【コラム・坂本栄】つくば市の運動公園用地売却については、その手順のおかしさを何度も指摘してきました。市の財産処分なのに議会の決を取らなかった、公募意見では売却賛成が少数なのに無視した、売却の是非を市民に聞く無作為抽出調査をやらなかった―などです。これらに、行政手続きを終える前に売却契約を結ぶという、おかしな手順も加えておきます。
議会無視(取得するときは議決)、公募意見無視(売却賛成はたった3%)、無作為調査不採用(市政運営の定番を無視)の3点については、137「つくば市長の宿痾 総合運動公園問題」(7月18日掲載)をご覧ください。
市は用途変更ダメの事態も想定
前市長時代、市がUR都市機構から買った運動公園用地は「住宅地域」「文教地区」です。市は8月、この用途を「準工業地域」に変更するとともに、「文教地区」を外すと約束をして、用地を売却する契約を倉庫業者と結びました。この業者は、ここに電子情報倉庫や物流倉庫を建てるそうですから、用途変更が土地取得の前提になります。
そこで、市は10月から、都市計画審議会で用途変更が妥当かどうか審査しています。県とも相談して、来年2月に結論を出すそうです。
用地変更がOKになる前に売却契約を結ぶというこの手順、おかしくないでしょうか? 購入者の使途を確認→用途変更を決定→売買契約を締結というのが、正しい手順ではないでしょうか? 担当部に手順逆転の理由をただしたところ、ウヤムヤな説明でした。市は、この用地をできるだけ早く処分したいと焦っているようです。
売買契約書には、都市計画審の結論がNOとなった場合に備え、解約条項が入っているそうです。手順が正しい流れであれば、そのような条項は必要ないのに、です。市は、各方面への根回しを済ませ、NOはないと判断しているようですが、その可能性がゼロではないとも思っているのでしょう。ちなみに、土地を元の状態に戻す「解約リスク」は、原則として業者が負うそうです。
元研究者は反対、前市長は慨嘆
先の都市計画変更・公聴会では、元研究者から、用地売却=用途変更に反対する意見が述べられました。その主張については「2人が反対意見を公述…都市計画変更で…公聴会」(11月11日掲載)をご覧ください。
反対意見は、▽未利用地だからと言って、売却してしまうのはデベロッパー(開発業者)の発想だ、▽研究学園都市としては、将来、研究機関用地が必要になる事態を想定し、公有地として残しておくべきだ、▽売却は市の決定だが、学園都市つくばの特殊性を考え、県や国と一緒になって、公有地の扱いを判断すべきだ―と、整理できます。
市は研究学園都市を「経営」する構想力に欠け、その「視野」も遠くが見えていない、ということです。つくば市は困った市執行部を抱えてしまったものです。
元県議・首長の視点から、前市長は「あの土地を売らないで、市有地として確保しておけば、いつでも体育館や陸上競技場を建てられたのに、それを売り払ってしまうとは…。つくば市だけでなく、県南地域にも悔いが残る」と、慨嘆しています。詳細は「今、何をしているのですか? 前つくば市長の市原さん」(11月15日掲載)をご覧ください。(経済ジャーナリスト)