月曜日, 6月 5, 2023
ホーム スポーツ 「欲を出さないで頑張るしかない」 霞ケ浦 高橋監督【高校野球’21】

「欲を出さないで頑張るしかない」 霞ケ浦 高橋監督【高校野球’21】

一昨年の夏に優勝し、昨年の独自大会でも優勝(4校優勝)と、この夏は3連覇をかけて戦う霞ケ浦。昨秋は準決勝で鹿島学園に敗れ関東大会出場を逃した。春は好投手・樫村佳歩擁する水城に県大会初戦で逆転負けを喫している。高橋祐二監督(61)にチームの現状を余すことなく語ってもらった。

勝てる力あるが、もろさある

ー常総学院や土浦日大が入るゾーンです。組み合わせについて所感を伺いたいと思います。

高橋 特にありません。よそのチームを考える余裕がない。今年のチームは勝てる力はあるとは思うけど、簡単に負けるもろさもあり、霞ケ浦の本来の計算した、理詰めの野球が成立していません。監督を始めて12年目で初めて、決勝に行ってある程度こういうチームをつくればなんとか戦えると手応えをつかんで準決勝、決勝までは勝ち進んでいましたが、今年は21年目にして初めてその力がないかもしれません。強いチームを倒す力はもちろん秘めていますが、簡単に負ける可能性もある。そんなチームです。今年はピッチャーが計算できない。野手陣も戦力的には大して毎年変わらないと思うのですが、ものを考える力が不足しているとか、勝ち方を知らないとか、こちらにあまりついてきてくれていない部分が大きいのかもしれないですね。厳しいゾーンではありますが、同一ブロックでシードの土浦日大にしても常総学院にしても戦えないとは思っていませんが、目の前の相手、一戦一戦を戦っていくしかないのかなと。大それたことは言えない状況ですね。

ー現有戦力の分析をお願いします。歴代チームと比べてどうでしょうか。

高橋 1年生の夏に甲子園に行った飯塚恒介(3年)と宮崎莉汰(3年)がチームの完全な柱になり引っ張っていくような形が理想なのですが、そうなっておりません。飯塚についてはそれに近い存在にはなってきていますが、宮崎は全くですね。本来甲子園に行けなくても1年生から起用してきた選手は例年3年生になると完全な柱になってきました。ピッチャーでも野手でもそうですが今年はそうなっていません。戦力的には例年と変わりませんが、内面的な部分が相当弱いです。

1年夏からチームを支える飯塚選手。通算本塁打は30本を超える

ー技術的な部分ではなく、あくまで内面的な部分ですか。

高橋 内容的な部分がダメだから技術的な部分に影響を及ぼすのだと思います。チームの中心にならないといけない存在なのになっていない。3年生と2年生は持っている技量を引き出すだけの頭がないのか心がないのか、非常に残念ですね。僕自身は毎年チームづくりの仕方は変えていません。僕としてはある程度ここまでできたらなという指標のようなものがあるんですけど、今年のチームはそこまで届いていません。今年の子たちはチームワークが良いとは言えません。自分だけが良ければそれで良いという風に感じ取れる部分がある。霞ケ浦の野球って基本的に一人の力がなくても、糸だって100本あればロープになる。一本が細くても束になれば強くなるという野球なんですよ。それが今年は全くそうなっていません。例年同じようにチームづくりをしていても、根本的なところは押さえた上で、その年の3年生の性格によってチームカラーが出ます。今年は根本的なところを押さえられないまま最後の夏を迎えることになってしまいました。あめを使ってもむちを使っても通用しませんでした。

コロナが心に影響、例年とは違う

ーそれはコロナの期間を経験した影響からですか。

高橋 2年生はコロナの影響があるかもしれないですね。やっぱり一番大事な4月から6月にかけての時期に霞ケ浦高校野球部として感じなければならないことを感じてこないで、やってこなければならないことをやれないでいて、去年の1年間を過ごしたってことが今の2年生にとっては非常に影響を及ぼしているので、ちょっとピントがずれているところがある気がしますね。やっぱりこれだけたくさん練習をやって試合をこなしてきているのだから、全ては想定内のことで進んでいかないといけないといけないのに、今年はエッと驚くような考えられないプレーが起きる。監督が選手を掌握できていません。そういうチームはダメだね。これがコロナの期間が影響してこうなったのか、どうして今年はこうなのか答えは出ていません。来年どうなるか、これからは毎年そうなのかもしれませんね。ほかの強豪校の監督と意見交換すると、どこの監督とも「コロナが選手の心の成長に何か影響しているのかもしれないですね。例年とは違いますよね。」という話になります。高校生活をしていく中で一番大事な時を失ってしまった子たちですからね。

ー春の県大会は初戦で水城に敗れました。注目投手の樫村佳歩君と対戦してみてどうでしたか。

高橋 良いボールでした。もう1回やりたいね。リードしていたのに余裕がなくて守備から崩れて一気に6失点。そういうところが例年のチームと違う。守り勝てなくてビッグイニングをつくってしまうから。本当に何が起きるか分からない。

ここに来て山名が急成長

ーピッチャーについて伺います。春に背番号1だった渡邊夏一投手(2年)はどんな状態ですか。

高橋 当然期待値は高くて水城戦で先発したように春は主戦で投げていましたよ。でも、打者に向かっていけない。なおかつ打たれてしまうので自信を喪失して余計に気持ちが乗ってこない。本人が一番そのことを分かっていると思うので、期待のままにずるずるとベンチに入れてしまうよりは、一回奮起を促してどれだけ爆発できるかというのを見ていこうという考えではいますが、どうなるか大会まで分かりません。

エースとして期待される山名投手

ーそれでは夏の主戦投手は誰に?

高橋 山名健心(3年)です。唯一の救いはここに来て山名が急成長したということです。先日の東京の強豪校や山梨の強豪校と良いピッチングを披露して、山名が今一番自信を持っていますね。僕が見ていてもこれだったら勝負できるなと。あの時のピッチングが本番で出せるかどうかですね。ストレート自体も良くなりましたけれど、変化球が格段に良くなりました。

ー長身右腕の赤羽蓮投手(2年)はどうですか。

高橋 赤羽は成長がゆっくりですが、本人の自覚も徐々に出てきて成長を感じます。ベンチにも入りますね。

2年生の長身右腕、赤羽投手

ー付属ボーイズでエースとして活躍していた木村優人選手(1年)はどうですか。

高橋 本人がピッチャー志望ですからピッチャーをやらせているのですが、そこそこきっちりと投げますけれど、まだピッチャーらしいピッチャーではないです。素材としては学年では一番良いと思います。夏にはベンチに入ります。野手としての可能性も感じます。

ーベンチ入りするピッチャーは全部で何人ですか。

高橋 山名、木村、山田、赤羽、飯塚です。

ー1年生の木村君が2番手候補なのですか。

高橋 一番良いボール投げますからね。それに野球を知っています。ポテンシャルは兄(翔大・東洋大4年)にも負けていないですよ。

1年生ながら投打に能力が高い木村選手。2番手投手として早くも期待される

ー飯塚選手も投げるのですね。

高橋 まあ投げることはないでしょうけど、緊急登板なんてことも想定しています。もう1枚どうしようかと今考えているところです。

ー調子が上向きの選手を挙げるとしたら誰ですか。

高橋 ピッチャーは完全に山名ですね。野手ですか。野手はどうでしょう。見当たりませんね。

ー一番打っているのは誰ですか。

高橋 それは間違いなく飯塚ですね。パンチ力がありますね。30本くらいは打ったんじゃないかな。専大松戸の深沢君からも打ちました。

ー春の大会以降はどんなところと練習試合をしてどんな結果でしたか。

高橋 4月中に強豪校と複数試合を組んでいましたが、県外とは禁止となって、県内のチームとやらせてもらいました。水戸一、藤代、土浦日大、石岡一、下妻一。後は土浦市内大会ですね。下妻一以外とは全敗でした。水戸一には0対2でしたね。石井陽向君にものの見事に完封されました。素晴らしい。石岡一には0対6でやられました。植村塁君が一番良いと思いましたね。ものが違う。石岡一は本当に強いです。4月5月は県内の公立高校にたくさん負けました。6月に入って健大高崎と前橋育英に勝たせていただいてから徐々に調子が上向きになってきました。そして先日は東海大菅生と二松学舎と良いゲームをやらせていただいて。東海大甲府とは1対2で負けましたが、山名が完投して5安打。非常に良いゲームができて自信になったと思います。こんな良いピッチャーがいるのかと村中監督に言われたくらいです。本当に素晴らしい内容でしたので。

3連覇がかかった大会

ー監督の中では勝ち上がるイメージプランは出来上がっていますか。一昨年なんかはもう勝ち上がるプランをおっしゃっていただいて、そのとおりに投手起用されて優勝できましたが。

高橋 組み合わせが決まったら毎年ここで誰が投げようというプランを立てるのですが、今年はそういうのがないですね。本当にどうしたらいいかが分からない。こんな年は初めてです。エースを初戦からぶつけるしかないのかなと思います。でも球数制限があるからエースだけでいくと、1試合150球を4試合で、1週間のうちに600球投げることになって制限オーバーしてしまうんですよ。移行期間ではありますけど、その辺を考慮しないといけませんね。先のことを考えるのではなくて、目の前の試合を勝つと考えた時に、この投手で負けても仕方ないと思って起用するしかないかもしれませんね。今までの年とは違います。今まで2回甲子園に行っていますが、いずれも秋春の関東大会に行っていない年なんですよね。今年も関東大会に行っていないから、そういう意味では良いジンクスが共通するのですが、実績のない年の戦い方と今年の戦い方はどう考えても違うんですよね。

ー最後に、夏に向けて意気込みを語っていただきたいのですが。

高橋 それはもちろん甲子園を目指していますよ。去年の独自大会は優勝(大会はベスト4で終了)しましたし、一昨年の選手権は優勝していますので、夏はまだ2年間負けていません。3連覇がかかった大会なので今年も優勝を目指していますが、本当にうちは初戦で負けるかもしれません。チームがこういう状況なので欲を出さないで頑張るしかないですね。

ーどういう戦いになるのか楽しみにしています。(聞き手・伊達康)

監督インタビュー終わり

1コメント

guest
名誉棄損、業務妨害、差別助長等の恐れがあると判断したコメントは削除します。
NEWSつくばは、つくば、土浦市の読者を対象に新たに、認定コメンテーター制度を設けます。登録受け付け中です。

1 Comment
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー

注目の記事

最近のコメント

最新記事

博物館の歴史論争拒否、土浦市法務が助言 《吾妻カガミ》159

【コラム・坂本栄】今回は158「土浦市立博物館が郷土史論争を拒絶!」(5月29日掲載)の続きになります。市立博物館と本堂清氏の郷土史論争。博物館の論争拒否に対し、本堂氏は「(博物館がそう出るなら同施設を管轄する)市教育長に検討申請書を提出する」と反発しており、エスカレートしそうな雲行きです。 また取材の過程で、本堂氏を門前払いするようアドバイスしたのが市の法務部署であったと聞き、土浦市の博物館マネジメントにも唖然(あぜん)としました。論争を挑む本堂氏をクレーマー(苦情を言う人)並みに扱うよう指導したわけですから。 郷土史をめぐる主な論争は3点 私は中世史に疎いこともあり、市立博物館(糸賀茂男館長)の学芸員にこの論争の要点を整理してもらいました。 いつから山の荘と呼ばれたか ▼本堂氏:『新編常陸国史』(国学者中山信名=1787~1836=が著した常陸国の総合史誌)の記述からも明らかなように、「山の荘」(土浦市北部の筑波山系地域)の名称は古代からあったのに、博物館は同歴史書の記述を無視して同名称を古代史から抹消した。

阿見町の予科練平和記念館 《日本一の湖のほとりにある街の話》12

【コラム・若田部哲】終戦直前の1945年6月10日。この日は、阿見・土浦にとって決して忘れてはならない一日となりました。当時、阿見は霞ヶ浦海軍航空隊を有する軍事上の一大重要拠点でした。そのため、B29による大規模爆撃を受けることとなったのです。当時の様子は、阿見町は予科練平和記念館の展示「窮迫(きゅうはく)」にて、関係者の方々の証言と、再現映像で見ることができます。今回はこの「阿見大空襲」について、同館学芸員の山下さんにお話を伺いました。 折悪くその日は日曜日であったため面会人も多く、賑わいを見せていたそうです。そして午前8時頃。グアム及びテニアン島から、推計約360トンに及ぶ250キロ爆弾を搭載した、空が暗くなるほどのB29の大編隊が飛来し、広大な基地は赤く燃え上がったと言います。付近の防空壕(ごう)に退避した予科練生も、爆発により壕ごと生き埋めとなりました。 負傷者・死亡者は、家の戸板を担架代わりに、土浦市の土浦海軍航空隊適性部(現在の土浦第三高等学校の場所)へと運ばれました。4人組で1人の負傷者を運んだそうですが、ともに修練に明け暮れた仲間を戸板で運ぶ少年たちの胸中はいかばかりだったかと思うと、言葉もありません。負傷者のあまりの多さに、近隣の家々の戸板はほとんど無くなってしまったほどだそうです。 展示での証言は酸鼻を極めます。当時予科練生だった男性は「友人が吹き飛ばされ、ヘルメットが脱げているように見えたが、それは飛び出てしまった脳だった。こぼれてしまった脳を戻してあげたら、何とかなるんじゃないか。そう思って唯々その脳を手で拾い上げ頭蓋に戻した」と語ります。また土浦海軍航空隊で看護婦をしていた女性は「尻が無くなった人。足がもげた人。頭だけの遺体。頭の無くなった遺体。そんな惨状が広がっていた」と話します。 累々たる屍と無数の慟哭 この空襲により、予科練生等281人と民間人を合わせて300名以上の方々が命を落とされました。遺体は適性部と、その隣の法泉寺で荼毘(だび)に付されましたが、その数の多さから弔い終わるまで数日間を要したそうです。

牛久沼近くで谷田川越水 つくば市森の里北

台風2号と前線の活発化に伴う2日からの降雨で、つくば市を流れる谷田川は3日昼前、左岸の同市森の里の北側で越水し、隣接の住宅団地、森の里団地内の道路2カ所が冠水した。住宅への床上浸水の被害はないが、床下浸水については調査中という。 つくば市消防本部南消防署によると、3日午前11時42分に消防に通報があり、南消防署と茎崎分署の消防署員約25人と消防団員約35人の計約60人が、堤防脇の浸水した水田の道路脇に約100メートルにわたって土のうを積み、水をせき止めた。一方、越水した水が、隣接の森の里団地に流れ込み、道路2カ所が冠水して通行できなくなった。同日午後5時時点で消防署員による排水作業が続いている。 越水した谷田川の水が流れ込み、冠水した道路から水を排水する消防署員=3日午後4時45分ごろ、つくば市森の里 市は3日午後0時30分、茎崎中とふれあいプラザの2カ所に避難所を開設。計22人が一時避難したが、午後4時以降は全員が帰宅したという。 2日から3日午前10時までに、牛久沼に流入する谷田川の茎崎橋付近で累計251ミリの雨量があり、午前11時に水位が2.50メートルに上昇、午後2時に2.54メートルまで上昇し、その後、水位の上昇は止まっている。 南消防署と茎崎分署は3日午後5時以降も、水位に対する警戒と冠水した道路の排水作業を続けている。

論文もパネルで「CONNECT展」 筑波大芸術系学生らの受賞作集める

筑波大学(つくば市天王台)で芸術を学んだ学生らの作品を展示する「CONNECT(コネクト)展Ⅶ(セブン)」が3日、つくば市二の宮のスタジオ’Sで始まった。2022年度の卒業・修了研究の中から特に優れた作品と論文を展示するもので、今年で7回目の開催。18日まで、筑波大賞と茗渓会賞を受賞した6人の6作品と2人の論文のほか、19人の研究をタペストリー展示で紹介する。 展示の6作品は、芸術賞を受賞した寺田開さんの版画「Viewpoints(ビューポインツ)」、粘辰遠さんの工芸「イージーチェア」、茗渓会賞授賞の夏陸嘉さんの漫画「日曜日食日」など。いずれも筑波大のアートコレクションに新しく収蔵される。芸術賞を受賞した今泉優子さんの修了研究「樹木葬墓地の多角的評価に基づく埋葬空間の可能性に関する研究」は製本された論文とパネル、茗渓会賞を受賞した永井春雅くららさんの卒業研究「生命の種」はパネルのみで展示されている。 スタジオ’S担当コーディネーターの浅野恵さんは「今年は論文のパネル展示が2作品あり見ごたえ、読みごたえがある。版画作品2作品の受賞、漫画の受賞も珍しい。楽しんでいただけるのでは」と来場を呼び掛ける。 筑波大学芸術賞は芸術専門学群の卒業研究と大学院博士前期課程芸術専攻と芸術学学位プログラムの修了研究の中から、特に優れた作品と論文に授与される。また同窓会「茗渓会」が茗渓会賞を授与している。 展覧会は関彰商事と筑波大学芸術系が主催。両者は2016年から連携し「CONNECT- 関(かかわる)・ 繋(つながる)・ 波(はきゅうする)」というコンセプトを掲げ、芸術活動を支援する協働プロジェクトを企画運営している。 (田中めぐみ)

記事データベースで過去の記事を見る