土曜日, 3月 21, 2026
ホームつくば「できない」ことは「ダメ」ではない つくばで障害施設ドキュメンタリー上映会

「できない」ことは「ダメ」ではない つくばで障害施設ドキュメンタリー上映会

つくば市で17日、知的障害者支援施設・しょうぶ学園(鹿児島市)の日常を描いたドキュメンタリー映画「幸福は日々の中に。」の上映会と、しょうぶ学園の統括施設長、福森伸さんを招いた講演会が開催される。主催者で、知的障害のある子を持つ親として福祉現場に携わる、つくば市在住の福原美紀さん(50)にイベント開催への思いを聞いた。

障害のある人が自由に生きられる場所

緑あふれる敷地に点在するカフェやギャラリー。工房では障害のある人たちが、粘土や木工、壁や床に絵を描くなど、自由に好きなことに打ち込む。職員は、できたものを活かしてバッグなどへと製品化する。互いの特技を活かした協働作業。昨年6月、22歳の息子の入所先を探していた福原さんは、グループホームもあるしょうぶ学園を見学に訪ねた。まるで一つの街のような敷地内の光景に「これだ!」と思ったという。

この日は施設に空きがなく、すぐの入居は叶わなかったが「障害のある人が自分の基準で生きられる街。誰もがありのまま、自由でいていい。貴重な場」だと感じ、「この価値観を多くの人に知らせたい」と上映会を企画した。

しょうぶ学園は、知的障害者更生施設として1973年に鹿児島市で開設。現在、主に知的障害者を対象に、施設入所支援や生活介護、就労支援などの福祉サービスの提供、工芸品や農業など創作活動、敷地内での飲食店やギャラリー、交流スペースを通じた地域交流事業を展開する。アート制作など、ものづくりを軸に、障害の有無によらない互いに協働しあうコミュニティーづくりが注目されている。

成功体験を積み上げられなかった

「学校教育を含め、障害者が健常者側に合わせ『できる』よう指導する場面に違和感を持ってきた」と福原さん。息子に知的障害がわかったのは3歳の時だ。当時は同世代の他の子との違いは小さかったが、成長と共に「できない」ことが増えていく。ただ「普通に育てたい」という思いは強かった。「大変」「怖い」「暴れる」障害へのネガティブなイメージも頭にあった。

小学校は普通学校を選択した。「他の子より遅いが、言葉を覚え、トイレも行ける。いつか差は埋まるはず。諦めたくない」と思った。「自分の息子の障害を認めるのが怖かった。『普通』で行けるはず」という思いも背中を押しした。

小学校では「成功体験がなかった」。授業では計算ができない、時計が読めないことを指摘され、息子の絵には他人の手が加えられた。「他の子供と差が出てしまう」と思った教師の「善意」だった。運動会では一人、ぽつんと地面に絵を描いていた。周囲の子との軋轢もあった。「できない」だけが積み重なり「母も子も自信を失った」。普通学校での生活に限界を感じ、小5の時に特別支援学校に編入した。

支援学校で始まった新生活。保護者への連絡帳に教師がコメントを書く。「積極的に(同じクラスの)重い障害のある子の面倒を見ています」「元気に歌を歌いました」「きちんと挨拶をしています」。できることばかり書いてある。「思わず『先生、これ誰かと間違えてませんか?』って聞いちゃいました」。授業参観では「それまで自信がなくて下ばかり向いてた息子が、クラスのリーダーシップをとっていたんです」息子の新たな一面に「ここに入れてよかった」と思った。

もっと彼らを信頼していい

「一般的に、社会に出ると、障害のある人は余暇を過ごす場所が少ない」と福原さんは話す。生活にサポートが必要なため、自由な行動、出会いの機会が限られる。だから福原さんは健常者と同様に青春期を楽しみ、人生経験を積める場として、障害者総合支援法に基づき2年間利用できる「福祉型専攻科シャンティつくば」や、知的障害のある青年たちのバスケットボールチーム「スマイルバスケットボールクラブ」を作ってきた。それは孤独になりがちな母親たちの交流の場になればとの思いもあった。

「今の社会は障害者を信頼していないんだと思います」。福原さんも、つい息子に「なんでできないの?」と言ってしまう。しかし、バスケや活動を通じ互いに学び合う子供たちに接し「もっと信頼していい。私たちが彼らのルールを理解するのがいい」と実感した。

以前見学した企業を福原さんが振り返る。そこでは健常者の中で、知的障害のある人も得意な作業に従事する。「誰が障害者で、誰が健常者かひと目でわからない」空間が作られていた。「適材適所。みんなに同じことをさせ、できないことを障害のせいにしない。『得意』を見つけ実行すると『障害』がなくなる。『できる』ことをすればイキイキできる。それは健常者も同じですよね」

「障害は決して『ダメ』ではない。今の社会は『できない』ことを『ダメ』だと責める風潮が強い。でも、この映画からは『ありのままでいい』と感じられる。きっと、鑑賞後に世界観が変わるのではないか。健常者にも選択肢が増えたら」と上映会に込める思いを語る。

「障害ってなんだろう?」。以前、栃木県での講演会で福原さんが聞いた、しょうぶ学園・福森さんの言葉だ。「理解してほしいというよりも、少しでも多くの人に障害のある人々や、福祉のことを知ってほしいと思っています」と福原さんは呼びかける。

◆しょうぶ学園「幸福は日々の中に。」上映会・学園長福森さんお話会 9月17日(土)午後1時〜上映会、午後3時~福森さん講演会。定員30人(事前予約制)。料金(税込み)は上映会のみ・大人1500円、中学生以上の障害者1000円、講演会のみ:大人3000円、中学生以上の障害者1500円、両方参加:大人4000円、中学生以上の障害者2000円。介助者:全て1人まで500円。会場は老人福祉センターとよさと(つくば市遠東639)。問い合わせは、メール:smile-fiona418@sea.plala.or.jp、電話:090-8963-9296(福原)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

3 コメント

3 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

「霞ケ浦導水事業」を歩く《日本一の湖のほとりにある街の話》36

【コラム・若田部哲】1月末、霞ケ浦導水事業の見学会に参加しました。霞ケ浦を利根川-那珂川と結び、広域で水を融通する構想として昭和50(1975)年代に始まったこの事業の背景には、水需要の増大や水質への懸念、渇水時への備えといった、当時の社会的課題がありました。その後、長い年月の中で、事業を取り巻く状況や環境への向き合い方は変化を重ねていきました。 今回見学したのは、そのうちの一部、小美玉市の玉里立坑と、そこから地中に伸びる石岡トンネル。午前10時の集合時間には、親子連れや年配の方など、多くの参加者が集まっていました。 ヘルメットを着用し、全員で集合写真を撮影したのち、いざ、直径18メートル、深さ約45メートルの玉里立坑の縁へ。地上からのぞき込むと、円筒状の巨大な空間が足もとに垂直に落ち込んでいます。 5メートルごとに数字が記されたその光景は、想像を超えるスケール! ワイヤーメッシュの籠状の工事用エレベーターに乗り込み、ドアが締まると、歯車がきしむ音を響かせながらゆっくりと地下へと降下し、自然と緊張感が高まります。 底部に降り立つと、両側に大きく口を開ける「石岡トンネル」は、よく見ると直径が異なっており、片方は4.5メートル、もう片方は3.5メートルとのこと。計画や技術の変遷が、断面の違いに現れているのを感じます。 湖と人、技術と暮らしをつなぐ トンネルは、巨大な円筒形の「シールドマシン」によって掘り進められると同時に、工場製作のコンクリートの壁である「セグメント」を組み立てていく工法だそうです。全長31.5キロという数字に、その積み重ねの大きさを感じ、めまいを覚えます。 圧倒的なスケールの余韻を抱いたまま地上に戻り、見学会が終わろうとしたその時、これまでの工事を記録した映像が上映されました。 掘削、セグメントの組み立て、測量、機械の点検─さまざまな工種の作業員の方々が、真剣な表情で現場に向き合うその姿。巨大な土木構造物も、突き詰めれば一人ひとりの手仕事の積み重ねという、その確かな事実に改めて心を打たれました。 霞ケ浦導水事業をどのように受け止めるかは、人それぞれでしょう。ただ少なくとも、現場には確かに、人の手と時間が積み上げてきた現実があります。湖と人、技術と暮らしをつなぐ、長い対話の一端に触れることにより、この事業を「遠大な構想」ではなく、「目の前の風景」として思い描けるようになった取材でした。(土浦市職員)

琉球の希少植物と暮らしを紹介 筑波実験植物園で企画展

絶滅危惧種など150種 琉球列島由来の希少な植物を知ることができる企画展「琉球の植物−南国を育む植物たち」が20日から、国立科学博物館 筑波実験植物園(つくば市天久保、遊川知久園長)で始まった。展示されているのは、同植物園が保有する琉球列島の植物約400種類の中から、自然界では日本に1株しか残っていなかったり、自生地ではすでに絶滅してしまった希少種など、絶滅危惧種に指定されている約110種を含む150種あまり。 琉球の植物の展示は2019年以来7年ぶりとなり、豊かな自然が育んだ「琉球文化」の紹介にも力を入れる。展示を担当した同植物園研究員の國府方吾郎さん(57)は「琉球列島の豊かな自然とともに、たくさんの植物を有効活用してきた地元の人たちの暮らしを知る機会になれば」と来場を呼び掛ける。会期は29日まで。 展示会場は、多目的温室と研修展示場の2カ所。温室では、海岸、海岸林、山地林、低地林、渓流沿いなど琉球列島にある五つの自然環境の自生種を展示する。葉の裏側に赤い小さな花をつけるハナコミカンボクは沖縄本島の1カ所にしか自生していない。ナガミカズラは西表島で1株の自生が確認されている。小指の先ほどの白い花をつけるオリヅルスミレは自然界では絶滅してしまった。新種のアマミマツバボタンは國府方さんが2013年に発見した。 國府方さんは、「(奄美諸島、沖縄諸島などからなる)琉球列島は種の多様性が高く、単位面積あたりの植物種の数は日本本土より45倍多い」とし、背景には三つの理由があるとする。一つ目は、本土に当てはめると青森から高知までに相当する広い緯度差と多様な自然環境だ。「北琉球」とされる屋久島、種子島は本土と同じ温帯で、それ以南は亜熱帯に属する。その中にも乾燥地、湿地、標高の高低などの違いがある。 二つ目は、島ごとの交流が限られることで生まれた独自の進化だ。かつて大陸と地続きだった時代から、島々が分離した時期によっても種の違いが生まれた。大東島に限っては一度も他の土地との接続がない。 三つ目は、沖縄の言葉で、混ざり合うことを意味する「チャンプルー」だという。遺伝的にオーストラリアにある植物と近い種は、北へ向かう渡り鳥が種を運び分布するようになったと考えられている。その他、動物や人の移動、海流などにより、日本本土や東南アジア、台湾、ユーラシア大陸など世界各地とのつながりが確認されている。國府方さんは「その様子は、アメリカや日本、中国と関わり合ってきた沖縄文化のよう」だと話す。 文化を自然科学的に研究する必要ある 自身も沖縄出身だという國府方さんが今回力を入れたのが、研修展示場で紹介する琉球列島の植物と共に営まれてきた「人々の暮らし」だ。 地域に自生するキク科の野草 ホソバワダンは白和えなどにして食べられている。商品として流通するのは葉の大きい栽培品種だ。自生種との遺伝的な違いを國府方さんが調べると、意外なことが分かった。流通する品種と遺伝的に近い種が、海を超えた奄美や屋久島、平戸、対馬にあったのだ。 「近い種が沖縄の自生種ではなかった。元になるのは一つの株だということも分かった。昔、おいしいホソバワダンと出合った誰かが株をひとつ持ち帰った。近所の人にも食べさせたいと思い、株を分け合った。そんな様子目に浮かぶ」と笑顔を浮かべる。 このほか、「どこの学校にもあった」という大きく枝を広げるガジュマルの木と、そこに宿るとされる精霊のキジムナーの物語、葉を編んで草履にしたアダン、扇や笠にしたビロウ、赤い実が飢饉を救い、味噌にも用いられてきたソテツなど、琉球列島の人々の暮らしを支え、文化をもたらしてきた身近な植物も丁寧に紹介している。 「文化というのは自然から生まれたもの。私たち研究者も、文化を自然科学的に研究する必要があると思っている」とし、文化を自然科学的に研究しようというプロジェクトも進行中だと話す。「琉球の植物に関するクイズもあり、特製のポストカードのプレゼントもある。お子さんにも楽しんでもらえたら」と話す。(柴田大輔) ◆企画展「琉球の植物ー南国を育む植物たち」は20日(金・祝)~29日(日)の10日間、つくば市天久保4-1-1 国立科学博物館 筑波実験植物園で開催。開園時間は午前9時~午後4時30分(入園は4時まで)。入園料は一般320円、高校生以下と65歳以上は無料。詳しくは同植物園のホームページ、問い合わせは電話029-851-5159(代表)へ。

働く私たちのリアル《マンガサプリ》5

【コラム・瀬尾梨絵】新卒として社会に飛び出したとき、誰もが胸に抱く「理想の自分」。しかし、現実に突きつけられるのは、自分の無力さと、理想とはかけ離れた泥臭い現場であることも少なくない。そんな「やりたいこと」と「できること」のギャップにもだえ、悩み、それでも一歩を踏み出す姿を描いた、ねむようこ先生の「午前3時の無法地帯」(祥伝社、全3巻)を今回はご紹介したい。 主人公・ももこは、イラストレーターを夢見てデザイン事務所に就職したばかりの新卒会社員。彼女が思い描いていたのは、おしゃれでかわいい雑貨のデザインに関わるキラキラした毎日。しかし、配属された先は、パチンコ屋のチラシやPOPを専門に扱う、文字通り「無法地帯」のようなデザイン事務所。午前3時を回っても明かりが消えず、床には誰かが寝ており、タバコの煙と怒号が飛び交う。そこは、彼女の理想とは対極にある場所だった。 本作の最大の魅力は、新卒の誰もが直面する「理想と現実のギャップ」を、ねむ先生特有の柔らかくも鋭い感性で描き出している点にある。「私はもっとかわいいものを描きたいのに」「自分にはもっと才能があるはずなのに」。 そんなももこの心の叫びは、読んでいるこちらの胸をチクリと刺してくる。自分が本当にやりたかったこととは違う、派手でけばけばしいパチンコの広告デザインに追われる日々。その「やらされている感」と、それすらも満足にこなせない「実力不足」の板挟み。この葛藤は、クリエティブな職種に限らず、組織の中で自分の役割を見出せずにいるすべての若手社会人が共感できるはずだ。 今の仕事を本当にやりたかった? しかし、この物語が単なる「お仕事苦労話」で終わらないのは、その無法地帯な職場にいる人々との交流を通して、ももこが少しずつ「働くことの本質」に触れていくからである。 一見デタラメに見える先輩たちも、実はプロとしての矜持(きょうじ)を持って仕事に向き合っており、自分が嫌っていた仕事の中にも、誰かを喜ばせる工夫や、確かな技術が必要であること。そして、理想の場所にたどり着くためには、まずは目の前の「できること」を必死に積み上げていくしかないということ。ももこが少しずつ顔を上げ、自分の居場所を見つけていく過程は、読者に「今の自分も、あながち間違いじゃないのかも」という小さな救いを与えてくれる。 ねむ先生の描くキャラクターは、どこか抜けていて愛らしく、それでいて生々しい生活感を持っている。徹夜明けのボロボロの肌、深夜に食べるカップ麺の味、理不尽な上司への愚痴。そんな等身大の描写があるからこそ、ももこの成長が輝いて見える。 「今の仕事は、自分が本当にやりたかったことだろうか?」。そう自問自答して立ち止まってしまいそうな夜、ぜひこの本を手に取ってみて欲しい。午前3時の暗闇の中で、それでも灯りを灯し続けるももこたちの姿が、あなたの心にある「ギャップ」を少しだけ埋めてくれるはずだ。(牛肉惣菜店経営)

学校給食に金属製ナット混入 つくば市の義務教育学校

つくば市は19日、市内の義務教育学校で同日出された学校給食に異物が混入していたと発表した。教職員が職員室で給食を食べようとご飯のふたを開けたところ、直径8ミリほどの金属製のナットが混入していた。 同校の他の教職員や生徒、同日ご飯が提供された他校からもほかに異物混入の報告は無く、健康被害も報告されていないという。 市健康教育課によると、同日午後0時45分ごろ、教職員が個別の器に入ったご飯のふたを開けたところ、端の方に直径8ミリほどのナットが混入していた。 同市でのご飯の調理は、給食センターとは別に、米飯納入業者が炊飯工場でご飯を炊き、一人分をそれぞれ個別の器に入れ、ふたをして各学校の配膳室に配送している。配送された給食は、職員が配膳室から各教室や職員室などに運んでいるという。 どうして混入したかについて同課は、米飯納入業者が経緯を調査したが、19日時点で不明だとしている。 市は同日、ご飯の提供を受けた市内の各学校の保護者にお詫びの通知文を出した。