木曜日, 3月 5, 2026
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《続・気軽にSOS》79 成功体験のみの危険性

【コラム・浅井和幸】人は、苦しい思いが続いたり、失敗し続けたり、人にばかにされてばかりだと、余裕や自信をなくしていきます。そうすると心がくじけて、身動きできなくなっていくものです。

ここのところ、仕事でうまくいかないことが多いなと感じている人は、だんだんと暗くなり、新しいことに挑戦しづらくなっていきますよね。幼少期からずっと暴力を受け続けると、人とコミュニケーションをとることも怖くなってしまいます。

そのような悪循環に陥っている人に対し、支援者は成功体験をさせてあげるとよいと考えます。自由に動けなくなっているのは、自信がないからだ。だから自信を持つためには、成功体験をすることが必要だと考えるのです。

もちろん、その考え方に私は賛成です。ただし、それのみでは偏った考えで、とても危険だと考えます。成功体験があったほうがよいことは、ほとんどの人は反対しないでしょう。しかし、それのみであると、失敗を恐れすぎてしまう状態に陥る可能性があります。

失敗体験から立ち直る体験

だから、成功体験と同じぐらい、失敗体験から立ち直る体験も必要なのです。ミスをしてもフォローできる感覚、けがをしても傷が治る感覚はとても大切なことなのです。成功できるという自信と、失敗しても何とかなるという余裕の両方があるときに、人は一歩を踏み出しやすいものなのです。

私が失敗から学べることもたくさんあるよと言うことがあります。コミュニケーションが苦手なある青年から質問されたことがあります。「うまく話ができずに相手を傷つけるのが怖い。もし相手が怒ったらどうすればよいですか」と。

私は答えます。「謝ればいいんじゃないかな。気を使いすぎるぐらいの君が、取り返しがつかないほど人を傷つける可能性はとても低いと思うよ。そして、そのイメージをしている相手は、取り返しがつかないほどの傷つき方をする人かな」と。

どんなに完璧にふるまったとしても、どんなに立派な素晴らしい人格や技術の持ち主でも、失敗は必ずするものです。そして、そこから学べることもたくさんあります。このような状況で、このようなやり方をすると失敗するという経験は、大きな学びのある成功体験ともいえるかもしれません。

支援者は、「どこまでの失敗ならば自分がフォローしてあげられるか」という視点も持つことが大切だと思います。今、何かに苦しみ、余裕がなくなっている人に伝えたいです。「自分や他人から、失敗や負けること、苦労することでの学びを奪わないでほしい」と。一つの枠組みでの失敗は、次の枠組みでの成功のカギになります。

とてもまずい肉ジャガを作ったとき、それで自分や誰かを責めたり悔んだりするところにとどまらずに、何が失敗の原因だったかを考えて、次においしい肉ジャガを作る知識として取り入れられるとよいでしょう。ときには、カレー粉を入れてしまって、おいしいカレーにしちゃえばよいかもしれませんよね。(精神保健福祉士)

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電子看板のガイドラインを策定 土浦市 県内初 光・動き・音に指針

良好な景観と交通安全確保へ 街中で、LEDビジョンなどを用いて広告などを流す電子看板「デジタルサイネージ」の設置件数が増加する中、良好な景観を維持し交通安全を確保しようと、土浦市は2日、屋外などのデジタルサイネージの表示に関するガイドラインを県内で初めて策定した。 デジタルサイネージに特有の光のまぶしさ、映像の動き、音の大きさなどについての指針を示すもので、市内を、にぎわいを創出するエリア、自然と歴史のあるエリアなど4つに分け、エリアごとにそれぞれの指針を示している。デジタルサイネージは、人の視線や注意を特に引きつけるなどの特性があることから、景観維持のほか、ドライバーや歩行者の不注意による交通事故を誘発するのを防ぐことが目的。 具体的には ①夜間の光の明るさは、原則として1平方メートルあたり400カンデラ以下(スマートフォンを暗闇で光らせたくらい)とする ②光が夜空に拡散しないようひさしなどを付ける ③色や模様は、うずまき模様や細かい縞模様などは見る人に錯覚などを引き起こすことがあり好ましくない ④動きは、極端な点滅、高速で動く、クイズ形式などは、ドライバーに幻惑を誘発し交通事故を誘発する恐れがあるため避ける ⑤設置位置は信号機と重ならないようにする ⑥霞ケ浦や河川の水面に反射しないよう配慮する ⑦音は、駅前などにぎわいを創出するエリア以外は音を出さないーなど。 市内を駅前などにぎわいを創出するエリア、幹線道路沿いや工業団地などのエリア、霞ケ浦湖畔や筑波山麓エリア、落ち着きのある旧城下町エリアの4つに分け、それぞれエリアに応じた指針を示している。旧城下町エリアについては屋外広告物条例で設置そのものを禁止している。 これまで同市は市景観計画や屋外広告物条例で屋外広告物の大きさや設置位置などを規制してきた。現在、市内には17基のデジタルサイネージが設置されており、これまで市民から「まぶし過ぎる」などの意見が計5件、市に寄せられ、市はその都度、設置事業者に連絡などしてきた。今回のガイドラン策定を機に、17基の事業者のほか、新たに設置を計画している事業者にも周知を図っていきたいとしている。ただし強制力や罰則はない。 同様のガイドラインは全国で、さいたま市、千葉県柏市、名古屋市、大阪市などがすでに策定している。同市の特徴として、夜間の光の明るさについて、近くに別の光源などがある場合は一部、明るさの基準を緩和している。大学の研究結果などを取り入れた緩和で、全国初という。