つくば市内で、AI(人工知能)などの先端技術を使って、高齢者や障害者の通院や受診を支援する「つくば医療MaaS(マース)」という実証実験が17日から実施されている。
スマートフォンの専用アプリで自宅に乗り合いタクシーを呼び出し、同じ方面に向かう人同士が乗り合わせて最短ルートで病院に向かったり、タクシーの車内で顔認証により病院の受け付けを済ませたり、病院の玄関から自動運転の車いすに乗って受診する診療科まで連れて行ってもらうなどだ。
国交省の事業に採択され、茨城県、つくば市、筑波大、民間企業など74者が参加する「つくばスマートシティ協議会」(会長・大井川和彦知事、五十嵐立青つくば市長)が取り組んでいる。
高齢化率が高い小田と宝陽台の2地区を中心に、筑波大付属病院や筑波学園病院など市内6病院を結ぶ経路上にある98地区から参加者を募って、2月14日まで約1カ月間実施している。
対象地区の住民なら、専用アプリを自分のスマートフォンにダウンロードして登録すれば、だれでも実証実験に参加することができる。実証実験に参加しているタクシーは2台。期間中に98地区から6病院までを行き来するタクシーの乗車料は無料。22日時点で約180人が登録し、44人が実際に送迎などを利用したという。
AIによる乗り合いタクシーの通院ルート最適化が公共交通政策に反映できるかや、顔認証による受け付けで患者の待ち時間や病院の事務がどのくらい軽減するか、自動運転車いすが患者や付き添い者の負担をどのくらい軽減できるかを検証などする。ほかに病院内の防犯カメラの映像を使って、個人情報を除いた上で院内の人の流れの解析などをしている。
22日、五十嵐市長らが参加して筑波大付属病院で実証実験のデモンストレーションが催された。乗り合いタクシーと自動運転車いすに乗った五十嵐市長は「何の迷いもなく安心感をもって乗ることができた。ひじょうにスムーズ」と感想を話した。
同協議会幹事の鈴木健嗣筑波大教授は「病院にどうやって行ったらいいかとか、採血室はどこだろうとかなど、患者の不安を少しでも軽減できたら」と述べ、西山博之同病院副院長は「付属病院の1日の外来患者2000人のうち、杖をついていたり、荷物を持っていたりして補助が必要なケースが1日5~10件ある。(自動運転車いすなどで)自動化されれば(介添えなどの)マンパワーを他のところに充てることができる」と実用化の期待を話し「自動化された未来の病院像の設計を考えていくためにも実証実験は重要になる」などと語った。
◆実証実験の参加方法はつくば市ホームページへ。