ロシアによるウクライナ侵攻が始まって1年、現地を取材したフォトジャーナリストの武馬怜子さん(42)の取材報告会が4月1日、つくば市竹園のつくばカピオで開かれる。武馬さんは今年1月から2月の約1カ月間、ウクライナに入り、被災する街や日本で出会った難民の家族、戦時下で市民を勇気づけるアーティストなどを取材した。
武馬さんは1月29日に隣国ポーランドから陸路でウクライナに入国。西から東へ国内を横断し、首都キーウをはじめ、ザポリージャ、ドニプロ、バフムト、オデッサなど9カ所を訪ねた。現地で過ごした約1カ月について「戦時下では、常にみんなおびえ泣いているという先入観があった」と振り返る。
毎日2、3回、多いと5、6回空襲警報が鳴り響く日々だった。真夜中に響くミサイルの着弾音で目を覚ましたこともあった。被弾し崩れる家屋も目にした。それでも街の人たちは日々仕事に出かけるなど日常を営み、警報が鳴っても冷静さを失わず、必要な行動をしていた。「みんな慣れている。周りの落ち着きを見て、自分も落ち着けた」と話す。一方で「人はどんな環境にも適応する。でも、適応していいのだろうか」と複雑な気持ちになったという。
難民は身近な存在 関心を
武馬さんは愛知県出身、都内を拠点にフォトジャーナリストとして活動してきた。これまで、東日本大震災後に埼玉県に集団避難した福島県の人々や、同県相双地区の伝統行事「野馬追」を長期取材し、第2次世界大戦でのBC戦犯やインパール作戦のその後も追ってきた。
今回の報告会は、武馬さんと交流のある龍ケ崎市在住のライター、野口和恵さん(43)が企画した。その理由を野口さんは「雑誌の廃刊が続き、ジャーナリストが活動を続けにくくなっている中でも、武馬さんは、ずっとあきらめず、自分の取材を続けてきた。その姿勢を尊敬している。そんな武馬さんの活動を、多くの人にも知ってもらいたかった」と説明する。また「テレビや新聞でもウクライナの報道が減ってしまった今、現地の人々の様子を知ることができる貴重な機会。ぜひたくさんの方に来てほしい」と参加を呼び掛ける。
法務省によると、3月8日時点で日本国内のウクライナ難民は、全国46都道府県に2211人、そのうち茨城県には55人が暮らしている。日本に来たウクライナ難民とも交流する武馬さんは「ウクライナ難民は身近な存在。現地のことへの関心につなげたい」と思いを語る。(柴田大輔)
◆フォトジャーナリスト武馬怜子 最新ウクライナ現地報告会 4月1日(土)午後2時から、つくば市竹園、つくばカピオ3階中会議場で開催。入場無料、定員28人、事前予約制。予約、問い合わせはメールmingaglabal2017@gmail.comへ。