図書館の蔵書をパソコンやスマートフォンなどで無料で読める電子図書館サービルが、土浦市立図書館とつくば市立中央図書館で始まり、利用者数が増加している。土浦市は新図書館が駅前に開館した2017年11月27日から、つくば市は昨年10月4日からスタートした。
土浦市電子図書館で利用できる蔵書数は2月現在、約2500冊、つくば市は約1400冊。土浦市電子図書館の一般登録者は2月現在約550人。ほかに児童生徒に1人1台の端末を配備するGIGA(ギガ)スクール構想を受けて小中学校と連携し、市内の小中学生約9600人も登録している。
つくば市電子図書館の一般登録者数は不明だとするが、2月24日まで約5カ月間で累計約1万7600人の閲覧(ログイン)数があった。
小学校が授業で活用
土浦市では22年7月から、主に小学生向けの電子書籍を絞り込んだ「こどもでんしとしょかん」をスタート。同市担当者によると「授業や授業開始前の読書時間での活用により、電子図書館の利用がかなり増加している」という。
つくば市では電子図書館のトップページに小学生に向け「おすすめの本」の項目を作り、読書活動の推進を図る。同市担当者は「電子図書館で利用できる地域資料の提供や、中高生に向けた蔵書の分かりやすい提示について検討中」だという。つくば市では高齢者からの問い合わせも多く、関心の高さがうかがえるとしている。
予算措置が課題
土浦市もつくば市も今後蔵書数を増やしていく予定だが、土浦市担当者は「出版される本の全てが電子化されている訳ではなく、限られた母数の中からコンテンツを選定している。今後、電子化される本の種類が拡大するかどうかが課題の一つ」だとし、「期間限定のコンテンツが存在するため、所蔵数を確保するための予算措置が必要になる」と課題を述べた。
土浦市は市内在住で利用カードを持つ人、つくば市は同市に在住、在学、在勤で利用カードを持つ人が利用可能で、いずれもパスワードの設定が必要。パソコンやタブレット、スマートフォンを利用し、来館せずに電子書籍の検索、貸出、返却、閲覧が可能で、返却期限が過ぎた電子書籍は自動で返却される。コンピュータ上のデータのダウンロード、インストールは不要で、ブラウザ環境で閲覧ができる。視覚障害者向けに音声読み上げに対応した電子書籍もある。土浦市もつくば市も貸し出し点数は1回2点まで。貸し出し期限は土浦市が15日間、つくば市が14日間となっている。
土浦市立図書館ではさらに、収録楽曲数240万曲を超える「ナクソス・ミュージック・ライブラリークラシック」というインターネット音楽配信サービスも導入している。利用カードがありログインIDとパスワードを設定した人はデータを受信しながら同時に聞くことができるストリーミング方式という方法で利用することができる。
コロナ禍 4.8倍に急増
電子出版制作・流通協議会の集計によると、20年1月に電子図書館サービスを導入した自治体数は全国で91自治体だったが、22年10月には436自治体に急増した。電子書籍の普及とコロナ禍で公共図書館の電子化が急速に進んだといえる。さらに学校でもGIGAスクール構想を受けて電子書籍の活用が始まっている。
土浦市もつくば市も電子図書館サービスとして「クラウド型電子図書館サービス&コンテンツLibrariE(ライブラリエ)&TRC-DL」を導入。LibrariEとの主たる契約は「ワンコピー・ワンユーザー型」、「2年間または52回の貸出し」の条件で、貸し出しの多い作品は再契約が提示されている。
同サービスは、職員による予約や貸出、督促業務などの必要がなく、返却期限が過ぎた電子書籍は自動で返却されるため省力化につながるという。電子書籍は利用によって本が痛んだり紛失したりすることがない。また、パソコンのマニュアル本など、数年で情報が陳腐化してしまう本は有期限契約で入れ替えることができ、電子図書館に向いているという。(田中めぐみ)