筑波大学発宇宙ベンチャー、ワープスペース(本社・つくば市吾妻)開発の超小型通信衛星「日輪」(2月17日付)が14日夜(日本時間)、国際宇宙ステーション(ISS)から放出され、県内の民間企業では初めて、軌道投入に成功した。同社があるつくばスタートアップパークの特設会場で中継を見守った五十嵐立青市長は「メイドインつくばの技術でここまでやれた価値は大きい。おめでとうと言いたい」と祝福した。
衛星は、正式名称を「WARP-01(ワープゼロワン)」といい、同パーク2階にある同社で、通信基盤などが組み込まれ、一辺が約10センチ角の立方体サイズに組み立てられた。重さ1.3キロの超小型衛星で、外枠に赤のカラーリングが施されていることから「日輪」の愛称がついた。
ISSへ向かう補給船に搭載され、2月21日に米国から打ち上げられた。ISSでは日本実験棟「きぼう」に移され、放出のタイミングを待っていた。「きぼう」には宇宙飛行士の野口聡一さんが滞在中で、放出には直接関わらないが、宇宙航空研究開発機構(JAXA)筑波宇宙センターが管制業務に当たった。
14日は放出の模様をJAXAがYoutubeで配信したことから、同社がサテライトビューイング会場を開設。常間地悟(つねまち・さとる)CEOが五十嵐市長、県の伊佐間久技術振興局長らと放出の瞬間を見守った。「日輪」には同市のふるさと納税者3人の名前が刻字されている。
放出予定時刻は午後8時50分、「きぼう」の射出口から衛星が飛び出た瞬間には「あ、赤くない」の声が上がった。常間地CEOは「一瞬別の機体かと思った」そうだが、軌道上の衛星を追った画像で赤い色を確認すると「赤く見えたぞ、やった、やった」の歓声が上がった。
手塩にかけるように衛星を制作し、「日輪」の名付け親ともなった同社のエンジニア、木村洋平さん(26)は「感無量」と喜んだ。JAXA配信の画面では放出証明書の発行による成功が伝えられた。
「日輪」はほぼ地上400キロの高度で、1周約90分をかけて地球を周回する。推進装置を持たないため次第に高度を下げて、大気圏に突入し使命を終える。早ければ半年、最長で2年という寿命だが、この間に衛星運用の訓練を積むことにしている。
ワープスペースではこれをベースに、光通信モジュールを搭載した中継衛星を高度1万メートル軌道に打ち上げる計画でいる。1メートルサイズの小型衛星で、2020年末に1号機を打ち上げ、23年に2機を追加し計3機によってネットワークを展開。地上局とユーザーの低軌道衛星との間を24時間365日にわたって常時接続できるシステムの構築を目指している。
常間地CEOは「今回もクラウドファンディングなどで筑波大OB、OGをはじめ、つくばの皆さんのお世話になった。この先もつくばにこだわり続けたい」と飛躍を誓った。(相澤冬樹)