【相澤冬樹】国立科学博物館(科博、林良博館長)は3日未明、筑波研究資料センター(つくば市天久保)に保管されていた重要航空資料、シコルスキーS-58(HSS-1)を筑西市徳持のザ・ヒロサワ・シティに移送した。この到着を待って同日、広沢グループ(広沢清会長)と共に一般財団法人科博広沢航空博物館の設立を発表、財団は年内をメドに同シティ内に新航空博物館を開設する。
初の官民協力博物館
科博の林館長は同日会見し、「国立博物館が民間と共同で財団を設立して常設館を設けるのは初めて。地域活性化に貢献したい」と意義を強調した。財団の代表理事に就任した広沢会長は「博物館の展示品の多くは、科博保有の貴重な財産を無償で提供いただくことで実現できた」という。
同グループが土地と施設、資金を提供して設置の博物館に、科博が保有する標本資料(国有財産)を貸し出す形式となる。新博物館運営の財団法人に科博から2人の評議員が加わる。
共同設立に至ったのは、科博が保管していたYS-11量産初号機を同シティが受け入れたことから。同機は羽田空港内の格納庫で20年ほど保管してきたが、東京オリンピック・パラリンピック開催のために移設を迫られ、保管場所を探していた。

この移送をきっかけに、同シティに床面積1850平方メートルの格納庫が整備され、航空機に関する標本資料全般を展示する施設の展開が図られた。シコルスキーS-58も展示の目玉になる大型ヘリ。南極観測船「宗谷」とともに、第3次~第6次(1857年から62年)の南極観測に使用された。59年には南極に残されていたカラフト犬「タロー・ジロー」を救出したことで知られる。科博には73年から2000年まで展示されたが、その後はつくばの資料庫で保存されていた。
この機体が2日深夜、封印を解かれ筑波研究資料センターから運び出された。全長20メートルを超す機体はプロペラが折りたたまれ、後部ローター部をコンパクトに付け替えた形状でトレーラーに積み込まれた。3日午前0時ごろから約2時間をかけて同シティまで運ばれた。博物館となる格納庫では、先に移送され組み立てを完了したYS-11の機体と並べられた。
新博物館にはこのほか、20年7月まで上野本館で展示されていた零式艦上戦闘機(いわゆるゼロ戦)が修復を終えて今月中にも搬送されてくる予定。科博の資料としてはグライダーなど合わせて5機のほか、プロペラやエンジンなど関連資料が展示される。
展示や解説など運営上の詳細を詰め、コロナ禍の動向をにらみながら、年内をメドに開館にこぎつけたいとしている。ザ・ヒロサワ・シティには新幹線車両などを集めたレールパークなどがあり、1月には隈研吾設計の広沢美術館が開館している。