昨年実施されたつくば駅近くの吾妻2丁目70街区の国家公務員宿舎跡地約5.7ヘクタールの土地利用調査について(2021年10月26日付)、財務省関東財務局とつくば市は18日、民間事業者の意向調査(サウンディング型市場調査)結果を公表した。
財務省など市場調査結果を公表
土地活用の意向がある建設業者、不動産業者など計7事業者が参加し、マンションや戸建て住宅、商業施設、イノベーション施設などの提案があった。今後、関東財務局とつくば市が議論して開発の条件などの活用方針を検討し、二段階一般競争入札=メモ=で処分を行うとしている。関東財務局によると今後のスケジュールは未定という。
提案があったのはほかに、スーパーや飲食店、学習塾、書店、無人店舗など生活支援施設、社宅、学生寮、シティホテル、コワーキング施設、教育施設など。
「理念より現状把握を」「行政の補助必要」
つくば市が中心市街地まちづくり戦略で掲げている、研究学園都市の研究成果や最先端技術を実現する場となる「イノベーション拠点」の誘導に対しては、「2000坪をイノベーション施設、残り2000坪をオフィスとするイノベーションエリアの開発を想定する」(2000坪は約6600平方メートル)などの提案があった一方、「イノベーション拠点は一定規模導入可能で、近隣のスタートアップ施設とニーズの取り合いにならないよう差別化を図るが、今後の需要調査でニーズを把握し慎重に判断することが必要」「活用方針であるスタートアップ支援施設などは、周辺の既存施設に多数存在するが十分に活用されていない。理念より現状を正確に把握した上で市民にニーズのあるものを整備することが最優先」など厳しい意見も出され、市場のニーズと市の方針に乖離(かいり)があることが浮き彫りになった。
さらに70街区にイノベーション拠点を整備する場合の事業者が参加しやすい仕組みとして、「イノベーション施設は収益性が低く、行政の支援など積極的な協力、関与を希望する」「補助金、土地を安く貸す、施設の運営を市が行うなど行政の補助が必要」など、行政の支援を求める意見が出された。「ラボを整備する場合、危険物の貯蔵が必要となるケースがあり、第二種住居地域や近隣商業地域の用途では十分な貯蔵容量を確保できない。危険物貯蔵量の緩和など行政の特段の配慮を要望する」などの意見もあった。
こうした市場ニーズに対し、つくば市学園地区市街地振興課は「イノベーション拠点については厳しい意見もあるが、そうでない意見もある。市場ニーズは把握できたので、調査結果をもとに国と調整したい」としている。
事業コンセプトや事業内容については、ほかに「おしゃれで高級感のあるつくばらしい街づくりをする」「新たな買い物体験の場であるイノベーティブショッピングセンターを形成する」「スーパーは3000~4000坪を想定する」「商業施設、マンションの規模はマーケット分析を行い慎重に検討する」などの意向が示された。
処分方法については、売却、定期借地、PFIなどさまざまな意見が出た。処分時期も「可能な限り早く」「柔軟に対応可能」などさまざまな意見があった。(鈴木宏子)
※メモ【二段階一般競争入札】
開発の条件をあらかじめ設定し、入札参加者から土地利用の企画提案書を提出してもらい、国が設置する審査委員会で開発条件との適合性を審査した上で、審査通過者による価格競争で落札者を決定する入札の方法。