火曜日, 2月 10, 2026
ホームつくば「できない」ことは「ダメ」ではない つくばで障害施設ドキュメンタリー上映会

「できない」ことは「ダメ」ではない つくばで障害施設ドキュメンタリー上映会

つくば市で17日、知的障害者支援施設・しょうぶ学園(鹿児島市)の日常を描いたドキュメンタリー映画「幸福は日々の中に。」の上映会と、しょうぶ学園の統括施設長、福森伸さんを招いた講演会が開催される。主催者で、知的障害のある子を持つ親として福祉現場に携わる、つくば市在住の福原美紀さん(50)にイベント開催への思いを聞いた。

障害のある人が自由に生きられる場所

緑あふれる敷地に点在するカフェやギャラリー。工房では障害のある人たちが、粘土や木工、壁や床に絵を描くなど、自由に好きなことに打ち込む。職員は、できたものを活かしてバッグなどへと製品化する。互いの特技を活かした協働作業。昨年6月、22歳の息子の入所先を探していた福原さんは、グループホームもあるしょうぶ学園を見学に訪ねた。まるで一つの街のような敷地内の光景に「これだ!」と思ったという。

この日は施設に空きがなく、すぐの入居は叶わなかったが「障害のある人が自分の基準で生きられる街。誰もがありのまま、自由でいていい。貴重な場」だと感じ、「この価値観を多くの人に知らせたい」と上映会を企画した。

しょうぶ学園は、知的障害者更生施設として1973年に鹿児島市で開設。現在、主に知的障害者を対象に、施設入所支援や生活介護、就労支援などの福祉サービスの提供、工芸品や農業など創作活動、敷地内での飲食店やギャラリー、交流スペースを通じた地域交流事業を展開する。アート制作など、ものづくりを軸に、障害の有無によらない互いに協働しあうコミュニティーづくりが注目されている。

成功体験を積み上げられなかった

「学校教育を含め、障害者が健常者側に合わせ『できる』よう指導する場面に違和感を持ってきた」と福原さん。息子に知的障害がわかったのは3歳の時だ。当時は同世代の他の子との違いは小さかったが、成長と共に「できない」ことが増えていく。ただ「普通に育てたい」という思いは強かった。「大変」「怖い」「暴れる」障害へのネガティブなイメージも頭にあった。

小学校は普通学校を選択した。「他の子より遅いが、言葉を覚え、トイレも行ける。いつか差は埋まるはず。諦めたくない」と思った。「自分の息子の障害を認めるのが怖かった。『普通』で行けるはず」という思いも背中を押しした。

小学校では「成功体験がなかった」。授業では計算ができない、時計が読めないことを指摘され、息子の絵には他人の手が加えられた。「他の子供と差が出てしまう」と思った教師の「善意」だった。運動会では一人、ぽつんと地面に絵を描いていた。周囲の子との軋轢もあった。「できない」だけが積み重なり「母も子も自信を失った」。普通学校での生活に限界を感じ、小5の時に特別支援学校に編入した。

支援学校で始まった新生活。保護者への連絡帳に教師がコメントを書く。「積極的に(同じクラスの)重い障害のある子の面倒を見ています」「元気に歌を歌いました」「きちんと挨拶をしています」。できることばかり書いてある。「思わず『先生、これ誰かと間違えてませんか?』って聞いちゃいました」。授業参観では「それまで自信がなくて下ばかり向いてた息子が、クラスのリーダーシップをとっていたんです」息子の新たな一面に「ここに入れてよかった」と思った。

もっと彼らを信頼していい

「一般的に、社会に出ると、障害のある人は余暇を過ごす場所が少ない」と福原さんは話す。生活にサポートが必要なため、自由な行動、出会いの機会が限られる。だから福原さんは健常者と同様に青春期を楽しみ、人生経験を積める場として、障害者総合支援法に基づき2年間利用できる「福祉型専攻科シャンティつくば」や、知的障害のある青年たちのバスケットボールチーム「スマイルバスケットボールクラブ」を作ってきた。それは孤独になりがちな母親たちの交流の場になればとの思いもあった。

「今の社会は障害者を信頼していないんだと思います」。福原さんも、つい息子に「なんでできないの?」と言ってしまう。しかし、バスケや活動を通じ互いに学び合う子供たちに接し「もっと信頼していい。私たちが彼らのルールを理解するのがいい」と実感した。

以前見学した企業を福原さんが振り返る。そこでは健常者の中で、知的障害のある人も得意な作業に従事する。「誰が障害者で、誰が健常者かひと目でわからない」空間が作られていた。「適材適所。みんなに同じことをさせ、できないことを障害のせいにしない。『得意』を見つけ実行すると『障害』がなくなる。『できる』ことをすればイキイキできる。それは健常者も同じですよね」

「障害は決して『ダメ』ではない。今の社会は『できない』ことを『ダメ』だと責める風潮が強い。でも、この映画からは『ありのままでいい』と感じられる。きっと、鑑賞後に世界観が変わるのではないか。健常者にも選択肢が増えたら」と上映会に込める思いを語る。

「障害ってなんだろう?」。以前、栃木県での講演会で福原さんが聞いた、しょうぶ学園・福森さんの言葉だ。「理解してほしいというよりも、少しでも多くの人に障害のある人々や、福祉のことを知ってほしいと思っています」と福原さんは呼びかける。

◆しょうぶ学園「幸福は日々の中に。」上映会・学園長福森さんお話会 9月17日(土)午後1時〜上映会、午後3時~福森さん講演会。定員30人(事前予約制)。料金(税込み)は上映会のみ・大人1500円、中学生以上の障害者1000円、講演会のみ:大人3000円、中学生以上の障害者1500円、両方参加:大人4000円、中学生以上の障害者2000円。介助者:全て1人まで500円。会場は老人福祉センターとよさと(つくば市遠東639)。問い合わせは、メール:smile-fiona418@sea.plala.or.jp、電話:090-8963-9296(福原)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

3 コメント

3 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

デジタル技術を駆使 アニメ、ゲーム、広告デザインなど展示 日本国際学園大

日本国際学園大学(つくば市吾妻)でデザインを学ぶ3、4年生が、日ごろの学習の成果を発表する作品展「2026コンテンツ デザイン エキシビジョン」(同大経営情報学部ビジネスデザイン学科主催)がこのほど、同市吾妻、中央公園内のつくば市民ギャラリーで開かれ、アニメ、ゲーム、メタバースなど最新のデジタル技術を駆使した作品や、想定した架空の店舗や商品のブランド価値を高める広告デザインなどが展示された。 1月31日から2月6日まで開催され、学生17人が作品約40点を展示した。同展は毎年開催され今年で15回目。4年生にとっては卒業制作展になる。 展示されたのは、楽曲に合わせて容姿が変化していくキャラクターを描いたアニメ作品、音楽に合わせてキャラクターや背景を動かすなどデジタルアートの制作過程そのものを映像にした作品、AIを使って小説のシナリオとキャラクターを制作したノベルゲームなど。 広告デザインは、つくば駅近くに架空のカフェがオープンしたと想定し、店舗のロゴやチラシ、缶バッチやシールなどを実際にデザインしたものや、土浦や水戸、常陸太田、龍ケ崎など、県内各地の昭和レトロな商店街を実際に訪ね歩き、それぞれの魅力を紹介したガイドブック、架空の水戸納豆のオリジナルキャラクターや商品パッケージなどをデザインした作品などが展示された。 インターネット上の3次元の仮想空間、メタバースの中で参加者を募り、参加者の分身であるアバターの撮影会や交流会を主催するなど2年間にわたる活動記録をポスター展示した4年の姜翔(きょう・しょう)さん(21)は「メタバースでは、いろいろな人が参加できるように企画を考えてイベント開きコミュニティを引っ張ったが、毎日のように反省点が出てきた」と活動を振り返った。 情報デザインやメディアアートを指導する同大の高嶋啓教授は「4年生にとっては、新型コロナの行動制限が始まった最初の年を1年生として過ごした。表現したいという強い気持ちが現れた作品や、センスが面白い作品があるので、これを引き継いでさらに深めていってくれれば」と話していた。

焼き芋ブームを「食文化」に《邑から日本を見る》191

【コラム・先﨑千尋】「焼き芋がブームになって20年。それを食文化に定着させよう」。今やスーパーの店頭だけでなく、コンビニやドラッグストアでも焼き芋が売られている。その火付け役となったのが「なめがた農協(現なめがたしおさい農協)」だ。 行方市で焼き芋サミット その本拠地の行方市にあるレイクエコーで、1月16日に「全国焼き芋サミット」が開かれ、全国から、焼き芋愛好家や生産者、行政、農協関係者、焼き芋業者、研究者など350人が集まり、焼き芋について熱く語り合った。開催は昨年に続いて2回目。主催は同実行委員会と行方市。 サミットの冒頭、同農協の金田富夫組合長が「農協では約30年前、それまでは主食用だったサツマイモを焼き芋として販売しようと考え、スーパーの店頭で売ることを考えた。しかし、焼き方や品種などで、1年を通しておいしい焼き芋を提供するのは難しかった。工夫を重ね、マニュアルを作り、今では全国約4000店舗で通年販売している。焼き芋をブームで終わらせるのではなく、食文化にしていきたい」と話した。 サミットでは最初、茨城県職員時代にサツマイモの病害虫研究に携わってきた東大大学院特任教授の渡邉健さんが、サツマイモ栽培で問題となっている「基腐(もとぐされ)病」などについて「必要以上に怖がらないように。病原菌を持ち込まない、増やさない、残さないが基本だ」と注意を呼び掛けた。 あるとうれしい⇒あって当たり前 基調講演は、サツマイモに特化したイベント「さつまいも博」を2020年に始めた石原健司さんが「焼き芋を『あるとうれしいもの』から『あって当たり前』に。生活を豊かにするものと消費者が考えられるようになれば、ブームから文化に定着したと言える。そのためには、客層を固定客だけでなく、子供世代やインバウンド(訪日客)などまで視野を広げていく必要がある」と訴えた。 「焼き芋業界のいま、そしてこれから」というテーマのトークセッションでは、龍ケ崎市や行方市の生産者や焼き芋業者らが登壇。それぞれが「原料のイモを安定して供給することが大事。そのためには土づくりが欠かせない。後継者が残れるために外部から呼び寄せることも必要。『焼き芋で笑顔に』を合言葉に、全国各地の百貨店やイベントに出店し、イモの皮まで旨(うま)味や香りを感じる焼き方を、生産者の思いも伝えながら全国の焼き芋ファンに届けている」などと話し合った。 サミットの最後は分科会。参加者が、生産、焼き芋市場・消費トレンド、地域・観光・体験農業、暮らしと女性の視点の4つに分かれて討議した。私が参加した生産の分科会では、基腐病や立枯病などの対策に関する質問や意見が多く出された。 サミット終了後、会場を隣の「なめがたファーマーズヴィレッジ」に移して交流会が開かれ、参加者は、サツマイモ料理や焼酎、いろいろな品種の焼き芋などを味わいながら、焼き芋談義で楽しんだ。(元瓜連町長)

紅梅満開 白梅咲き初む 筑波山梅まつり開幕

第53回筑波山梅まつりが7日、筑波山中腹にある筑波山梅林(つくば市沼田)で始まった。今年の開花状況は例年より1週間か10日ほど早く、紅梅はほぼ満開、白梅は咲き始めているという。1月初旬に満開となったロウバイは見頃が続いている。 7日は雪がちらつく中、開園式が催され、同梅まつり実行委員会の神谷大蔵委員長は「雪の開園式というのは私の知る限りはじめて。今年はずっと暖かったので花が咲き始めている。開催中大きな事故がないように務めていきたい」とあいさつした。式典には関係者約50人が参加した。 梅まつり期間中、がまの油売り口上、つくばのおさけで乾杯!(2月28日と3月1日に開催)、百人きものPresents/青春フォト(3月1日)などのイベントが開かれる。園内をつくば観光ボランティア298が案内する。ご当地土産品販売、筑波山おもてなし館での「梅Café」、梅を使用した期間限定メニュー「梅食」なども用意される。3月7日にはジオパーク企画として認定商品の販売、ジオパークの特設ブースも開設する。さらに隣接のアウトドアパーク「フォレストアドベンチャー」がリニューアルされ、往復180メートルの新ジップスライドが加わった。周辺店舗ではつくばうどん特別企画や、筑波山梅まつり宿泊プランなどが用意されている。 筑波山宮前振興会の渡辺伸一会長は「来た人に満足して帰っていただけるように努力したい。今年は梅食や梅ドリンクなどを用意した。福来みかんの素材を使ったものも、バージョンアップしているので期待してほしい」と話している。 梅まつりは3月15日まで。筑波山梅林は標高約250メートル付近にあり、中腹の斜面に広がる4.5ヘクタールの園内には約1000本の白梅や紅梅がある。

自民 国光氏が議席を奪還 茨城6区 衆院選’26

青山氏 議席失う 解散に伴う衆院選は8日投開票が行われ、高市旋風が吹く中、茨城6区は、自民前職の国光あやの氏(46)が、無所属で前職の青山大人氏(47)ら4氏を破り、小選挙区の議席を奪還して4期目の当選を決めた。無所属の青山氏は議席を失った。 茨城6区 開票結果 確定107,388 国光あやの 自 民 前④104,844 青山 大人 無所属 前23,443 堀越 麻紀 参 政 新 9,902 稲葉 英樹 共 産 新 2,982 中村 吉男 無所属 新 国光氏「皆さんが支えてくださった」 つくば市吉瀬の国光氏の選挙事務所には午後8時前から支持者らが集まり、テレビの開票速報を見守った。午後9時40分、テレビで当選確実が伝えられると、大きな拍手が起こった。間もなく国光氏が姿を見せると、会場はさらに大きな拍手と歓声が上がった。 午後9時55分、国光氏は自民党県議や市議らとバンザイ三唱。、「今回、4回目の選挙になるが、私の力不足で本当に厳しい選挙だった。それを皆さん、私にずっと伴走いただいたり、寒い中、叱咤激励いただいて、駆け付けていただいたり、一緒に歩いていただいたり、皆さんのお陰でこの場にこうやっていられなと、本当に皆さんに感謝しかありません」とあいさつした。 勝因については、テレビのインタビューに答えて「私一人の力ではない。(選挙戦が)始まる前から厳しい状況だったが、皆様が支えてくださった」と感謝を口にし、「突然の解散について、一つひとつ丁寧に説明しながらの選挙戦だった」と振り返った。 今後については「物価高対策に取り組み、賃金上昇を支え、しっかりと責任ある積極財政で取り組んでいく」などと話し、地域の課題については「県南は人口が増えているが、取り残されている課題がある。農業や社会保障など、だれも手を付けてないような取り残された課題に光を当てたい。医療、介護、福祉事業者は厳しい経営状況にある。現役世代の社会保障費の負担など、これ以上負担を求めることのないようしっかり社会保障改革に取り組みたい」などと話した。(鈴木宏子) 青山氏「ふわっとした高市さんの虚像に敗れた」 つくば市西大橋の青山氏の選挙事務所には、五十嵐立青つくば市長、宮嶋謙かすみがうら市長など、約200人の支援者らが集まりテレビモニターから流れる開票速報を見守った。雪がちらつく中、午後9時50分過ぎに国光氏の当選確実の一方が流れると、会場に沈黙が流れた。青山氏は厳しい表情のまま腰に手を当て画面を見つめた。 午後10時5分、トレードマークのスカイブルーのジャンパーを脱ぎ、スーツ姿で登壇した青山氏は、「全ては私の不得のいたすところ」とした上で、無所属で臨んだ選挙戦について、「自分で選択したこと。政見放送がないなど制限があったが、中道の候補者が厳しい状況の中でもここまで善戦することができたのは支援者の皆様のお陰」と感謝を述べ、「今まで以上の大きな反応、声援をいただいた。ただ、それ以上に高市さんの人気があったということ。見えない、ふわっとした高市さんの虚像があった」と選挙戦を振り返った。今後については、「支援者の皆さんとよく相談して考えるが、既存の政党に合流する考えは今のところない」と述べた。会場からは、「よくやった」「頑張ろう」の声が飛び交った。(柴田大輔)