金曜日, 3月 20, 2026
ホームコラム「土浦の花火」~未来へ~《見上げてごらん!》8

「土浦の花火」~未来へ~《見上げてごらん!》8

【コラム・小泉裕司】天気、風力、風向き良好。佐藤亨・土浦市産業経済部長が参拝した日本で唯一の「気象神社」の御利益なのか(10月16日掲載)、近来まれにみる好条件に恵まれた第91回土浦全国花火競技大会は、「無事」終了した。今回の「無事」は、Safe(安全)に加えて、No problem(問題なし)、All good(すべてよし)、Complete(完璧)、Success(達成)と英訳したいほど、見事な大会だった。

とりわけ、18都道県から出品された89作品すべての打上げが完了し、コロナ禍を含め4年間途絶えていた歴代入賞者一覧に、新たに業者名が追記されたことがうれしいし、未来につなぐ第1歩を刻むにふさわしい大会になったと思う。

出品作品については、全般的に斬新性や話題性というよりも、今年1年の集大成的な作品が多かったように思う。むしろ、そうした秀作・力作の数々が土浦の夜空に集結し、披露されたことそのものが、贅沢(ぜいたく)の極みなのだ。

山崎煙火製造所製作の10号玉レプリカ(筆者所有)

部門別では、10号玉の部における茨城県勢の安定した完成度が際立った。特に、優勝した山﨑煙火製造所の作品「昇曲付五重芯銀点滅(のぼりきょくつき いつえしんぎんてんめつ)」は、色のコントラストもさることながら、5つの芯と一番外側の輪を加えた6層の同心円が見事に真円を描いた。聞けば30代の花火師の手によるとのこと。

コンダクター役の山﨑智弘社長は「昨年から、競技大会は若手で作り上げようと取り掛かった。諸先輩から継承した技術を若手がどこまでできるのか試してみたかった」と、「攻め」を強調した。「この業界は次の世代にどう伝承させていくかがとても重要」と続けた。

期せずして、最近の若手花火師の活躍に触れた佐々木繁治前大曲商工会議所会頭の言葉が重なる。「若手は勝手には育たない。素晴らしい実績を残した先輩がいて、初めて若手が育つ」。まさに言い得て妙。

創造花火の部では、女性花火師の感性豊かな作品が高評価を得た。特に、私のお気に入りの花火師、芳賀火工の石村佳恵さん(5月14日掲載)の作品「アマビエに願いを込めて☆」が準優勝。表彰式の集合写真では、最前列に安藤真理子土浦市長と横並びに着座。この土浦で石村さんの笑顔を拝見できたことが、とてもうれしい。

3年後は「土浦の花火100年」

山﨑社長は「コロナ禍、たくさんの方々の支えがあり、大曲や土浦で多くの方に応援をいただき感謝の気持ちでいっぱい。来年は挑戦者として謙虚な気持ちで挑みたい」と、てらいのない言葉で結んだ。主催側の大会実行委員会本部長を兼ねる佐藤部長も山﨑社長と同様、「成功体験を大切にしながら、慢心することなく、反省すべきは検証し、未来につなげたい」と、緊褌一番(きんこんいちばん)の決意を語った。

煙火業者や実行委員会の面々のこれまでの様々な努力や苦労は、部外者には計り知れないものがあったと思う。あらためて、「無事」の開催を成し遂げた皆さんに、慰労と祝福の拍手を送りたい。そして、過去に懲りずに、再訪いただいた観客の皆さんには、心からの感謝の念を伝えたい。「これからも、よろしくお願いします」と。

一方、競技部門ごとのあり方や、スタッフの入れ替えに伴う運営の不慣れなど、確かに気になる点もあった。「土浦の花火100年」に向けて、次回以降、本稿でも再確認してみたい。

これも3年ぶり。翌日早朝の清掃活動は、いまだかつてないぐらい、観客の行儀の良さを実感しながら、拍子抜けするほどの短時間で終了。大会から10日が過ぎて、安全対策の看板類も撤去され、桜川沿いの自宅周辺は、晩秋の静寂な情景を取り戻した。本日はこの辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

1コメント

1 Comment
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

働く私たちのリアル《マンガサプリ》5

【コラム・瀬尾梨絵】新卒として社会に飛び出したとき、誰もが胸に抱く「理想の自分」。しかし、現実に突きつけられるのは、自分の無力さと、理想とはかけ離れた泥臭い現場であることも少なくない。そんな「やりたいこと」と「できること」のギャップにもだえ、悩み、それでも一歩を踏み出す姿を描いた、ねむようこ先生の「午前3時の無法地帯」(祥伝社、全3巻)を今回はご紹介したい。 主人公・ももこは、イラストレーターを夢見てデザイン事務所に就職したばかりの新卒会社員。彼女が思い描いていたのは、おしゃれでかわいい雑貨のデザインに関わるキラキラした毎日。しかし、配属された先は、パチンコ屋のチラシやPOPを専門に扱う、文字通り「無法地帯」のようなデザイン事務所。午前3時を回っても明かりが消えず、床には誰かが寝ており、タバコの煙と怒号が飛び交う。そこは、彼女の理想とは対極にある場所だった。 本作の最大の魅力は、新卒の誰もが直面する「理想と現実のギャップ」を、ねむ先生特有の柔らかくも鋭い感性で描き出している点にある。「私はもっとかわいいものを描きたいのに」「自分にはもっと才能があるはずなのに」。 そんなももこの心の叫びは、読んでいるこちらの胸をチクリと刺してくる。自分が本当にやりたかったこととは違う、派手でけばけばしいパチンコの広告デザインに追われる日々。その「やらされている感」と、それすらも満足にこなせない「実力不足」の板挟み。この葛藤は、クリエティブな職種に限らず、組織の中で自分の役割を見出せずにいるすべての若手社会人が共感できるはずだ。 今の仕事を本当にやりたかった? しかし、この物語が単なる「お仕事苦労話」で終わらないのは、その無法地帯な職場にいる人々との交流を通して、ももこが少しずつ「働くことの本質」に触れていくからである。 一見デタラメに見える先輩たちも、実はプロとしての矜持(きょうじ)を持って仕事に向き合っており、自分が嫌っていた仕事の中にも、誰かを喜ばせる工夫や、確かな技術が必要であること。そして、理想の場所にたどり着くためには、まずは目の前の「できること」を必死に積み上げていくしかないということ。ももこが少しずつ顔を上げ、自分の居場所を見つけていく過程は、読者に「今の自分も、あながち間違いじゃないのかも」という小さな救いを与えてくれる。 ねむ先生の描くキャラクターは、どこか抜けていて愛らしく、それでいて生々しい生活感を持っている。徹夜明けのボロボロの肌、深夜に食べるカップ麺の味、理不尽な上司への愚痴。そんな等身大の描写があるからこそ、ももこの成長が輝いて見える。 「今の仕事は、自分が本当にやりたかったことだろうか?」。そう自問自答して立ち止まってしまいそうな夜、ぜひこの本を手に取ってみて欲しい。午前3時の暗闇の中で、それでも灯りを灯し続けるももこたちの姿が、あなたの心にある「ギャップ」を少しだけ埋めてくれるはずだ。(牛肉惣菜店経営)

学校給食に金属製ナット混入 つくば市の義務教育学校

つくば市は19日、市内の義務教育学校で同日出された学校給食に異物が混入していたと発表した。教職員が職員室で給食を食べようとご飯のふたを開けたところ、直径8ミリほどの金属製のナットが混入していた。 同校の他の教職員や生徒、同日ご飯が提供された他校からもほかに異物混入の報告は無く、健康被害も報告されていないという。 市健康教育課によると、同日午後0時45分ごろ、教職員が個別の器に入ったご飯のふたを開けたところ、端の方に直径8ミリほどのナットが混入していた。 同市でのご飯の調理は、給食センターとは別に、米飯納入業者が炊飯工場でご飯を炊き、一人分をそれぞれ個別の器に入れ、ふたをして各学校の配膳室に配送している。配送された給食は、職員が配膳室から各教室や職員室などに運んでいるという。 どうして混入したかについて同課は、米飯納入業者が経緯を調査したが、19日時点で不明だとしている。 市は同日、ご飯の提供を受けた市内の各学校の保護者にお詫びの通知文を出した。

「人生という旅を楽しんで」 日本国際学園大学で卒業式

日本国際学園大学つくばキャンパス(つくば市吾妻、橋本綱夫学長)で19日、卒業式が催された。同キャンパスで学んだ49人の卒業生を前に橋本学長は「人生百年時代の中で、皆さんはこれから80年先の未来に向けて歩むことになる。80年前のことを考えると時代が大きく変わってきたことがよくわかる。これから苦難が待ち受けているかも知れないが、人生という旅を楽しんで欲しい」とエールを送った。 卒業生を代表して経営情報学部人文科学専攻の朝妻翔さん(22)は「大学の4年間で自分ができることは積極的に挑戦し、成長すること、そして一人で解決しようとするのでなく周囲の人の助けを借りることの大切さを学んだ。自分が気づかないことでも他の人の客観的な視点が必要なこともある。SNSやオンラインゲームで簡単に世界とつながれる時代だからこそ信頼できる関係を築くことが大事だと思う」と答辞を述べた。 式典では、同学部情報・デザイン専攻の伊藤祥一郎さんが橋本学長から学位記の授与を受けた。さらに優秀な成績や功績があった卒業生に褒賞が授与され、同学部人文科学専攻の朝妻翔さんと情報・デザイン専攻4年の伊藤祥一郎さんにそれぞれ学長賞が、佐藤緑咲さんに前身の東京家政学院創立者、大江スミの名を冠した大江賞が贈られた。 取手市出身の卒業生、千葉譲さん(22)は「4年間は授業とアルバイトに追われて忙しかったが、無事に卒業出来てよかった。これからはバスの運転手になるので、社会人として頑張っていきたい」と語った。 同大は1990年、東京家政学院大筑波短期大学として開学。96年に4年制の筑波女子大学になり、2005年に男女共学の筑波学院大学になった。大学の運営は19年度に東京家政学院から学校法人の筑波学院大学に移り、23年からは学校法人名を日本国際学園に変更した。一昨年からは姉妹法人の東北外語学園(仙台市、橋本理事長)が運営する仙台市の東北外語観光専門学校に新たに日本国際学園大学の仙台キャンパスを設置した。 つくばキャンパスは、経営情報学部ビジネスデザイン学科に、国際教養モデル、現代ビジネスモデル、公務員モデル、AI・情報モデル、コンテンツデザインモデルの五つがあり、各モデルから選択し専門の学びを深めることができる。外国人留学生は日本文化ビジネスモデルで学ぶことができる。(榎田智司)

土浦の新小学1年生に黄色い帽子を寄付 JA水郷つくば

新年度に土浦市内の市立小学校と義務教育学校に入学する全ての新小学1年生に向けて、JA水郷つくば(土浦市小岩田西、池田正組合長)が883個の黄色い交通安全帽子を土浦市に寄付し、18日同市役所で寄贈式が催された。池田組合長から安藤真理子市長に目録などが手渡された。 交通安全帽子の寄付は同JAが地域貢献活動の一環で1977年から始め、今年で49年目となる。以前は男子がキャップ型、女子はハット型と性別で形が異なっていたが、2024年度から性別を問わず共通のハット型とした。 式典でJA水郷つくばの池田組合長は「この事業が始まった時は農協が合併する前だった。自分が入所した頃からやっていることなので感慨深い。小学1年生は、黄色い帽子をかぶっているのが知れ渡っているので、運転手も気をつけてくれる。今後も支援を続けていきたい」と話し「帽子ではなくヘルメットという声もあったが従来通り黄色い帽子となった」と付け加えた。 寄付を受けた土浦市の安藤真理子市長は「交通安全は市としても大事なことなので、長い期間寄付を続けていただき大変感謝している。子供たちには毎日元気に登下校してもらいたい」と述べた。 寄贈式では土浦市が1976年から毎年、入学祝い品として新1年生に無料で贈呈しているランドセルも用意された。ランドセルも今春から性別に関係なくジェンダーレスの薄い茶色になる(25年5月2日付)。 新小学1年生に対するJA水郷つくばの交通安全帽子の寄付は、土浦市のほか、管轄する龍ケ崎、牛久、かすみがうら、利根、美浦、阿見の7市町村全ての公立小学校と義務教育学校に対して行われる。(榎田智司)