【鈴木宏子】「放射性物質については、一つの分科会のキーワードに明示する方向で議論しております」。10月に、つくば国際会議場で開かれる第17回世界湖沼会議に関して、主催者の県が2017年3月9日付けで環境保護団体、NPOアサザ基金(牛久市、飯島博代表)に出した回答だ。しかしその後発表された9つの分科会のキーワードに「放射性物質」の文字は無かった。
もう一人の主催者、国際湖沼環境委員会も16年12月28日付けで同NPOに同様の回答をしていた。「放射性物質については一つの分科会のキーワードに明示する方向で議論が行われております。東日本地域での湖沼では、原発事故による放射性物質についての調査研究が多く行われていることから、これらについての発表は基本計画等で示される枠組みの中で行うことができるものと考えております」。
分科会のキーワードどころか「発表されている同会議の開催案内書のどこにも放射性物質の文字が一切見られない」などとして、同NPOは2月13日と15日、県と国際湖沼環境委員会にそれぞれ要望と質問書を提出した。
飯島代表は「世界中の人が福島原発事故に衝撃を受け、経過を注視してきた。原発事故は霞ケ浦を始め東日本の湖沼に影響を及ぼした」とし、「今回の湖沼会議は原発事故の影響を受けた地域で初めての開催となる。原子力災害や放射性物質の文言が一切無いとしたら、かえって不自然で、都合が悪いから意図的に議論を避けたと解釈されてしまう恐れがある」と指摘する。
その上で「事故直後に水環境を保全するために行政はどのような対策をとったのか、霞ケ浦や流入河川のモニタリング手法は適切だったのか、今後霞ケ浦をどう管理していくのかなど、湖沼会議は教訓を共有する場として開催されるべきで、きちんと議論することが行政や研究者の姿勢を世界に示すことになる」と強調する。
これに対し、主催者の県環境対策課・世界湖沼会議実行委員会事務局は「専門委員会の中で先生方に議論していただいた結果、分科会の文言(キーワード)そのものには明示しなかった。しかし放射性物質を取り上げないということではなく、第5分科会(流域活動と物質循環)の化学物質というキーワードの中で討議したい」としている。
湖内はほぼ横ばい
霞ケ浦の放射性物質は現在どういう状態なのか。環境省と県が昨年11、12月に実施した最新の霞ケ浦と流入河川の放射性物質モニタリング調査結果によると、霞ケ浦湖内8地点の放射性セシウムは底泥1㎏当たり50~350ベクレル(最大地点は西浦・玉造沖)、平均は304ベクレルとほぼ横ばい傾向、流入河川56河川は不検出~649ベクレル(最大は土浦市の備前川)、平均は157ベクレルと減少傾向で推移している。
アサザ基金は、事故翌年の2012年3月から15年3月まで年2回、独自に霞ケ浦・北浦に流入する56河川で放射性セシウムを調査した。特に備前川、新川、小野川、清明川では数百m間隔できめ細かく調査し、流入河川にたまった放射性セシウムが霞ケ浦に流れ込んでいった実態を明らかにした。10月の世界湖沼会議では、これまでの調査をもとに「原子力災害と湖沼環境」について発表したい意向だ。
