木曜日, 1月 1, 2026
ホームコラム文部科学大臣へ送った手紙 《電動車いすから見た景色》35

文部科学大臣へ送った手紙 《電動車いすから見た景色》35

【コラム・川端舞】9月9日、国連が日本政府に分離教育の中止を勧告したのを受けて、永岡桂子文部科学大臣が13日の記者会見で、「障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に過ごす条件整備と、一人ひとりの教育的ニーズに応じた学びの場の整備を両輪として取り組む」などとし、「多様な学びの場における特別支援教育の中止は考えていない」と発言した。

これに対し、どうしても永岡大臣に直接お伝えしたいことがあり、お手紙をお送りした。その手紙を要約したものを、2回に分けて紹介する。

「共に過ごす」と「多様な学びの場」は両立しない

私は障害がありながら、小学校から高校まで普通学校の普通学級に通った。小中学校の頃、私はずっと普通学級で過ごしていたが、同じ学校には特別支援学級があり、知的障害のある同級生は学校にいるほとんどの時間を他の同級生とは違う教室で過ごしていた。その様子を見て、当時の私は「自分は勉強ができるから、支援学級にいるあの子たちとは違うのだ」と自分にも障害があるくせに、知的障害のある同級生を見下していた。

学校行事の時は、支援学級の生徒も他の同級生と一緒に参加していたが、いつもほとんど同じ教室にいない同級生を「仲間」だと思えるはずがない。支援学級の生徒とどう話したらいいのかさえ、私を含めた普通学級の生徒は分からず、お客様扱いするしかなかった。

私も支援学級の生徒とほとんど接点はなかったと思っていた。しかし、大人になってから小学校の卒業アルバムを見返すと、修学旅行でその同級生と一緒に班行動をしている写真を見つけ、「同じクラスで、修学旅行の班も一緒だったのか」と驚くとともに、その同級生と話した記憶が一切ない自分にショックを受けた。

障害のある子どもとない子どもが共に過ごすための条件整備と、特別支援学校、特別支援学級などの「多様な学びの場」は両立しない。もし、小中学校時代、支援学級がなく、知的障害のある生徒も、本人が「静かな部屋で休憩したり、自分のペースで勉強したい」と思った時以外は、普通学級で過ごすのが当たり前の環境だったら、他の同級生も彼らを仲間として受け入れることができただろう。

国連も、特定の機能障害に対応するために設計された別の環境で、障害のない生徒から切り離されて行われる教育は「分離」だとして、「インクルージョン」(※編集部注)とは明確に区別している。日本の特別支援学校や特別支援学級は明らかに「分離教育」であり、現在の分離教育を前提とした特別支援教育は見直すべきである。(障害当事者)

【※編集部注】インクルージョン(inclusion)
一般的な日本語訳では「包括、包含」。対語は「エクスクルージョン(exclusion)」で「排除、隔離」といった意味になる。教育分野では「インクルーシブ教育」という言葉で使われ、特に、障害のある子どもたちが通常学級で健常児と共に学ぶ状態をいう。国連の公式文書によると、インクルーシブ教育には、すべての生徒に最適な学習環境を提供するために、通常学級の教育内容や組織体制を変更する過程が含まれる。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

1コメント

1 Comment
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

引退競走馬の可能性を広げたい 馬耕ワイン、セラピー 美浦村に拠点

2026年は午(うま)年。日本中央競馬会(JRA)美浦トレーニング・センター(トレセン)がある美浦村に、引退した競走馬のセカンドキャリアを模索し、馬耕によるワイン作りやホースセラピー、子供たちとの触れ合いなど、さまざまな取り組みに挑戦している拠点がある。 引退競走馬の可能性を広げたいと、JRAの調教師でもある大竹正博さん(56)が2023年10月に開設した。施設の設計には筑波技術大学(つくば市天久保)の梅本舞子准教授と建築系の学生らが関わり、大竹さんの夢を形にした。施設を中心に様々な活動が評価されて25年グッドデザイン賞を受賞した。 地域の人が集う 拠点は約1ヘクタールの広さで、美浦トレセンの西側にある。敷地北側に、木造平屋建ての建物が弧を描くように3棟並び、隣りに広さ約800平方メートルの砂地の馬場が設けられている。南側には約5000平方メートルのブドウ畑が広がる。拠点の名前は「ブリコラージュ」。手元にあるものを寄せ集めて新しいものを作り出すという意味のフランス語だ。 3棟の建物はそれぞれ、8畳間4部屋分(約56平方メートル)の広さで、正方形の形をしている。3棟のうち2棟は厩舎(きゅうしゃ)で、現在、競馬を引退したサラブレット4頭とポニー1頭の計5頭が暮らす。1棟は引退馬に関わる地域の人々が集うクラブハウスだ。 ブリコラージュには、元のオーナーから引退競走馬を引き取った今の所有者らが通い、馬の体をブラッシングしたり、馬場で運動させたり、乗馬を楽しんだりしている。発達障害児などを支援する放課後等デイサービス「きゃっちぼーる」を利用する子供たちが毎週1~2回来て、えさを用意したり、乗馬に挑戦したりする。地域クラブ「美浦ホースクラブ」は、土日に厩舎を掃除したり、えさを用意したり、乗馬を体験するなどしている。調教師の大竹さんのほか、近くに住む美浦トレセンの元厩務員が馬の手入れなどを手伝う。 南側のブドウ畑では10品種が栽培されている。つくば市のワイナリー「つくばヴィンヤード」の高橋学さんからブドウ栽培の指導を受けた牛久市の畠山佳誉さん(53)が、2022年から苗を植え毎年増やしてきた。引退競走馬は畑で鋤(すき)を引っ張り、横に伸びるぶどうの根を切るなど「馬耕」をする。年3回ほどまく堆肥は、つくば市若栗にある「つくば牡丹(ぼたん)園」の関浩一園長が開発した馬ふん発酵堆肥だ。競走馬の育成牧場などから大量に出される馬ふんからつくられている。 畑を耕しているのは「サモン」という名の8歳の元オス馬。2017年に北海道日高町で生まれ、19年にデビューした。12回レースを戦ったが1勝ができないまま、20年に中央競馬の登録を抹消された。地方競馬への転籍を検討したが、骨折していることが分かり引退となった。サモンの管理調教師だった大竹さんと、デビュー時からサモンをずっとひいきにしてきた美浦村の関亮子さん(52)の2人が共同所有者となって、元のオーナーから引き取った。 関さんは「サモンは人懐っこくて、ずっと応援していた」と話す。大竹さんは、サモンに馬耕をさせる際、周囲から「競走馬に馬耕させるのは聞いたことがない」と驚かれたと振り返る。「馬耕をするようになって、サモンはむしろたくましくなった」と大竹さんは目を細める。 サモンが耕した畑のブドウで2025年春、初めて赤ワインを醸造し362本が出来上がった。「綴(つづり)」と名付け、美浦村のふるさと納税返礼品にもなった。ブドウ畑を担当する畠山さんは「馬が畑を耕す『馬耕』のほかに、これからは収穫したブドウや堆肥を馬に運んでもらう『馬搬』にも取り組み、引退競走馬のセカンドキャリアを応援したい」と話す。畑にブドウの苗をさらに植えて、ワインの種類も3種類くらいに増やす計画だ。 年5000頭近くが引退 中央競馬では毎年、5000頭近くの競走馬が引退するという。馬の寿命は長いと30年ほど。引退後は地方競馬に転籍したり、乗馬クラブが引き取ったり、競馬ファンが譲り受けるケースなどがある。しかし活躍の場が用意されない引退馬も少なくないと大竹さんはいう。 大竹さんは東京都出身。父親は騎手で、子供の頃から馬に親しんで育った。麻布大学獣医学部を卒業後、北海道で働いた後、JRAの調教師になり、2009年、美浦トレセンに厩舎を開いた。18年に有馬記念を制したなどの実績がある。 調教師の仕事の傍ら、大竹さんは個人で、引退競走馬支援団体を応援するなどの活動を続けてきた。「かつて、母屋と厩(うまや)が一体になった曲がり屋で人と馬が隣り合って暮らしてきたように、人と馬が一緒に過ごせる現代版のコンパクトな曲がり屋をつくりたい」と思うようになり、2020年ごろから、馬がストレスなく過ごせる、馬が主役で人が集まる場所づくりの構想を温めてきた。 実現に向け、筑波技術大の梅本准教授らと構想を練り上げた。美浦トレセンそばの畑を大竹さんが一部購入したり、借りるなどしてブドウ畑をつくり、厩舎とクラブハウス3棟を建て、ブリコラージュが完成した。3棟の建物の骨組みには、岩手県の森林で切り出された木材を馬が運んだ「馬搬出材」を用いている。弧を描くように配置された3棟は、人と馬が常に気配を感じられるように設計されている。施設には視覚を遮る垣根などは設けず、通り掛かった人だれもが、馬がいる風景を眺められるにした。 引退馬を引き取ると通常、管理費用として1頭当たり月15万円、年間で200万円程度かかる。大竹さんは、引退馬を引き取った所有者や、引退馬に関わりたいと希望する地域住民が自ら、馬のえさやり、手入れ、運動などを手伝うことでコストダウンできる仕組みをつくり、だれもが支援の担い手となれるようにした。厩舎の清掃やえさやりをする地域クラブ「美浦ホースクラブ」代表の阿部彩希さん(37)は「一人一人、ブリコラージュに集う目的は違うが、馬を通じて、地域のたくさんの人が自分の目標に向かって活動し、協力し合う場所になっている」と話す。 人と馬が一緒に過ごす3棟の建物で構成される現代版の曲がり屋を、だれもが引退競走馬に関わることができる支援拠点として、地域にさらに増やしていくのが大竹さんの次の目標だ。大竹さんは「まずここに来て馬を知ってもらって、興味をもってくれたら」と話す。(鈴木宏子)

あけましておめでとうございます【吾妻カガミ】214

【コラム・坂本栄】高市さんのピント外れには唖然(あぜん)としています。デフレは終わりインフレが心配なのに安倍さんの経済政策をまねしているからです。トランプさんは唖然どころか呆然(ぼうぜん)です。関税政策と移民政策で国を壊しながら外交では敵と味方の区別もできないようです。以上、今年80になる高齢者の繰り言でした。 私は年相応の病を抱えながら仕事をしています。昨夏には隔月刊フリーペーパー「ふるさと通信」の会長職を引き受け、定款に広告代理店業を加えました。NPOネット媒体の活動費を補うだけでなく、地域のFM放送、ネットTV、ケーブルTVなどの広告取りを手伝うためです。 日米の首相と大統領に唖然 上の2パラは年賀状の文面ですが、少し補足します。デフレ脱却を目指したアベノミクスは金融緩和+財政出動+規制緩和で需要をつくり出すことでした。ところが世界のあちこちで戦争が起き、このところモノやサービスの価格アップが目立ちます。安倍さんの時代とは様変わりなのに、高市さんは師匠の財政大出動をなぞっています。経済の現実よりもアベノミクスに目が行くようです。 方向性が違うメニューもあります。国の内外で広がる排外的な動きに便乗したのか、高市さんは外国人の受け入れでは規制を強化しています。先進国の社会・経済は外国人の世話にならないと成り立たないのに、入国や滞在を規制するのは愚策です。 トランプさんの思考がよく見えてきました。2期入り早々、軍事・資源上の必要からデンマーク領のグリーンランドがほしい、経済圏として見るとカナダは米国の一部だ―などと言っていましたが、最近では嫌いなベネズエラの大統領を力で排除すると公言しています。こういった身勝手には友好国も付いていけません。 トランプさんの暴言を見聞きし、プーチンさん、習さんはさぞ喜んでいるでしょう。ロシアの一部だと言ってウクライナに攻め込んだプーチンさん、台湾をいずれ中国に組み込むと言っている習さん。トランプさんの思考は彼らと同じです。これでは相手の振る舞いに文句を付けられません。 告知記事・広告記事も掲載 年賀状の後段についても補足します。NPO法人 NEWSつくばは、新聞など信頼できる媒体と同じように、きちんとした取材による行政やイベントなどの記事のほか、地域の識者によるコラムを掲載しています。それに必要な経費は、企業などからの大口寄付やバナー広告収入、個人や法人の正会員と賛助会員から納めていただく会費で賄っています。 「ふるさと通信」との連携は、本サイト運営に必要な経費確保の多様化を図ったものです。取材編集と経費確保の両面で、私たちは柔軟なマネジメントを追求していきます。今年もよろしくお願い申し上げます。(経済ジャーナリスト、NEWSつくば理事長) <事務局から> 告知記事と広告記事の掲載についてはinfo@newstsukuba.jp宛て事務局に問い合わせてください。

不適切な事務 新たに4点 つくば市生活保護行政 県監査で指摘

生活保護行政をめぐり茨城県福祉部が今年度実施した一般監査で、つくば市に対し、新たに4点の不適切な事務を指摘し、市に改善を求めていたことが情報開示請求で分かった。 つくば市の生活保護行政をめぐっては、誤認定や過支給など不適正な事務処理が2024年度に相次いで明らかになり、市は今年6月、実態調査の結果と再発防止策を記した報告書をまとめたばかり。報告書の調査は十分だったのかが問われる。 県の監査結果は今年8月に市に通知され、市福祉部は9月に改善報告書を県に提出した。市は4点の指摘事項をいずれも認め、県に改善に向けた取り組みを報告している。 問われる再発防止策の実効性 不適切だと指摘を受けた4点のうちの一つは、2024年度に発覚した障害者加算の誤認定の後処理をめぐるもの。県の監査で「自立更生費の検討過程について記録が不十分な事例」があり不適切だなどと指摘された。 市は、誤認定により生じた過支給分の返還を生活保護受給者に求めるにあたり、一部の受給者について、過支給分から「自立更生費」を差し引いた上で返還を求めた。自立更生費とは、受給者が就労や健康回復など日常生活や社会生活上の自立を目指すために必要な費用で、家電の買い替え、資格取得の学費、就労に必要な衣服の購入費、住宅の修繕費などが認められる。 6月の報告書で市福祉部は、誤認定をめぐる再発防止策として「今後の誤認定を防止するため、法令を再確認し、チェックリスト、フローチャートの作成を行い」「法令と根拠資料を突合し、要件の確認を徹底していく」など、自ら再発防止策を掲げていたにもかかわらず、県から指摘を受けた。 県の指摘に対し市は「ケース診断会議で自立更生費の詳細な検討は行っていたものの、記録についての認識不足により検討過程の記録が不十分だった」と県に回答しており、6月の報告書で自らまとめた再発防止策の実効性が問われた形だ。 自立更生費に清涼飲料水121万円 一方、市が誤認定の後処理をするにあたり、具体的に何を自立更生費と認め、返還金から控除したかが、情報公開された資料で一部明らかになった。返還に関する資料に自立更生費として「清涼飲料水代121万750円」「電動自転車12万円」「貸し倉庫利用料10万6244円」などが記されており、生活保護に詳しい関係者によると、通常は認められることが難しい内容だという。 自立更生費として控除したのは最大で過去5年分という。詳細は明らかにされてないが、121万円の清涼飲料水の場合、仮に1本150円と計算すると8071本分、1日当たり4.4本に相当し、5年間にわたって毎日、150円の清涼飲料水を4.4本を飲み続けた額に相当する。この点について市社会福祉課は、医師に病状調査し決定したなどとし、対象者の生活状況や病状によって必要かどうか個別に検討した結果であり、適正だったとする。 不適切な診断料500件超 監査での県の指摘事項はほかに①生活保護受給申請者の親、きょうだい、配偶者などに経済的に援助する力がないかを調査する扶養能力調査が適正に実施されていない事例があった、②受給者の収入の課税調査について、遅くとも8月分の保護費に反映するとされているにもかかわらず、課税調査の完了が9月となっている事例があった、③障害年金の受給を申請する際に必要となる診断書料の支給手順について、本来、市が検診命令を出し、医療機関からの請求を受けて、市が医療機関に支払うべきところ、申請者が医療機関に診断書料を払い、市が申請者に支給していたなど、国の通知に基づかない不適切な診断書料の支給が2019年度から5年間で500件を超過していたことが新たに認められたーなど。 ③500件を超える不適切な診断書料の支給について市社会福祉課は「県には以前から運用誤りの報告をしていた」などとして、県に監査結果通知の訂正を求めていたが、県は「見解は変わらない」としている。市によると、不適切な診断書料の支給は550件225万1350円分で、国に返還する必要はないとしている。(鈴木宏子)

認知症の理解《メディカル知恵袋》13

【コラム・廣木昌彦】認知症は誰もが発症する可能性のある大変身近な脳の病気です。「考える」「認識する」「記憶する」などの脳の機能が、病気やけがなどで悪化して、日常のさまざまなことに助けが必要な状態をいいます。認知症の最大のリスクは加齢で、超高齢化が進んでいる日本では、2025年には認知症の患者は最大で730万人で、65歳以上の高齢者の5人に1人に達すると厚生労働省の調査で推計されています。症状が進むと家族や社会の問題へとつながるため、一人ひとりが認知症を自分自身の問題として正しく理解しておくことが大切です。 加齢と認知症:物忘れの違い うつ病などの精神科の疾患や多くの高齢者に見られる加齢による物忘れは認知症ではありません。加齢による物忘れと認知症による物忘れは以下のように違います(表1)。 認知症の原因 認知症の原因となる疾患は、アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)、レビー小体病(レビー小体型認知症)、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害の3つが大半を占めます(図1)。アルツハイマー病とレビー小体病は脳の神経細胞が緩徐(かんじょ)に変性し脱落していく病態です。アルツハイマー病は認知症の最も頻度の高い原因で、脳にアミロイドβという特殊なたんぱく質がたまり、それが神経細胞を破壊して、認知症の症状を出現させる病気です。 レビー小体病は脳の神経細胞にレビー小体という異常なタンパク質がたまることで、認知機能が低下する病気です。レビー小体型認知症は運動機能が低下するパーキンソン病と病態が共通することが分かっています。脳梗塞や脳出血に関連した認知症は血管性認知症と言われ、血管の閉塞(脳梗塞)や破綻(脳出血)により脳組織が破壊されることにより生じます。脳のさまざまな場所に起こり得る病態ですので、脳の機能障害もさまざまで、「まだら認知症」といわれています。 認知症の診断 認知症の診断は、日常生活や職場の様子などの問診が重要なため、診察時にはご家族に同席していただきます。認知機能低下の評価として、質問に答えていく形式の検査を行います。さらに血液検査と頭部CTまたはMRI検査を行うことで、根本的治療が可能であるビタミンB欠乏症、甲状腺機能低下症、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫などが診断され、血管性認知症は通常、頭部MRIで診断されます。 これらの疾患が該当しない場合は、頭部CTまたはMRIで脳の萎縮(やせ)や脳梗塞、脳出血などについてさらに詳しく評価し、その結果アルツハイマー型認知症またはレビー小体型認知症が疑われる場合は、最終診断のために脳血流スペクト検査に進みます(図2)。この検査は脳の機能を画像化および定量化するものです。レビー小体型認知症の診断のためには、必要に応じて「MIBG心筋シンチ検査」「DATスペクト検査」という検査を追加します。 認知症の治療 現在のところ認知症を治癒させるものはありません。アルツハイマー型およびレビー小体型認知症に対しては進行を止めることは困難ですが、薬物治療で進行を遅らせることは可能です。現在日本では、アルツハイマー型およびレビー小体型認知症に対して、進行の抑制を目的としたいくつかの内服薬と貼付薬および注射薬が保険適応となっています。また近年、アルツハイマー型認知症に対し、「レケンビ」「ケンサラ」という2つの点滴製剤が保険収載されました。 どちらの薬剤も進行を遅らせる効能ですが、アルツハイマー病の原因とされる脳内にたまったアミロイドβを除去する作用があり、大変注目されています。この治療を実施するためには、施設と医師の要件が定められており、茨城県でもいくつかの限られた病院のみ治療実施が可能です。 さらに薬価が高く、患者さんの自己負担費用が、年間10数万円から100万円程度となることが問題ですが、「レケンビ」は今後薬価が引き下がる予定であり、自己負担が軽減されることが見込まれています。血管性認知症も根本的な治療はありませんが、進行予防は可能です。高血圧や糖尿病などの血管危険因子のコントロールや抗血栓薬の内服などで脳梗塞や脳出血の再発を予防することが重要です。 認知症疾患医療センター 認知症は経過とともに、せん妄、抑うつ、興奮、焦燥などの精神症状(心理行動症状)が伴い、介護者または家族に大きな負担となります。しかし、このような症状は適切な内服薬で安定させることが十分可能ですので、担当医師に適切にその状態を伝えることが重要です。 そして認知症の患者さんは、自動車の運転、徘徊(はいかい)や行方不明、虐待、詐欺などの被害、自宅のゴミ屋敷化など、さまざまな問題があり、これらの対策として介護保険サービスが活用されています。介護保険サービスは、主治医、社会福祉士、ケアマネジャー、保健師を含め包括的に支援に取り組む地域包括支援センターで相談することができます。また、認知症の医療相談や診察に応じる認知症疾患医療センターが各地域に設置されています。 当院はこのような介護と医療のシステムを十分利用し、患者さんを取り巻く問題を解決してまいります。(筑波メディカルセンター病院 脳神経内科 専門部長)