土浦市役所2階に「まちかど想い出ピアノ」が設置されて2カ月が経った。9日現在で延べ55人が平日ランチタイムのミニコンサートを開いた。「コロナ禍でなければ…」の思いをこめて演奏を楽しんでいる。
来庁者が自由に弾けるストリートピアノは、ペデストリアンデッキで土浦駅と結ばれた市役所正面のエントランスに置かれている。3年前に閉校となった市内の小学校で眠っていたヤマハ製のグランドピアノ。平日の正午から午後1時まで限定で演奏ができる。
予約は不要だが、演奏前に庁舎2階の受付で記名の申し込みが必要になる。「もっとオープンに弾いてもらいたかったがコロナ禍ということで手続きをお願いした」と市管財課。手指消毒の除菌スプレーを用意し、演奏中のマスク着用を求めている。
9日は常連となったつくば市在住のピアノ教師、関義夫さん(40)が正午ちょうどに来庁し、リスト編曲のワーグナーの歌劇「トリスタンとイゾルデ」など2曲を演奏した。
「日立の駅ピアノなど各地のストリートピアノを訪ねて弾きにいっているが、やっぱりグランドピアノは違う。土浦市役所は吹き抜けになっていて音の抜けがいいから、1階の来庁者も上がってくる。多くの人に聴いてもらいたいときはポップス曲をサービスする」と関さん。

新治中学の卒業生らが再生
ピアノは斗利出(とりで)小学校の音楽室で半世紀以上にわたって使われていた。同小は2018年3月、児童数の減少から藤沢小、山ノ荘小と共に閉校。新治中学と併せて新設の新治学園義務教育学校(土浦市藤沢)に統合された。
3校には合わせて6台のピアノがあり、1台は新治学園に引き取られたが、まだ演奏できる状態のピアノが3台残った。廃校となった藤沢小の最後の校長を務めた原井一永さん(60)は新治中学の第19回卒業生で、土浦市在住。昨年2月、同級生らと「新治地区旧小学校のピアノを生かす会」を立ち上げた。
同窓生や地域の企業に寄付を呼びかけると、1カ月足らずで100人以上から40万円余りが集まった。先に引き取ったピアノが不調になった新治学園に2台を整備して移し、残る1台はストリートピアノとしての活用を目指したが、折からの新型コロナ感染拡大で難航した。1年の間をおいて土浦市役所にやってきたのは4月1日のことだ。
ぴかぴかに磨かれ、調律も施され、「想い出ピアノ」として再デビューを果たした。ピアノ脇には斗利出小の校舎の写真が掲げられている。
教員を定年退職した原井さんは「同級生らと還暦同窓会を開くときはピアノの回りに集まろうって話になっている。コロナ禍でおあずけを食らっているが必ず実現したい」と楽しみにしている。(相澤冬樹)
問い合わせは市管財課(代表029-826-1111)。