土曜日, 7月 19, 2025
ホームつくば「リュウグウ」の石、つくば着 KEKで分析始まる

「リュウグウ」の石、つくば着 KEKで分析始まる

日本の探査機「はやぶさ2」が採取した小惑星「リュウグウ」のサンプル分析が25日までに、つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK)の実験施設で始まった。東北大学の中村智樹教授がリーダーを務める「石の物質分析チーム」が同日、記者会見し、実験の模様を生中継した。

はやぶさ2の採取サンプル容器が回収されたのは2020年12月。その後、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙研(神奈川県相模原市)で試料の計量や分類などが行われ、6月から1年間は、6チームからなる初期分析チームの研究に委ねられることになった。全国や海外から選抜された専門の異なる鉱物・有機物・化学分野の各2チームからなり、それぞれ独立に水の起源解明や化学分析などを行う。

小惑星リュウグウから採取され、地球に持ち帰ったサンプルの総量は約5.4グラム。このうち直径1ミリ以上の大きさの粒を「石」と呼び、分析に当たる「石の物質分析チーム」が編成された。国内57人、海外を含め総勢108人のチームが物質分析を行う。

集束イオンビーム加工用に準備されたリュウグウ試料(同)

KEK物質構造科学研究所の放射光実験施設「フォトンファクトリー(PF)」では、量子ビームが2つの手法で分析に用いられる。ひとつは、小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰った小惑星イトカワの分析でも使われた精密X線回折。もう一つは、軟X線によるX線顕微鏡STXMだ。PFでは比較的エネルギー強度の低いビームを扱えるため、炭素など軽元素の分析に有効という。

表面・内部を分析し、組成や化学状態などをとらえる。特に含水鉱物に着目し、リュウグウの形成過程をモデル化することなどを目的としている。初期段階の分析を「上流」と呼ぶが、上流で量子ビームを用いると微量の試料を非破壊で分析でき、下流の分析に影響を与えないのが利点。希少な試料を有効に活用する方策となっている。

地球大気に触れぬよう厳重に封印されたサンプルが、JAXAから中村教授の元に届いたのは6月1日。0.1ミリの微粒子をグローブボックス内で厚さ5ミクロンほどに切り分けたサンプルを大量につくり、KEKに持ち込んだ。X線回析実験用の試料だけで約50個になるという。

PFでは、これらを1試料ごとに角度を変えてX線撮影する。25日の生中継では、実験室で大気遮断したグローブボックス内で取り出し、窒素重点の撮影機材に入れ、X線回折装置にセットして真空化するまでの手順を公開した。

中村教授は「毎日のように石の表情に向き合っていると、一つひとつに色つやの違いなど感じる。それらの直観が分析でどう表現されるか大変楽しみにしている」という。

物質構造科学研究所は東海村にあるJ-PARCで物質・生命科学実験施設(MLF)を運用しており、今回初めて負ミュオンによる元素分析も行う。こちらは27日にスタートの予定だ。

リュウグウのような小惑星は、約47億年前の太陽系にあった物質の痕跡を残している。過去に地球に降り注いで地球上に水や有機物をもたらしたのではないかとも考えられている。初期分析チームそれぞれの分析結果を総合することで、地球に生命が誕生した謎の解明に近づく期待がもたれている。(相澤冬樹)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

1コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

1 Comment
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

幼稚園の給食に異物混入 つくば市

つくば市は18日、市内の市立幼稚園に同日提供された給食に、長さ5ミリくらい、太さ1ミリくらいの金属片と見られる異物が混入していたと発表した。18日時点で健康被害の報告はなく、他校から同様の異物混入の報告もないという。 市教育局健康教育課によると、同日午前11時30分ごろ、給食の配膳をしていた同幼稚園の配膳員が、給食のデザート「レモンゼリー入りフルーツナタデココ」を配膳中、異物が混入していることに気付いた。 デザートは同日、市ほがらか給食センター谷田部で他のメニューと合わせて調理され、市立幼稚園4園、小学校6校、中学校3校に計3317食が提供された。デザートは調理前、フルーツの黄桃とパイナップル、ナタデココ、レモンゼリーがそれぞれ別々のパウチ袋に入っており、給食センターで混ぜて、各校に提供された。 異物混入を受け、市は幼稚園4園と小中学校9校に対し、デザートの提供を停止するよう連絡。小中学校は間に合って停止できたが、他の幼稚園で園児3人がすでに食べてしまっていた。18日までに3人に体調不良などはないという。提供を停止したデザートは廃棄処分とした。 異物の混入経路については18日午後、給食センター、幼稚園、食材納入業者それぞれで混入経路を調査し、幼稚園では保健所による立ち入り調査が行われたが、同日時点で混入経路は不明という。市は22日以降、検査を行い成分を分析する。保護者に対しては18日付でお詫びの通知文を出したとしている。

クモの巣とメジロ《鳥撮り三昧》3

【コラム・海老原信一】クモの巣とメジロにいったいどんな関係があるって言うのかしら?そんな疑問が浮かんでくれたら、話し手としてはこの先の展開がしやすくなります。 10年以上も前になりますが、相も変わらず重めの機材をセットした三脚を担いで林道を「鳥さんヤーイ」と念じながらテクテクと。少し視界が開けた所に出たので三脚を下ろし、一息深く呼吸。目の前の風景に視線を向けていました。 すると、樹間を1羽のメジロが飛びぬけようと左手から右手へ。直後にはその姿が見えるはずと見ていたが、「あれ、出てこないぞ、どうして?」。途中で止まるような飛び方ではなかったのですが…。 不思議に思い、少し立ち位置を移動してみる。ありゃー、何てことだぁ~。こんなことってあるのかぁ~。なんとそこには、クモの巣に引っ掛かり、羽をばたつかせながらもがくメジロの姿が。鳥は見かけよりずっと軽量とは言うものの、この光景には驚くばかりでした。 こちらが手を出せるような場所ではないので、ハラハラしながら見守る以外には手だてなし。30秒(私の感覚的な時間)ぐらいしたところでクモの糸が切れたらしく、かの鳥は無事飛び去って行きました。体長11~12センチぐらい。体重も10グラムちょい程のメジロですから、クモの糸にからめとられたのも納得と、後から思うのでした。 羽に糸がへばり付いてしまい、飛行が困難になっていたらと思い、そうならなかったことに一安心した顛末(てんまつ)でした。(残念ながら写真はありません) 花と鳥、どっちが主役? 写真展開催時、持参したポストカードの一枚をご覧になった方の「花と鳥とどっちが主役?」の質問に一瞬戸惑いました。一呼吸おいて「確かに言われる通りかもしれないですね」。花の蜜に上からアタックするメジロ、歓迎するかのごとき妖艶な赤い花(上の写真は花と鳥の取合わせは同じですが別のものです)。 鳥を主役に撮ったつもりの私には、思いもよらない感想をいただいた訳です。人々の風雅をめでる心持ちを思えば、花と鳥はよい組み合わせと言えます。花鳥風月といった言葉もありますから、花と鳥、どっちが主役でもよいのかな。 その経験が、後々の鳥を撮影する際の心構えに大きく影響しています。誰かの一言が新しい発見となったり、自身の指針となったりって、「やっぱりあるんだなあ」と思います。耳や目をもう少しだけ動かしてみようかな。心も体も動くかもしれないから。(写真家)

土浦三 水戸葵陵に逆転負け【高校野球茨城’25】

第107回全国高校野球選手権茨城大会は18日、3球場で3回戦6試合が行われた。J:COMスタジアム土浦の第2試合では土浦三が水戸葵陵と対戦し、9回に逆転され2-3で敗れた。 18日 3回戦 第2試合 J:COMスタジアム土浦水戸葵陵 000000012 3土 浦 三 000000200 2 序盤は緊迫した投手戦が繰り広げられたが、土浦三が最後に力尽きた。「接戦を予想していて、2点ビハインドくらいまでは想定内だった。だから0-0で来たのは上出来。しかしミスからピンチを招き、全体のあせりにつながった。選手たちには5回後のグラウンド整備の時間に『受け身ではなく捨て身で行こう』と声掛けしていた」と竹内達郎監督の振り返り。 土浦三はこの日も2回戦と同様、左右のダブルエースを早いイニングで継投した。先発は左の池田翔。「後ろにもいい投手が控えているので、後を考えず1イニング1イニング全力で行く意識で投げた」と池田。3回まで散発3安打ではあったが、四球や暴投などで毎回走者を三塁まで進めてしまい、球数がかさんできたため、4回からは右の黒田広将がマウンドに上がった。 「うちは守備のチーム。打たれてもバックには頼れる仲間がいっぱいいる。ここまで1戦1勝で、遠くを見据えるのではなく目の前の1試合1試合を全力で戦ってきた」と黒田。4回は野手の送球ミス、7回には四球で走者を一人ずつ出すものの、ノーヒットのピッチングを続けてきた。 打線は相手投手の丁寧なピッチングを打ちあぐね、6回までわずか1ヒット。だが7回裏、待望の得点機が土浦三に訪れた。2死から3番・鈴木大芽が左前打、4番・黒田が右翼への二塁打。ここで相手投手が交替したが、代打の葉梨叶悠が死球で満塁とし、6番・星典蔵が左翼への二塁打を放って2点を先制した。「得意のまっすぐが来たら思い切り振ろうと思っていたら、インコースの一番打ちやすいところに来た。チームに勢いを付け、流れを持ってこれるバッティングができてうれしい」と星。 8回表には水戸葵陵が逆襲。3番打者の単打と4番打者の二塁打で1点を返し、5番打者は死球で無死一・二塁。だがここからの黒田がすごかった。6番打者を三球三振、7番打者には左前に打たれるが打球が浅いため走者はホームを狙えず満塁に。8番打者は三ゴロで本塁封殺、9番打者を三振でこの回を乗り切った。「同点までOKと言われていたが、同点にするとあせってしまうと思い、何としてもこの1点で抑えようと。自分の最大の武器であるコントロールを生かし、外を突くまっすぐと落とすスプリットを投げ分けた」と黒田。 だが9回を戦う余力は黒田に残っていなかった。順調に2死までは来たものの、3番打者に2ストライクからボール球を連発し歩かせてしまう。4番打者に左翼への適時二塁打、5番打者には左前適時打を許し、ついに逆転された。「脚がつっていたが責任感でマウンドを守らないとと思っていた。交替したときもまだ裏がある、あきらめないという気持ちだった」と黒田。竹内監督は「チームをここまで連れてきてくれたのは黒田の功績。最大の賛辞でねぎらいたい。あと一歩のところで勝利に導けず、監督として申し訳ない」と無念の表情を浮かべた。 霞ケ浦は下妻一に完封勝ち 18日の土浦、つくば地区の高校の試合結果は、J:COMスタジアム土浦の第1試合で霞ケ浦が下妻一に6-0と完封勝ちを収めた。 18日 3回戦 第1試合 J:COMスタジアム土浦霞ケ浦 000102003 6下妻一 000000000 0

つくば国際 3回戦突破ならず【高校野球茨城’25】

第107回全国高校野球選手権茨城大会は18日、3回戦が行われた。笠間市民球場の第2試合ではつくば国際がCシードの水戸啓明と対戦し5回コールド11ー0で敗れた。つくば国際は2回戦で佐和を3ー2で下し接戦を制したが、3回戦突破はならなかった。 18日 3回戦 第2試合 笠間市民球場つくば国際 00000 0水 戸 啓明 3143× 11 強豪の水戸啓明を相手に先取点が欲しいつくば国際は、初回1死後、矢口大聖が水戸啓明先発の柿崎大地からセンター前ヒットで出塁するが、続く成嶋蓮はサード併殺打に倒れる。 その裏つくば国際は先発の小野颯斗が2四死球と2つのエラーが絡み3失点。「先取点を与えないことを考えて投げた」(小野)が、捕手の成嶋蓮主将が「エラーでリズムをつかめなかった」と語る通り、2回にも1失点、3回にも3失点した。小野は7点リードされた3回2死1、2塁で交代。捕手の成嶋蓮が投手としてリリーフし、小野が捕手に入った。しかし成嶋蓮も流れを止められず失点を重ねた。 成嶋は4回にも水戸啓明の松原康介、宇佐美琉生にタイムリーヒットを打たれ3失点。4回2死3塁となったところで、本来エースだったが、けがでショートに入っていた津留崎隼人が自ら志願してリリーフし、四球を出すも次の打者を三振に仕留めた。 水戸啓明は5回から2番手としてプロ注目の好投手、中山優人が今大会初登板すると、この回つくば国際先頭の三浦咲都が内野安打で出塁するも、続く鷺沼舜、布施維士が三振、最後は川口翔大がショートゴロに倒れた。つくば国際は水戸啓明の柿崎大地ー中山優人の投手リレーの前に3安打完封負けを喫した。 先発した小野颯斗は「2回戦と違って自分のピッチングが出来ず、ストライク、変化球も入らなかった。リズムがつかめなかったし、エラーがあった時に抑える気持ちを強く出したが、結果抑えられなかった。もっと試合をやりたかったが相手が上手だった」と話し「最後にこのメンバーで出来て楽しめた。自分はつくば国際で野球をやりいろんな面で変わり成長出来て良かった」と高校での野球生活を振り返った。 成嶋蓮主将は「先取点を取って逃げ切りたかったが、初回のエラーで流れをつかめず大量失点になってしまった。投手としては思い通りに投げられた」とし「先輩、後輩関係なくみんなでコミュニケーションを取って仲の良いチームだった。明後日から兵庫県淡路島で開催される女子高校野球全国大会に出場する部員もスタンドで熱い声援を送ってくれた。部員以外にもサポートをしてくれた人たちに感謝したい。辛い時期もあったけど最後までこの仲間と戦えて良かった」と話した。  つくば国際の伊藤徹監督は「初回から固さがあり、力を出し切れなかったのが残念だった。強豪相手に勢いを持ってこられなかった。先発の小野に関しては自信を持って投げてくれれば良かったが、そこが強豪校相手という意識が強かった」と述べる一方「2回戦で勝てなければ水戸啓明と戦えなかったので、水戸啓明と戦えたことは彼らをほめたい。そこでもう少し力を出せるような指導が出来るようにするのが私の課題」と話した。引退する3年生には「部員が少ない中、いろんな思いをしながらここまでやってくれてありがとう」と感謝の言葉を述べた。(高橋浩一)