市内4カ所目、ツアーも準備
筑波山南麓のつくば市臼井(六所)で、ワイン用のブドウ畑(ヴィンヤーズ)を手掛けてきたビーズニーズヴィンヤーズ(つくば市神郡、今村ことよ代表)が今夏、ワイナリー(醸造所)をオープンさせる。市内4カ所目になる。
「ワイナリー設立はさらに良い品質のワインを作るための新たなスタート地点。訪れるお客様に、隣接するブドウ畑を見ながらワインを味わってもらうための場所として、ワイナリーツアーなどの準備をしっかりとやりたい」と今村さんは今年の抱負を語る。
約600平方メートルの敷地に、建築面積約150平方メートルのワイナリーを建設、販売所も併設する。これまで醸造は牛久市の「麦と葡萄牛久醸造場」で行っていたが、完成後は、栽培から醸造、販売までを一手に行う。
今村さんは守谷市出身。筑波大学で生物学を学び、2001年に博士号を取得した。第一三共(東京)の研究・開発部門を経て、13年に退職し、ワイン農家を目指した。長野県東御(とうみ)市のワイナリーに研修生として入り、栽培や醸造法を学んで、2年後の15年、つくば市臼井に農地を借りてブドウ栽培に着手した。
研究者時代からワインスクールに通った学究肌。筑波山から沢が流れる山麓の土壌は、花崗岩(かこうがん)のミネラルを豊富に含み、ワインに好適のブドウが出来そうだと目を付けた。ただし県南は気候がブドウにとって暑過ぎる。栽培可能な品種を選び、筑波山の風土に合ったワインを醸したい、と考えている。
つくば市が「つくばワイン・フルーツ酒特区」に認定された17年、初出荷を行ったが、自前で醸造が出来ず、「つくばワイン」を名乗ることができなかった。21年に法人となり、22年事業再構築補助金の採択を受け、ワイナリー建設に踏み切った。
ワイナリーが出来ることにより、醸造から瓶詰め、販売までの作業の流れがスムーズになり、さらに購入者との交流機会が増えると考えている。
現在ブドウ畑は沼田と臼井にあり、白ブドウのシャルドネ、セミヨン、ヴィオニエ、ヴェルデーリョと、黒ブドウのシラー、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、プティ・ヴェルド、タナなど多品種を栽培している。ほとんどは一人で管理しているが、収穫時などには仲間やSNSで興味を持ってくれた人たちが駆け付ける。
臼井地区に住んで7年になり、地域に溶け込み、草刈りや排水機場の清掃、芝焼きなど、地域のボランティア活動にも積極的に参加している。地域住民は「耕作放棄地がブドウ畑になって景色が良くなった、六所地区はNPO団体が多く活動する。地域は高齢化が進み過疎化が進む一方だが、一筋の光が見えてきたような気がする」と話す。
市内のワイナリーは、つくばワイナリー(北条、19年9月17日付)、つくばヴィンヤード(栗原、20年10月16日、平沢・漆所地区にヴィンヤーズをもつル・ボワ・ダジュール(上横場)の3カ所がある。(榎田智司)
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