金曜日, 11月 14, 2025
ホーム土浦散策から出会う土浦・路地裏物語 石川多依子さん モノクロ写真展

散策から出会う土浦・路地裏物語 石川多依子さん モノクロ写真展

土浦市在住の写真家、石川多依子さんの写真展「モノクロ語り・土浦」が13日から、同市大和町の土浦市民ギャラリーで開催されている。2007年から現在までの約15年間、街の変遷を撮り続けた写真の中から、57枚を厳選して展示している。

街角での気付きが源泉

写真展より

昨年1月、大町の通りに昔からある茶舗で、午前中の暖かい日差しに包まれて店番をする、1人と1匹の姿を収めた作品が展示されている。「若いころから知っている人で、懐かしいと思って話し掛けて撮らせてもらった。おじさんが優しい目で猫を見ていて、猫はどーんと構えている。その関係がいい」と石川さん。

写真展より

2015年2月の厳寒の日、当時はまだアーケードがあった中央大通り商店街で、うつむき加減で歩いていた女性を振り向きざまに撮った作品もある。「すごく寒そうな感じで、マフラーの流れ方や手にしたビニール袋も雰囲気がある。駅へ向かうバスもちょうど来て、いい感じに撮れた」

生活の臭いがする写真

「人がいない風景ではなく、ちょっとでも人が入っている、生活の臭いがする写真が撮りたい」と石川さんは言う。はしごを使って物干し台へ登る主婦や、道端で遊ぶ子どもの姿などもある。ほんの少し前まで身近に見られた光景だ。「こういう写真にはモノクロの方が似合う。見ていても物語性があり、想像力が働く気がする」

今展に向けて、写真をプリントしながら思ったのは、やっぱり土浦は古い街だなということ。駅の周辺や表通り沿いなどは再開発が進んだが、一歩奥へ入ると路地や裏町が残っており、そうガラッとは変わっていない。ただそれでも、少し前まであった塀がなくなったり、家が空き地になっていたりなど、歩く度に小さな変化がそこかしこで見られるという。

タイの少数民族など撮影

石川さんは1945年水戸市生まれ。中学2年のとき父から一眼レフをもらい、写真の撮り方を教わった。高校3年で県美術展に初入選。大学入学から就職、結婚を経て一時写真から離れたが、40歳のころ家族と共に両親の住む土浦に戻り、再び精力的に撮り始めた。

インドや中東の国々を巡ったほか、タイでは少数民族の子どもたちと出会い、2000年にチェンライ市で教育支援活動をするNGO「さくらプロジェクト」に参加。北部山岳地帯の暮らしや、民族衣装の美しさなどを、現地に滞在しながらカメラに収めてきた。写真は都内のギャラリーや、水戸の常陽芸文センターでの個展などで発表。京都写真美術館のサイトでは、エチオピアで撮影した「サバンナの民・ボラナ」が公開されている。

歩いて初めて目が向く

こうした活動の合い間を縫って、07年ごろから土浦の街を撮り歩くようになった。「車では通ることがなかった路地や裏町の面白さに、歩くようになって初めて気付いた。しかもカメラを下げていると、普段は素通りしていたところにもあちこち目が向く。古い家屋のたたずまいや、当たり前の日々を営む人たちの姿に、懐かしさや温かみを感じてきた」

コロナ禍以降は、健康のためという目的も加わった。「何もしないでいると家に閉じこもりきりになってしまう。自分の中では遊びの写真だが、この辺で一度まとめてもいいかなと思った」と開催意図。15年余りの移りゆく街の姿が、ほぼ撮影年代順に並んでいる。(池田充雄)

写真展の様子

◆石川多依子写真展「モノクロ語り・土浦」は13日(火)から19日(月・祝)まで、土浦市大和町1-1アルカス土浦1階 土浦市民ギャラリーで開催。入場無料。開館時間は午前10時~午後5時(最終日は午後4時まで)。問い合わせは電話029-846-2950(同ギャラリー事務室)

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緊急消防援助隊が合同訓練 1都9県の隊員ら1400人が集結 

県内で20年ぶり 大規模災害発生時に全国各地に駆け付ける緊急消防援助隊 関東ブロックの合同訓練が12日、土浦市小高にある採石場、塚田陶管柳沢工場の敷地内で実施された。1都9県(東京、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、山梨、長野、静岡、福島)の緊急消防援助隊による合同訓練の一環で、県内での開催は20年ぶりとなる。 12日と13日の2日間、土浦市のほか、ひたちなか、神栖、鉾田、鹿嶋、水戸市の13会場で、1都9県の緊急消防援助隊員や関連機関など約1400人が参加し、倒壊建物救助訓練、多数負傷者救助訓練、石油コンビナート火災対応訓練などのほか、宿営地設置・運営など後方支援訓練や、指揮本部運営訓練なども実施されている。 土浦の集落が孤立したと想定 訓練は、連日の大雨により河川氾濫や土砂災害が発生している中で、茨城県沖を震源とする震度6強の地震が発生したという想定で行われた。津波や大規模火災などが県内各地で発生し、多数の負傷者や孤立者が出た複合災害の状況を想定した。 土浦市の会場では、東京、埼玉、栃木の3都県の緊急消防援助隊210人と、茨城県内の消防広域応援隊14部隊60人が参加。同市東城寺地区の集落が土砂崩れにより孤立したと想定し、消防隊員らが専用重機で道路の障害物を除去したり、崩れた土砂に埋もれた車両や倒壊した家屋の中からの救助、ヘリコプターによる上空からの救助などの訓練が実施され、部隊同士や関係機関との連携、指揮系統の確認などが行われた。 ほかに自衛隊、国土交通省、茨城DMAT(災害派遣医療チーム)なども加わり、がれきが散乱して通行が困難な場所でも走行できる救助車両や消防ヘリコプター、照明車など約80台が救助訓練に当たった。 鬼怒川水害では支援受け入れ 緊急消防援助隊は、1995年1月に発生した阪神・淡路大震災をきっかけに創設され、大規模災害時に消防庁長官の要請などにより、他の都道府県から派遣される。2011年の東日本大震災や24年の能登半島地震でも活躍した。県内では、15年の関東・東北豪雨による鬼怒川水害の際に支援を受けている。 緊急消防援助隊ブロック合同訓練は、1996年から全国を6ブロック(北海道・東北、関東、中部、近畿、中国・四国、九州)に分け、各ブロック内の都道府県が持ち回りで実施してきた。茨城での開催は2005年以来となる。 茨城県消防安全課は今回の訓練について「県内での大規模災害の発生を想定し、近隣都県の緊急消防援助隊の応援を受け入れ、多くの関係機関とともに実施する今回の訓練は、受援体制の強化に大きく寄与する大変意義深いもの。本訓練を通じて、本県の受援体制の見直しを図り、茨城県緊急消防援助隊受援計画へ反映させていきたい」と話している。(柴田大輔) https://youtu.be/OkVy1R0cUdQ

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