日曜日, 1月 25, 2026
ホームつくば「できない」ことは「ダメ」ではない つくばで障害施設ドキュメンタリー上映会

「できない」ことは「ダメ」ではない つくばで障害施設ドキュメンタリー上映会

つくば市で17日、知的障害者支援施設・しょうぶ学園(鹿児島市)の日常を描いたドキュメンタリー映画「幸福は日々の中に。」の上映会と、しょうぶ学園の統括施設長、福森伸さんを招いた講演会が開催される。主催者で、知的障害のある子を持つ親として福祉現場に携わる、つくば市在住の福原美紀さん(50)にイベント開催への思いを聞いた。

障害のある人が自由に生きられる場所

緑あふれる敷地に点在するカフェやギャラリー。工房では障害のある人たちが、粘土や木工、壁や床に絵を描くなど、自由に好きなことに打ち込む。職員は、できたものを活かしてバッグなどへと製品化する。互いの特技を活かした協働作業。昨年6月、22歳の息子の入所先を探していた福原さんは、グループホームもあるしょうぶ学園を見学に訪ねた。まるで一つの街のような敷地内の光景に「これだ!」と思ったという。

この日は施設に空きがなく、すぐの入居は叶わなかったが「障害のある人が自分の基準で生きられる街。誰もがありのまま、自由でいていい。貴重な場」だと感じ、「この価値観を多くの人に知らせたい」と上映会を企画した。

しょうぶ学園は、知的障害者更生施設として1973年に鹿児島市で開設。現在、主に知的障害者を対象に、施設入所支援や生活介護、就労支援などの福祉サービスの提供、工芸品や農業など創作活動、敷地内での飲食店やギャラリー、交流スペースを通じた地域交流事業を展開する。アート制作など、ものづくりを軸に、障害の有無によらない互いに協働しあうコミュニティーづくりが注目されている。

成功体験を積み上げられなかった

「学校教育を含め、障害者が健常者側に合わせ『できる』よう指導する場面に違和感を持ってきた」と福原さん。息子に知的障害がわかったのは3歳の時だ。当時は同世代の他の子との違いは小さかったが、成長と共に「できない」ことが増えていく。ただ「普通に育てたい」という思いは強かった。「大変」「怖い」「暴れる」障害へのネガティブなイメージも頭にあった。

小学校は普通学校を選択した。「他の子より遅いが、言葉を覚え、トイレも行ける。いつか差は埋まるはず。諦めたくない」と思った。「自分の息子の障害を認めるのが怖かった。『普通』で行けるはず」という思いも背中を押しした。

小学校では「成功体験がなかった」。授業では計算ができない、時計が読めないことを指摘され、息子の絵には他人の手が加えられた。「他の子供と差が出てしまう」と思った教師の「善意」だった。運動会では一人、ぽつんと地面に絵を描いていた。周囲の子との軋轢もあった。「できない」だけが積み重なり「母も子も自信を失った」。普通学校での生活に限界を感じ、小5の時に特別支援学校に編入した。

支援学校で始まった新生活。保護者への連絡帳に教師がコメントを書く。「積極的に(同じクラスの)重い障害のある子の面倒を見ています」「元気に歌を歌いました」「きちんと挨拶をしています」。できることばかり書いてある。「思わず『先生、これ誰かと間違えてませんか?』って聞いちゃいました」。授業参観では「それまで自信がなくて下ばかり向いてた息子が、クラスのリーダーシップをとっていたんです」息子の新たな一面に「ここに入れてよかった」と思った。

もっと彼らを信頼していい

「一般的に、社会に出ると、障害のある人は余暇を過ごす場所が少ない」と福原さんは話す。生活にサポートが必要なため、自由な行動、出会いの機会が限られる。だから福原さんは健常者と同様に青春期を楽しみ、人生経験を積める場として、障害者総合支援法に基づき2年間利用できる「福祉型専攻科シャンティつくば」や、知的障害のある青年たちのバスケットボールチーム「スマイルバスケットボールクラブ」を作ってきた。それは孤独になりがちな母親たちの交流の場になればとの思いもあった。

「今の社会は障害者を信頼していないんだと思います」。福原さんも、つい息子に「なんでできないの?」と言ってしまう。しかし、バスケや活動を通じ互いに学び合う子供たちに接し「もっと信頼していい。私たちが彼らのルールを理解するのがいい」と実感した。

以前見学した企業を福原さんが振り返る。そこでは健常者の中で、知的障害のある人も得意な作業に従事する。「誰が障害者で、誰が健常者かひと目でわからない」空間が作られていた。「適材適所。みんなに同じことをさせ、できないことを障害のせいにしない。『得意』を見つけ実行すると『障害』がなくなる。『できる』ことをすればイキイキできる。それは健常者も同じですよね」

「障害は決して『ダメ』ではない。今の社会は『できない』ことを『ダメ』だと責める風潮が強い。でも、この映画からは『ありのままでいい』と感じられる。きっと、鑑賞後に世界観が変わるのではないか。健常者にも選択肢が増えたら」と上映会に込める思いを語る。

「障害ってなんだろう?」。以前、栃木県での講演会で福原さんが聞いた、しょうぶ学園・福森さんの言葉だ。「理解してほしいというよりも、少しでも多くの人に障害のある人々や、福祉のことを知ってほしいと思っています」と福原さんは呼びかける。

◆しょうぶ学園「幸福は日々の中に。」上映会・学園長福森さんお話会 9月17日(土)午後1時〜上映会、午後3時~福森さん講演会。定員30人(事前予約制)。料金(税込み)は上映会のみ・大人1500円、中学生以上の障害者1000円、講演会のみ:大人3000円、中学生以上の障害者1500円、両方参加:大人4000円、中学生以上の障害者2000円。介助者:全て1人まで500円。会場は老人福祉センターとよさと(つくば市遠東639)。問い合わせは、メール:smile-fiona418@sea.plala.or.jp、電話:090-8963-9296(福原)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

3 コメント

3 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

投票所入場券 間に合わず つくば市 衆院選’26

解散に伴う衆院選が27日公示、2月8日投開票で行われる。解散から投開票まで16日間と戦後最短となり時間的余裕がない中、つくば・土浦両市の選挙管理委員会も準備に大わらわだ。有権者数が20万2093人(昨年12月1日現在)と県内で2番目に多いつくば市では、投票所入場券の交付が遅れ、有権者の手元に届くのは30日以降になる見通しだ。入場券の交付遅れは全国各地で起こっている。 30日以降 有権者の手元に つくば つくば市では、投票所入場券の交付が、期日前投票が始まる公示日翌日の28日に間に合わない見通しだ。ただし投票所入場券が無くても選挙人名簿に登録があれば投票できる。市選管は、本人確認ができる運転免許証やマイナンバーカードなどがあればスムーズに投票できると話す。 投票所入場券は公職選挙法施行令で「選挙期日の公示日以降できるだけ速やかに交付するよう努めなればならない」と規定され、各自治体の選管は、期日前投票が始まる公示日翌日までには有権者の手元に確実に届くよう努めてきた。 市選管によると今回つくば市では、入場券を印刷する印刷所の確保、印刷工程の都合、校正などで遅くなり、投票所入場券の発送が公示日翌日の28日になる見込みだ。 選挙ポスター掲示板の設置は順調に進んでいるという。例年の選挙同様、市内448カ所に設置され、27日の公示日前までには設置が完了する見通しだ。ただ進捗状況は、複数の業者に地区ごとに割り振って設置を依頼しており「進捗状況は(地区ごとに)バラバラ」という。 投票所については、期日前投票所は、例年同様、つくば市民センター・コリドリオなど市内9カ所に設置する予定だ。期日前投票の期間は公示日翌日の28日から投票日前日の2月7日までだが、このうち商業施設イオンモールつくば(同市稲岡)では期間中の全日程ではなく「あくまでも会場が押さえられる日数に絞って開設予定」という。具体的な日程は現在調整中としている。一方、別の商業施設イーアスつくば(同市研究学園)での期日前投票は「今回は会場の確保が難しく、設置しない」という。 投票日の2月8日の投票所については例年同様、市内76カ所に開設する。ただし各投票所の立会人などの確保については「調整中」(23日時点)と言い、人員確保にまだ苦心している。 開票は8日夜に例年同様、同市金田の桜総合体育館で実施されるが、もともと別の予約が入っていた。市選管によると「予約を調整して使えるようになった」という。 ほかに、今回の選挙では投票啓発グッズを制作依頼する時間的余裕が無いため、投票啓発はSNSを中心に実施していく。 投票啓発の横断幕制作は業者に依頼しており、市内に掲示する予定だ。 開票所「譲ってもらった」 土浦市 一方土浦市は、投票所入場券の交付について、郵便局の協力を得て、公示翌日の28日におおむね有権者の手元に届く見通しだ。同市選管は「遅くとも29日頃には届く予定」だという。投票所入場券が無くても選挙人名簿に登録があれば投票ができる。 選挙ポスター掲示板については例年同様、市内340カ所に設置され、27日の公示日前までには設置がすべて完了する見通しだ。同市では一つの業者に設置を依頼しており、業者が複数の班に分かれて市内各所で設置に当たっている。 期日前投票所は例年同様、イオンモール土浦(同市上高津)と土浦ピアタウン(同市真鍋新町)の商業施設2カ所を含めた市内6カ所に設置する。 2月8日の投票日当日の投票所は例年同様、市内50カ所に開設する。各投票所の立会人については「滞りなく確保が進んでいる」という。 開票作業は例年同様、同市大岩田の水郷体育館で実施する。開票日の2月8日には別の団体が予約を入れていた。今回、「『選挙だから』ということで(団体から)譲ってもらった」と市選管は明かす。 (崎山勝功)

4年間の里山活動を振り返る《宍塚の里山》132

【コラム・谷本旭陽】私が宍塚の里山を初めて訪れたのは2022年7月のことです。幼いころから磯遊びや虫取りなど自然の中で遊ぶことが大好きだった私にとって、この活動は自分の好きなことを追求できるものでした。しかし大学のサークルという今までと全く違う環境、そして同期生が少なく内向的な性格だったことから、最初はとても緊張していました。 初めての活動は外来種であるセイタカアワダチソウの駆除でした。その作業中、先輩たちは歌いながら楽しそうに駆除を進めており、その和やかな雰囲気に驚きました。1年生で初参加の私にも気さくに話しかけてくれ、自然の中で誰一人として孤独にならず、みんなで夢中になって作業を楽しむ光景が印象的でした。 印象に残った3つの活動 この経験がきっかけとなり、私は毎回のように活動へ参加するようになりました。 特に印象に残っている活動が3つあります。 1つは、宍塚大池の保全活動(2022年8月)です。池の中に入り、熊手でヒシを駆除し、日光が届くようにする作業は、自然を守る手応えを感じられるものでした。 2つ目は、地元の子どもたちとの交流(2023年11月)です。ひたすら鬼ごっこをして、学生たちの方がバテバテになったのも良い思い出です。里山はただ活動する場所だと思っていましたが、地元の方々との交流やウォークラリーなど、いろいろな楽しみ方があることも知りました。 3つ目は、階段プロジェクト(2025年12月)です。森林内の坂道となっている箇所に階段を造ることで、安全に通れるようになりました。1日中の土木作業で筋肉痛や腰痛でしんどかったですが、大学卒業前に大きなプロジェクトを終えることができ、うれしかったです。 私の人生の貴重な財産に 里山活動の魅力は自然を満喫できるだけではありません。先輩、NPOの方々、地元の方々と、長期的な交流ができます。人見知りだった私にとって、こういった方々と関われたことは、社交性を培う良い機会でした。 また実践的な学びがあるところも魅力です。セイタカアワダチソウ、カシナガキクイムシ、ヒシなどの問題について、座学ではなく現場でその実態を知ることができました。 最後に、直接的な貢献が実感できます。月に一度の活動が里山保全につながっているという実感が励みになりました。 何となく参加してみた活動が、結果として私の興味や関心を深め、知識を広げ、人間的な成長をもたらしてくれました。この4年間で得た学びと経験は、私の人生においてかけがえのない財産だと思っています。(法政大学キャンパス・エコロジー・フォーラム4年)

ごみピット内で出火 一時白煙が充満 土浦市清掃センター

21日午後3時ごろ、土浦市中村西根、市清掃センターで、集められた可燃ごみを一時的に貯蔵する可燃ごみピット内から出火し白煙が発生、ピット内は一時白煙が充満した。 施設の運転管理委託業者が初期消火活動をしたが白煙の発生が止まらず、午後3時2分に119番通報。駆け付けた消防隊員が水をかけるなどして消火活動を実施し、午後4時55分に鎮火が確認された。けが人はいない。 同清掃センターによると、ピット内でごみの一部がくすぶった状態になり、白煙によりピット内を目視するのが難しいほど充満したという。 どのくらい焼けたかや、出火原因は現在のところ特定できていない。鎮火後、ピット内の可燃ごみを調べたところ、ごみ自体に大きな焼け跡などはなかった。ごみ処理施設の設備や建物の躯体にも損傷はなく、同センターは、22日以降のごみの受け入れや処理に支障はないとしている。

立憲の青山氏「中道」に加わらず 衆院選茨城6区 4氏が立候補へ

23日の解散に伴い、27日公示、2月8日投開票が予定されている衆院選で、茨城6区から立候補を予定している立憲民主党現職の青山大人氏(46)が21日つくば市内で開かれた記者会見で、立憲民主党と公明党による新党「中道改革連合」に加わらず、無所属で立候補すると話した。 青山氏は「政治家としての私の信念の中で今回は無所属を選んだ。単純に選挙戦だけを考えれば厳しいことは承知している」とし「有権者の視点から見た場合、有権者が本当にそういうことを求めているのか。自分自身も直感的に違和感を覚えた」と新党結成に疑問を呈した。「我々は有権者から選ばれる立場。信頼される政治という根本の部分を大事にしたい」と述べ、「私の考え、政治姿勢が大きく変わったわけではないし、これからもぶれることはない」などと話した。 青山氏は、立憲の離党と新党の入党届け提出期限となる20日に立憲民主党を離党し、同日、つくば市西大橋で開いた衆院選の事務所開きで、無所属で立候補することを支持者らに明らかにした。無所属だが連合茨城の推薦を受けて選挙戦に臨む。立憲の衆院議員146人のうち新党に加わらなかったのは青山氏と原口一博氏の2人だけ。 共産が新人を擁立 一方、共産党県委員会は20日、茨城6区に、新人の稲葉英樹氏(58)を擁立することを発表した。稲葉氏は土浦市出身、同市在住。半導体製造会社勤務を経て、現在、党南部地区副委員長。 6区にはほかに、自民党現職の国光あやの氏(46)、昨年12月に立候補を表明した参政党新人の堀越麻紀氏(53)を含め計4氏の立候補が予定されている。 前回2024年10月の衆院選茨城6区は、立憲現職の青山大人氏、自民現職の国光あやの氏、共産新人の間宮美知子氏の3氏が立候補し、青山氏が12万票超の得票を得て小選挙区で初めて国光氏を破り、国光氏は比例復活した。青山氏は前回、6区の土浦、石岡、つくば、かすみがうら、つくばみらいの5市すべてで国光氏を上回った。(鈴木宏子)