金曜日, 7月 1, 2022
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2050年、食料リスクのない農業生産技術開発の方向性探る 筑波大など呼び掛け

2050年に向け、増加する世界人口を賄う農業生産技術はどの方向に進むべきなのかー。技術開発の方向性を探るオンラインシンポジウム「2050年、食料リスクのない豊かな社会を目指して」が、筑波大学(つくば市天王台)が代表機関を務める「作物サイバー強靭化コンソーシアム」の呼び掛けで22日、開催された。

プロジェクトマネージャーを務める同大生命環境系の大澤良教授は「2050年、世界人口は97億人に達し、現在の1.7倍の食料が必要とされる。これに対して代用食を検討する方向もあるが、多くの人は今程度の豊かな食生活の維持を望んでいるのではないか」とし、「食料生産に対する研究者としての我々の責任・方向性は、科学技術によって豊かな生活を保障することだと思う」と話した。

オンラインシンポジウムは内閣府のムーンショット型農林水産研究開発事業として開催された。同事業は、日本発の破壊的イノベーションの創出を目指し、従来の延長にない大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発(ムーンショット)を、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が司令塔となり関係省庁が一体となって推進する制度だ。

農林水産研究分野では「2050年までに、未利用の生物機能のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出」を目標に、2020年度から10の開発事業が始まっている。そのひとつが「サイバーフィジカルシステムを利用した作物強靭化による食料リスクゼロの実現」だ。野生植物などが持つ生物機能を活用して環境適応力の高い作物を迅速かつ自在に開発できるように、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたサイバーフィジカルシステムを使い、目的に応じて作物を迅速にデザインしてリリースできる技術開発を目指している。

世界では増加する人口を賄うため農業利用が困難な条件にある土地での作付けや、気候変動による降水量の変化や温暖化ストレスにも耐える品種が求められている。しかし現在作付けられている品種は栽培化の過程で、環境の変化に適応する多くの機能を失ってしまっている。

劣悪な環境でも栽培できる強靭な作物の開発が急務だが、現在の育種には、その実現を阻む3つの問題がある。野生植物などの持つ強靭なストレス耐性を利用できていない、多数の遺伝子を一度に改良できない、目的に応じて作物を迅速にデザインできない。

シンポジウムでは3つの問題に取り組む課題責任者から、研究内容が紹介された。「作物強靱化」を担当する東京大学農学生命科学研究科の藤原徹教授からは、野生植物などが有するストレス耐性遺伝子の情報を集積し、ストレス耐性作物のデザインに利用する内容が紹介された。たとえば雨が少ない地域で育つ植物の遺伝子を利用して、水分が不足しても育つ品種を作り出すなどだ。

「ゲノム・ダイナミック改変」を担当する京都大学農学研究科の安井康夫助教からは、野生植物などの未利用生物の利用を可能とするための遺伝子を明らかにし、また多数の遺伝子を同時に改変するためにゲノム編集技術の高度化や新規染色体操作技術の開発などを進めると紹介された。

「デジタル作物デザイン」を担当する農研機構作物研究部門の宇賀優作グループ長からは、見た目で品種を選ぶ従来の育種と異なり、遺伝子発現などの様々な分子情報や環境情報も用いて、目的の利用に合わせて作物をデザインする技術の開発について説明があった。この技術が完成すれば、個別の栽培環境に最適な品種を短期間に育種できるとのことだ。

またシンポジウムでは、特別講演として同プロジェクトに関連する社会的背景の話題提供がされた。京都大学工学研究科の藤森真一郎准教授からは気候変動と食糧安全保障の関係について、東京大学農学生命科学研究科の八木信行教授からは食料供給の拡大と地球環境保全の両立に向けて、ゲノム編集による品種開発会社パイオニアエコサイエンス及びサナテックシードの竹下達夫会長からは近未来の農業経営と種苗業並びにアグリビジネスについて講演が行われた。

シンポジウムには全国から413人の参加があり、終了後に行われたアンケートの多くは今後も定期的に情報発信を行うことを求める内容だった。また「先進的な内容が興味深かった」「勉強になった」とのコメントも寄せられた。(如月啓)

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