木曜日, 3月 19, 2026
ホーム土浦作家の夢が膨らんだ土浦時代 新川帆立さんインタビュー

作家の夢が膨らんだ土浦時代 新川帆立さんインタビュー

【池田充雄】宝島社主催の昨年の第19回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した新川帆立さんの『元彼の遺言状』は1月に刊行されるや、1カ月半で18万部を突破し、今も部数を伸ばし続けている。東京大学法学部卒業、弁護士、そしてプロ雀士としての活動経験もあるという異色の作家だが、高校時代の3年間を土浦で過ごした経歴から、地元にもファンを増やしている。土浦で作家の夢が膨らんだという新川さんに、当時の思い出や自作について語ってもらった。

にぎやかだった駅前の商店街

―幼少期を宮崎市で過ごし、父の転勤に伴う形で県立土浦一高へ入学。
住居は霞ケ浦の近くで、桜川の土手などもよく散歩した。春は桜が一斉に咲いてすごくきれい。湖上にはヨット部の人たちが帆を浮かべていて優雅な感じ。当時は駅前の商店街もにぎやかで、イトーヨーカドーのミスドで友達と一緒に勉強したり、モール505の「かつら」でもんじゃ焼きを食べたり。あと一高前の「特米弁当」が麻薬的なおいしさで、よくお昼に食べていた。

新川さんもロマンを感じた、土浦一高の旧土浦中学校本館

―2006年から09年にかけての高校生活になる。当時の思い出は。
すごく楽しくて本当にいい思い出しかない。小中学生のころは周りから宇宙人みたいに見られていたが、一高に来たら私より変な人がいっぱいいて、それで楽になれた部分もある。大人な人が多く、多様性を認める環境だったのかなと思う。私は好奇心が強い方で、興味を持ったことは何でもやってみようと、囲碁部に入って囲碁や麻雀を覚えたり、趣味とか楽しみが少しずつ広がった時期だった。
高校の友達とは今でも一番仲がいい。一高祭でお化け屋敷をやったり、一緒に花火大会に行ったり、青春ぽいことをいろいろ経験した。旧本館へは弦楽部の友人の練習を訪ねて行ったり。明治維新や大正ロマンの香りあるハイカラな校舎で、旧制中学の流れをくむ学校の伝統が感じられた。

漱石好き、『吾輩は猫である』にはまる

―読書歴は。
最初にはまったのがハリー・ポッターで、小中学生のときは海外のファンタジーやミステリー、冒険小説などハラハラドキドキするものばかり。純文学は高校に入ってから読んでおいた方がいいかなと義務感にかられ、明治の文豪など有名どころを順番に読んだ。
一番好きだったのが夏目漱石。特に『吾輩は猫である』を読んだとき、これはすごいと思い、私も書く側に回りたいと思った。漱石の小説はテーマや作家自身の悩みに重たいものを感じるが、それを重たいまま書かず、ユーモアに転化して表現しており、読者もそれを読むことで悩みが軽くなる。

―ミステリーを書き始めたのはなぜ?
物事を分析したりロジカルに考えるのがもともと好きで、だから囲碁や麻雀も好きなんだと思う。でもミステリーに適性があると気付いたのは今回が初めて。それまではファンタジーを書こうとして全然向いていなかった。ミステリーが書けるのは一つの強みなので、今後も大事にしていきたい。

欠点がありつつ魅力的な人間を描きたい

宝島社発行『元彼の遺言状』

―『元彼の遺言状』はキャラクターが特徴的。主人公の剣持麗子は波風立てつつわが道を突き進む、漱石で言うと『坊っちゃん』の破天荒さがある。
坊っちゃんは男性には一つのあこがれのようだが、女性目線だと「この人何?」って引いてしまうところがある。でもその欠点が結果として愛らしい。だから私もキャラクターにはなるべく欠点を持たせようと、本当に変な人とか問題を抱えた人ばかりを出した。だめなところも含めて魅力的な、多面的な人間を書きたい。

―人を決め付けるような麗子の口調も坊っちゃん的。
今作の主人公は激しい性格の人なので、彼女なりのものの見方や考え方で書くよう心掛けた。私自身は、この子なら世界をどう見るかなという視点で、欠点も含めて人のあり方って面白いなと思いながら書いていた。

―彼女のモデルは新川さんではという声も多い。
女性弁護士は世の中に大勢いるし、本当にいろんな人がいるのに、私自身が主人公に結び付けられることに驚いた。男性弁護士が弁護士ものを書いてもこうは言われない。女性ならではの難しさを感じた。女性が働く中でぶつかる問題とか生きづらさに対し、背中を押せる作品を書きたいと思っているが、その一つのモチベーションにもなった。

元気が出るミステリーに

―主人公の成長も描かれている。
即物的な世界に住んでいる女性が、価値観の逆転した世界に足を踏み入れていき、それまでの自分とは違う世界が存在することを知るのが基本のストーリーライン。日本もバブル以降の消費を楽しむスタイルから、もうそれでは世の中は回せないことに若者は気付いてきた。そういう現代的感覚も潜ませている。作者が解説するとすごい寒いんですが。

―今作は特に、同世代の女性に楽しんでもらいたいと。
現在コロナ禍で、社会全体がもやもやとして暗く、気持ちが落ちてしまう状況がある。そういう停滞した空気感を吹き飛ばす、元気が出るミステリーにしたかった。読者の方々にも、生活や仕事で忙しくしている合間の、ほっと一息つける時間にしていただけたら。

―次作の予定は?
今作の続編を書いていて、なんとか形になりそう。やはり法律知識を生かしたミステリーで、剣持麗子も出てくる予定。もう少し時間をかけて、最高の形でお届けしたい。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

1コメント

1 Comment
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

土浦の新小学1年生に黄色い帽子を寄付 JA水郷つくば

新年度に土浦市内の市立小学校と義務教育学校に入学する全ての新小学1年生に向けて、JA水郷つくば(土浦市小岩田西、池田正組合長)が883個の黄色い交通安全帽子を土浦市に寄付し、18日同市役所で寄贈式が催された。池田組合長から安藤真理子市長に目録などが手渡された。 交通安全帽子の寄付は同JAが地域貢献活動の一環で1977年から始め、今年で49年目となる。以前は男子がキャップ型、女子はハット型と性別で形が異なっていたが、2024年度から性別を問わず共通のハット型とした。 式典でJA水郷つくばの池田組合長は「この事業が始まった時は農協が合併する前だった。自分が入所した頃からやっていることなので感慨深い。小学1年生は、黄色い帽子をかぶっているのが知れ渡っているので、運転手も気をつけてくれる。今後も支援を続けていきたい」と話し「帽子ではなくヘルメットという声もあったが従来通り黄色い帽子となった」と付け加えた。 寄付を受けた土浦市の安藤真理子市長は「交通安全は市としても大事なことなので、長い期間寄付を続けていただき大変感謝している。子供たちには毎日元気に登下校してもらいたい」と述べた。 寄贈式では土浦市が1976年から毎年、入学祝い品として新1年生に無料で贈呈しているランドセルも用意された。ランドセルも今春から性別に関係なくジェンダーレスの薄い茶色になる(25年5月2日付)。 新小学1年生に対するJA水郷つくばの交通安全帽子の寄付は、土浦市のほか、管轄する龍ケ崎、牛久、かすみがうら、利根、美浦、阿見の7市町村全ての公立小学校と義務教育学校に対して行われる。(榎田智司)

つくばエクスプレスの車窓から《ご近所スケッチ》22

【コラム・川浪せつ子】今回はつくばエクスプレス(TX)の窓から見えた筑波山とつくば市内の絵です。TXは2005年8月に開通しました。都内からつくば市に引っ越してきた私は、それまで乗用車でJR荒川沖駅まで行き、常磐線で東京に通いました。免許証を持っていなかったので、教習所に通わねばならず、いろいろ大変でした。 TXは待ち望んだ電車でした。今は都心部から帰るとき、TXに乗り、筑波山が見えると心が休まります。車窓からの風景は穏やかで、都会の喧騒(けんそう)を忘れさせてくれ、地方の良さをつくづく感じます。つくば市に来てよかったと、しみじみ思うときです。 交通の便は良くなったものの、つくば市の「景観の方はどうかしら?」と思っていました。そんなとき2月に「つくば市景観講演会」という市主催の企画があったので、参加してみました。建築業界の隅っこで仕事をしていますが、これまで景観のことはあまり考えず、受けた仕事をこなしているだけの生活でした。 「便利」だけでなく「景観」も 「つくば市の景観100」「つくば景観ルートマップ」という冊子、ご覧になったことありますか? 少し前に発行されたものですが、時々見て、絵を描く資料にしていました。つくば市とその周辺部には、ステキな自然や景観がたくさんあります。 電車も通り、人口も増え、便利にはなったものの、それは景観の悪化につながっているのだと、今回の企画で感じました。仕事で「あれ?こんなのいいの?」と思うような看板を描いたこともありましたが、ソレです。「再生エネルギー」の太陽光発電パネルが、筑波山に造られたこともありました。コレ、禁止なんじゃないの? 大学の先生の話も面白かったです。先生+市民の協力で、街を再生・進化させた事例など。 上の絵のように、つくば市はまだ開発中ですが、「便利」だけでなく「景観」も、「住みやすい街」には大切と思いました。(イラストレーター)

学生宿舎値上げを1年延期 筑波大

永田学長「値上げかなわなければ宿舎廃止」 筑波大学(つくば市天王台)が4月1日から実施するとしていた学生宿舎の寄宿料値上げ=3月11日付=について、永田恭介学長は18日の定例記者会見で、値上げを1年間延期すると発表した。一方で「残念ながら値上げがかなわなければ、宿舎廃止が順番に行われる」とも発言。学生らからの反発は必至で、大学側と学生側との話し合いにも影響が出そうだ。 永田学長は会見で「宿舎値上げについては、かなりご理解をいただいている」と、大半の学生から理解を得ていると強調し「一部の学生さんにはまだご理解いただけていない」との見解を述べた。その上で「さらに対話を続けるという意味合いで、もう少し値上げの時期を遅らせるということにした」と述べ、宿舎値上げを1年間延期するとした。 一方で「いろんな意見交換を行いながら最終的に値上げを行いたい」と、値上げへの強い意向を示し「残念ながら値上げがかなわなければ、宿舎廃止が順番に行われる」と強硬な姿勢をちらつかせた。 その上で永田学長は「国立大学の財産の部分であり、当然ながら安心安全が見込めない建物は使えなくなる。僕ら(筑波大学)が廃止するよりも、廃止せざるを得ない状況になると思う。改修については概算要求で認められることはほとんどなく、校舎などもほとんど自力で直している」と説明した。 一方で経済的に厳しい学生や、障害を持つ学生への配慮については「少し思慮が足りなかった部分があるので、来年(2027年入学)の学生が入るまでに順序良くチャートを作って、それぞれが適正なところに入れるよう、その準備が必要になる」との考えを示した。 平均で1.4倍から1.5倍に及ぶ賃料や共益費の値上げ幅圧縮などの選択肢の有無について永田学長は、宿舎にwi-fi環境を整備することを挙げて「値下げするのは非常に難しい」との考えを強調した。 弁護士「全く反省してない」 これに対し学生有志の代理人である指宿昭一弁護士は「(大学側は)全く反省していない。この値上げを聞いて宿舎から出て行った学生もいる。学生の声を聞かずに一方的に(値上げを)決めてしまったことを反省してほしい」と憤りを見せた。その上で「大幅値上げをしないで宿舎を維持できるよう大学側は追求すべき」と、同大に対し宿舎維持方策の検討を求めた。 宿舎値上げをめぐっては、大学公認の学生代表組織「全学学類・専門学群・総合学域群代表者会議」(全代会)が1月7日付で学生担当の千葉親文副学長に対し▽値上げについて学生と議論を通じての合意の形成▽寄宿料、共益費の値上げを2027年4月1日まで延期▽経済的に困窮している学生に対して、援助の方法を用意し周知を行うことによって保護を与えること―の計3項目からなる要請書を提出。学生有志らで作る「筑波大学学生宿舎寄宿料増額の撤回を求める会」は3月2日、賃料値上げ撤回や値上げ実施延期のほかに、学生宿舎入居者代表や全代会との協議や同意なしで値上げを行わないこと、学生が申し入れをしたことを理由に学業や生活上の不利益を一切与えないことの確約などを求める要求書と交渉申入書を提出している。(崎山勝功)

廃棄していた果肉を活用 福来みかんのドリンク開発 筑波山神社参道の土産店

筑波山麓特産の福来みかんの皮を使った七味を販売する筑波山神社参道の土産店「神橋亭」(つくば市筑波、店主・渡辺由美さん)が昨年末から、これまで廃棄していた福来みかんの果実を活用しドリンクを販売している。福来みかん特有のさわやかな香りと甘酸っぱさが特徴だ。七味はみかんの皮だけを利用するため、果肉はこれまで廃棄したり、人にあげたりしていた。 同店の七味は、先代店主の渡辺美代子さん(86)手作りの「みよこの七味」で知られる。渡辺さん一家は筑波山中腹の約990平方メートルで福来みかんを100本ほど栽培している。みかんが黄色に色付く11月になると毎年、店主の由美さん(43)と義母の美代子さんが、収穫したみかんの皮をむいて、干して乾かし、焙煎して「陳皮(ちんぴ)」を作り、粉にして唐辛子やごま、青のりなどと混ぜて福来みかんの七味を手作りし販売している。 一方、みかんの果肉は毎年2トンほど出る。一部を冷凍し知人にあげたりしているが、毎年1トンほど廃棄している。 由美さんは「捨てるのはもったいない。みかんの果肉をどうすればいいか」とずっと考えていたという。昨年、美代子さんから果肉をもらった知人が、果肉のシロップ漬けを作って持ってきてくれた。甘みも苦みもあっておいしく、シロップ漬けの作り方を教わったのが始まりという。 その後、由美さんは、果肉を焼酎に漬けたり、他のアルコール類に入れたりなど試行錯誤を繰り返し、砂糖の量や煮込み時間なども調整を繰り返した。果肉を生のまま使うより冷凍した果肉を使った方が甘味が増すということも分かった。 さらに砂糖を入れて煮込む際、当初みかんの種を取り除いていたが、種を取り除かずそのまま煮込んだ方が甘味が増すほか、加工の手間が省けるなどの利点も発見。こうして果肉を丸ごと使用した福来みかんのシロップ漬けが完成した。 シロップ漬けは果実酒の瓶に詰めて店頭に並べ、寒い日は体を温める「福来みかんホット」として、暑い日は炭酸割の「福来みかんスカッシュ」として1杯(300ミリリットル)500円(税込み)で提供する。ドリンクには果肉がほぼ1個分入っており、スプーンですくって食べられるようになっている。 店主の由美さんは「炭酸で割ったりお湯で割ったりするほか、紅茶で割ったり、ソフトクリームのトッピングができないかなど考えている。福来みかんのジェラードの試作品もできたので提供していきたい」と話す。 神橋亭は明治半ばの1894年に創業した。筑波山神社の神橋の脇にあり、登山客や観光客、神社の参拝者が立ち寄る。福来みかんの陳皮が入った七味は40年前ぐらいから販売している。 店舗は2024年9月に事業継承引継ぎ補助金を活用してリニューアルした。七味の加工工房は元々みかん畑の近くに作っていたが、福来みかんの粉の香りを来店客にかいでもらいたくて土産店に移設した。茨城県よろず支援拠点からの支援を受けている。同支援員の吉村千鶴子さんは「支援する側も、福来みかんの果肉の部分をどうするかが課題だった、今回、果肉のまま種もとらずに煮込むという画期的な方法が見つかり、とてもうれしい」とコメントする。(榎田智司)