本委員長は「費用対効果の数字(費用便益比)が基準に達しておらず、実現に向けてはさらなる公共交通志向の生活スタイルが浸透していく必要がある」とし、将来、茨城空港方面や水戸方面についても改めて議論すべきだとした。

提言を受けて安藤真理子土浦市長は「TXの土浦延伸は長年にわたる私たちの悲願。正式決定はまだ先だが、私たちの熱い思いが実を結んだもので大変喜ばしい。土浦延伸は今やっとスタートラインに立ったところ。今後も茨城県を始め、各関係機関との十分な協力・連携を図ってまいりたい」などとするコメントを発表した。

6月目途に決定

県は今後、提言についてパブリックコメントを実施し、県民の意見を聞いた上で、6月を目途に方面を決定する。県はさらに2023年度、当初予算に2600万円を計上し、延伸ルートや事業の枠組みなどを検討する。土浦市は、沿線を中心に土地開発が活発化すると見込まれるなどから、330万円を計上し、効果を最大限に発揮させるため様々な波及効果を検討、調査する。(鈴木宏子)

【TX県内延伸をめぐるこれまでの動き】
▽2017年8月 知事選で橋本昌前知事と大井川和彦現知事が共に公約に県内延伸を掲げる
▽2017年12月 初当選した大井川知事が「新しい茨城づくり政策ビジョン」に「TXの県内延伸に向け検討を進める」と明記
▽2018年5月 TXをつくば駅から茨城空港(小美玉市)まで延伸しようと、つくば、土浦、かすみがうら、石岡、小美玉、鉾田、行方7市の市議会議長がTX茨城空港延伸議会期成同盟会を設立
▽2018年11月 県総合計画「新しい茨城への挑戦」に2050年頃の将来像として、TX延伸ルートの一つに〝茨城空港ルートを描く
▽2022年2月 県が22年度当初予算にTX県内延伸の調査費を初めて盛り込み、22年度内に①筑波山方面②水戸方面③茨城空港方面④土浦駅方面-の4方面案の中から1本に絞り込む方針を掲げる
▽2022年12月 県がTX県内延伸第三者委員会を設置

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

23 コメント

23 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

環境にやさしい素材で 子供たちがアート体験 つくば スタジオ’S

筑波大学で芸術などを専攻する学生に教わりながら、子供たちがさまざまなアート技法を体験するイベント「冬のキッズアート体験2025」が13日、つくば市二の宮のギャラリー「スタジオ’S」で開かれた。普段ごみとして捨てられてしまったり、リサイクル資源となる紙パックやトイレットぺーバーの芯、環境にやさしい再生紙を使った工作体験などが催された。 関彰商事(本社:筑西市・つくば市、関正樹社長)が筑波大学芸術系の協力で、9年前の2016年から毎年冬と夏に開催している。昨年からつくば市と県つくば美術館がこの企画を応援。同市とSDGsを推進する包括連携携協定が締結されていることから、環境にやさしい素材が使われるなどした。 紙パックを使った工作では、子供たちが、紙パックに布シートを貼り付けて、さらにクリスマスツリーのように飾り付けるバッグ作りに挑戦した。トイレットペーパーの芯では昆虫やコースターなどを作った。再生紙は、関彰商事の廃棄書類から作られた再生紙でクリスマスツリーに飾るオーナメントを作った。 ほかに、筆で文字を書いたりスタンプを使ったりする「オリジナル年賀状づくり」、小さな透明な容器に砂や石などを敷きミニガーデンをつくる「テラリウムづくり」など計七つのブースが設けられた。 午前、午後合わせて昨年より多い82人の小学生が参加。子供たちは二つの会場に設けられた各ブースを自由に行き来しながら、自分だけの作品を作っていた。 ちぎった和紙を台紙に貼り付けてオリジナルのクリスマスカードを作るブースでは、子供たちがちぎった和紙を接着剤で貼り付け、少しずつ形にしていく。工作時間は30分だが、10分ほどで仕上げる子もいた。 市内から参加した小学2年の女子児童は「参加したのは2回目。クリスマスツリーを作った。ていねいに教えてくれたので、思ったよりやさしかった。来年もまた来てみたい」と話していた。 テラリウムの指導にあたった同大生物資源学類2年の渡邊奏和さんは「自分は芸術専攻ではないが参加した。子供たちにどう伝わるかわからないこともあるが、子供が好きなので教えるのは楽しい」と感想を話した。(榎田智司)

サイエンス高校と筑波高校の魅力《竹林亭日乗》35

【コラム・片岡英明】文科省は11月、今年度補正予算に公立高校の魅力向上のために約3000億円の基金を設置すると発表した。この予算が成立すれば、学費無償化を含め、公立学校の魅力アップ策も導入されることが期待できる。こうした動きも念頭に置き、今回は県立のつくばサイエンス高校と筑波高校の学校づくりについて考えたい。 サイエンス高:探求重視の進学校 2022年まで4学級だったつくば工科高は、23年から科学技術科6学級で構成されるサイエンス高校となった。しかし、初年度の入学者は88人(つくば市内からは53人)、24年は77人(同53人)であった。そこで県は、「普通科を!」の声を受けとめ、学級編成を変更し、25年から6学級中3学級を普通科にした。すると、市内からの入学者は111人に激増し、全体の入学者も178人(つくば工科時代の22年は134人)に増えた。 24年→25年の中学別入学者数を見ると、並木中:1人→10人、谷田部中:5人→25人、谷田部東中:8人→21人、みどりの中:8人→12人など、地元の入学者が増え、県立高改革が軌道に乗り始めた。 その理由としては、ノーベル賞受賞の小林誠さんが名誉校長であること、4名の外国語指導助手(ALT)などスタッフや設備が充実していることが挙げられるが、私が注目しているのは教育課程である。どの教科を、いつ、どれだけ学ぶかは学校教育の要だからだ。 進学校には、2年生から文・理を分ける受験重視の土浦二高・牛久栄進高型と、1・2年は基本共通科目とし教養を重視する土浦一高・水戸一高型がある。サイエンス高は最初から文・理融合をモットーに教養重視型で、この大きな「構え」に設立当初のスタッフの深い理念が感じられる。 リニューアル開学3年目に学校見学させてもらったところ、学校も一新され、生徒が楽しく学んでいた。職員室前には、山形大工学部をはじめ10数人の大学合格者が掲示されていた。話を聞きながら、今後、京都市の堀川高校や千葉県の市川学園が参考になるのではないかと思った。 筑波高:地域と連携した多面校 小規模校の魅力アップは茨城県の重要な課題である。その点、地域との連携に踏み出した筑波高の学校づくりは注目に値する。改革2年目の進学コースの様子に関心を持ってお話を聞いたところ、少人数での学習だけでなく、進学コースのまとまりや意識も高まってきたという。今後が楽しみである。 先日、筑波高も参加している地元北条の「祭り」を見学した折、生徒の「学校が楽しい」との言葉を聞いた。小田城址で開かれたジャズフェスでのスタッフ活動や、老人ホーム訪問後、「次はあの老人をどうすれば笑顔にできるか」と工夫する取組みなど、フィールドを持つ学びの可能性を感じた。話を聞きながら、校内の川の清掃やヤギを飼うなど、幅広い学びのある武蔵高校・中学が参考になるかなと思った。 茨城の学校づくりのモデルに 筑波高は、保護者も卒業生という生徒が多く、地元とのつながりが深い。また、歴史あるサイエンス高は、地元中学の期待が大きい。地域の応援を受け、この2高が茨城の学校づくりのモデルになるよう期待している。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

小美玉市にある「ぺんてる」の主力工場《日本一の湖のほとりにある街の話》35

【コラム・若田部哲】土浦市教育委員会に配属されて十年余り。児童の絵画コンクールなどにも関わる中で、近年、絵に親しむ子供が減っているという現実を痛感しています。背景には、娯楽の多様化や、カリキュラム・習い事の忙しさといった子供側の事情に加え、正解のない芸術を教える難しさという、大人側の都合もあるのかもしれません。加えて、当世を席巻する「タイパ・コスパ」志向とこの分野の相性の悪さも、無関係ではないでしょう。 しかし、自らのさまざまな感情を、絵の具をはじめとする多様な媒体に託して表現するという営みは、ラスコーやアルタミラの壁画を持ち出すまでもなく、極めて普遍的で、人間の根源的な喜びに満ちています。そうした「表現」の衰退を、寂しく思いつつ眺めていました。 今回は、その「表現の力」を支える現場のひとつ、小美玉市のぺんてる小美玉工場を、同社研究開発本部長の名須川さんに案内していただきました。クレヨンでおなじみの「ぺんてる」。多様な文房具を通して日本の教育を支えてきた同社の国内最大の生産拠点が、1964年に稼働を開始したこの工場です。 現在まで続くベストセラー、サインペンの生産拠点として、東京ドーム1.5個分の敷地に設立された工場では、創業当初、100人で1日1万本を製造していたところ、現在ではわずか2人で1日6万本を生産しているとのこと。サインペンに加え、ボールペンやクレヨンなど主力製品の多くが、ここで作られています。 文房具でも画材でもなく「表現具」 最初に案内されたのは、ロングセラーであるサインペンの製造ライン。1980年代製の武骨な組立機はいまも現役で稼働し、流れるような動きで次々と製品を生み出していました。隣の最新式ボールペン「エナージェル」のラインには、自社開発の組立機が整然と並び、部品が驚くほどの速さで形になっていきます。こうした機械の多くを自社内で作っている点も、同社の大きな強みだといいます。 続いて向かったのは、クレヨンの製造現場。顔料と油が混じった独特の香りが満ち、美術を学んでいた学生の頃の記憶がふとよみがえりました。3台の大きな円盤状の装置が止まることなく回転し、そのたびに1本1本、クレヨンが生まれていきます。 ドロドロに溶けたクレヨンの原料が型に下から注ぎ込まれ、一周する間に冷えて固まり落ちてくる様に、思わず目はくぎ付けに。色を切り替える際には機械を徹底的に洗浄する必要があるため、同じ色を1〜2日かけて作り続けるのだといいます。さらに、色を製造する順番も厳密に決められており、約12日で12色が一巡する仕組みになっているとのこと。こうして、ベストセラーの「ぺんてるくれよん12色セット」の出来上がりです。 最新機器と歴史ある重厚な機械が並び立つ空間で、人の感情を伝えるための多彩な道具が今日も生まれ続けています。「これからも『表現の力』を信じて、文房具でも画材でもなく、『表現具』を作り続けていきます」。穏やかにそう語る名須川さんの表情に、これからも表現の灯が消えることはないという、確かな希望を感じた取材でした。(土浦市職員) <注> 本コラムは周長日本一の湖、霞ヶ浦と筑波山周辺の様々な魅力を伝えるものです。 ⇒これまで紹介した場所はこちら

サンタにふんし ごみ拾い TX万博記念公園駅周辺で障害者ら

クリスマスを前に、サンタクロースにふんした知的障害者らが12日、つくばエクスプレス(TX)万博記念公園駅周辺でごみ拾いをした。 同駅近くに立地する障害者の就労支援施設「さくら学園」(NPO明豊会運営、飯島喜代志代表)に通所する障害者ら約25人で、障害者を知ってもらい地域とのつながりをつくろうと、7年前の2018年12月から毎月1回、同駅周辺でごみ拾いを続けている。 この日はクリスマスシーズンにちなんで、赤い上着とズボンを着用、赤い帽子をかぶり、白いひげを付けて駅周辺を歩きながら清掃。TX高架下の生け垣、駅前のバス停、空き地、マンションの生け垣などに落ちていたビニール袋、ティシュペーパー、たばこの空き箱、紙コップ、空き缶などを拾い集めた。 守谷市から通所する高田建太さん(20)は「順調にきれいになった」と話し、つくば市内から通所する山下靖紘さん(34)は「楽しい」などと話していた。12日は強風注意報が出され、つくば市は最大風速7メートルと強風だったため、通常の半分のコースの約500メートルを、20分ほどかけて歩いた。 さくら学園広報の鈴木芽未さんは「障害者が外に出ることは大事。どんな人が通っているか地域に知ってもらい、地域との接点になれば」と話していた。 同施設にはつくば市内のほか周辺市町村から約30人の知的障害者や精神障害者、身体障害者らが通っている。ゴムのバリ取りなど会社から受注を受けた作業のほか、不要のパソコンを回収し希少金属をリサイクルする作業(2024年1月24日付)、機織り機を使った手織り、オリジナルトートバッグの製作(22年3月26日付)など、独自にさまざまな作業に取り組んでいる。(鈴木宏子)