金曜日, 3月 20, 2026
ホーム社会ウクライナ避難民の心の支援に つくば生まれの「パロ」届く

ウクライナ避難民の心の支援に つくば生まれの「パロ」届く

産業技術総合研究所(産総研、石村和彦理事長)で誕生した、つくば生まれのアザラシ型ロボット「パロ」が、ウクライナ避難民への「心の支援」に役立とうとしている。「パロ」の発案者で研究開発者の産総研人間情報インタラクション研究部門、柴田崇徳上級主任研究員に1日夕、入った連絡によれば、ポーランド・ワルシャワの日本大使館で、避難民を受け入れている医療機関に「パロ」を届ける贈呈式が行われた。

贈られたアザラシ型ロボット「パロ」は、最新型のヨーロッパ向け医療機器版。1日(日本時間午後5時)、受け入れ先のマゾフシェ県神経精神医学センターとワルシャワ医療大学に、各2体が宮島昭夫特命全権大使から手交された。日本貿易振興機構(ジェトロ)のワルシャワ事務所を介し、産総研技術移転ベンチャーの知能システム(本社・富山県南砺市、大川丈男社長)の製造、寄贈による。

ポーランドの2医療機関へ

2月24日のロシアの侵攻により、紛争地からウクライナ国内や周辺国へ多くの人々が避難している。ポーランドには4月18日現在で、国外では最も多い280万人が避難したとされる。避難民へは「衣食住の確保」が最優先課題ながら、約3カ月が過ぎ「心の支援」も重要になってきている状況だ。爆撃、銃撃等による恐怖とその後のPTSD(心的外傷後ストレス障害)、避難生活や集団生活のストレス、今後の不安、抑うつ、孤独、興奮、不眠等の精神的な問題が顕著になっているという。

そこで、「パロ」のような医療機器で、避難民の「心の支援」を行えば、オリジナルの「人道的支援」を提供できると考えた。「武器の提供はできないが、日本らしい貢献になる」と柴田研究員。

「パロ」は、ぬいぐるみ状のアザラシ型ロボットの内部に様々なセンサーや電気回路、機械系統を組み込み、人工知能で制御される。産総研では1993年から、本物の動物を飼うことが困難な場所や人々のために、セラピーを目的に研究開発された。

2011年の東日本大震災の際も、被災地では1~2カ月ほどすると、ストレス、不安、抑うつなどが増加するようになった。この時、被災地で活用されたのが約80体のパロ。そのふれあいに被災者は癒やされ、喜ばれた経験があった。柴田研究員は「今回も近い状況」という。

ウクライナでは2006年、外務省の「文化啓発用品」として在ウクライナ日本国大使館にパロが配置された。チョルノービリ(チェルノブイリ)原発事故後の小児ガンの子供たちなどを対象に、「心の支援」に活用され、好評を得た。このことから、ウクライナ人に「パロ」が受け入れられる可能性が高く、セラピー効果を期待できそう、と予測された。

日本では、一般家庭向けのペット用と、「福祉用具」としてのセラピー用のパロが、個人や医療福祉施設等で広く利用されている。他方、制度が異なるアメリカ、ヨーロッパなどでは、パロは「医療機器」として扱われる。現在の第9世代まで、世界30カ国以上で7000体以上が利用されている。

今回、在ポーランド日本大使館から2つの医療機関に問い合わせたところ、避難民への「心の支援」のために、欧州向け医療機器版のパロの活用の希望があったことから、最新型の寄贈に至った。ポーランドでは初めての導入となる。

「ウクライナ国内、周辺国などへの避難民は約1000万人と非常に多く、長期化すると思われるので、これから『心の支援』がますます重要になる」と柴田研究員。コロナ禍の影響で、今回は参加できなかったが、今後状況が許せば現地を訪問し、見学や観察、避難民や支援者たちにインタビューするなどして、活用について情報収集する予定という。(相澤冬樹)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

1コメント

1 Comment
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

働く私たちのリアル《マンガサプリ》5

【コラム・瀬尾梨絵】新卒として社会に飛び出したとき、誰もが胸に抱く「理想の自分」。しかし、現実に突きつけられるのは、自分の無力さと、理想とはかけ離れた泥臭い現場であることも少なくない。そんな「やりたいこと」と「できること」のギャップにもだえ、悩み、それでも一歩を踏み出す姿を描いた、ねむようこ先生の「午前3時の無法地帯」(祥伝社、全3巻)を今回はご紹介したい。 主人公・ももこは、イラストレーターを夢見てデザイン事務所に就職したばかりの新卒会社員。彼女が思い描いていたのは、おしゃれでかわいい雑貨のデザインに関わるキラキラした毎日。しかし、配属された先は、パチンコ屋のチラシやPOPを専門に扱う、文字通り「無法地帯」のようなデザイン事務所。午前3時を回っても明かりが消えず、床には誰かが寝ており、タバコの煙と怒号が飛び交う。そこは、彼女の理想とは対極にある場所だった。 本作の最大の魅力は、新卒の誰もが直面する「理想と現実のギャップ」を、ねむ先生特有の柔らかくも鋭い感性で描き出している点にある。「私はもっとかわいいものを描きたいのに」「自分にはもっと才能があるはずなのに」。 そんなももこの心の叫びは、読んでいるこちらの胸をチクリと刺してくる。自分が本当にやりたかったこととは違う、派手でけばけばしいパチンコの広告デザインに追われる日々。その「やらされている感」と、それすらも満足にこなせない「実力不足」の板挟み。この葛藤は、クリエティブな職種に限らず、組織の中で自分の役割を見出せずにいるすべての若手社会人が共感できるはずだ。 今の仕事を本当にやりたかった? しかし、この物語が単なる「お仕事苦労話」で終わらないのは、その無法地帯な職場にいる人々との交流を通して、ももこが少しずつ「働くことの本質」に触れていくからである。 一見デタラメに見える先輩たちも、実はプロとしての矜持(きょうじ)を持って仕事に向き合っており、自分が嫌っていた仕事の中にも、誰かを喜ばせる工夫や、確かな技術が必要であること。そして、理想の場所にたどり着くためには、まずは目の前の「できること」を必死に積み上げていくしかないということ。ももこが少しずつ顔を上げ、自分の居場所を見つけていく過程は、読者に「今の自分も、あながち間違いじゃないのかも」という小さな救いを与えてくれる。 ねむ先生の描くキャラクターは、どこか抜けていて愛らしく、それでいて生々しい生活感を持っている。徹夜明けのボロボロの肌、深夜に食べるカップ麺の味、理不尽な上司への愚痴。そんな等身大の描写があるからこそ、ももこの成長が輝いて見える。 「今の仕事は、自分が本当にやりたかったことだろうか?」。そう自問自答して立ち止まってしまいそうな夜、ぜひこの本を手に取ってみて欲しい。午前3時の暗闇の中で、それでも灯りを灯し続けるももこたちの姿が、あなたの心にある「ギャップ」を少しだけ埋めてくれるはずだ。(牛肉惣菜店経営)

学校給食に金属製ナット混入 つくば市の義務教育学校

つくば市は19日、市内の義務教育学校で同日出された学校給食に異物が混入していたと発表した。教職員が職員室で給食を食べようとご飯のふたを開けたところ、直径8ミリほどの金属製のナットが混入していた。 同校の他の教職員や生徒、同日ご飯が提供された他校からもほかに異物混入の報告は無く、健康被害も報告されていないという。 市健康教育課によると、同日午後0時45分ごろ、教職員が個別の器に入ったご飯のふたを開けたところ、端の方に直径8ミリほどのナットが混入していた。 同市でのご飯の調理は、給食センターとは別に、米飯納入業者が炊飯工場でご飯を炊き、一人分をそれぞれ個別の器に入れ、ふたをして各学校の配膳室に配送している。配送された給食は、職員が配膳室から各教室や職員室などに運んでいるという。 どうして混入したかについて同課は、米飯納入業者が経緯を調査したが、19日時点で不明だとしている。 市は同日、ご飯の提供を受けた市内の各学校の保護者にお詫びの通知文を出した。

「人生という旅を楽しんで」 日本国際学園大学で卒業式

日本国際学園大学つくばキャンパス(つくば市吾妻、橋本綱夫学長)で19日、卒業式が催された。同キャンパスで学んだ49人の卒業生を前に橋本学長は「人生百年時代の中で、皆さんはこれから80年先の未来に向けて歩むことになる。80年前のことを考えると時代が大きく変わってきたことがよくわかる。これから苦難が待ち受けているかも知れないが、人生という旅を楽しんで欲しい」とエールを送った。 卒業生を代表して経営情報学部人文科学専攻の朝妻翔さん(22)は「大学の4年間で自分ができることは積極的に挑戦し、成長すること、そして一人で解決しようとするのでなく周囲の人の助けを借りることの大切さを学んだ。自分が気づかないことでも他の人の客観的な視点が必要なこともある。SNSやオンラインゲームで簡単に世界とつながれる時代だからこそ信頼できる関係を築くことが大事だと思う」と答辞を述べた。 式典では、同学部情報・デザイン専攻の伊藤祥一郎さんが橋本学長から学位記の授与を受けた。さらに優秀な成績や功績があった卒業生に褒賞が授与され、同学部人文科学専攻の朝妻翔さんと情報・デザイン専攻4年の伊藤祥一郎さんにそれぞれ学長賞が、佐藤緑咲さんに前身の東京家政学院創立者、大江スミの名を冠した大江賞が贈られた。 取手市出身の卒業生、千葉譲さん(22)は「4年間は授業とアルバイトに追われて忙しかったが、無事に卒業出来てよかった。これからはバスの運転手になるので、社会人として頑張っていきたい」と語った。 同大は1990年、東京家政学院大筑波短期大学として開学。96年に4年制の筑波女子大学になり、2005年に男女共学の筑波学院大学になった。大学の運営は19年度に東京家政学院から学校法人の筑波学院大学に移り、23年からは学校法人名を日本国際学園に変更した。一昨年からは姉妹法人の東北外語学園(仙台市、橋本理事長)が運営する仙台市の東北外語観光専門学校に新たに日本国際学園大学の仙台キャンパスを設置した。 つくばキャンパスは、経営情報学部ビジネスデザイン学科に、国際教養モデル、現代ビジネスモデル、公務員モデル、AI・情報モデル、コンテンツデザインモデルの五つがあり、各モデルから選択し専門の学びを深めることができる。外国人留学生は日本文化ビジネスモデルで学ぶことができる。(榎田智司)

土浦の新小学1年生に黄色い帽子を寄付 JA水郷つくば

新年度に土浦市内の市立小学校と義務教育学校に入学する全ての新小学1年生に向けて、JA水郷つくば(土浦市小岩田西、池田正組合長)が883個の黄色い交通安全帽子を土浦市に寄付し、18日同市役所で寄贈式が催された。池田組合長から安藤真理子市長に目録などが手渡された。 交通安全帽子の寄付は同JAが地域貢献活動の一環で1977年から始め、今年で49年目となる。以前は男子がキャップ型、女子はハット型と性別で形が異なっていたが、2024年度から性別を問わず共通のハット型とした。 式典でJA水郷つくばの池田組合長は「この事業が始まった時は農協が合併する前だった。自分が入所した頃からやっていることなので感慨深い。小学1年生は、黄色い帽子をかぶっているのが知れ渡っているので、運転手も気をつけてくれる。今後も支援を続けていきたい」と話し「帽子ではなくヘルメットという声もあったが従来通り黄色い帽子となった」と付け加えた。 寄付を受けた土浦市の安藤真理子市長は「交通安全は市としても大事なことなので、長い期間寄付を続けていただき大変感謝している。子供たちには毎日元気に登下校してもらいたい」と述べた。 寄贈式では土浦市が1976年から毎年、入学祝い品として新1年生に無料で贈呈しているランドセルも用意された。ランドセルも今春から性別に関係なくジェンダーレスの薄い茶色になる(25年5月2日付)。 新小学1年生に対するJA水郷つくばの交通安全帽子の寄付は、土浦市のほか、管轄する龍ケ崎、牛久、かすみがうら、利根、美浦、阿見の7市町村全ての公立小学校と義務教育学校に対して行われる。(榎田智司)