つくばセンタービルリニューアル計画について、つくば市が実施設計の入札を7日に予定している問題で、市民団体「つくばセンター研究会」(冠木新市代表)は3日、五十嵐立青市長と小久保貴史市議会議長に、建築物の輪郭や中央広場の形状を維持し、改修は室内に限定するよう求める2度目の要望書を提出した。西側エスカレーターの設置見直しや中央広場を囲う一部の壁の撤去見直しなどを求めている。
市のリニューアル計画の主な内容は▽西側(クレオ側)にエスカレーターを新設する▽現在の1階ノバホール小ホールや廊下、市民活動センターなどに市民活動拠点をつくる▽ノバホール西側外階段の半分をスロープにする―など。これまで市は、市議会の意見を受けて、北側(ホテル側)のエスカレーターについては設置を取り止めた。
これに対し要望書は、つくばセンタービルはプリツカー賞を受賞した磯崎新氏のポストモダン建築の代表作であり、築50年の2033年には登録文化財となることが間違いないのに、市のリニューアル計画では貴重な申請資格が失われることになりかねないとしている。その上で、建物の歴史的、文化的意義を尊重し、建物や広場の空間的な輪郭はそのまま保持して、リニューアルは室内改修に限定すべきだとしている。
具体的には、西側エスカレーターについて、2基の計画のうち北側の1基を市議会の決断で撤回したことは評価するが、西側(クレオ側)エスカレーターについても見直すよう求め、10メートルも離れてない位置に既存のエレベーターがあること、既存エレベーターを改修する方が安全でコストが安いこと、エスカレーター設置に伴う中央広場を囲う壁の改変や屋根の設置は広場の価値を損なうなどと指摘している。
市民活動拠点の整備については、中央広場を囲う壁の4分の1を撤去し、開閉式の透明なガラス扉に置き換える計画に対して、中央広場の特徴であるメタリックな正方形とガラス窓、ガラス扉のバランスで構成された空間構成を台無しにし、世界的に価値が認められた広場の形状を壊すとしている。
さらに市民活動拠点などを整備するに際し、1階室内の幅4メートルの廊下を2メートル以下に狭めたり、廊下をふさぐなどの計画に対して、1階からの中央広場へのアクセスが狭められ、機材の搬入や搬出がほとんど不可能となってしまい、つくば市がエスカレーターを設置する目的にしている中央広場の活性化の弊害になると指摘している。
併せて、ノバホールと小ホールの間の幅4メートルの通路は、センタービルの正面玄関入り口となっているばかりか、中央広場の楕円の長軸に沿って筑波研究学園都市の南北の主要軸を形成しており、正面玄関入り口の堅牢な石造りの壁を壊すことは、筑波研究学園都市の骨格を破壊することになるとしている。
ほかにノバホール西側の外階段を改変し、車両用のスロープを新設する計画に対しては、スロープの傾斜角度が13度を超え、急な傾斜になるとみられることから、自転車などが加速し過ぎて停止できなかった場合、歩道と、交通量が多い土浦学園線の車道に行きつき、危険な事故の誘発要因となる恐れがある危険なスロープだとし、加えて、車両の通行に限定しないと建築基準法違反の勾配になるが、人や自転車の進入を24時間防ぐことは、かなり困難だなどと課題を指摘している。
要望書を提出した冠木代表は「6月1日にエスカレーター設置の見直しを求める要望書を出し、北側の1基はなくなったが、まだまだ大きな問題点があって市民に知らされないまま実施計画に入ろうとしている。つくば市の改造計画は磯崎新さんの設計ビジョンを無視したもので、プリツカー賞をとったことに対する敬意があるのか、疑問に思う」と話している。
再要望を受け取った小久保貴史市議会議長は「(議員全員で)要望書を共有し、中心市街地の特別委員会で協議していただくことになる」と述べ、飯野哲雄副市長は「(要望書を)読ませていただいてからの話になると思う」としている。(鈴木宏子)