月曜日, 1月 12, 2026
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ウクライナ避難民の心の支援に つくば生まれの「パロ」届く

産業技術総合研究所(産総研、石村和彦理事長)で誕生した、つくば生まれのアザラシ型ロボット「パロ」が、ウクライナ避難民への「心の支援」に役立とうとしている。「パロ」の発案者で研究開発者の産総研人間情報インタラクション研究部門、柴田崇徳上級主任研究員に1日夕、入った連絡によれば、ポーランド・ワルシャワの日本大使館で、避難民を受け入れている医療機関に「パロ」を届ける贈呈式が行われた。

贈られたアザラシ型ロボット「パロ」は、最新型のヨーロッパ向け医療機器版。1日(日本時間午後5時)、受け入れ先のマゾフシェ県神経精神医学センターとワルシャワ医療大学に、各2体が宮島昭夫特命全権大使から手交された。日本貿易振興機構(ジェトロ)のワルシャワ事務所を介し、産総研技術移転ベンチャーの知能システム(本社・富山県南砺市、大川丈男社長)の製造、寄贈による。

ポーランドの2医療機関へ

2月24日のロシアの侵攻により、紛争地からウクライナ国内や周辺国へ多くの人々が避難している。ポーランドには4月18日現在で、国外では最も多い280万人が避難したとされる。避難民へは「衣食住の確保」が最優先課題ながら、約3カ月が過ぎ「心の支援」も重要になってきている状況だ。爆撃、銃撃等による恐怖とその後のPTSD(心的外傷後ストレス障害)、避難生活や集団生活のストレス、今後の不安、抑うつ、孤独、興奮、不眠等の精神的な問題が顕著になっているという。

そこで、「パロ」のような医療機器で、避難民の「心の支援」を行えば、オリジナルの「人道的支援」を提供できると考えた。「武器の提供はできないが、日本らしい貢献になる」と柴田研究員。

「パロ」は、ぬいぐるみ状のアザラシ型ロボットの内部に様々なセンサーや電気回路、機械系統を組み込み、人工知能で制御される。産総研では1993年から、本物の動物を飼うことが困難な場所や人々のために、セラピーを目的に研究開発された。

2011年の東日本大震災の際も、被災地では1~2カ月ほどすると、ストレス、不安、抑うつなどが増加するようになった。この時、被災地で活用されたのが約80体のパロ。そのふれあいに被災者は癒やされ、喜ばれた経験があった。柴田研究員は「今回も近い状況」という。

ウクライナでは2006年、外務省の「文化啓発用品」として在ウクライナ日本国大使館にパロが配置された。チョルノービリ(チェルノブイリ)原発事故後の小児ガンの子供たちなどを対象に、「心の支援」に活用され、好評を得た。このことから、ウクライナ人に「パロ」が受け入れられる可能性が高く、セラピー効果を期待できそう、と予測された。

日本では、一般家庭向けのペット用と、「福祉用具」としてのセラピー用のパロが、個人や医療福祉施設等で広く利用されている。他方、制度が異なるアメリカ、ヨーロッパなどでは、パロは「医療機器」として扱われる。現在の第9世代まで、世界30カ国以上で7000体以上が利用されている。

今回、在ポーランド日本大使館から2つの医療機関に問い合わせたところ、避難民への「心の支援」のために、欧州向け医療機器版のパロの活用の希望があったことから、最新型の寄贈に至った。ポーランドでは初めての導入となる。

「ウクライナ国内、周辺国などへの避難民は約1000万人と非常に多く、長期化すると思われるので、これから『心の支援』がますます重要になる」と柴田研究員。コロナ禍の影響で、今回は参加できなかったが、今後状況が許せば現地を訪問し、見学や観察、避難民や支援者たちにインタビューするなどして、活用について情報収集する予定という。(相澤冬樹)

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