つくば市が上郷高校跡地(同市上郷)に建設を計画している陸上競技場の必要性や効果などを検証する第8回大規模事業評価委員会(委員長・横張真東京大学大学院工学系教授)が29日、同市役所で開かれ、整備事業は「概ね妥当」とする答申をまとめ、同日、五十嵐立青市長に提出した。
一方、事業の必要性については、市単独で整備するという手法に対し「大規模な施設を整備する際は、原則として市単独での実施は避け、他自治体や企業、国公立の研究・教育機関と共同で整備する可能性など、さまざまな方法を検討し、相互比較し、プロセスも開示しながら、最も妥当な方法を選択すべき」だなどとして、今後も、他自治体や機関との共同利用などの可能性を検討すべきだなどとする注文が付いた。
評価委は昨年9月から計8回の委員会を開き、事業の必要性、妥当性、優先性、有効性、経済性・効率性、地域への対応の6項目について調査した。
結果は、事業の妥当性について、規模は想定される需要を上回る過度な計画にはなってない、候補地選定は比較が行われたなどから、概ね妥当だとした。
事業の優先性は、財政支出を平準化するなど市の財政に影響を与えるものではないことが検討されている、サッカー場は3カ所と数が少なく稼働率が高いなどから、妥当だとした。
有効性についても、市スポーツ推進計画の「成人の週1回以上のスポーツ実施率を65%以上にする」などの数値目標達成に貢献するなどとして、妥当だとした。
経済性・効率性については、費用がどれだけ膨らむ可能性があるか把握することが重要だとして、評価委側が、すでに公表している概算事業費約22億円以外についても費用を明らかにするよう求めた。市側は、既存校舎解体とセミナーハウス新設費が最大約5億円、道路約300メートル区間を4メートル拡幅する道路拡幅費が約7200万円、排水取り出し工事費が50万~450万円、受水槽設置工事費が1600万~3200万円などの金額を新たに示し、整備事業費は約6億円増えて総額28億円になることが新たに明らかになった。一方、維持管理費は年間8000万円程度、将来の大規模修繕費用は5年目2800万円、10年目6200万円、15年目1億5000万円が見込まれることも分かった。これを受けて評価委は、経済性と効率性について、概ね妥当だとした。
地域への対応についても、地元から「騒音、道路、進入路などの含めて考えてほしい」「騒音や駐車場問題への対応を検討してほしい」などの意見があり、交通環境を中心に周辺地域に与えるインパクトは大きいとしながら、渋滞が懸念される施設出入り口は既存道路に右折左折レーンを設けたり、駐車場の位置を工夫して渋滞を緩和する方針があるなどとして、概ね妥当だと結論付けた。
答申を受けて市スポーツ施設整備室は「答申を踏まえて、なるべく市の早く方針を決定したい」としている。
大規模事業評価は当初、計4回程度開催し、11月にも答申をまとめる予定だった。しかし委員から、他自治体や機関などと共同したり連携するなど代替の整備手法を検討したか、市民にどのようなメリットがあるのか、上郷地区だけでなく市全体の需要を見込んでいるか、陸上競技場本体だけでなく費用がどれだけ膨らむ可能性があるのかなど、たびたび追加資料の提出を求められ、委員の任期が終わる3月末にようやく答申がまとめられた。
市が昨年4月策定した陸上競技場整備基本構想によると、計画概要は、400メートルトラックを8レーン、インフィールドは天然芝、観客席はメーンスタンド1500席、芝生スタンド2500席とし、日本陸上競技連盟の施設基準で第3種公認相当規模の整備をする。付帯施設として、サブトラックのほか、ジョギングコースとして利用できる園路広場、セミナーハウスを整備するーなど。基本構想時点の利用開始は2026年度の予定。(鈴木宏子)