2020年ごろから 火葬直前、ひつぎのふた開け
つくば市玉取の市営斎場「つくばメモリアルホール」(高野徹也斎場長)が2020年ごろから、火葬のため炉の前に運び込まれたひつぎのふたを開け、遺族らに無断で副葬品を取り出し、勝手に処分していたことが分かった。
副葬品は、お別れの儀式の最後に遺族らがひつぎに納める思い出の品などで、故人が生前愛用していた服や好きだった食べ物、故人への手紙などが多い。
高野斎場長によると、燃やしてはいけないものが混入し、副葬品が溶けて遺骨が汚れたり、損傷したり、燃え残った副葬品が炉台にくっついて、はがす際に炉台を傷つけたり、火葬時間が長くかかるなどの事例が発生したことから、火葬の直前にひつぎのふたを開けて、副葬品を取り出すようになった。スタッフが、献花でいっぱいになったひつぎの中に手を入れ、白装束と花以外の副葬品を取り出していたという。
取り出した副葬品は今年3月末まで、供養した上、残った遺骨の灰などを処分する委託業者に、灰と一緒に引き取ってもらい処分していた。処分先については「委託業者それぞれ、埋葬するお寺をもっており、そこに埋葬されたと思う」としている。
同ホールは火葬、告別式、法事などを行うことができ、同市内外の住民が利用できる。実績報告書によると2020年度の火葬件数は1754件、21年は1850件だった。20年ごろから、感染症などで亡くなった人を除ぎ、すべてのひつぎを開けて副葬品を取り出していたといい、高野斎場長は、処分した副葬品が合わせてどれくらいになるか「分からない」としている。
今年4月になって、副葬品の混入を改善するため同ホールは、公害、火葬炉の損傷、不完全燃焼などの原因となる副葬品は入れないよう呼び掛けるちらしを作成、さらに徹底するため、ひつぎから取り出した副葬品を葬祭業者に返却するようになった。
高野斎場長は「4月以降、葬祭業者から返却に対する意見などは出てなかったので、納得してもらえたと思っていた」としている。
一方、今年9月初め、市外の土浦市右籾にある葬祭業者「ひまわりくらぶ」(井上圭一代表)が遺族と、同ホールで火葬を実施したところ、副葬品としてひつぎに入れたはずの紋付きの着物と果物を、火葬の最中に返却された。井上代表(60)がスタッフらに尋ね、メモリアルホールが、遺族らに無断でひつぎのふたを開け、副葬品を取り出していたことが発覚した。
井上代表は「返された紋付きの着物は、亡くなった90歳を超えるおばあさんのもので、先に逝ったおじいさんがあの世で、おばあさんを迷わず探し出せるようにとの思いが込められている」「おばあさんは亡くなる前の20日間、入院先で点滴を受け、何も食べられたなかったので、生前好きだった果物などもひつぎに納めた」と話す。着物は絹製の1着のみで、同ホールがひつぎに入れないよう呼び掛ける副葬品の対象ではなかった。
「副葬品は遺族の思いがこもった神聖なものであり、ふたを閉じた後、第3者がふたを開けて中身を取り出すなどあってはならない。故人に対する冒とく」だと述べ、「遺族は、着物が煙になって一緒に天に昇ったと思っている。取り返しがつかない」と憤る。井上さんの手元にはまだ、返された紋付きの着物があり「遺族にどう言って返せばいいのか」と頭を抱える。「葬祭業者は下請けと同じ立場なので、メモリアルホールから副葬品を返されてもほとんど意見を言えない」ともいう。
同ホールは、井上代表から「遺族の心情や死者の尊厳を軽視する行為」だなどの申し入れを受け、不適切な行為だったことを認め、申し入れがあった後の9月13日以降は、ひつぎのふたを開けて副葬品を取り出すことはやってないとし、高野斎場長は「配慮が足りなかった」としている。
つくば市は9月30日夜、同ホールによる副葬品の不適切な取り扱いについて発表し、五十嵐立青市長は「遺族の心に寄り添う配慮が足りず、深くお詫びします。今後は遺族の心に寄り添った対応を心掛けるよう徹底して参ります」とするコメントした。
一方、今後の対応については、火葬を行う上で支障がある副葬品について、遺族や葬祭業者に周知を徹底し、遺族や葬祭業者に確認した上で取り出すよう改善するなどとしている。
これに対し井上代表は「遺族や葬祭業者に確認すれば副葬品の取り出しを続けると言ってることになり、つくばメモリアルホールは葬送という儀式を何も分かってないのではないか。燃えないものや大きなものをひつぎに入れてはいけないことは遺族も分かっており、信頼してほしい」という。
近隣市「ふたを開けることはない」
一方、つくば市近隣の火葬場である土浦市営斎場(同市田中)と、うしくあみ斎場(牛久市久野町)はNEWSつくばの取材に対しいずれも、火葬場でひつぎの中に入った副葬品を取り出すことはないし、ひつぎのふたを開けることはないと回答する。両斎場とも、副葬品に燃えにくいものが混入しないようチラシを渡すなどして周知しているとした上で、火葬時間は人によって違うので、時間が延長されるケースもあるが、いずれも、副葬品が原因でトラブルが発生したことはないとしている。(鈴木宏子)