つくばエクスプレス(TX)を運行する首都圏新都市鉄道(東京都千代田区、柚木紘一社長)は、列車内での無線Wi-Fiサービスを23日で終了する予定だと発表した。駅構内での無料Wi-Fiサービスは継続する。NTTドコモのd Wi-Fiサービスの終了に伴うものという。
TXは、駅構内や改札付近だけでなく、列車内でも無料通信が利用できる体制を開業当初から早期に整えた先駆的な公共交通だ。列車内の無線Wi-Fiは、通勤ラッシュ時などは接続しにくくなっていた時もあるなど、利用者は少なくないとみられる。個人の端末通信を使用すればスマートフォンやパソコン通信は引き続き利用できる。
同社によると、これまで列車内では2つの無料Wi-Fiが提供されていた。エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム(東京都千代田区)が運営し、TXの利用者全員を対象として提供されていたTX Free Wi-Fi(ティーエックスフリーワイファイ)と、NTTドコモ(東京都千代田区)が運営し、同社のdポイントクラブの会員向けに無料で提供されていたd Wi-Fi(ディーワイファイ)だ。どちらも23日に終了し、列車内での無料Wi-Fiの提供は無くなる。
同社は「d WiFiを提供するNTTドコモから、d Wi-Fiサービスの終了に伴って、つくばエクスプレスでも運営を終了したいとの申し出があった。それを受けて、TX FREE Wi-Fiも同時に終了することが決まった」と経緯を説明する。
一方、構内のWi-Fiサービスの提供は継続される。列車内と同じく、駅構内で提供されている無料Wi-Fiサービスは、エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォームの運営するTX Free Wi-Fiと、NTTドコモが提供するd Wi-Fiの2つがある。23日にNTTドコモのd Wi-Fiは終了するが、エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォームのTX Free Wi-Fiは継続される。
TXのこれまでの利用者数累計や、サービスの維持管理にかかるコストについては非公表となっているが、TX Free Wi-Fiは通勤ラッシュの時間帯などに接続がしにくくなるなど、利用者は少なくなかったとみられる。今後の見通しとして首都圏新都市鉄道は「列車内における無料Wi-Fiサービス提供を今後なんらかの形で再開する予定は現時点ではない。駅構内のTX Free Wi-Fiは、今後も継続の見通し」としている。
鉄道の無料Wi-Fi 相次ぎ終了
今年6月には東京地下鉄が東京メトロのWi-Fiサービスを一部終了している。TXと同様に、エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォームの運営するMetro_Free Wi-Fiと、NTTドコモが提供するd Wi-Fiの提供が、契約期間満了によって終了している。東武鉄道でも今年、一部無料Wi-Fiサービスが終了したなど、鉄道の無料Wi-Fi終了が相次いでいる。
理由について、エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォームは「国内の鉄道事業で無料Wi-Fiサービスが相次いで終了している背景は3つある。1つ目は、訪日外国人観光客の利用を想定し、東京オリンピックの開催などに合わせて広がってきたが、コロナ禍でそうした外国人観光客の利用が著しく減っていること。2つ目は、コロナ禍の鉄道利用者数の減少に伴って、鉄道会社は収益性が低下し、コストカットを強いられていること。3つ目は、国内の『5G』に代表される高速通信サービスの進歩と『格安シム』と呼ばれるような安価なサービスの登場によって個々人の端末の通信は高速化し、Wi-Fiサービスそのものの需要が少なくなりつつあること。こうした背景から無料Wi-Fiサービスの提供を終了する企業が増えてきている」としている。(山口和紀)