日曜日, 4月 2, 2023
ホーム 教育 コロナ禍 シングルマザー5人が立ち上げ【広がる子ども食堂】4

コロナ禍 シングルマザー5人が立ち上げ【広がる子ども食堂】4

コロナ禍の2020年、シングルマザー5人が立ち上げた子ども食堂がある。阿見町を中心に食料を無料で配布するフードパントリーや子ども食堂、無料塾などの活動をしているami seed(アミ・シード)だ。代表の清水直美さん(44)ら30~50代の女性10人が中心となって運営する。

2月初め、阿見町のコミュニティセンター、本郷ふれあいセンター(同町本郷)で開かれた無料塾と子ども食堂「おにぎり食堂」に小学生から高校生まで約15人が集まった。毎週木曜日に開催している。子どもたちは机の上にそれぞれの教科書やノートを広げ、集中して鉛筆を走らせている。ボランティアの山田美和さんら2人が講師として子どもたちに勉強を教える中、調理室では清水さんら6人が調理に追われていた。

この日の献立は翌日が節分の日であることに合わせて、恵方巻とさつまいもの肉巻き、さつまいもとりんごのサラダ、あさりとしじみ2種類の味噌汁、牛乳。訪れた子どもたちの分と子どもたちが持ち帰る家族の分、合わせて50食を作り、容器に盛り付けていく。献立は調理師の資格を持つ林久美子さんが考えた。食材はいずれも寄付されたものだ。

しばらくすると勉強が終わった小学生たちが食事の準備を待ちきれず調理室にやってきた。「お腹減った?自分の分を自分で巻いてみる?」。林さんが恵方巻の作り方を教えると、子どもたちは真剣な様子で巻きすに手を添え巻いていく。完成すると笑顔がこぼれた。続いてやってきた中学生たちも自分で作った太巻き1本を、恵方を向いてほおばると「とてもうまいです」と顔をほころばせ、親指を立てて見せた。

2月12日に開かれたアミ・シード主催の講演会で活動への思いを語る清水さん=同

近所の人が助けてくれた

ami seedは20年4月、清水さんらが立ち上げた。阿見町には茨城大学農学部と県立医療大学の二つの大学がある。コロナ禍、一人暮らしの大学生や一人親世帯に食料を無料配布する活動から始まった。

清水さんは22歳になる双子の娘を持つ。娘が中学生の時に離婚し、仕事を掛け持ちした。忙しい生活の中、母が余命1年と宣告を受け、清水さんは自宅で最期をみとる選択をした。仕事と介護、子育てに追われる生活を見かね、近所の人たちが料理を作って持ってきて助けてくれた。

この体験を経て「それぞれいろいろな事情があったとしても、とにかくごはんを食べていればなんとかなる」と、食の支援を思い立った。

「おにぎり食堂」は、企業や個人からの寄付や、JAなどから支援を受けて集まった食材で運営している。最近は物価の高騰からか、集まる食材が減ってきたという。乳児用のミルクやおむつ、ベビーチェアやチャイルドシートなどが足りていないことも課題だ。

活動を知った土浦市や取手市などからも相談や問い合わせがあるという。子育ての仕方が分からないと育児ノイローゼになりながらも一人で子育てしている女性、離婚調停中で経済的に困窮している女性、仕事がなく昼夜逆転の生活をしている人。清水さんが寄り添ってきた人たちだ。「骨と皮になっているママもいる。職場でも友だちがつくれず、上司からパワハラを受けていたりもする人もいる」と清水さん。

一人暮らしの大学生は、経済面だけでなく心の問題を抱えていることが多いという。学業の相談を受けたり、自殺の連絡が来て止めたりしたこともあった。痩せていく様子を見て診察を勧め、医療につなげたこともある。

大学生との間でこんなエピソードもあった。ある時、90代の夫婦が寄付金数万円を携えて訪れた。県外出身の一人暮らしの男子大学生はその寄付金による支援で食料をもらうことができ、無事卒業した。社会人になった男性が夫婦に感謝の手紙を書いて送ったところ、子どものいない夫婦は「本当の孫からもらったようでこの手紙が宝物」と清水さんに語った。夫婦と男性を会わせたいと考えた清水さんは、夫婦宅の草取りの手伝いに男性を呼び、3人は対面することができた。

孤立しやすい一人親家庭や大学生、一人暮らし高齢者を、清水さんはいずれの場合も見守りながら、必要であれば本人の同意を得て行政の支援につなげる。しかし、傷ついた経験から行政の介入を拒む人もいるとし、「とにかく(気持ちを)吐き出させて帰らせることが大切」と話す。

今後の目標については「シングルマザーの暮らす家をつくりたい。第三の居場所、公共施設を使わずに活動できる場所をつくりたい」と話した。(田中めぐみ)

続く

guest
名誉棄損、業務妨害、差別助長等の恐れがあると判断したコメントは削除します。
NEWSつくばは、つくば、土浦市の読者を対象に新たに、認定コメンテーター制度を設けます。登録受け付け中です。

0 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー

注目の記事

最近のコメント

最新記事

開幕戦、男女共に勝利 つくばFC

つくば市を本拠地とするサッカークラブ、つくばFCの男女各トップチームが1日、ホームグラウンドのセキショウチャレンジスタジアム(つくば市山木)で今季開幕戦を迎えた。プレナスなでしこリーグ2部開幕戦の女子は1-0、関東リーグの男子は3-1でともに勝利を挙げ、幸先の良いスタートを切ることができた。 新加入の2人が決勝点 女子 2023プレナスなでしこリーグ2部第1節(4月1日、セキショウチャレンジスタジアム)つくばFCレディース 1―0 ノルディーア北海道前半0-0後半1-0 つくばFCレディースは、昨季2戦2分と拮抗した勝負を繰り広げたノルディーア北海道(札幌市)に対し、前後半合わせて19本のシュートの雨を降らせ、被シュートはわずか2本に抑えるという圧倒的な試合を見せた。 「選手が走り続け、走りきるサッカーができた。開幕戦でみんな緊張しているので、トレーニングでやってきたことをやりきろうと声をかけた。一人一人のキャラクターを生かし、毎回違うヒロインが出てくるようなサッカーがしたい」と、白馬聡監督のコメント。

3年半ぶり完全開催 筑波山神社で御座替祭

筑波山神社(つくば市筑波、上野貞茂宮司)で1日、山頂の本殿と中腹の拝殿で神座が入れ替わるとされる春の御座替祭(おざがわりさい)が催され、祭りのメーンとなる、みこしをかついで中腹の集落を巡る神幸祭(じんこうさい)が3年半ぶりに行われた。新型コロナの影響で神幸祭は2020年の春から6回連続中止となっていた。 男体山と女体山山頂の本殿にある神衣(かんみそ)を新しい衣に取り替える「神衣祭」(かんみそさい)、中腹の拝殿で舞いを捧げる「奉幣祭(ほうべいさい)」と併せて、三つの祭りが2019年秋の御座替祭以来、3年半ぶりに完全開催された。 中腹の筑波山神社周辺ではソメイヨシノと山桜がほぼ同時に満開になり、花びらが春風に舞う様子が見られた。コロナ5類移行が間近に迫る中、マスクを外して見物する人の姿もあった。 神幸祭では黄色や赤、白など色とりどりの装束をまとった約150人の行列が、中腹の筑波山六丁目から筑波山神社拝殿まで、急な坂道や階段をみやびやかに登った。今回は稚児行列も最後に加わった。 御座替祭は毎年4月1日と11月1日の春と秋に催されており、観光資源としての役割も担っている。御座替祭の日に限り、3代将軍徳川家光が江戸時代初期に建造し県指定文化財になっている、神社境内入り口の神橋(しんきょう)を渡ることができる。この日は午前9時30分から午後4時まで特別開門が行われ、たくさんの観光客が橋を渡ったり、記念写真などを撮っていた。 神橋を渡るみこし

「強くしなやかに成長する4年間に」 筑波学院大で入学式

筑波学院大学(つくば市吾妻)で1日、2023年度の入学式が行われ、スーツに身を包んだ新入生たちが新生活のスタートを切った。教職員や理事、保護者らも参列し門出を祝った。中国やウクライナなど5カ国からの留学生7人を含む新入生51人が入学し、新入生代表の田井真央(たいまひろ)さんが「大学生活をよりよいものにし、不安定な社会で貢献できる人材になりたい」と宣誓した。 望月義人学長は式辞で「漫然と過ごす4年と、竹のように節目を付けながら強くしなやかに成長する4年との差は極めて大きい。教職員は皆さんを心から支え応援する」と述べた。また2学期制のカリキュラムを今年度から春、夏、秋の3学期制に、1コマ90分だった授業を105分にしてアクティブラーニング(能動的学習)の時間を増やし、論理的思考力、応用力を養っていくと話した。 式辞を述べる望月義人学長=同 橋本綱夫理事長は「4年間どういったことをやりたいか、探究、模索して見つけていってほしい」と激励し、同大のルーツとなる東京家政学院大学の創設者で家政学の先駆者だった大江スミの建学の精神を同大が現在も受け継いでいることを話した。 今年、同大は東京家政学院大学の創立から数えて100周年を迎える。また4月からは同校の運営法人名が日本国際学園大学に変更された。来年度より大学の名称も日本国際学園大学に変わる。

少子化対策は女性の過剰負担になる 《ひょうたんの眼》56

【コラム・高橋恵一】少子高齢化を「国難」と言った元首相がいたが、昨年の出生数が80万人を割り込んだ結果を受けて、少子化が大きな国政の課題とされている。 少子化が進めば、若い世代が減少し、高齢者を支える社会保障制度が維持できない。さらに、いずれ人口が減り、経済規模が縮小し国力も低下するとされ、少子化問題を説明するために、若者が数人で高齢者を持ち上げて支えているイラストを示し、将来、少子化で支える若者が減る一方で高齢者が増え、若者が支えきれないとして、世代間の確執をあおり、「高齢者の集団自決の薦め」まで登場している。 その論点を整理する必要がある。人口の年齢区分を、国連(WHO世界保健機構)は、年少人口(0~14歳)、生産年齢人口(15~64歳)、老年人口(65歳以上)に3区分している。前述イラストの若者が生産年齢人口、高齢者が老年人口である。また、国連は、年少人口と老年人口を足して、生産年齢に対して従属人口という区分も設定している。つまり、働き手人口全体で、子どもも老齢人口も支えているのだということである。 国連は、高齢化を7.0%からとし、日本の場合1970年に達し、その後も高齢化が急速に進行した。一方、日本の年少人口は、1970ごろまで40%弱あり、従属人口は、50%を下回っていた。このように生産年齢人口比率が高い時代を「人口のボーナス期」というが、大戦終結後の欧米や日本にほぼ同時期に現れ、世界的な高度成長期となった。イラストで言えば、支える若者数が、子どもと老齢者を上回っている時代である。 スウェーデンなどのヨーロッパ諸国は、この余力を、高齢社会に備えて堅実に生かし、1人当たりのGDPは、世界のトップ水準を維持している。日本は、この「余力」を生かすべき時代を、「ジャパンアズナンバーワン」などと浮かれ、社会保障費や医療、教育費などを軽視して、ヨーロッパ社会に後れを取った。 男性優位社会を根底から直せ

記事データベースで過去の記事を見る