金曜日, 10月 9, 2026
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ニホンウナギ分布の謎、環境DNAで解く 国立環境研など

【相澤冬樹】丑(うし)年の今年、ウナギの生態にスポットを当てた研究が国立環境研究所(つくば市小野川)の亀山哲主任研究員(生物・生態系環境研究センター)らによって報告された。絶滅危惧種、ニホンウナギの分布域を環境DNA解析という手法で推定したところ、ウナギの仔魚、シラスウナギが海洋でどのように運ばれるかが、日本国内の河川における分布を決める主要因になっていると考えられた。

調査には北海道大学大学院の笠井亮秀教授、龍谷大学の山中裕樹准教授らが参加、全国265河川、365地点で環境DNA調査を行い、これまで謎の多かったニホンウナギの分布を調べた。ウナギがどこにどれくらいいるのか、実はよくわかっていないという現状は資源管理上の課題となっていた。ウナギは普段、岩陰に隠れたり砂泥中に潜って暮らしていたりするうえ、「主に夜間に活動するため、捕獲したり見つけることが難しい」(亀山研究員)ためだ。

シラスの輸送経路と一致

環境DNAは生物の糞やはがれた表皮などによって、環境中に放出された生物由来のDNAの総称。研究グループは、調査地点で河川水を数百ミリリットル採り、その水をろ過しフィルター上に捕集されているDNAを抽出する。DNAの濃度から、その環境に生息している生物の量も把握できる。生物を捕獲することなく、統一した手法で生息量を調べることができる最新の解析法という。

その結果、ウナギは関東以西の太平洋側や瀬戸内海、九州西岸の河川で多く生息していることが分かった。一方、日本海側の北陸東北地方、北海道の河川にはほとんどいなかった。

これは南方から海流によって日本まで運ばれてくるシラスウナギの輸送経路をシミュレーションした結果と一致した。気象庁が2020年秋に運用を開始したモデルを用い、ウナギの仔魚に見立てた8万個の粒子を台湾東方の黒潮域に放流し、日本のどの地域に運ばれてくるかをシミュレーションしたものだ。

環境DNA解析(左)とシミュレーションによる分布域

実際にはウナギは、北海道を除く全国の様々な地域で放流されている。そこで都府県別のウナギの放流量と環境DNA濃度を比較したところ、両者はまったく一致しなかった。これらのことから、日本の河川に生息しているウナギの多くは天然のウナギであり、その分布は仔魚期の海洋での輸送状況によって決まると考えられた。

さらに、ウナギの環境DNA濃度が高かった河川は全窒素濃度も高い傾向にあった。これは高栄養環境にある河川ほどウナギの生残や成長が良いことを示している。

全窒素は富栄養化の指標とされ、水質の良し悪しの判断に用いられてきた。かつては全窒素濃度が高いといわゆる「汚れた川」と判断されていたが、近年の水環境改善の取り組みから、日本の河川の水質浄化が進んでいる。研究成果では、全窒素濃度が高い河川というのは、むしろ生産性が高く豊かな河川ととらえた方がよいでのではないか、という見方をしている。豊かな河川にウナギが多く生息していると考えることができるという。

霞ケ浦は未調査

那珂川などの環境DNA調査を担当した亀山研究員によれば「今回は河川の調査で、特に霞ケ浦については調べていない」そうだ。福島第1原発事故に伴う霞ケ浦流域のウナギに対する出荷制限指示は2016年に解除になったが、その資源回復状況などについては分からないという。

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