【コラム・相澤冬樹】杉木立を歩く。花粉症の気が多少はあるみたいだが、そうそうひどい症状に悩まされたことはなく、森の中にも平気に入っていける。今ごろの時期になると、飛散のタイミングをうかがっているのだろう、スギの雄花がたっぷりと花粉をまとって、枝葉が重たげだ。
立ち止まって見上げていると、鼻の奥に引っかかるものがある。出そうで出ない、くしゃみ。不意に疑問が浮かんだ。
新型コロナの感染拡大が初めて伝えられたのは2年前、ちょうど今頃の時期だった。あの時、風邪の諸症状のなかで、熱や咳や倦怠感にコロナを疑っても、くしゃみと鼻水だけならまず大丈夫、と聞いて安心したように思う。感染症怖さに、軽度の花粉症ぐらいでは医者に行きたくない気分が支配的だった。
2年経って、今度はオミクロン株である。一般に重症化のリスクは低いといい、無症状の感染者が多いとの報告もある。それこそ風邪の諸症状どころか花粉症と見分けがつかないとしたら、逆に厄介だ。今度ばかりは、くしゃみも気にかけた方がいいのだろうか。
そうそう、くしゃみが出そうになるとマスクを外したくなる。くしゃみの飛沫のかかったマスクは使い続ける気にならないから、つい外そうとするのだが、飛沫をおびただしいほど周囲にばら撒く行為で感染対策上、好ましいことではない。
花粉症患者の中に、新型コロナが紛れ込む可能性とリスクが高まっている。常識的にはマスクをきちんと装着し、うがい・手洗いの励行、不安を覚えたらかかりつけ医師に相談をということだろう。
例年「並」なら多く飛ぶ?
この春、花粉(スギ、ヒノキ)の飛散はどうなのだろう。この1、2年コロナ禍に押されるように、メディアもすっかり花粉症の動向を取り上げなくなった。
環境省が昨年暮れに発表した「スギ雄花花芽調査」では、2021年6月から7月の日照時間が前年より大幅に増加した東北南部から北陸、関東でスギ雄花は前年よりかなり多くなっていたと報告した。猛暑の翌年には、春の花粉飛散量が増えるのが相場だから、気になる報告だった。
日本気象協会の2022年春の花粉飛散予測は、第3報(1月20日)まで出ている。「花粉シーズンは2月上旬に九州や四国、中国、東海、関東の一部からスタートする見込みで、1月のうちから花粉対策が必要となりそうです。飛散量は東海や北陸、関東甲信、北海道で前シーズンより多いでしょう」とある。茨城県についての飛散量は例年比、前年比とも「並」としている。
「並」なら、やっぱり多く飛ぶってことだよね。ううむ、鼻の奥がすっきりしない。不意に――ックション。
くっさめ、くさめ 誰か噂をしている。(ブロガー)