水曜日, 12月 17, 2025
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26項目でやりとり 洞峰公園改修で県・つくば市対立(上)

つくば市二の宮にある茨城県営の都市公園、洞峰公園(約20ヘクタール)をめぐって、県が民間事業者に委託してリニューアルする計画(洞峰公園整備運営事業)を立てているのに対し、つくば市が異議を唱えている問題(4月14日付)で、市と県のやりとりがNEWSつくばの情報開示請求で分かった。

市民の公園か 県民の公園か

洞峰公園の位置づけについて市は「開業当初から現在まで、つくば市民をはじめとした周辺住民に利用されている」などと利用実態を強調し、県の今回の事業コンセプトは「県外を含む広域から新規来園者を取り込むこと」だと指摘した上で、「長年にわたり周辺住民のための憩いの場であり、緑豊かで穏やかな住環境を支える役割を担ってきた公園の意義・形態を著しく損なう」「質疑事項や懸念点が改善されない限り、実現は難しいとの立場をとらざるを得ない」などとしている。

これに対し県は「研究学園都市建設で複数整備した公園を県と市が分担」してきた中、「洞峰公園は、広く県民に利用される広域的な公園として県が管理してきた」とし、「開園から40年以上が経過し、今後、老朽化施設の改修や巨木化した樹木の伐採など多額の費用がかかり、これまでと同様の維持管理の費用確保が困難」だとした上で、民間による公園リニューアルへの期待として、維持管理費の県負担の軽減、老朽化する公園の魅力創出と利便性向上をあげ、県全体で取り組む「コロナ禍での新たな観光・楽しみ方として、アウトドアを活かした観光誘致の取り組みの一環」であると述べる。

さらに五十嵐市長が4月の記者会見で問題だとしたグランピング施設とバーベキュー施設の「周辺に対する臭いやアルコールなどの懸念」に対して県は、臭いについて「ふた付きの高級ガスグリルを使用するため煙やにおいが周囲に拡散することはほとんどない」「炭を使用するレンガ造りのバーベキューコンロも併設する計画だが、煙や臭気が出にくい、ナラ炭、クヌギ炭、オガ炭を採用するなど対応を検討する」とした。アルコールについては「飲酒は所定の場所で楽しんでもらうことを促す」「飲酒マナーが悪い人にはスタッフが注意する」「夜9時以降は『サイレントタイム』として静かに過ごしてもらうよう案内する」などと回答している。

洞峰公園リニューアルをめぐるつくば市の質問(21年12月28日)と、茨城県都市整備課長の回答(22年2月7日)の概要は以下の通り。

Ⅰ. 周辺住民や既存利用者への対応について

1, 市 グランピング施設やBBQガーデンについて、既存の公園利用者や周辺に住む人たちが本当に求めている施設かどうかについてのアンケートや調査及び設置に当たっての住民説明などを行い、理解・合意を得る必要があるのではないでしょうか。
 アンケート調査については、年に数回、定期的に実施している中で、飲食施設を充実してほしいとの意見が毎年挙げられています。本公園は近隣の市町村をはじめ、県内外からの来園者が訪れる県営都市公園であることから、公園のホームページや新聞・広報誌などにより広域的に周知します。また、公園内に施設計画を掲示し利用者に周知すると共に、公園隣接者に対して説明を実施します。

2, 市 公園内での飲酒や喫煙等による風紀の乱れや交通の集中により、良好な住環境が害されるリスクをどう阻止するのでしょうか。
 飲酒については、飲酒施設の所定の場所で楽しんでいただくよう促します(後述18)。喫煙については、現在も保健所の指導に基づく園内指定の喫煙所以外は禁煙としており、喫煙者には引き続きマナーを守っていただきます(後述13)。交通の集中については、新規施設が集まる南側駐車場は拡張を予定しており、交通集中への対策を実施しております(後述22)。

3, 市 既存の公園施設が多用途に変更されることにより、長年利用されてきた公園本来の機能が削られ、公園本体の目的であるレクリエーションや健康増進活動の場が縮小することは問題ではないでしょうか。
 新規施設の配置場所については、既存の公園利用者の利用状況を勘案したうえで、影響を最小限に抑える計画としています。特に、多くの既存利用者でにぎわいを見せている多目的フィールドや水と緑の広場、園路、体育館、プール棟、テニスコート等については、一切改変しない計画としていることからも、既存のレクリエーションや健康増進活動の場は維持できているものと考えます。

4, 市 十分な合意形成なく事業が遂行されれば、クレームの大半はつくば市に殺到し、市として対処を求められることになるが、県はこうした状況にどう対応するのでしょうか。
 本公園に関するクレームやご意見に関しては、公園管理者及び県が対応しますので、市に連絡があった際は、公園管理事務所または県の連絡先を伝えていただくようお願いします。

Ⅱ. グランピング施設について

5, 市 つくば市の施設では、土日・祝日の野球場等の予約が取りにくい状況となっています。洞峰公園においても、土日・祝日の野球場利用者は多い状況です。この施設を閉鎖してグランピング施設に改修することにより、既存利用者及び周辺住民から野球場を利用した活動機会を奪うことは問題があるのではないでしょうか。
 野球場については年間稼働率が1割程度で、このうち、つくば市内の方の利用が3割程度となっています。また、定期的に利用している団体がいないことから、よりニーズの高いドッグランなどに改変することで、この場所をより有効活用できるものと考えています。なお、つくば市が管理する公園の野球場でも、過去に多目的広場へ転用している事例もあることから、大きな問題はないものと考えております。

6, 市 グランピング施設について、既存の野球場フェンスや低木などでエリアを明確にするということですが、それでは、セキュリティー面について問題があるのではないでしょうか。セキュリティー面が脆弱(ぜいじゃく)な施設を安易に設けることにより、犯罪を誘発することが懸念されていますが、どう対処するのでしょうか。
 全国で展開されているグランピング施設の先行事例を参考にしながら、セキュリティー面への配慮として、グランピングエリアのフェンス・植栽による区画のほか、機械警備システムの導入を行う計画です。なお、夜間に不審者がグランピングエリアに侵入した場合には、直ちに警備会社に発報され、警備員が現地に急行することとしています。

7, 市 植栽エリア境界を設けた場合、園路の交差点等の見通しが悪化し、ランニング利用者や自転車、子供等が衝突事故を起こす危険性が高まるのではないでしょうか。
 グランピング施設のエリア境界は、現在野球場を囲むように連続設置されているフェンスの位置(園路から奥まった位置)を想定しているため、園路利用者の見通しが悪化し、衝突事故の危険性が高まることはないと考えています。

8, 市 グランピング施設の管理人が不在の時間帯があり、機械警備システムの導入などで対応するとのことですが、トラブルが発生した際には問題があるのではないでしょうか。管理人不在時のトラブルには、誰がどう対処するのでしょうか。
 不審者の侵入が確認された場合には機械警備システムが発報し、警備会社の警備員が直ちに現地に急行するとともに、運営スタッフに連絡が入り、必要に応じて運営スタッフが現地に急行する計画としています。先行事例においても同様の取り組みにより大きなトラブルが生じたことはありません。

9, 市 プライベートデッキのトイレ・風呂の排水はどのような計画となっていますか。
 グランピング施設の各宿泊棟には、新たに排水管等のインフラ設備を敷設する計画です。今後、施設計画の設計を行った上で、詳細については下水道管理者と協議します。

10, 市 宿泊施設である場合、つくば市ラブホテルの建築等規制条例が適用されます(質疑事項ではありません)
 条例に従って対応します。

Ⅲ. BBQガーデンについて

11, 市 BBQガーデンと遊具スペースが仕切られていないと、飲酒者と非飲酒者でトラブルが発生するのではないでしょうか。
 BBQガーデンの各サイトは建屋となっており、BBQ利用者と公園利用者が接触する機会はないものと考えております。今後、設計業務の中で、必要に応じてBBQエリアを区画するフェンスの設置や植栽等による目隠し等についても検討します。

12, 市 BBQガーデンからの臭いや煙の拡散は、植栽や樹木による吸着を図るだけでは防ぐことはできません。有効な防止策はあるのでしょうか。
 BBQガーデンは、高級ガスグリル(蓋つき)を使用することとしており、煙や臭いが周囲に拡散することはほとんどありません。また、レンガ作りのBBQコンロ(炭利用)も併設する計画ですが、煙や臭気が出にくい炭(なら炭、くぬぎ炭、オガ炭)を採用するなどの対応を検討します。

Ⅳ. グランピング施設・BBQ施設の共通課題について

13, 市 公共の場は喫煙を制限しているケースが多いですが、飲酒を伴うと喫煙を抑制することは難しくなるのではないでしょうか。飲酒を伴わなくても、長時間滞在するBBQやグランピング利用者に対して喫煙を禁止しても、実質的には遵守させることは不可能ではないでしょうか。公園利用者への副流煙の問題をどう解決するのでしょうか。
 現在も、保健所の指導に基づく園内指定の喫煙場所以外では禁煙としており、今後も同様のルールを徹底します。なお、新設するグランピング施設、BBQガーデンにおいては、施設内は原則禁煙とし、喫煙者を確認した場合には、スタッフが注意喚起します。

14, 市 屋外施設である以上、煙や臭気の拡散は不可避です。洞峰公園は幼児から高齢者まで幅広い年齢層の憩いの場であるとともに、ウオーキングやランニング等による健康増進を目的とした利用者が多く、緑の中で憩いのひと時を過ごす人にとって、また呼吸器に負荷のかかるランニング等の運動中の人にとって、臭い・煙は極めて不快なものです。タバコの副流煙やBBQの煙・臭気等が、公園利用者のレクリエーションや健康増進活動を阻害し、公園本来の設置目的が損なわれることは問題ないのでしょうか。
 たばこの副流煙については、前述(13)の通り、現在も、保健所の指導に基づく園内指定の喫煙所以外では禁煙としており、今後も同様のルールを徹底します。なお、新設するグランピング施設、BBQガーデンにおいては、施設内は原則禁煙とし、喫煙者を確認した場合には、スタッフが注意喚起します。BBQの煙や臭いについては、前述(12)の通り、BBQガーデンは、高級ガスグリル(蓋つき)を使用することとしており、煙や臭いが周囲に拡散することはほとんどありません。また、レンガ造りのBBQコンロ(炭利用)も併設する計画ですが、煙や臭気が出にくい炭(なら炭、くぬぎ炭、オガ炭)を採用するなどの対応を検討します。

15, 市 グランピング施設やBBQガーデンの利用に伴う費用は高額で、利用者は県外の人がメーンと想定されます。地域住民や既存利用者に親しまれている活動の場・憩いの場を削ってまで、県外を中心とする地域外の人のためのレジャーの場を新設することの意義は何でしょうか。
 グランピング施設やBBQ施設の利用は、県外の人をメーンとしている訳ではなく、県内・市内の方々にも広く利用いただきたいと考えています。また、カフェ施設やカフェスタンドなど、既存公園利用者にも気軽に利用いただける施設も計画しています。

16, 市 グランピング施設やBBQガーデンを整備することにより、にぎわいを創出するとありますが、洞峰公園及びその周辺は文教地区に指定されており、文教的環境の保護に相反するのではないでしょうか。過去15年間につくば市に寄せられた「市民の声」を見る限り、洞峰公園周辺の騒音対策や渋滞対策、近隣から漂う野焼き等への臭気への対策を求める要望は多数ありますが、この地域に新たな賑わいを創出する要望は皆無です。この地域における「賑わいの創出」を求めているのは誰なのでしょうか。
 文教地区(周辺住宅環境)への配慮については、野球場周辺エリアの位置であれば南側が気象研究所であり隣接する建物がないことや、西側・北側の住宅地までは200メートル以上離れていることから、騒音問題など住居の環境を害するおそれはないものと考えています。本公園は近隣市町村をはじめ県内外から来園者が訪れる広域的な公園であり、公園利用者アンケートなどでも飲食機能の充実など、にぎわい施設を求められています。また、県全体としてコロナ禍の新たな観光の楽しみ方として、アウトドアを生かした観光誘致に取り組んでいます。

17, 市 警官の保護、火災の延焼の防止の観点から、樹木の保護は重要であると考えますが、グランピング施設やBBQガーデンの整備、南側駐車場の拡張に伴い、樹木の伐採は行われるのでしょうか。
 樹木の保護については、開園から40年が経過し、巨木化している樹木があることから、専門家の意見を聞きながら、樹木が密集してうっそうとしている場所など計画的に伐採し、良好な樹林環境を維持していきます。南側駐車場の拡張は、現状及び将来の駐車場不足問題の解消と新規施設へのアクセス向上のため必要不可欠と考えており、計画と合わせて必要最小限の樹木を伐採します。

Ⅴ. 飲酒・アルコールの提供について

18, 市 酒気帯び者がスポーツ施設エリアを通過すること等により、公園利用者が不快に感じることのないよう、飲酒に関するルールを設けるべきではないでしょうか。また、具体的にどのようなルールが設けられるでしょうか。
 飲酒については、各飲食施設内や椅子・テーブルが置いてある所定の場所で楽しんでいただくことを促します。飲酒に関するルールとして、以下を徹底します。①公園内でのアルコールの販売時間は18時までの計画となっています。(レストラン、カフェ、カフェスタンド)②飲酒マナーが悪い方にはスタッフが注意します。飲酒マナーが改善されない場合、販売時間の短縮や販売数の縮小を検討します。

19, 市 飲酒マナーの悪い方への周囲が必要な際、管理人不在時は対応できないのでしょうか。その際、どのように対処するのでしょうか。
 BBQ施設は18時30分、レストランは20時で閉店します。グランピング施設は、早朝6時〜深夜23時頃までスタッフが管理棟に常駐する予定です。宿泊者に対してはチェックイン時に注意事項として、夜間21時以降は「サイレントタイム」として静かに過ごしていただけるよう案内します。選考事例においても同様の取り組みより大きなトラブルが生じたことはありません。

20, 市 酒類の提供方法については、事業者が変わった場合でも引き継がれるのでしょうか。
 本計画の事業期間は20年間であり、原則、事業者は変わりません。酒類の提供方法を含めた公園施設の管理運営については、事業者が変わる時点において、新しい事業者と県で施設継続の必要性や運営方法等を検討・協議し、継続しても問題ないと県が判断すれば引き継がれることになります。

Ⅵ. 駐車場その他

21, 市 駐車場127台増で周辺渋滞解消とした根拠は、どのように算出したものであるか、詳細をお示しください。
 現指定管理者から、行楽シーズンにおける本公園駐車場への待ち渋滞状況(多くても10台未満)をヒアリングしたうえで、127台の台数拡張を行えば、新規施設への新規来場者の車両台数を考慮しても、現状の駐車場不足問題の解消につながると考えています。なお、駐車場台数127台については、駐車場拡張範囲や新規施設へのアクセス向上なども考慮の上、最大限確保できる台数として設定したものです。参考までに、グランピング施設は宿泊棟18棟あり、定員は最大6名/棟の想定。1団体あたり2台の駐車場利用とした場合、最大で36台となります。また、BBQ施設は10サイトあり、定員は最大6名/サイトの想定。1団体あたり2台の駐車場利用とした場合、最大で20台となります。これらを合計すると、最大でも60台程度の駐車場利用となりますが、127台の駐車場拡張により、十分に余裕を持った駐車場台数となると考えています。

22, 市 駐車場127台増で周辺渋滞解消とした根拠は、どのように算出したものであるか、詳細をお示しください。
 県指定管理者から、行楽シーズンにおける本公園駐車場への待ち渋滞の状況(多くても10台未満)をヒアリングした上で、127台の台数拡張を行えば、新規施設への新規来場者の車両台数を考慮しても、現状の駐車場不足問題の解消につながると考えています。なお駐車場台数127台については、駐車場拡張範囲や新規施設へアクセス向上なども考慮の上、最大限確保できる台数として設定したものです。参考までに、グランピング施設は宿泊棟18棟あり、定員は最大6名/棟を想定。1団体当たり2台の駐車場利用とした場合、最大で36台となります。またBBQ施設は10サイトあり、定員は最大6名/サイトの想定。1団体当たり2台の駐車場利用とした場合、最大で20台となります。これらを合計すると、最大でも60台程度の駐車場利用となりますが、127台の駐車場拡張により、十分に余裕をもった駐車場台数となると考えています。

23, 市 市外・県外からのマイカー利用者が増えることにより、周辺の交通渋滞が悪化するのではないでしょうか。
 グランピングやBBQ施設などを新設することにより、マイカー利用者が増えることが想定されますが、南側駐車場を127台拡張することで、22で前述したように駐車場不足による周辺の交通渋滞が発生する可能性は低いものと考えております。

24, 市 BBQ場やグランピング施設は、チェックイン・チェックアウトの時間帯に車両の出入りが集中する特性があるため、駐車場台数を増やしても同時刻に多数の車両が集中して渋滞が発生することは避けられず、周辺渋滞悪化は必然的であると考えられますが、どのような対策を行うのでしょうか。
 チェックイン時における車両の集中については、他のグランピング・BBQ施設の先行事例からも、利用者ごとに来場時刻は異なるため、すべての利用者がチェックイン時刻に同時に来ることは考えにくいと思われます。

25, 市 BBQ場で飲酒した利用者が、駐車場の車内で長時間休憩してスペースを占拠することで、他の利用者の駐車場利用に支障が生じたり、混雑が発生したりするのではないでしょうか。
 駐車場台数は十分確保してあるので、他の公園利用者の駐車スペースに影響を与えるものではないと考えます。また、他の駐車場利用者に迷惑をかける行為を確認した場合などは、スタッフにより注意喚起することとします。

26, 市 24時間営業のトレーニングジムの管理体制はどのように考えているのでしょうか。
 警備体制については、警備会社と連携し入退館の管理や、室内に非常ボタンを設置することで非常時は駆けつける体制になります。日中の洞峰公園の体育棟が開いている時間帯は、スタッフが管理します。夜間のスタッフ不在時間帯は警備会社が管理します。入退場に利用者登録されたIDカードを使用するため、利用者・時間を特定できるようになっています。

これ以降の県・市対立の動向については(下)で報じる。(柴田大輔)

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自然と等身大で向き合う遊び仕事(4)《デザインを考える》27

【コラム・三橋俊雄】今回取り上げる「遊び仕事」は、京都府宮津市由良地区に伝わる「にごりすくい」と「手長エビ漁」についてです。 にごりすくい 由良川は、大雨で濁ると水中の酸素が不足し、魚たちはふらついて川のよどみに集まります。そこを「タモ」と呼ばれる大きな網で上流から下流へすくい、ぐるりと岸へ寄せて捕える漁法があります。アユもコイもウナギも一度に捕れるため、「これほど面白い漁はない」と評されたものです。 昭和30〜40年頃までは広く行われていましたが、現在では大雨時の危険性から禁止されている地域もあります。タモは、杉の枝を巧みに曲げ、直径数ミリのしなやかな枝先を両側から重ね合わせて糸で縛り、輪を作ったものです(図1)。柄の長さは約4メートル。網の部分には絹糸が用いられ、女性たちが編み上げ、毎年柿渋に浸して干すことで補強していたとのこと。 手長エビ漁 網を使った漁法では、サナギや身欠きニシンを餌に糸でつり下げ、手長エビをおびき出します。エビが姿を現したところを、直径20センチほどの細長い小さな網で捕えます。エビは驚くと後方へ逃げようとするため、その習性を利用し、背後からそっと網を差し入れて捕えます。 一方、「モンドリ」を用いた漁は、由良川で6月から12月にかけて行われます。モンドリにサナギを入れて円錐形のふたをし、10カ所ほどに沈めて紐(ひも)の一端を川辺の石に結び固定します(図2)。2日ほどたったら、Y字型の枝先にひっかけて仕掛けを引き上げます。一つのモンドリに7〜8尾、合わせて80尾ほど捕れることもあります。 捕れた手長エビは高級食材ですが、売るのではなく、天ぷらにして家族や友人に振る舞われます。私も学生たちとともに、何度もその味を楽しませていただきました。 地域の伝統的生活文化を継承 これこそが「遊び仕事」の世界です。自然に分け入り、プリミティブな道具を用いて相手と同じ土俵で獲物を追う。これまでの体験で培ったスキルを駆使し、身体感覚を総動員して得られた成果は、自らの喜びとなるだけでなく、仲間内での誇りや自慢にもつながります。さらに、その成果をお裾分けすることによって、また新たな喜びが生まれていきます。 すなわち、「遊び仕事」とは、①人間行動の本質である「遊び」を通じて、自らが自然との関係を結ぶ第一歩であり、②自然と人間が等身大で向き合える貴重な共生の場でもあります。さらに、③「遊び仕事」を通じて身近な自然や生活文化の豊かさを再認識することができ、地域の伝統的生活文化の継承・保全、そして地域の活性化にもつながります。 翻って、今日の私たちは情報化やバーチャル社会のただ中にあります。だからこそ、「遊び仕事」の経験は、④自然との「生身の」付き合い方を体験できる、大切な学びの場ともなるのはないでしょうか。(ソーシャルデザイナー)

「支える人が守られる環境を」児童相談所元職員 飯島章太さん講演会 21日 土浦

「誰かを支えたいと願う人こそ、大切にされる職場であってほしい」—。千葉県の児童相談所・一時保護所で勤務していた元職員の飯島章太さん(32)はこう訴える。 飯島さんは、過酷な労働環境で体調を崩し退職を余儀なくされたとして、千葉県に未払い賃金や慰謝料の支払いを求めて提訴している。21日、土浦市川口の古書店「生存書房」で、飯島さんの講演会「労働としてのケアを考える~千葉児童相談所裁判が問うこと」(茨城不安定労働組合主催)が開かれる。「心身が守られない職場環境のしわ寄せが、本来守られるべき子どもたちに及んでいる」と語る。 精神疾患の長期療養 3倍 飯島さんが、千葉県 市川児童相談所の一時保護所で児童指導員として勤務を始めたのは2019年4月。虐待などで家庭に居られなくなった子どもを保護し、生活支援や自立に向けたサポートを行う役割だった。現場では、定員の倍となる約40人が入所し、多い日は一人で20人の子どもを見なければならなかった。 職員不足の中、休憩はほとんど取れなかった。午前8時半から午後5時15分までの日勤では、学習支援、食事や掃除のサポート、レクリエーションなどに対応した。精神的に不安定な子どもも多く、けんかや事故など不意のトラブルにも注意を払わなければならない。不慣れな職場で十分な研修もないまま、先輩の仕事を「見よう見まね」で覚えていった。残業も頻繁で、行動観察記録や学習プリントの確認などの事務作業を終える頃には、午後8時を過ぎることも多かった。 月に4~6回の宿直勤務は、2人の職員で40人を担当した。約21時間勤務の上、残業もあった。子どもたちの就寝後は、翌日の会議や行事の準備、子ども一人ずつの記録作成に追われた。緊急一時保護の受け入れや体調不良の子どもへの対応で、仮眠時間は廊下に布団を敷いて待機し、「横になれても眠れたことはほとんどなかった」と振り返る。 こうした勤務の中で飯島さんはうつ病を発症。休職と復職を繰り返し、2021年11月に退職することになる。翌22年7月、千葉県を相手取り総額1200万円の損害賠償を求め千葉地裁に訴訟を起こした。 「自分の経験を個人的な問題で終わらせたくなかった」と飯島さんは話す。千葉県では2020年度、児童相談所の専門職員の精神疾患による長期療養取得率は、他の県職員の3倍以上にのぼり、その約半数が20代だった。体調を崩したのは、決して飯島さん個人の問題ではなかった。 子どもを管理する葛藤 勤務する中で飯島さんが最もつらかったのは、「子どもを支えたい」という思いで選んだ職場で、いつしか子どもを「管理する側」に回ってしまったことだった。飯島さんは、大学2年から6年以上、子どもの電話相談ボランティアを続けていた。修士論文のテーマにもしたこの経験を生かし、「子どもの側に立ち、丁寧に話を聞き、支えになれる仕事」として選んだのが児童相談所だった。 しかし実際の現場では、思い描いた仕事はできなかった。子どもたちは多数の細かいルールに縛られていたからだ。ティッシュ1枚を使うにも職員の許可が必要とされ、起床時間まで布団から出てはならず、食事は完食が原則で、残すには許可と謝罪が必要とされた。根拠があいまいな規則に従わないと、強く叱責される子どももいた。集団生活を送る上で規律は必要とはいえ、「刑務所みたい」とつぶやく子どもを目の当たりにし、「家庭で傷ついた子どもを、さらに傷つけてしまっているのではないか」と葛藤した。しかし激務の中で、抱いた違和感はまひしていったという。 「本当は一人ひとりの話を丁寧に聞き、その子の背景を理解しながら支援につなげたかった。学生時代にしていた電話相談の延長線のような仕事がしたかったんだと思う」と飯島さん。学生時代に積み重ねてきた経験が無価値になっていくことに追い詰められていく。ふと我に返った時、自分を信じられなくなる恐怖に襲われた。そして、心身は限界を迎えた。 応援してくれる人は必ずいる 訴訟では12人の弁護士が弁護団「じそう弁護団ちば」を結成し飯島さんを支えている。千葉地裁は、飯島さんが、人員不足や多忙により十分な研修がないまま現場に配属されたこと、休憩や仮眠時間にも作業があったことなどが「安全配慮義務違反」にあたると認め、県に50万円の支払いを命じた。県は即日控訴し、東京高裁での控訴審は10月9日に結審。現在、和解協議が進められている。 飯島さんは「紆余曲折の中でも、今こうして生きてこられたのは、多くの人の支えがあったから」と語る。一方で、「児童相談所に対して世間からは厳しい声も多い。職場では、社会に味方がいるのかと不安になる職員もいた。でも裁判を通じて、応援してくれる人は必ずいると実感できた」と振り返る。 今回の講演会に向けて「今も不安を抱えながら現場で働く職員はたくさんいる中で、120%の力で働く職員に『頑張って』とは言えないが、こういう仕事を選び、子どもたちのために働く人がいることを多くの人に知ってほしい。社会の中で、児童相談所が抱える問題に関心が広がり、職場環境が改善されることで職員が安心して働けるようになれば、それが何より子どものためにつながる」と語る。(柴田大輔) ◆飯島章太さんの講演会「労働としてのケアを考える~千葉児童相談所裁判が問うこと」は21日(日)午後2時から、土浦市川口2-2-12、古書店「生存書房」で開催。参加費無料。参加申し込みは専用サイト、またはメールibarakifuantei@gmail.com(茨城不安定労働組合)、電話050-1808-8525(生存書房)へ。

外国人排斥の風潮に強い危機感 市民団体「牛久入管を考える会」が報告会

法務省の東日本入国管理センター(牛久市久野町)に収容されている外国人の処遇改善に取り組む市民団体「牛久入管収容所問題を考える会」(つくば市、田中喜美子代表)の年間活動報告会が14日、つくば市役所コミュニティ棟で開かれ、昨今の外国人排斥の風潮に強い危機感が示された。 牛久にある同入管センターは、在留資格のない外国人や難民申請中の外国人を収容している。考える会は、収容されている外国人との面会活動などを通して処遇改善などを要望している。 記念講演をしたノンフィクションライターの安田浩一さんは、SNS上でまん延する外国人への偏見を助長する様々なデマについて「デタラメが差別につながり、差別と偏見のその先にあるのは殺戮(さつりく)」だと、102年前の関東大震災での朝鮮人虐殺を例に挙げ強く非難した。 その上で、モスク建設やインターナショナルスクール開設反対運動、移民反対デモが各地で行われる一方、製造業や農業の現場などで多くの外国人労働力に依存している現状に触れ「私たちは好むと好まざると外国人と関わっている」と述べた。 考える会の田中代表は、選挙運動を通じて複数の政党や候補者が公然と外国人排斥を掲げ、政府が「違法外国人ゼロキャンペーン」を展開していることについて「国策として外国人排斥が始まった」と厳しく批判した。 活動報告会には市民や外国人ら約80人が参加した。 東日本入管センターの2025年の被収容者数は現在、毎月約40人から60人前後で推移しているなどの報告があった。2024年6月、入管施設に収容しない代わりに、監理人の管理下で一定の制約を受けながら社会生活を送り退去強制手続きを進める「監理措置制度」が始まって以降は大きく減っている。一方、今年6月以降は被収容者が強制送還される事例が増えているという。 登壇した「監理措置」の中国籍の男性は、入管施設内での生活について「入管職員とコミュニケーションを取ればいじめられなかった。ただ、自由は無かった」と振り返る一方で、「監理措置制度」の下で、入管施設の外で一定の制約を受けながら社会生活を送る現在の状況を「入管の中には塀がある。(入管の)外にも塀がある」と述べた。(崎山勝功)