昨年12月に亡くなった建築家、磯崎新さんの業績を振り返るシンポジウムと、同氏の美術作品を展示する企画が3月19日、つくばセンタービル内のノバホール(つくば市吾妻)で開催される。つくば市民が中心となる「追悼 磯崎新つくば実行委員会」(実行委員長・鵜沢隆筑波大名誉教授)が主催する。
ポストモダン建築の代表作とされるつくばセンタービルを設計した磯崎さんは、水戸芸術館や群馬県立近代美術館、ロサンゼルス現代美術館など多数の作品を残し、英国王立建築家協会ゴールドメダルや、建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受賞するなど、世界的に高く評価されてきた。今回の企画は建築だけでなく、美術作品や著作物など磯崎さんの多彩な活動を網羅的に振り返る。
激しい言葉が若者の刺激に
きみの母を犯し、父を刺せ−。
実行委員会委員長で建築家の鵜沢隆さん(72)が20代のころに衝撃を受けた磯崎さんの言葉だ。「日常的な住宅のイメージを払拭する新しい世界を切り拓け」。そんなメッセージを激しい言葉で伝えようとする磯崎さんの存在は、国内外の若い建築家に強い刺激を与え続けたという。また数々のコンペや展覧会開催に関わり、若手の育成にも力を注いできた。
「磯崎さんは建築だけでなく、制作した美術作品の多さも際立つ。また、刺激的で挑発的な文章を絶えず発信してきた。『ポストモダニズム』という言葉を概念化した磯崎さんの思考についても明らかにしたい」と鵜沢さんは意気込みを語る。
40周年 つくばセンタービルを後世に
つくばセンタービルをめぐって、つくば市は2020年、同ビルの中央広場にエスカレーターを設置するなどのリニューアル計画を発表した。これに対して「(同ビルの)文化財としての価値を失うことになる」と、市民団体「つくばセンター研究会」が21年、計画に反対する要望書を提出するなどして市に見直しを求め、市はエスカレーターの設置を取り止めるなど計画を大幅に見直した。
実行委員会にも名を連ねる同研究会は、21年6月と22年11月に、つくばセンタービルを再評価し今後の活性化のためのシンポジウムを開いてきた。同研究会の共同代表で、実行委員会副委員長の写真家、齋藤さだむさん(74)は「つくばセンタービルは今年、築40周年を迎える」として、今回の企画への思いをこう語る。
「同ビルが象徴する筑波研究学園都市は、日本が国家事業として街づくりをした初めてのケース。後に続く事例は今もない。研究素材、教育素材としても、いかに残していくか。時代の先端でもある磯崎さんの業績を振り返ることで、つくばセンタービルが持つ意味を考えることが、今後の活性化につながれば」
シンポジウム「追悼 磯崎新ー思考の建築」はシンポジウム、磯崎新作品展、つくばセンタービル建築ツアーの3部構成。3月19日午後1時半からノバホール大ホールでシンポジウムが開かれる。登壇するのは、磯崎さんのアトリエ勤務を経て日本建築学会教育賞を受賞する建築家の渡辺真理法政大学名誉教授、10年にベネチア・ビエンナーレ国際建築展で金獅子賞を受賞した今注目の若手建築家、石上純也さんら4人。
作品展は同日午前11時から午後4時、ノバホールロビーで、シルクスクリーンの版画や写真、鉛のレリーフ、二脚のモンローチェアなど、磯崎さんのオリジナル作品十数点を展示する。建築ツアーは午前11時から正午、六角美瑠神奈川大学教授の解説で開催する。(柴田大輔)
◆シンポジウム、作品展、建築ツアーいずれも参加費無料。建築ツアーのみ事前予約が必要で、定員40人。問い合わせはメールtsukuba.center.studygroup@gmail.com(つくばセンター研究会)、建築ツアー申し込みはつくばセンター研究会ホームページへ。