国土地理院 人工衛星データを解析
国土地理院(つくば市北郷)は28日、日本全国の大地の動きを可視化する「地殻変動の地図」を公開した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が運用する陸域観測技術衛星2号「だいち2号」の観測データ8年分を用いて作成された変動分布図で、地形のわずかな隆起や沈下を彩色によって分かりやすくとらえられるようにした。
公開された全国地殻変動分布図は「地理院地図/GSI Maps」により一般にも簡単にアクセスし閲覧できる。
地殻変動分布は「だいち2号」の合成開口レーダー、SAR(Synthetic Aperture Radar)技術によって得られた。人工衛星から地表に向けて電波を照射し、戻ってきた電波を受信し、往復にかかる時間により地表までの距離を面的に観測するセンサーの一種。人工衛星では、地球を周回しながら同一地点に異なる方向から電波を2回、照射し観測することで、大きな開口を持ったアンテナと同様な解像度を得る。
微小な地形の変化を正確に読み取るには、統計的処理のために大量のデータが求められた。2014年8月から8年以上の観測データを得て、時系列解析を行った。国土地理院宇宙測地課、佐藤雄大課長によれば、衛星からの撮影は約1500回に及び、画像枚数にして6400枚のデータを得たという。
地形の隆起は衛星に近づく動き、地盤沈下は衛星から遠ざかる動きとしてとらえられる。この8年間の平均をとり、年1センチから3センチ以上の範囲の変動を可視化した。地図に落とすと隆起や膨張は赤色に、沈下や収縮は青色に、それぞれ表示される。
電子基準点に比べ、分解能が大幅に向上した。地殻変動を面的にとらえられるため、火山噴火の予兆である山体膨張の観測などに役立つ。発電用のソーラーパネルを設置するために山の斜面を削った地形まで読み取れるという。
「だいち2号」は2014年の打ち上げから現在まで、全国の地殻変動や隆起などの地表面の動きを継続的に繰り返し観測してきた。後継機としてH3ロケットによる「だいち4号」の打ち上げが予定されており、観測頻度が「2号」の約5倍となることから、より短期間で精度の高い結果が得られると期待されている。(相澤冬樹)
◆地理院地図上に干渉SAR時系列解析により得られた変位速度が表示されるのは、こちらの画面。