木曜日, 5月 14, 2026
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有機農業の輪で循環する暮らしを 《邑から日本を見る》113

【コラム・先﨑千尋】「農水省の事務次官は高校の後輩です」「えっ!」思わず息を飲んだ。

5月下旬、鹿児島市内と錦江湾、桜島を一望できるホテルの一室で、イモ焼酎を飲みながらの有機農業談義。相手は、「かごしま有機農業生産組合」代表の大和田世志人さんと、同組合直営店「地球畑」の代表大和田明江さん、鹿児島での農協運動の牽(けん)引者で二宮尊徳研究の泰斗、八幡正則さん。

今国会で、有機農業の農地を100万ヘクタールにするという「みどりの食料システム戦略」関連の法律と予算が通った。その先頭を走る枝元真徹農水事務次官を裏で支えてきたのが、鹿児島の有機農業生産者だったのだ。

世志人さんは現在、NPO法人全国有機農業推進協議会の理事長も務め、同協議会は昨年3月に「みどりの食料システム戦略に向けた提言書」を農水相に出している。提言には「森、里、川、海、自然環境を合わせた政策の統一を図る。充実した財政支援を押し出す。学校給食の有機化、無償化」などが掲げられている。そうだったのか。

「有機」は「勇気がいる」

鹿児島での有機農業研究会の発足は1978年。私たちも茨城の地で同じ頃に有機農業研究会を立ち上げている。当時、有機農業はまだ市民権を得ていなかった。私たちが「有機」という言葉を使うことに「勇気がいる」と言われていた時代だった。隔世の感がある。

大和田さんたちは、有機農業の仲間を増やし有機農業を広めていこうと、1984年に「かごしま有機農業生産組合」を結成し、地元の有機農産物を消費者に直接届けるために、持続可能な食料システムを構築した。8年後に「地球畑」を市内に開設し、現在は3店舗とカフェを持ち、ネット通販の楽天市場もある。

同組合に入っている生産農家は160人。栽培する野菜はおよそ100品目、果物は20。米、雑穀、茶も生産している。他に、組合では3か所に直営農場も持っている。生産者団体としては国内最大。生協や学校給食などへ出荷し、宅配事業も展開している。

「地球畑」の約束事は、鹿児島の生産者が作る旬の農産物を消費者に届ける、遺伝子組み換え、合成着色料などは使わない、加工品にはゼラチン、精製した砂糖を使用しないなど。

「地球畑」荒田店を見せてもらった。136平方メートルの店には、野菜、果物、日用品、調味料、米、雑穀、畜産物、卵、牛乳、茶、パン、魚などのほか、衣料品、せっけん、化粧品など日常の暮らしに必要なものが、所狭しと並んでいる。さながら有機食材と雑貨の百貨店だ。

「地球畑」の代表を務める明江さんは、岩手県陸前高田市の出身。私とは50年近い付き合いだ。学生時代に環境問題、有機農業に関心を持ち、“異郷”鹿児島の異邦人となり、夫の世志人さんと鹿児島の有機農業運動を引っ張ってきた。

自然と共生しながら命をつなぐ

「有機農業は『こだわりの農業』ではない。自然と共生しながら私たちの命をつなぐ食べ物を作るという、いわば『当たり前の農業』だ。有機農業の輪で循環する暮らしを目指したい」と語る。

6年前にがんにかかっていることが判明した。がんと向き合いながら、仕事に生かされる日々。「仕事を休んでも、がんは治らないでしょ」と開き直る彼女だ。

「朋(とも)有り遠方より来る。また楽しからずや」という孔子の言葉があるが、今回の久しぶりの語らいは、まさにそのようなものだった。八幡さんには生甘酒の作り方を教えてもらった。(元瓜連町長)

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