今年4月、つくば市役所のお知らせを発信する無料のスマートフォンアプリ「つくスマ(つくばスマートシティアプリ)」の配信が開始された。住んでいる地区、年代、家族構成などを登録し、個々人の登録内容に基づいて適切な情報を通知するというアプリだ。
市スマートシティ戦略課によると、7月25日時点の登録者は市人口の3%の約8400件。つくスマ同様、自動的に市役所等のお知らせを配信するプッシュ通知型のアプリは、守谷市、福島県会津若松市、東京都渋谷区や港区などですでに導入されている。他自治体のダウンロード数は数%か15%程度だが、つくば市は2024年度に20%を目指すという。
市議会6月議会一般質問では、せっかく機能があるなら、年代、性別、家族構成、住まい等、登録者の属性に応じて配信する内容を変えてはどうかという質問があり、五十嵐立青市長も前向きな答弁をした。
しかしまだ、市長の答弁通りとはいかないようだ。市スマートシティ戦略課は「つくスマのプッシュ通知は現在、部署ごとに配信している」とし、登録者の属性に応じて配信内容を変えているかについては「実際にそのような運用をしているかまでは把握してない。導入初期段階でもあるため、あまり条件を絞り過ぎると配信対象者数が少なくなるため、あらかじめ配信対象者数を確認の上、配信するようにしている」とする。
現在の配信本数は「職員がまだ慣れてないこともあり平均的な件数を挙げることはできないが、最近では多い時は1日5本程度」と同課。
さまざまなサービスを連動
つくスマは、単に行政情報を通知するだけににとどまらない。スーパーシティ構想では、さまざまなサービスをつくスマに連動させ、将来さまざまなサービスを、「つくスマ」を起点に市民が利用できるようになることを目指している。市民にとってはスーパーシティの入り口の扉が「つくスマ」になる。インターネット投票も「つくスマ」から行えるようにする。
アプリは、つくばスマートシティ協議会(会長・大井川和彦知事、五十嵐立青つくば市長)のメンバーである凸版印刷(東京都台東区)、アスコエパートナーズ(東京都港区)とつくば市の3者によるプロジェクトチームが、約1600万円で開発した。市民の利用料は無料だが、市はライセンス料としてダウンロード数にかかわらず年間500万円を凸版印刷に支払う。
マイナンバーで紐づけ
スーパーシティは、行政や企業、個人などがもつさまざまな情報を複数の分野で共有してサービスを行う。事業者にとっては本人確認、住民にとっては個人情報保護がしっかりなされているかが重要になる。つくば市の場合、本人確認をマイナンバーカードとデジタルIDによって実施する予定だ。
具体的には、本人の同意を得ることを前提に、住民異動届、医療Maas、医療・健康事業でマイナンバーの利用拡大が構想されている。例えば医療・健康事業では、企業や行政、個人などが分散して保有する診療履歴、服薬履歴、食品購入履歴、運動情報などの情報をマイナンバーで紐づけして一元的に管理し、食生活を改善したり生活習慣病を予防するサービスを展開するなどだ。昨年5月の国のヒヤリングで五十嵐立青市長は「毎回(つくスマの画面に)マイナンバーカードをかざさずに、スマホだけで利用することが可能になる」と説明する。
民間ではマイナンバーを利用しなくてもすでに様々なサービスが展開されているのに、つくば市はなぜマイナンバーを利用するのか。同課は、マイナンバーカードは本人確認がすでになされているため、一番確実であるとし、特段利用者のハードルが高いとは考えてないとする。
ただし現在の法律では、マイナンバーを利用できる分野は社会保障・税・災害対策の3分野に限定され、利用方法も罰則付きで厳しく制限されている。民間企業がマイナンバーを利用してサービスを展開することはできない。マイナンバーは国民全員に割り当てられた12ケタの背番号で、さまざまな分野に紐づけられると監視社会につながるという懸念があるからだ。
つくば市では今後、条例をつくるなど、スーパーシティのサービスでマイナンバーを利用できるよう法整備をすることが必要になる。法整備の内容や時期について同課は、今後、国家戦略特区の枠組みを活用して国と協議していく予定だが、具体的な時期は未定だとする。(鈴木宏子)