筑波大学の放置自転車問題の解決を目指す新業態の自転車店「CYCLE CHIC Tsukuba(サイクルシックつくば)」(矢部玲奈店長)が21日、大学近くのつくば市桜にオープンする。
大学構内の放置自転車のほか、卒業生が使っていた自転車や、一般家庭の自宅に眠っている自転車などを引き取って、部品を交換するなど修理し、新入生などに4年間貸し出す。卒業時に返却してもらい、放置自転車にならないようにする。
ほかに同大の校章「五三の桐」や、開学の理念「IMAGINE THE FUTURE(イマジン・ザ・フューチャー)」などの文字がアルミフレームにデザインされた筑波大学公認自転車のほか、各種メーカーの新品の自転車も販売する。タイヤのパンク修理なども行う。都内のスポーツ用品メーカーの協賛を得て開業にこぎつけた。
同大事業開発推進室によると、大学では毎年800台から1000台の放置自転車がある。10年以上前から、市シルバー人材センターの協力で、そのうち毎年100台程度を修理し新入生に安く販売してきた。
まだまだ放置自転車の解消につながってないことから、今年から同店が加わり、シルバー人材センターと共に放置自転車のリサイクルに取り組む。同店は年間約300台を目標に修理し、学生などに貸し出す予定だ。
貸し出す金額は、自転車の種類に応じて月額1000円から2000円程度で年単位で貸し出すことを想定している。一般に放置自転車のうち再利用できるのは3割程度といわれている。修理にどれくらいのコストが掛かるのかも含めて、店長の矢部さん(27)は「これから実証していきたい」とする。当初3年間は利益が出ないと見込んでいるが、4年目からは利益を出すことを目指す。
大学職員辞め店長に
矢部さんは今年3月まで同大東京キャンパスの職員だった。実家は東京都世田谷区の自転車店で、サイクリングが趣味。同大事業開発推進室に勤務し、筑波キャンパスの放置自転車を目の当たりにした中、昨年暮れ、大学を退職し、実家の自転車店の支店をつくばに出店して、放置自転車問題の解決に挑戦することを決意した。
矢部さんは「まさか自分が組織を離れることになるとは思わなかったが、やるしかないと思った」と振り返り、「たくさんの人の協力があったので、大学にいた者として、大学に貢献し恩返しができれば」と意気込みを話す。
交流の場に
新店舗は平屋建てで面積約60平方メートル、敷地面積は約340平方メートル。店内はカフェのような雰囲気で、中央にテーブルといすが置かれ、両側の白い壁沿いに国内外の新品の自転車が並ぶ。カウンターの奥はメンテナンス室で、たくさんの工具が置かれ、来店客が自分で修理することもできる。
「学生や地域の人に気軽に立ち寄ってもらい、学生同士や、学生と地域の人との交流の場にできれば」と矢部さん。今後は、筑波山など周辺を自転車でめぐるポタリング(自転車散歩)を企画したり、自転車の修理が自分でできるようになるメンテナンス講習会を開催するなど、イベントの開催も計画している。
3月まで矢部さんの上司だった同大事業開発推進室の畑山進・特定ミッションプロジェクトマネージャーは「放置自転車を修理しサブスクリプション(定額利用)で貸し出す取り組みを3、4年続ければ、大学の放置自転車が目に見えて減るのではないかと期待している。将来的には近隣のサイクルショップの協力も得て、この取り組みが徐々に広がれば」と期待を話す。(鈴木宏子)
◆CYCLE CHIC Tsukubaはつくば市桜2丁目15-5。営業時間は午前11時から午後6時。水曜定休。中古自転車の引き取りやリサイクル自転車の貸し出しは筑波大学の学生だけでなく、だれでも利用できる。問い合わせは、メールslowglide017@icloud.comまたは電話029-886-8682(21日以降)。