水曜日, 5月 20, 2026
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TX茨城県内延伸 実現へのシナリオ 《吾妻カガミ》147

【コラム・坂本栄】つくば市が終点始発になっているTXの延伸に関心が集まっています。茨城県が今年度中に延伸先を絞り込む作業を進めていることもあり、延伸先4候補(茨城空港、水戸市、土浦市、筑波山)の関係地域では、つくば市を除き、誘致活動が活発になっています。今年最後の本欄はTX延伸問題のあれこれです。

県内延伸と東京駅延伸はセットで

なぜ県は年度内に延伸先を決めたいのでしょうか? 県政通によると、来年度か再来年度、国土交通省の関係審議会で、TXの東京駅延伸が決まるそうです。県は、東京駅延伸とセットで県内延伸を決めてもらう作戦を立て、それには今年度中に延伸先を絞っておく必要があると考えたわけです。

なぜセット決定を狙っているのでしょうか? 現TX(秋葉原つくば)計画が策定された際、当時の竹内知事(故人)は、つくばより先に延ばす場合、その費用は茨城県が負担すると、東京都、埼玉県、千葉県に約束しています。単独負担を避けるため、東京駅延伸と県内延伸をセットで決めてもらい、県内延伸費用を他自治体にも分担してもらう、それには延伸先を国の審議会前に決めておく必要がある―これが絞り込みを急ぐ理由のようです。

つまり、県の絞り込み作業は、国の鉄道建設手順を踏まえ、工事費負担の分散・軽減を図るという、知事の深慮遠謀によるものだそうです。ということは、県内延伸先現TX区間東京駅がパッケージで決定されないと、県内延伸は難しくなるでしょう。この両方向延長に、都が策定中の臨海地下鉄(東京駅東京湾岸)がリンクすれば、壮大な計画になります。

国際空港と学園都市を結ぶ鉄道?

県内延伸先はどこになるのでしょうか? 私は茨城空港と予想しています。136「TX延伸論議…つくば市の狭い視野」(7月4日掲載)で指摘したように、関係地域(水戸市、土浦市、石岡市、小美玉市など)は、自分の市を経由して(水戸は空港から自市まで延伸してもらおうと)空港まで延ばせと主張しているからです。県内延伸=つくば駅茨城空港の政治的な包囲網が出来上がっています。

TX沿線市(守谷、つくばみらい、つくば)の人たちは、このプロジェクトにあまり関心がありません。延伸=東京駅延伸であり、県内延伸はピンと来ないようです。これら地域は東京通勤圏(茨城都民)ですから、県内延伸に想像力が働かないのは仕方ありません。

茨城空港まで延ばす必要性は何でしょうか? 先のコラム136では、▽10~20年先、首都圏の羽田空港と成田空港が満杯になり、茨城空港を第3国際空港として使わざるを得ない、▽それには、空港にアクセスできる鉄道が必須になる、▽つくばを世界レベルの研究学園都市に育てるには、茨城国際空港と学園都市を鉄道で結ぶ必要がある―と述べました。県内延伸は、学園都市の広域化を実現するテコにもなります。

高度な分担比率政治工作が必要

県内延伸にはいくらかかるのでしょうか? 1兆円に近い数千億円は必要でしょう。知事が県内延伸と東京駅延伸(東京湾岸延伸?)をセット決定に持ち込もうとしているのは、茨城単独ではこの額は無理と思っているからでしょう。

先に、首都圏第3空港化に触れたのは、そうすれば延伸費用を国から引き出せると考えるからです。単なる茨城空港延伸でなく、第3国際空港延伸とし、国=3分の1、茨城=3分の1、東京・埼玉・千葉=各9分の1といった分担比率ができれば、延伸は現実性を持ちます。こういった理屈付けと分担比率決定には高度な政治工作が必要です。(経済ジャーナリスト)

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「電力消費、排熱、CO₂排出に懸念」歌川学さん講演 つくばに国内最大級のデータセンター(下)

グッドマンジャパンがつくば市大穂に計画している国内最大級のデータセンターについて、「つくば市の巨大データセンター 3つの疑問」と題した学習会(主催・脱原発ネットワーク茨城=江口肇共同代表)が4月末、同市大穂、大穂交流センターで開かれ、つくば市内の研究機関に勤務し温暖化対策を研究する歌川学さんが講演した。歌川さんの講演概要をまとめた。以下の通り。 電力消費増の原因は二つ 昨年2月、国のエネルギー基本計画が出され、国全体の電力消費量が2024年から10~20%増えるという予測が立てられた。それまでは省エネをすれば電力消費は少し減っていくという見通しだった。増加理由の一つは半導体製造の増加、もう一つは全国でデータセンターが増加することだ。 経産省の第7次エネルギー基本計画策定時の審議会で関係業界がヒヤリングを受けた。データセンターの代表としてソフトバンクが、2030年までに電力消費量が2020年の3倍、2040年までに2030年の8倍、掛け算すると24倍になる可能性があると答えている。こうした増加予測を入れて私が独自に計算し、他にも工場・オフィス・家庭の電化、電気自動車の増加を考慮し、一方で省エネ対策で電力消費を減らすと、2040年から2050年のデータセンター及び半導体製造工場の電力消費量は国全体の10%程度、2050年に向けた電力消費全体も大きな増加ではないと推計できる。 省エネ対策とは、皆で電気をこまめに消して、エアコン止めて…ということではなくて、機器の更新のときに、省エネ機器を入れる、断熱建築にする、車を買い替える時は燃費のいい車にするなどしていくということ。石油やガスなど化石燃料が使われているものを効率よく電気に変えることでエネルギー消費全体の効率を良くすることができる。建物の断熱も含めてストーブからエアコンにすると、エネルギー消費は4分の1になる。こうした省エネ対策をすれば、エネルギーの中で電力消費・熱利用・運輸燃料を合わせたエネルギー消費量全体は大きく削減される。このエネルギー消費の中で、半導体製造・データセンターの電力消費増と電化により、電力消費はあまり減らずむしろやや増える可能性があるが、2050年に向け中長期的に電力消費量が激増することはないと予測される。 大都市周辺と北海道に計画 2024年以降に新設計画があるデータセンターは、東京、大阪周辺の比較的地価の安いところに多くの計画がある。データセンターの中は、狭いところにIT機器、いわばコンピューターが密集して設置され、多くのエネルギーを消費し、熱を持つので、外部に排熱して冷やす。冷却でもエネルギーを消費する。比較的涼しい北海道は冷却するためのエネルギーが少なくて済むので北海道にも新設計画が多い。 データセンターが今後、全国各地に立地し、国全体の電力消費量は10%増程度にとどまるとしても、地域では大きな影響が懸念される。 地域には大きな影響 つくば市では、高エネ研南側の約46ヘクタールに、オーストラリアの多国籍企業グッドマンジャパンがデータセンターと物流施設をつくる計画を立てている。データセンターの規模は、最初の1棟目は受電容量5万キロワット(50メガワット)。これだけでも大きいが、最終的には5万キロワットの20倍の、受電容量100万キロワット(1000メガワット)の計画になる。発電所でも、設備容量100万キロワットはかなり大きい。日本でも有数の規模のデータセンターだ。 1棟目はすでに着工し、2年くらいで完成して運転を開始するという計画を昨年、つくば市議会に示しているが、その後の建設スケジュールは示されていない。市議会の説明資料では、データセンターがどれぐらい電気を使って、どれくらい二酸化炭素(CO₂、温室効果ガス)を排出し、どれくらい排熱があるのか、夏の暑い時の排熱による周辺地域の気温上昇予測なども説明がない。 途方もない量 データセンターではないが、情報通信業で一番大きな東京都多摩市の通信施設から排出される二酸化炭素は年間14万トンになる。一方、公害調停にもなっている東京都昭島市のデータセンター計画では、二酸化炭素は多摩市の施設の15倍ぐらい、現在の昭島市全体の排出量の4倍から5倍の二酸化炭素を排出するということで地域で大きな問題になっている。 一方、今回つくばで計画される全体受電容量100万キロワットのデータセンターが仮にできると、昭島市の施設の二酸化炭素排出量のさらに2倍以上、1カ所の施設としては日本最大級になる。 100万キロワットのデータセンターがつくばに完成した場合の電力消費量、二酸化炭素排出量、排熱量がどれくらいになるかを、年間を通じて容量の90%出力の運転で試算すると、電力消費量は約80億キロワットアワーになる。これは、人口120万人の政令指定都市で工業地帯もある川崎市、人口140万人の神戸市、人口200万人近い札幌市、人口150万人の京都市、工業都市の北九州市などに匹敵する電力消費量になる。都道府県の消費電力と比較しても、長崎県、愛媛県、沖縄県、山形県、青森県全体と同じくらいの電力を消費する。 二酸化炭素排出量は、現在のつくば市全体の2倍の二酸化炭素を、1カ所のデータセンターが排出することになる。すべて完成すれば、今の市全体の排出量が3倍に増える。つくば市内にはエネルギーをたくさん使う施設がある。研究所、大学、電気炉の製鉄所も市内の工業団地にある。これらを含むつくば市内のあらゆる工場、オフィス、大学、研究所、家庭、車の2倍の二酸化炭素排出量が1カ所のデータセンターから排出されると予測される。排出量は、都道府県では鳥取県全体や高知県全体と同じぐらい、県庁所在地では宇都宮市、政令指定都市では神奈川県相模原市と同じ規模になる。電力は現状のキロワットアワー(kWh)あたり二酸化炭素排出量で計算している。 排熱が地域に影響 地域にどのような影響があるかだが、まず排熱が懸念される。データセンターではIT機器、いわばコンピューター機器が大量の電力を消費し、熱くなるので、機器を冷やすことが必要になる。冷却方法は、巨大なエアコンのような設備で冷やす「空冷」と、水または特殊な液体を循環させて冷やす「水冷(液冷)」の二つの方法があるが、事業者はこれまで冷却方法や排熱量などを公表していない。 今、日本全体で家電や車なども含めて、エネルギー消費は残念ながらそんなに効率のいいものではなく、有効利用は3分の1程度で残りは排熱されている。つくば市で100万キロワットのデータセンターが全部完成し、現在国内で主力の「空冷」で冷却する場合、市全体で出る排熱を全部合わせた量の2倍ぐらいの排熱量が出ると予測される。 夏の一番暑い7月から9月の間、去年、つくば市館野の気象台で猛暑日(最高気温35度以上)が22日間観測された。ここ数年、最高気温が35度を超える日が毎年、年間20日間ぐらいある。 気象台の気温を測る場所は、高さ1.5メートルの芝生の上。周囲の条件の影響を受けないように測定しても35度以上が観測される。大穂地区は工場やオフィスビルが多い地域ではないが、舗装道路の上など、私たちは気象台で測定された気温よりもう少し高い気温を猛暑日に経験している。これに大きなデータセンターの排熱が加わると、気象条件によっては周辺地域の気温がさらにプラスアルファになる可能性がある。 熱中症のなりやすさ加速 これは地域の体の弱い方、お年寄りの方、小さな子供とか、そういった健康弱者の方々の熱中症など健康影響を加速する可能性が懸念される。そうならないように事前に考えなければいけない。 猛暑日の気象条件の中で、排熱により地域の気温が実際に何度上がるのか、どのくらいの範囲に影響が出るのかを調査して評価し、データを検証して熱中症増加などの健康影響を考える、健康弱者の方に影響・被害が出てからではなく、事前に調べ、懸念が大きいことがわかったら追加対策を考えなくてはいけない。 東京で計画されているデータセンターの排熱について住民グループが試算をした。東京はヒートアイランドの中にある。そこに巨大データセンターが住宅地に囲まれた用地にできて排熱が地域に出ると、猛暑日の気温がさらに3度上がるという試算があった。つくば市の場合は都市ヒートアイランドではなくデータセンターの周りは住宅密集地ではないものの、つくばのデータセンターの規模はその試算がされた東京のデータセンターの4〜5倍なので、つくば市での排熱とその周辺への影響を事前に予測することが必要だ。 地下水冷却でも影響の恐れ データセンターの冷却は、空冷ではなく、水で冷却をする「水冷」の可能性もある。この技術の方が空冷よりエネルギー効率が良い。ただし水冷技術を採用した場合、使用する水に課題がある。つくば市全体の排熱の2倍の排熱量を、水道でなく地域の地下水で冷やすと、地域の地下水が温まる可能性がある。これが地下の水環境や地下水の流れなどに影響を及ぼし、飲料水に使われている井戸の周辺で地下水温が上がるだけでなく、流れが変わるなどの影響が出る可能性もある。地下水の流れや地下の環境はよく分かっていない。影響を事前に調査・評価し、必要な対策を検討しなければならない。 次ページに続く 前ページからの続き データセンターの対策 効率規制は2031年から 現在、データセンターのエネルギー効率を上げるため主に考えられているのがIT機器以外の省エネだ。主なものは冷却のエネルギー効率を上げること。データセンターではIT機器が狭いところに密集して置かれ、巨大なエネルギーを消費するので熱がこもる。そこで巨大空調設備で冷却し熱を外に出す、または、水あるいは特殊な液体で冷却する。他に記憶装置の省エネなどもある。本来はIT機器の効率改善が大きいがメーンになっていない。 データセンターのエネルギー効率を上げようと、経産省は省エネ法で目標値を示している。ただし現段階は義務ではない目標で、達成できなくても罰則はない。IT機器のエネルギー消費でデータセンター全体のエネルギーを割るというのが指標で、目標は1.4。つまりIT機器のエネルギー1に対し、冷却などは0.4のエネルギー消費にとどめるというものだ。北海道石狩市のさくらインターネットのデータセンターなど、すでに目標値1.4を達成しそれ以下で済ませているところもある。KDDIは特殊な液体オイルでIT機器を丸ごと冷やす「液浸冷却」の実証実験に取り組み、効率の悪いデータセンターに比べて冷却の電力を大きく削減でき、今後実用化すると発表している。 海外では、ドイツや中国の一部で、日本の目標値よりも厳しい対策を求めている。日本でも制度強化が予定され、現在は罰則のない目標値だが、2029年以降に新設されるデータセンターは、稼働後2年を経た2031年以降、現在の目標値より厳しい効率1.3、つまり、IT機器のエネルギー1に対し冷却などは0.3のエネルギー消費にとどめなければならなくなる。 データセンターの営業形態にはいくつかパターンがあって、①IT機器は所有しないで場所を貸す営業②建物を所有し、IT機器を自分で入れて、そのIT機器を時間貸しあるいはスペース貸しにするオーナー型の営業③建物は借りて、IT機器だけを使うテナント型の営業などがある。つくばはどういう営業形態になるか分からないが、これまで制度対象外だったテナント型も2029年の2年後の2031年以降は規制の対象になる。 欧州では排熱を活用 ヨーロッパではデータセンターの排熱を活用し、排熱が外に出るのを防いでいる。フィンランドでは首都ヘルシンキなど複数の都市でデータセンターの排熱を地域熱供給網で利用している。スイスのバーゼルではデータセンターではないが、巨大な施設からの排熱を地域熱供給網で利用している。いずれも排熱を地域の工場、オフィス、家庭で暖房、給湯などに使用する。 つくばには中心部にしか地域熱供給網がないが、周辺地域に地域熱供給網をつくれば、地域に排熱を排出しなくて済む可能性がある。 国内の例では、東京都は都市再開発をする時に、地域熱供給を検討することを義務付けている。ここでの検討義務の内容は都市再開発事業をする際に、事業者が地域熱供給網を建設し利用することだ。ただしデータセンターが排熱の地域供給網を国内で導入した例は国内ではない。 再エネ100%利用ならCO₂排出ゼロ 二酸化炭素の排出量を減らす手段としては、再生可能エネルギーの利用がある。つくば市は今年4月策定の地球温暖化対策実行計画で、温室効果ガス排出量を2030年に2013年比46%削減する目標を立てている。データセンターで、再エネではない現状の火力中心の電力を使用すれば、現在のつくば市全体の2倍の二酸化炭素が排出されるが、再生可能エネルギー100%の電気を使うことで排出ゼロになり、つくば市の計画に悪い影響をもたらさないこともできる。 実は、使用する電力を再生可能エネルギー100%にした、あるいは2030年までに計画しているデータセンターが日本でも多数ある。東急不動産の石狩市データセンター、同じ石狩市のさくらインターネットのデータセンターなどだ。ソフトバンクが北海道苫小牧市に計画するデータセンターも使用電力を再生可能エネルギー100%にする計画を立てた。 これは必ずしも環境に熱心だからではなく、データセンターを使う大手企業が、うちの製品やサービスは、自分が使っているサービスを含めて二酸化炭素排出ゼロ、再生可能エネルギー100%と名乗りたいため、使用するデータセンターにも対策を求めるためだ。製品・サービスのサプライチェーン全体の再エネ100%を名乗るには、その企業が使用するデータセンターも、二酸化炭素排出ゼロ、再生可能エネルギー100%でなくてはならないので、将来の生き残りのためにデータセンターを多数持つ会社が再エネ100%などの計画を立てている。つくばの計画にはそうした情報がない。 データセンターも2極分化し、再エネ100%利用あるいは計画を積極的に発表しアピールする会社と、再エネ利用について何も発言がない会社がある。発表のないところは、少なくとも当面は火力発電中心の電力を購入すると見られる。 自治体も対応できる 巨大データセンターの立地に際して、自治体としてどんなことが考えられるか。つくば市の場合、2050年二酸化炭素排出実質ゼロが目標だが、巨大データセンターは市の計画の目標達成に大きな影響がある。一方で自治体は開発や建築の際に許認可を行うなど関与するので、地域の環境や住民に影響があるか考えて判断することも考えられる。 自治体の取り組みとして、エネルギー消費側でなくエネルギー供給施設について、例えば太陽光パネルの乱開発を抑える条例がある。事実上、10キロワット以上の地上設置太陽光建設を制約している自治体もある。事業者と地域住民などが対立した時に、まちづくり条例などで市が調停役になる制度を持つ自治体もあり、千葉県流山市は市が調停する条例をもち、ここではデータセンターの建設計画が中止になっている。 国と茨城県の環境影響評価制度は、一つの県、一つの政令指定都市並みの電力消費があっても、市全体の何倍もの電力を消費し、二酸化炭素を排出しても、それだけではデータセンターは制度の対象にはならない。 しかし何らかの形で環境影響評価制度の対象になることがある。東京都昭島市のデータセンターは、それ自体は東京都の環境影響評価制度の対象ではないが、ゴルフ場で緑地であったところをデータセンターにし、土地の改変をするということで制度対象になった。それによって昭島市の場合はデータセンターの電力消費量や二酸化炭素排出量が開示された。 都市計画その他で、住民参加手続きをもつ制度もある。任意であっても自治体が事業者に住民説明を求めることも全国で行われている。つくばでは説明会はされたのだろうか。建築協定とか地区計画など国交省の制度などもあり、使えるといいかもしれない。 事業者は情報公開、説明を つくばでは最初の5万キロワットのデータセンターの建設が始まったが、次期施設については今後、いつ、どれくらいの規模の計画か情報がない。エネルギー消費量、二酸化炭素排出量、排熱量、冷却装置の種類、空冷でも水冷でも効率はどれくらいか、再生可能エネルギーを使用するのか等の説明が求められる。 今、建設が始まった建物は、高さ38メートルの壁のような建物になる。高い建物が建つと、突風など今までにない気象を起こす可能性がある。排熱で空気が上昇する場合の地表の風の強さも懸念される。東側には物流施設が計画されトラックが行き来する。これらの情報を共有することがこれから課題になる。予測と、やや極端な影響になる場合の対策が分かることによって、地域でどう受け止め、何の対策強化を求めたらいいのか議論できる。分からないと議論できない。 バックアップ電源も不明 バックアップ電源についても、つくばの計画では発表がない。容量30万キロワットの他市のデータセンターで、その規模全てまかなうバックアップ用ディーゼル発電機を用意し、毎月試運転をする計画と聞いた。同じように考えるとつくば市のバックアップ電源は5万キロワット、自家発電設備として大きな規模である。将来、100万キロワットのバックアップ電源を計画しているか不明だが、この場合は容量だけで言うと火力発電所の環境影響評価制度の対象となる15万キロワットをはるかに超える規模のディーゼル発電機のバックアップ電源で、試運転を定期的にすると運転の初めと終わりには大気汚染物質その他有害物質の排出も懸念される。 つくばのバックアップ電源についても、どういう規模・種類の設備か、試運転も含めた運用、燃料貯蔵などの開示が求められる。 あと、空冷や水冷の設備や受電設備などが敷地境界にあると、夜、騒音や低周波音が気になることがあるかもしれない。 緊急時、他分野では操業制限の例も 緊急時の対応についても自治体や周辺住民との協議が求められる。猛暑日に周辺地域の気温が上昇するなどの緊急時対策として、大気汚染公害対策が参考になる。高度成長期の1970年代からの大気汚染で、子供たちが倒れる、大気汚染が原因で肺疾患になった患者さんが亡くなるなどの大気汚染公害被害があった。その時にできて今も運用されている大気汚染防止法の制度がある。オキシダント濃度が上昇し光化学スモッグ注意報が出た時に、対象地域を定めて光化学スモッグ原因物質を排出する工場に対し都道府県知事が指示を出し、大きい場合は40%燃料使用量削減や、工場や設備の使用制限などを求める制度だ。データセンターなどエネルギー多消費施設の排熱による緊急時対策制度は今のところないものの、排熱量は非常に大きいので、地域の気温上昇影響を予測し、大気汚染の例をもとに緊急時対策も検討すると良い。事前の対策として風の道を考えた冷却、気象条件によって健康影響が拡大した場合の救急体制の拡充などもある。 日本のデータセンター事業者はフル稼働に近い運転を考えるが、ヨーロッパのデータセンターには柔軟な運転があり技術的には可能性がある。緊急時の対策を話し合うことも考えられる。 予測評価をし対策の具体的議論を データセンターの電力消費や排熱などについて、また地域に与える悪影響を防止する対策について、地域住民だけでなく全体で議論されなければいけない。議論が積み重ねられると、エネルギー効率改善対策、排熱を地域に排出しない対策、再エネ利用などが提案される可能性もある。 地域のことを全体で考え、今後、AI利用のコストアップを利用者で負担しIT企業の対策実施を求めるようなルールになると、例えば、今後は大型データセンターは地域熱供給網と合わせて建設され、周辺地域、例えばつくば市や土浦市の地域企業や家庭は冷暖房や給湯を化石燃料から脱却し、光熱費負担も下がるなどのメリットも生じる。地元には、売り上げも雇用もあまりなく、巨大排熱などが懸念される迷惑施設ではなくなる可能性もある。 今後はデータセンターがこれだけ必要なのか議論になる。電力中央研究所が昨年の報告で、計画通りできるか、この業種は不確実性が大きいと指摘している。国の審議会でも送電線容量を抑えたままの問題を議論している。予測しにくい、地域にとってやっかいな施設ともいえる。 日本の多くの自治体が2050年二酸化炭素排出実質ゼロ宣言をしているので、その裏付けの一つに、今後新規立地する大規模事業所は期限を決めて再エネを使うということにしないと、市町村長が許可を出さないような制度設計も今後は考えられる。大口は再エネ使用を原則、少なくとも電力は化石燃料に頼らない対策を進め、それを裏付ける制度設計を考える必要がある。半導体工場とデータセンターは大手企業が担い、使用エネルギーも再エネ化しやすい電力が大半なので、今後消費が伸びる分は化石燃料に頼らない対策、それを確実に促す制度設計も可能だ。 終わり(鈴木宏子)

つくばローズガーデン《ご近所スケッチ》23

【コラム・川浪せつ子】寒暖差の大きな日々ですが、植物はちゃんと季節の移り変わりを知っています。今回は元つくば市長の庭「つくばローズガーデン」(同市古来)です。2年前にも藤澤邸の庭をスケッチ(24年5月15日掲載)しましたが、そのときの話の内容は少しグチっぽくなりました。今回は「どうにかなる。その場所で咲きなさい」と、バラの花を描きながら、自分にもエールを送りました。 あれから2年しかたっていないのに、バラの開花が早くなったと感じます。10年前は「せめて連休のときに咲いたら」と思ったのですが、今年は連休前に咲きました。地球温暖化? 今年は5月13日にオープンしましたので、早々に楽しませてもらいました。 スケッチしてもいいですか? 今回の訪問は、花をめでることだけでなく、別の目的もありました。以前、庭のお世話をしている方に「スケッチしてもいいですか?」と聞いたら、「いいけど、今までスケッチして、それを見せてくれた人いないんだよね~」と言われたことが、ずっと心に刺さっていたからです。 今年、私のSNSにこのガーデンの絵をアップしたら、「ありがとうございます」とのコメントをいただき、原画を2Lサイズに印刷し、小さな冊子にしたものをお届けしたところ、受付の方がその方でした。 こういうのって、とっても感動的ですね。思ったよりずっと若くてチャーミングな方。以前、「見せてくれない」と話した方は数年前に亡くなられたそうです。何事も思いついたときにやらないといけないですね。(イラストレーター)

専門家「排熱で猛暑日増え熱中症増加の恐れ」 つくばに国内最大級のデータセンター(上)

1棟目が着工 外資系物流不動産会社「グッドマンジャパン」(東京都千代田区、グレゴリー・グッドマン社長)の特定目的会社が2022年につくば市土地開発公社(飯野哲雄理事長)から購入した同市大穂の約46ヘクタールで今年2月、データセンターの建設が始まった。着工したのは受電容量5万キロワット(50メガワット)の1棟目で、建築計画概要書によると、建築面積約1万2600平方メートル、延床面積約3万7900平方メートル、地上4階建て、高さ38メートルの巨大データセンターが2028年1月末に完成する予定だ。 同社のホームページによると、将来的には敷地西側に20倍となる受電容量100万キロワット(1000メガワット)のデータセンター群が集積する計画だ。これに対し、つくば市内の研究機関に勤務し温暖化対策を研究する歌川学さんは、すべて完成すればつくばは国内最大級、現在稼働しているどこよりも大きいデータセンターになると指摘する。 歌川さんの試算によると、100万キロワットのデータセンターが稼働すれば、人口26万人規模のつくば市全体で現在使用されている電力消費量の3倍以上の電力をデータセンター1カ所で使い、現在、市全体で排出されている2倍の二酸化炭素を排出し、市全体の排熱量の2倍の排熱がデータセンター1カ所から排出されると見込まれる。電力消費量、二酸化炭素排出量、排熱量いずれも途方もない規模だ。 特に排熱について歌川さんは「高温で風が弱いなどの気象条件の時に、データセンターからの排熱で周辺地域が高温になる可能性があり、熱中症が増えるなど健康弱者に影響が出ることも懸念される」という。 排熱は、高温になったコンピューター機器を冷却する際に建物の外に出される。機器の冷却方法は、①巨大なエアコンのような空調設備で冷やす「空冷」と、②水または特殊な液体を巡回させて冷やす「液冷」の二つの方法がある。事業者のグッドマンジャパンは現時点で冷却方法や排熱量などを公表しておらず、周辺地域の気象にどのような影響が出るかは不明だ。 歌川さんによると、空調で冷却し大気中に排熱をそのまま放出する場合、市全体の排熱量の2倍という途方もない排熱がデータセンターから出るため、周辺地域では、7月から9月の夏の一番暑い時期に猛暑日(最高気温35度以上)になる日数が増える恐れがある。住民の健康、とりわけ高齢者、病気療養中の人、就学前の子供、児童など健康弱者への影響を検討する必要があると指摘する。「立地地域周辺に健康弱者の施設、福祉施設、医療施設、療養施設、老人ホーム、児童・保育施設、学校などがあるのであれば、排熱の影響を予測する必要がある。100万キロワットという巨大施設では影響が広域に及ぶ恐れもあり、近隣だけでなく、もっと広域の影響も検討する必要がある」とする。さらに「気象条件によっては熱中症患者の救急搬送が増えることも予測されるので、救急搬送体制をさらに拡充する必要が生じる可能性もある」という。 一方、冷却に地下水を使う場合は、途方もない排熱量によって、地域の地下水が温まってしまい、くみ上げた地下水を地下に戻した場合、水温が上昇し、地下の水環境や水循環に影響を与え、地下水温度が上がったり、地下の流れが変わり、地域の井戸に影響を与えてしまう可能性がある。歌川さんは「地下の状況はよく分かってないだけに、事前に環境への影響を調査して評価がなされるべき」だと指摘する。 事業者のグッドマンジャパンは、データセンターの排熱問題について現時点で周辺住民に説明していない。歌川さんは「事業者が事前に、データセンターからの排熱による周辺地域の気温上昇を予測して、予測計算の想定を含め、自治体や住民に知らせると共に、専門家が検証できるように情報を共有すること、さらには自治体が情報を開示させ、まちづくり条例を運用する自治体のように地域で調停役の役割を発揮することも考えられる」と述べ、「大気汚染の光化学スモッグや汚染物質の大気汚染濃度が高くなった時の例を参考にすると、大気汚染防止法では緊急時に発電所や工場の操業を一部または全部停止する措置がある。事業者と自治体の公害防止協定で緊急時の停止措置の例もある。これにならうとすれば、夏の高温時の緊急対策として、緊急時のデータセンターの操業一部停止措置を何か定めることも考えられる」と指摘する。 対応策はあるのか。 歌川さんによると、ヨーロッパでは排熱による周辺地域の気温上昇を防ぐため、地域熱供給システムに排熱を送り、近隣の商業ビルや住宅などのエネルギーを供給する例がある。東京都では延床面積5万平方メートル以上の再開発をする場合、再開発事業者に対し、地域冷暖房の導入を検討するよう義務付けているという。またデータセンターで使用する莫大な電力について、国内で建設計画がある施設でも再生可能エネルギー100%使用を目標に掲げているデータセンターが複数ある。データセンターのユーザー側が事業の排出ゼロを名乗りたいので、排出ゼロのデータセンターが選ばれやすくなるという。 NEWSつくばは同市大穂で建設が始まったデータセンターについて、グッドマンジャパンに対し、排熱量、二酸化炭素排出量、冷却方法、地下水使用の有無、バックアップ電源などについて質問した。これに対し同社は「グッドマンは企業の社会的責任として地域社会との共生を掲げ、日本においても地元コミュニティに寄り添う良き隣人であり続けたいと考えている。そのために適宜必要な情報公開などは行っているが、重要なお客様の情報を扱う立場であることから、メディアから取材・質問をいただいた際には、回答することが可能かどうかも含め精査・調整することが必要となり、お時間をいただいている。今回いただいた質問については、ご要望の期限に間に合わせることが出来ないことから、回答を控えさせていただきます」などと回答している。(鈴木宏子) 続く

つくば市ベンチ・プロジェクト《デザインを考える》32

【コラム・三橋俊雄】以前、90代で一人暮らしをされているご婦人から、「スーパーまでの道のりにベンチがあれば、一人でも買い物に行けるのに」という言葉をうかがったことがあります。この何気ない一言には、高齢者の日常生活に潜む切実な課題が表れていると感じました。この経験をきっかけに、高齢者が安心して外出できる環境づくりの一環として、「つくば市ベンチ・プロジェクト」について考えてみたいと思います。 高齢者にとって外出は、健康の維持や社会参加のために欠かせない行動です。しかし、長い距離を歩くことへの不安や、途中で休憩できる場所の不足は、外出の大きな妨げとなっています。 つくば市は、広い歩行空間やペデストリアンデッキが整備された歩きやすいまちである一方、移動の途中に気軽に休息できるベンチが十分に設置されていないと感じます。まちの各所にベンチを設置することは、高齢者の外出を後押しし、安心して歩ける環境づくりにつながります。買い物や通院の途中にひと息つける場所があるだけで、心理的な負担は大きく軽減されます。 その結果、外出機会の増加や歩行距離の伸長が見込まれ、筋力の維持やフレイル予防といった健康面での効果も期待されます。これらの取り組みは、健康寿命の延伸により、医療費や介護保険料の抑制にも寄与する可能性があります。さらに、ベンチの設置は比較的少ない投資で実施できることから、行政にとっても実効性の高い施策であるといえるでしょう。NYのベンチ・プロジェクト参考となる近年の事例として、ニューヨーク市の「シティ・ベンチ・プロジェクト」が挙げられます。同市では2011年から、5つの街区を中心に約2000基のベンチが新設されました。休息できる場が増えたことで人々の外出機会が増加し、自然な交流が生まれるとともに、歩行距離の延伸にもつながり、健康増進や医療費削減の観点からも有効な施策として評価されています。また、このような考え方は、100年前のニューヨークにも見られます。20世紀初頭、急速な都市化の進展により、市民が安心して休息できる公共空間の不足が課題となっていました。これを受け、街路や公園にベンチを設置し、人々が自由に腰を下ろして交流できる場を生み出す取り組みが進められました。ベンチは単なる設備ではなく、市民の健康やコミュニティ形成を支える都市インフラの一つとして位置づけられていたのです。つくば市におけるベンチ・プロジェクトもまた、人と人、人とまちを結びつける力を持つのではないでしょうか。ベンチは世代を超えた交流を生む「まちの縁側」となり、偶然の出会いから新たなつながりが生まれます。こうした小さな仕掛けの積み重ねが、誰もが歩きたくなる温かみのあるまちの形成、《まちのデザイン》へとつながっていく、その可能性を、私は強く感じます。(ソーシャルデザイナー