水曜日, 10月 5, 2022
ホーム コラム 原子力施設攻撃は人類への犯罪行為だ 《邑から日本を見る》107

原子力施設攻撃は人類への犯罪行為だ 《邑から日本を見る》107

【コラム・先﨑千尋】プーチンのとどまるところを知らないウクライナへの侵略。強大な核戦力を背景にし、2月末には核兵器運用部隊を戦闘警戒態勢に置くよう命令した。さらに停止中のチェルノブイリ原発を占拠し、今月4日にはウクライナ南部のザポロジエ原発を武力で制圧した。同原発は6号機まであり、欧州で最大。ウクライナ総電力の2割を供給している。同国のクレバ外相は「爆発すればチェルノブイリ事故の10倍の被害になる」と警告している。

運転中の商用原子力発電所への軍隊による攻撃は史上初めて。国際法やジュネーブ条約・議定書に明確に違反する行為だ。運転員はロシア軍に銃口を突き付けられながら運転を続けている模様だが、心身ともに疲労して、正常な運転操作やトラブルへの対応ができなくなる可能性が高い。また、運転を素人が強制的に止めれば、最悪の場合、東京電力福島第1原発事故の時のように原子炉が炉心溶融後に原子炉建屋が爆発・崩壊することもあり得る。変電所や送電網が破壊されれば原発の運転も不安定になり、不測の事態が起きることも想定される。

最新の情報では、チェルノブイリ原発では外部からの電源が切断され、非常用電源で動かしているようだが、放射能漏れなどが懸念される。ザポロジエ原発で外部電源が遮断されたら、ロシアも含めてヨーロッパ全体に被害が及ぶ。ロシアは、訓練を受けた原子炉操作員を制圧した発電所に配置し、ウクライナの操作員から引き継ぐことを考えているのだろうか。誰でもわかるように、素人は手を出せない。

原発は何よりも「おっかない」代物

プーチンの狙いは何か。原発の制圧で、電力という市民生活の要を押さえ、ウクライナのゼレンスキー政権に圧力をかけ、核戦力に言及し、欧米に圧力をかけるねらいのようだ。毎日、ウクライナの人たちが殺害され、街が破壊され、他の国に避難する映像をテレビで見せつけられているが、プーチンはよその国に「中立化、非武装化、政権交代」を要求し、住宅や病院、学校までも破壊している。聞く耳を持たない彼の暴虐をどうすれば止められるのか。胸が痛むばかりだ。

IAEA(国際原子力委員会)のラファエル・マリアーノ・グロッシ事務局長は、2020年に原子力の安全と防護の7つの柱を表明した。それは、原子炉、核燃料プールなどの施設の物理的な安全性が維持されなければならない、運営スタッフは安全及びセキュリティの義務を果たし、不当な圧力から解放された意思決定を行う能力を有するなど、基本中の基本なのだが、それがプーチンにいとも簡単に破られてしまった。「人が作ったルールは人によって破られる」ということだ。

わが国の原発はどうか。当然だが、今回のような戦争を想定した防御策は講じていない。自然災害も含めて有事の際、原発は巨大なリスクになると肝に銘じる必要があることをウクライナ情勢は教えている。本県には日本原電東海第2発電所があり、会社は再稼働を目指しているが、すぐ近くに住んでいる私にとっては、原発は何よりも「おっかない」代物である。(元瓜連町長)

1コメント

誹謗中傷するコメントはNEWSつくば編集局が削除します。
1 Comment
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー

注目の記事

最近のコメント

最新記事

孤立し苦境に立つプーチン大統領 《雑記録》40

【コラム・瀧田薫】ウクライナ軍が、9月中旬以降反転攻勢に出て、ロシア軍に占領された北東部の要衝を奪還しつつある。これに対し、プーチン大統領は、9月21日のロシア国内向けテレビ演説で、予備役に対する部分的動員令(30万人の徴兵)を発動すると宣言し、さらにウクライナ東部や南部のロシア軍占領地域において住民投票を実施し、その上でロシア領に併合する意向を示した。 この演説で特に注目されるのは、新しくロシア領(クリミア半島を含む)となった地域をウクライナ軍が奪還しようとすれば、「あらゆる手段でこれに対抗する」としたことである。この「あらゆる手段」とは、具体的には何を指しているのだろうか。ラブロフ外相が国連総会の一般演説で、ロシアに編入される地域を防衛するために核兵器を使用する可能性を示唆していることと重ね合わせれば、狙いの一つは「核兵器の使用」であり、もう一つは「ウクライナに対する宣戦布告」であろう。 プーチン大統領は、これまでロシア国民を報道管制下に置き、ウクライナ侵攻が国民生活とは遠い世界の出来事であるかのように伝えてきた。しかし、今回の演説のなりふり構わぬ内容は、ウクライナ侵攻当初の楽観が根底から崩れ、ロシア軍が苦戦している事実をプーチン大統領自らが告白したに等しい。 当然、国民一般の受けたショックは大きく、ロシア国内の複数の都市で市民による反戦デモが発生し、徴兵を恐れる市民やその家族が飛行機や車を利用してロシア国外に脱出し始めているとの情報も伝わってきている。当面、この混乱が政権の土台を揺さぶるほどに拡大することはないだろう。また、ロシア軍によるクーデターが起きる可能性もさほど大きなものではないだろう。 独裁者の妄想という不条理 しかし、ウクライナ侵攻の大義、すなわちロシアの過去の栄光を取り戻し、大国としてのパワーを維持し続けるための軍事力行使は、はっきり裏目に出たというのが軍事専門家大方の見方である。それでも、プーチン大統領は侵攻をやめないし、やめられない。

耳かき一杯の大量作製に成功 つくばの研究室生まれのナノ粒子

脱炭素社会に向け注目を集める熱電材料に、つくばの研究室生まれの技術が名乗りを上げている。GCEインスティチュート(本社・東京都中央区 、後藤博史社長)は3日、開発中の「合金ナノ粒子」の大量作製に成功と発表した。新エネルギー開発はじめ、電子部品や触媒などに活用をめざす企業への提供に本格的に乗り出す。 熱電材料は、熱から電気に直接エネルギーを変換する発電デバイス。熱電変換には温度差を利用するのが一般的だが、GCEが特許化した技術は、温熱源さえあれば(温度差を用意できなくとも)発電が可能という新しい原理のテクノロジーだ。 同社は2016年創業のつくば発ベンチャー。つくば研究支援センター(つくば市千現)の創業プラザに研究室を置いて、「合金ナノ粒子」の開発を進めてきた。ナノ(十億分の一)メートルサイズの粒子を熱電子の伝搬に利用する。 熱電材料から医療応用にも 研究室では、溶液に溶けた金属前駆体(金属塩)をレーザー照射により還元し、金属ナノ粒子を作製する。複数種類の金属前駆体が存在する場合に「合金ナノ粒子」となる。金、銀、銅、パラジウム、イリジウム、白金などの金属ナノ粒子が作られ、それらを混ぜ合わせた合金ナノ粒子が作製された。

謎多い八田知家の役作り 市原隼人さんご当地つくばでトークショー

NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で、八田知家役の俳優、市原隼人さん(35)によるトークショーが2日、つくば市竹園のつくば国際会議場で開かれた。つくば市と同市教育委員会が主催した。八田知家は、ドラマの主題である鎌倉幕府を支えた「13人の合議制」を担ったひとり。同市の小田城を本拠に、鎌倉時代から戦国時代にかけ約400年間勢力を誇った小田氏の始祖として知られている。会場には全国から応募の3400人から抽選で選ばれた約1200人が詰めかけ、ドラマ制作の裏舞台など、ユーモアと熱が込もった市原さんの話に聞き入った。 市原さんの大河ドラマ出演は「おんな城主直虎」(2017年)に続いて2回目。今回演じた八田知家は、現存する資料が少ないことから「役者人生で一番役作りに苦労した」という。ドラマの中で、知家のトレードマークにもなっている着物の着崩し、結髪の乱れ、脂汗は、謎多い知家を演じるためにこだわった市原さん発案の演出。「人間臭さ、泥臭さ、他の12人とは違う独特の空気感を出したかった」と語る。 市原さんは、今回の出演が決まると、少しでも知家のことを知るために、同市をはじめ県内各所にある知家に関する土地を何度も訪ねた。そこで知った茨城について、「広大な自然がたくさんある。海と山のたくさんの産物に驚いた」と魅力を語る。知家の墓を訪ねた際には子孫との交流も生まれ「その方の思いも役に込めた」。 1月にスタートしたドラマは、12月18日で最終回を迎える。コロナ禍での自粛の波を経た今回の撮影は「挑戦だった」と言い、撮影が終わりを迎えると、思わず涙が流れた。「これからがクライマックス。間違いなく面白くなっていく。ドラマも含めて、エンターテインメントをみなさんの楽しみに入れてもらえたらうれしい」とファンに呼びかけた。 市原さんに花束を送る小田地域まちづくり振興会事務局長の白石満帆さん(右) 同市では現在、巡回企画展「鎌倉殿の御家人『八田知家』とつくば」が開催されている。11月20日までは、小田氏ゆかりの小田城跡歴史ひろば(同市小田)が会場となり、その後は谷田部郷土資料館(同市谷田部)に会場を移し、来年2月まで開催される。トークショーの最後には、小田地区で小学校跡地の利活用などに取り組む小田地域まちづくり振興会事務局長の白石満帆さんから、市原さんに花束が送られた。(柴田大輔)

人が不満を言うとき 《続・気軽にSOS》118

【コラム・浅井和幸】自分が正当に評価されていないとき、不安が大きいとき、公平でないとき、何か問題があるとき、人は不満を口にします。人の生活も心も単純ではないですから、いろいろな理由が絡み合って不満は募るものです。 口を突いて出てくる不満は、正当性が前面に出ます。わがままではなく、自分の不満には正当性があると主張します。もっとわがままにふるまいたい、えこひいきされたい、褒められたい―なんていう願望は前面に出せませんし、本人も気づいていないことが多いものです。不満をまともに受けて解決しても、事態がさらに悪化することがあります。 長男「昨日の夜も、弟の方がハンバーグ大きかったじゃないか。ずるいよ。いつも自分ばっかりがまんしている。不公平だよ」 母親「ごめんね。気づかなかった。これからは同じ大きさにするから、いつまでも前のことばかり言わないで、そのときに言いなさい」 それほど不思議な会話ではないですよね。これで問題なく分かったと、お互いが気持ちよく過ごせていればよいのですが、それでは納得できないと、長男が暴れるようであれば、公平な解決を急がずに、長男が思っていること、聞いてほしいことに焦点を当てることが大切です。 長男は、昨夜のことやいつも(過去)のことを言っています。対する母親の回答は、今後のことです。長男はこれだけがまんしているのだから、偉い自分をほめてほしい、認めてほしい、という願望を持っているかもしれませんが、母親は解決方法の話をしています。