つくば市は「医療的ケア児等相談窓口」を今年3月開設した。人工呼吸器や痰(たん)吸引など医療的ケアが日常的に必要な子どもと家族を対象に、生活する上で受けられる公的サービスの紹介や、就園・就学の際に必要な支援をスムーズに受けられるように相談に応じる。
相談窓口を一元化
つくば市に住む18歳未満の医療的ケア児は、市が把握しているだけで36人。今まで医療的ケア児について相談したいときは、医療の相談は病院や保健センター、福祉サービスの相談は障害福祉課など、相談窓口が分かれていた。今回、新しく相談窓口が開設されたことで、窓口を一元化することができ、ここに相談すれば、医療機関や保育園、福祉サービスなどにつながることができるようになった。
新しい相談窓口について、市内の医療的ケア児の親の会「かけはしねっと」代表の根本希美子さん(43)は「医療的ケアが必要な子どもでも、身体的機能の障害は軽い場合もあり、制度の枠で考えるとどこに相談すればいいか迷う家庭もある。医療的ケア児に特化した相談窓口はありがたい」と話す。
災害時に自宅や避難所にお届け
相談窓口では、痰吸引に必要なチューブや胃ろう等の経管用栄養剤など医療的ケア用品を、1家庭に付き約1日分、市役所で事前に預かり、災害時に自宅や避難所まで可能な限り届ける事業も開始した。災害時に備えて消耗品の予備を保管している家庭も多いが、家庭と市役所で分散して保管することで、外出先で災害に遭った場合にも医療的ケア用品を入手しやすくなる。
また、医療的ケア児者に特化した災害時対応ガイドブック・ノートを作成し、相談窓口やホームページで配布している。ガイドブックには一般的な防災知識のほか、停電時の電源確保の方法など、災害時も医療的ケアを続けるために必要な情報を掲載している。ノートには普段の医療的ケアの情報を書き込めるようになっていて、初めて本人に接する医療者でもノートを見れば対応できる。
5月6日時点で、具体的な相談を受け付けたケースはまだないが、2家族が医療的ケア用品を預けに来て、災害時対応ガイドブック等を受け取った。相談の受付は原則18歳以下の子どもと家族が対象だが、医療的ケア用品保管事業と災害時対応ガイドブック等は、医療的ケアの必要な成人も利用できる。
「かけはしねっと」の根本さんも、息子の医療的ケア用品を市役所に預けた。「息子は決まった時間に胃ろうから栄養注入をする必要があるが、災害発生時にデイサービスなど家族と離れた場所にいた場合、すぐに息子がいる場所に駆け付けられるか分からない。市役所からも必要な用品を届けてもらうことができるのは安心」と根本さんは話す。(川端舞)
➡医療的ケアに関する過去記事はこちら(2020年3月10日付)