火曜日, 12月 7, 2021
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絵本「うんこはごちそう」 《くずかごの唄》98

【コラム・奥井登美子】本屋さんで、「うんこはごちそう」(伊沢正名著、農文協刊)という絵本を見つけ、飛びついて買ってしまった。伊沢さんは、日本一のきのこ写真家である。「きのこ」(山と溪谷社刊)には、日本の1155種類のきのこの写真が収録されている。発行時、その多さが学会でも話題になった。一つ一つが、伊沢流の、個性的な、愛情あふれたきのこの写真なのである。

伊沢さんと最初に会ったのは彼が高校生の時であった。「土浦の自然を守る会」で西丸震哉氏の講演会を行ったことがある。次の日、西丸氏も参加して北筑波稜線(りょうせん)林道予定地の見学会があった。当時、大規模林道開発の波を受け、筑波山上曽峠から北筑波稜線林道が計画され、山の中にコンクリートの立派な道路が造ろうとしていた。開発の前に現地を見てみようと、67人が参加してくれた。

西丸氏は大叔父が島崎藤村で、当時、評論家としても自然保護作家としてもモテモテの人。見学会参加者の中に、現地真壁町に住む目のキラキラした高校生が1人混じっていた。彼を連れてきたオジサンの話によると、町の歯科医院の息子。不登校なので、父親が心配して、西丸先生に学校へ行くよう説得してほしいと言われ、連れてきたのだという。

きのこの仲間になりきって撮影

西丸先生はどんな言葉で説得するのだろうか。私は聞き耳を立てて西丸先生と高校生の会話を聞いていた。

「高校が面白くないのか?」
「ハイ、行きたくありません」
「行きたくないところに行くことないよ。友達はいるの?」
「いません」
「じゃあ、無理して行くことないよ。その代わり、自分のしたいことを一つ、何が何でも一つだけ見つけて、そこへ飛び込んでごらん。面白いよ」

彼が飛び込んだのが、きのこの世界だった。

山の中で撮影しているところを見せてもらったことがある。泥だらけの地面をはって行って、きのこの仲間になりきってしまってから、シャッターを押す。誰もができるという仕事ではないのだ。(随筆家、薬剤師)

2 コメント

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名無しの市民
2021年11月17日 10:12 AM

同じような経験がある。官舎の芝刈りをしていた時、珍しい鳥がいた。たまたまいた小学生に尋ねたら詳しい説明をしてくれた。今年はあの木に、去年はあっちの木に巣をつくって子育てをしているよ。ボクはお返しに、花壇に飛んでくるミツバチの背中に白い修正インキでマーカーをつける遊びを教えてやった。この子も不登校だった。高校もいかなかった。しかし、小学生時代から大人に混じって遺跡探しや野鳥の会の活動をしていたので大人との会話能力は優れていた。いまは遺跡発掘の仕事をしている。

名無しの市民
2021年11月17日 12:47 PM

『ウンチは万能薬』

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